食事を終えたところでリビングへ移動し、入手したスキル結晶について相談を行うことにする。
迷宮攻略に関わる真面目な話し合いだからだろう。二人は俺の対面に腰を下ろした。
「オリハルコンの剣を手に入れたときに検討していた簡易版のデュランダルを作る計画だけど、今日入手したスキル結晶で最低限の形にはなると思う」
「コボルトのスキル結晶は三つしかないですよね? 竜と融合して防御力貫通を付けるのは確実でしょうが、残り二つは何を付けるのですか?」
セリーの質問に答えることができず考え込んでしまう。
簡易版のデュランダルを作ったとしても、これを使う場面は限定的だ。
雑魚狩りだと魔法の圧倒的な殲滅力に軍配が上がり、MP回復に用いるには与ダメが足りず吸収量が少ないため非効率。
そのため、ボスのレアドロップ狙いでドラウプニルとの併用というのが基本的な運用方法となるだろう。
そうなると、付けるべきスキルは絞られてくる。
コボルトと一緒に融合するとして、ウサギで詠唱中断。それから、はさみ式食虫植物でMP吸収。そして、つぼ式食虫植物との組み合わせでHP吸収。
ドラウプニルの攻撃力五倍があるためサイクロプスの攻撃力二倍を付ける必要はない。デュランダルの簡易版として考えるならこのあたりだろう。
あとはアクセサリー枠がドラウプニルに取られるため、イアリングに付いている腕力二倍が利用できなくなる。
オリハルコンの剣か腕装備のどちらかに付ける必要があるだろう。
うーん……。ダメだ。一人で考えても答えなんか出ない。
やはり彼女たちに聞いてみよう。
候補となるスキルについて相談するとロクサーヌとセリーも悩みだした。
「あの、ご主人様」
三人でしばらく悩んでいたがロクサーヌが口を開く。
「何か思いついた?」
「思いついたというほどではないのですが、詠唱中断とHP吸収については後回しでいいのではないでしょうか」
ふむ。詠唱中断とHP吸収か……。
「どうしてそう思ったの?」
尋ねてみると表情を引き締めて続きを口にする。
「はい。まず、詠唱中断なら私とセリーも持っていますので、ご主人様の武器に付いていなかったとしてもあまり問題にならないと思います」
確かにそうかもしれない。
三十四階層以降のようにボスが二体以上出現する階層ならともかく、現在の階層ではオリハルコンの剣でも雑魚をさっさと片付け、ボスが一体だけの状況に持っていけるはずだ。
そうなれば、ロクサーヌとセリーで問題なく詠唱を潰すことができる。
「そして、HP吸収についてなのですが、ご主人様はオーバーホエルミングを用いた上で魔物を背後から攻撃するため、そうそう攻撃を受けることはありません。また、仮に攻撃を食らったとしても魔物のレベルを遥かに上回っているためレベル補正が働きダメージが少ないのではないでしょうか?」
なるほど。言われてみればその通りだ。
オーバーホエルミングの効果時間をキチンと把握し、切れそうになったら攻撃範囲から離脱すればそうそう攻撃を食らうことはない。
……ただし、遠距離攻撃持ちを除く。
でもまあ、やることをちゃんとやっていれば攻撃を受ける回数を減らすことは可能なはず。
彼女の言う通り、この二つについては後回しにしてもいいだろう。
「ありがとう、ロクサーヌ。参考になった。それじゃあMP吸収と腕力二倍を付けることにするよ」
「ふふ。どういたしまして。お役に立てて嬉しいです」
喜んでいる様子が本当に可愛い。超好き。
そして、セリーも感心したように告げる。
「やはりロクサーヌさんの戦闘に対する洞察力はすごいですね。本当に頼もしいです」
「いえいえ。そんなことはないですよ」
そんなことあるんだよなぁ。
一見するとイケイケドンドンで脳筋ぽいのに、実際のところ戦闘についてはかなりクレバーだ。
本当に某戦闘民族みたいな娘さんだわ。
さて、次は腕力二倍をどれに付けるかを確認しないと。
防御力貫通とMP吸収については武器にしか付けることができないため悩む必要はない。
だが、腕力二倍は武器と腕装備、どちらに付けたもんか……。
再び三人で頭を悩ませているとセリーがいきなり詠唱を唱え始めアイテムボックスを開いた。
そして、ガントレットを取り出すとそれを俺に差し出す。
「ご主人様、ダマスカス鋼のガントレットを装備できるか試してみませんか?」
「いやでも、それだとセリーの防御力が落ちてしまう」
その申し出を拒否すると彼女はかぶりを振って言葉を続ける。
「お気遣いありがとうございます。でも、ドワーフは頑丈ですし、体力二倍の付いたオラクルダマスカス鋼グリーブだってあります。私なら大丈夫です」
セリーの表情は決意に満ちており、それを覆させるのは困難だろうというのが伝わってくる。
そして、ロクサーヌもこちらを見ながら口を開いた。
「ご主人様、セリーの気持ちを汲んではもらえませんか?」
……そうだな。二人にここまで言われているんだ。
「分かった。とりあえず試してみよう」
彼女からそれを受け取り庭へ出た。
ガントレットをはめると収縮して俺の手にピッタリのサイズとなり、両手を何度か握り込む。
あっ。これダメなやつだ。
手には違和感しかなく、重たい物を持てる気がしない。
そう感じつつもアイテムボックスを開きオリハルコンの剣を取り出した。
しかし、やはり握力が足らず持っていても不安しか感じない。
このまま振り回すと絶対にすっぽ抜ける。
純粋にパラメーターが足りないのか、それとも俺にはガントレットの適性がないのか。いずれにしても現段階でこれを使用するという案はなしだな。
剣をアイテムボックスへ戻す。
「セリー、ありがとう。でも、俺には扱えないみたいだ」
「そうですか……。残念です……」
「だけど、心配してくれたその気持ちはとても嬉しかったよ」
「はい」
その言葉を聞いて彼女ははにかんだような笑みを浮かべていた。
リビングに戻り再び頭を悩ませていたところセリーが口を開く。
「とりあえず一度整理してみませんか」
「うん? 整理?」
「はい。それぞれのメリットとデメリットを並べてみます」
ああ。それは助かるわ。
「ありがとう。それじゃあお願い」
彼女は一つ頷き喋り出した。
「まず、オリハルコンの剣に付けた場合のメリットですが、ドラウプニルの攻撃力五倍以外はこれ一本で賄える点です」
ふむ。頻繁に装備品の変更をする必要がないってのはメリットになるか。
「デメリットについては、今後腕力五倍を付けた際にスキルの系統がダブってしまい、どちらかの効果が発揮されず死にスキルとなってしまいます。これについては防御力貫通にも同じことが言えますね。ですが、トロールや竜の最上位種のスキル結晶を入手する機会なんてあるのでしょうか?」
セリーは自分で言いながらもそれらのスキル結晶の入手については懐疑的なようだった。
そりゃそうだわな。
しかし、ロクサーヌはドヤ顔で口を開く。
「問題ありません。ご主人様ならそう遠くないうちに手に入れるはずです」
遠くないうちって……。ご主人様はそこまで自分自身を信じることは出来ないかなぁ……。
まあ、デメリットについてはだいぶ先の話になりそうだ。
それに、もしかしたらその頃にはセリーがオリハルコンの剣を作れるようになっているかもしれないぞ?
そうなれば、簡易版ではなく本家に迫る性能の剣を新たに作ればいい。
ロクサーヌの言葉に戸惑っている様子だったが、セリーは続きを口にする。
「それから腕装備に付ける場合ですね。メリットはオリハルコンの剣に付ける必要がないため、腕力五倍を融合できるようになった際にそれを活用しやすいことです。デメリットは硬革のグローブの性能が低いため、今のペースだとすぐに買い替えることになり再びスキル結晶の融合を行わなくてはなりません」
うーん……。確かにそうなんだよなぁ。
今後、階層を上げていく上で硬革シリーズだと不安がある。
できれば早いうちに置換したいところだ。
ん?
セリーの話を聞いているとロクサーヌが気まずそうにしていた。
……ああ。彼女の防具は全て竜革かダマスカス鋼製だもんな。それで申し訳なくなったのか。
でも、どんなことがあろうとも防具についてはロクサーヌ優先の方針を変えるつもりはない。何があってもだ。
「それから、最後にもう一つ提案が」
「え? まだあるの?」
尋ねるとセリーは笑顔で答えた。
「はい。有用な装備品が見つかるまで融合をせず保管しておくのです」
なるほど。確かにそれは冴えたやり方かもしれない。
セリーによる説明が終わりそれぞれのメリット、デメリットも理解できた。
さて、どれを選ぶべきか……。
……よし。最終的な方針は俺が決めるが、とりあえず決を採ってみよう。
順番に答えていった場合、ロクサーヌは俺に慮って忖度するかもしれない。
一がオリハルコンの剣に融合。二が倹約の硬革グローブに融合。三が融合を見送る。
この三つの中から選んで声を合わせて番号を言うことにしよう。
二人にそれを告げるとワクワクしているような表情が浮かんでいる。かくいう俺も全く同じだ。
なんかレクリエーションみたいで楽しいわ。
「それじゃあいい? 『いっせーのーせっ!』の後に言うんだよ? いいね?」
「ふふ。大丈夫です」
「はい。問題ありません」
顔を見合わせ頷き合う。そして、口を開いた。
「いっせーのーせっ!」
その瞬間、三人の声がピタリと重なった。
「そっか。みんな同じ気持ちだったのか」
俺の言葉に嬉しそうな顔で頷きながらロクサーヌが答える。
「せっかく貴重な武器とスキル結晶が揃ったのです。なるべく早くご主人様がそれを振るうところを見たいですからね」
「はい。ボスのレアドロップをどんどん集めることができるのです。後回しになんかできるはずがありません」
自分で提案したというのにセリーは見送るという案を選ぶつもりはなかったようだ。
それじゃあ融合といこう。
装備品とスキル結晶をローテーブルに置き、毘盧帽を差し出しながらセリーに声を掛ける。
「それじゃあ、お願いね」
「かしこまりました」
彼女は返事をすると立て続けに融合していき、当たり前のように複数のスキルが付いた装備品をこさえてしまう。
この世界の常識だと、とんでもない光景なんだろうな。
「お待たせしました。融合が終わりました」
「お疲れ様。セリー、いつもありがとう」
「さすがセリーです。本当に優秀な鍛冶師ですね」
終了を告げる彼女に労いの言葉をかけると、はにかんだような笑みを浮かべている。
ついさっき邪悪な嘲り笑いを浮かべていた顔と同じだとは思えない、実に愛らしい天使の笑みだ。
いや、どっちも可愛いから何の問題もないけどね。
んじゃ鑑定っと。
貫通のオリハルコン剣 両手剣
スキル 防御力貫通 腕力二倍 MP吸収 空き 空き
オッケー。問題ナッシング。
「本当にスキルが三つも付いた武器を作り出してしまったのですね……」
剣を見つめながらロクサーヌが声を漏らし、セリーがそれに答える。
「はい。スキルも検証しやすいものですし、伝世の装備品として売却すればとんでもない値が付くことでしょう。実際に売却するかは別にしても硬革のグローブに腕力二倍を付けるよりはこの方がいいと思います」
オリハルコンの剣と硬革のグローブを比べればなぁ。そりゃあこっちを選びますわ。
あとはこいつの運用に必要なボーナスポイント数だよなぁ。
現在の総ポイント数は143。
キャラクター再設定、必要経験値二十分の一は外すわけにはいかないため、この二つで64ポイント。
ドラウプニルはマストなのでアクセサリー六で63ポイント。
ダブルアタックを使うんだから詠唱省略も必須で3ポイント。
周回をするためにワープも必要なので1ポイント。
そして、フォースジョブで探索者、英雄、戦士、剣士を設定して7ポイント。
合計138ポイントか。残り5ポイントは結晶化促進四倍、鑑定、ジョブ設定でいいな。
そして、食材系のドロップを狙うなら料理人をつける必要があるためフィフスジョブを設定して15ポイント。
こっちは合計で146ポイントか。あと3ポイント足りないな……。
まあ、それでも探索者を3つ上げるだけなのだ。近いうちに実行できるだろう。
「それじゃあ、午後はボスを連続で狩ってどのくらいレアアイテムを手に入れることが出来るのか検証しよう」
「はい! ボスの連戦なんて腕が鳴ります!」
このお嬢様、完全にレアドロップよりボス戦の方を楽しみにしてるよ……。
ほんと根っからのバトルジャンキーだなぁ。
「ボーナスポイントが足りないから今回は食材系のレアドロップについては見送ることにして、何を狙えばいいと思う?」
問いかけるとロクサーヌはレムゴーレムだの、ランドドラゴンだのと恐ろしいことを呟き始めた。
行かないからね? 今の戦力でそんなボスに挑むなんてあり得ないからね?
彼女を横目で眺めているとセリーが口を開く。
「現在の階層までのボスで食材以外のレアドロップとなると、ハチノスの膠にマダムバタフライのアイシャドウ、それからラフシュラブの霊木の板あたりでしょうか」
ふむ。確か膠と霊木の板が装備品の素材だったよな。
「それじゃあハチノスとラフシュラブで試してみよう」
「はい。それでいいと思います」
頷き合っていると不満気な表情のお嬢様が……。
「上に進んでもっといい素材を残す魔物と戦う方がいいと思うのですが」
私はいいと思わないかなぁ。
しかし、これを天然で言っているのがすごいわ。
きっと彼女の中では本当に何の問題もないのだろう。
ロクサーヌをこちらのソファーへ招き、抱きしめながら機嫌を取る。
すると、彼女に押し倒されいつもの体勢に持ち込まれてしまった。
まあ、こちらとしてもやぶさかではないわけで、温かく柔らかい体を抱きしめ返し背中を撫でる。
午後の探索までのんびり過ごすとしますかね。
六階層のボス部屋に入ると待機列がなかったため準備に取り掛かる。
イアリングをアイテムボックスにしまい、貫通のオリハルコン剣を取り出しベルトに差す。
サードジョブとフォースジョブを戦士と剣士に変更し、獲得経験値二十倍をアクセサリー六に入れ替え出現したドラウプニルを身に着けた。
ほんじゃ鑑定っと。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv45 英雄Lv40 戦士Lv30 剣士Lv12
装備 貫通のオリハルコン剣 身代わりの硬革帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 竜革の靴 ドラウプニル
よっしゃ。オッケー!
そんじゃいくべ。
ボス部屋へ続く扉に向かい歩き出す。
俺たちは二十階層の魔物と戦っているため。今更デカい牛の魔物が出現してもビビることはない。
……いや、嘘。やっぱツノがあるのは怖いって。
オーバーホエルミング
ボーナスタイムを作り出し、ロクサーヌにいなされている隙に背後から強襲する。
ラッシュ
スラッシュ
デュランダルならその一撃で片が付くはずだが奴の体は健在だ。
ラッシュ
スラッシュ
二撃目を叩き込んだがそれでも魔物は倒れない。
嘘だろ!? こんなに差があるのか!?
思わず舌打ちをしてしまう。
ラッシュ
スラッシュ
三発目が入るとようやくハチノスの体が霧になって消えていった。
マジかぁ……。
相手は六階層のボスだ。デュランダルなら腕力二倍とラッシュでワンパンできていただろう。
しかし、貫通のオリハルコン剣だとダブルアタックを使っても三回の攻撃が必要だった……。
正直、予想以上の性能差だ。
基礎攻撃力の差に加えて、防御力無視と防御力貫通にも大きな隔たりがあるのだろう。
これは不味いことになった。二十階層のラフシュラブはデュランダルを用いてもオーバーホエルミング二回分のダブルアタックを行っている。
貫通のオリハルコン剣だとどれだけの攻撃をしなければいけないんだ?
そして、他にも気づいたことがある。デュランダルならMPは黒字だったのに、与ダメが少ないせいで戦闘前よりほんの少しだがMPが減っている。
おそらく二十階層ならMP切れを心配する必要はないだろうが、三十四階層以降のボスが二体以上出現する階層になればかなり危うい。
まいったなぁ……。
「さすがご主人様です。やはりデュランダルがなくても問題ありませんでした」
考え込んでいるとフロアにロクサーヌの声が響く。
「そうですね。貫通のオリハルコン剣も悪い武器ではありませんし、オーバーホエルミングとダブルアタックがあれば十分戦えますね」
そして、自分の融合した武器が役に立ったことが嬉しいのかセリーも笑顔でそう言った。
いかんいかん。せっかく彼女が心を込めて融合してくれた装備品だ。デュランダルに劣るなんて思っていたら罰が当たる。反省しなくては。
「ありがとう。二人のおかげで魔物の背後から攻撃することができた。このまましばらく続けてみよう」
二人へ告げて床に転がっていたハツを拾いアイテムボックスへ放り込む。
うーん……。さすがに最初からレアアイテムが出るなんてことはないか。
その後、立て続けに十回の戦闘を行ったところ膠のドロップ数は四個。
セリーによるとこれはかなり多いらしく、レアドロップ率二倍の効果だろうとのことだった。
貫通のオリハルコン剣でレムゴーレムやランドドラゴンを狩れるようなら、ダマスカス鋼や竜革を手に入れるためにボスマラソンに挑んでみるのもいいだろう。
これで装備品についても目途が立ったな。
「それでは、MPを回復したらラフシュラブの方にいってみるか」
「はい! デュランダルなしでラフシュラブと戦うなんてワクワクしてきますね!」
すいません。全然ワクワクしないです……。
愛想笑いでやり過ごし、次の階層へと続くゲートを潜る。
今回も信頼と実績の背後からの強襲を選択だ。
オーバーホエルミング
ロートルトロールに近づき得物を振るいながら念じる。
ラッシュ
スラッシュ
しかし、雑魚敵だというのに一撃では仕留められない。
嘘だろ!? マジかよ!?
内心焦り散らかしながら二撃目を放つと、剣身が通り抜けたところで奴の体が実体を失った。
次だ!
スローモーションでロクサーヌへ枝を振るっている魔物へターゲットを移し攻撃を開始する。
当然のように一度目のオーバーホエルミング中に倒すことは出来ず二度目に突入となった。
しかし、それでも片が付かず再度念じる破目になる。
不安を覚えながらも剣を振るい続け、五度目のオーバーホエルミングでようやく奴のHPを削り切ることに成功した。
「ふぅ」
ようやく緊張の糸が緩み、口からため息が漏れる。
これは予想してたよりきついなぁ。
MPもかなり持っていかれたし、無補給ではあと二回といったところだろう。
「ご主人様! ご覧ください! 霊木の板です!」
必要な攻撃回数が想像以上に多かったため考え込んでいると、セリーから大きな声が上がる。
満面の笑みを浮かべている彼女が指さす方向を見たところ、ダークブラウンで綺麗な木目の板が床に転がっていた。
霊木の板
ほー。木材の良し悪しは分からないが何となく良い物な気がする。
いや、ただ単に事前情報があるせいでそう思っているだけかもしれないけどさ。
「一回目からレアアイテムが手に入るとは幸先が良いですね」
それを見ながらロクサーヌも嬉しそうにしていた。
「そうだな。では、二回目といこう」
「はい! 望むところです!」
尻尾をブンブン振っちゃって、まあ。
本当にボスの連戦が嬉しいんだなぁ。
何度かMP回復を挟みながら十匹のラフシュラブを狩ったところ、霊木の板は三枚手に入った。
セリーによると、これもかなり多いらしい。
デュランダルや毘盧帽もそうだが、ドラウプニルもやはりぶっ壊れ性能だ。
その後は普段通り二十階層でレベル上げを行い、探索者、遊び人、魔法使いのレベルが上がっていた。
探索者のレベルがあと2つ上がればレア食材狙いで料理人を付けたボス狩りが可能となる。
そして、賞金稼ぎのレベルは驚異の22! 近いうちに30に到達して生死不問も成功するだろう。
よっしゃ。明日からもがんばんべーや。
迷宮を脱出しドロップアイテムの売却と買い物を済ませて帰宅する。
今日も激しく二人と愛し合い心地良い疲労感を覚えながら眠りについた。
しかし、夜中に催して目が覚めてしまったためベッドを抜け出す。
すると、それに気が付いたロクサーヌも目を開く。
用足しだと伝えそのまま眠るように促した。
蝋燭の灯してある燭台を取り部屋を出る。
セリーが蝋燭を作ってくれるおかげで、贅沢にも一晩中火をつけっぱなしにできるのが本当にありがたい。
一階に下りトイレのドアを開けたところで鳥肌が立った。
オーバーホエルミング
気持ち悪さから思わずオーバーホエルミングを使用してしまう。
やばっ! ゴキブリじゃん! 何匹いるんだよ!
これどうすればいいんだ!? 殺虫剤もなければ、新聞紙も雑誌もないぞ!
えーっと、えーっと……。
あっ。そうだ!
焦りながらキャラクター再設定を開きMP回復速度二十倍と腕装備六を入れ替え、出現したヤールングレイプルを装備する。
そして、スローモーションで動くそいつらを次々と潰し便器に捨てていった。
あー。びっくりしたー。
長い長い死闘を制し、見える範囲から奴らの姿が消えたところでヤールングレイプルをポイントに戻す。
出現するたびに新しいものが出てくるボーナス装備だからこそ可能な荒業だ。
そういえば原作でもこんなエピソードがあったなぁ。
確かホウ酸団子的なやつを作っていたはずだ。うちでもゴキブリ対策をしないといけないわ。
用を済ませゴキブリの死骸と一緒に水で流し、手を洗って外へ出た。
廊下を歩きながら考える。
ゴキブリ相手にオーバーホエルミングとボーナス装備を使った者なんて前代未聞じゃなかろうか?
……どんだけビビりなんだか。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv46 英雄Lv40 魔法使いLv45 僧侶Lv15
装備 サンダル 身代わりのミサンガ
ロクサーヌ ♀ 16歳
戦士Lv23
装備 身代わりのミサンガ
セリー ♀ 16歳
鍛冶師Lv19
装備 身代わりのミサンガ
BP振分 残BP:4
キャラクター再設定:1
フォースジョブ:7
必要経験値二十分の一:63
詠唱省略:3
鑑定:1
ワープ:1
ジョブ設定:1
MP回復速度二十倍:63
所持金:2,563,549ナール
春の47日目