異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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147 相談

 

 

 

 

 

ボーデ

宮城

 

 

 

 

 

「アユム殿。申し訳ありませんでした。本当にいずれお礼をする予定ではあったのですが、いかんせんすぐにとはいかなかったもので」

「いえいえ。お気になさらず」

 

 廊下を歩きながらゴスラーがすまなそうに話し掛けてくる。

 

 まあ、帝国解放会への推薦を報酬とするつもりだったのなら、すぐってわけにはいかないよな。

 

「そう言っていただけると助かります。装備品の報酬については前回と同じように自由に選んでください」

 

 うーん……。でもなぁ。

 良さそうな物は前回で粗方回収済み。

 残っている物の中では竜燐の靴とプレートアーマー、それにスロット一つのオリハルコンの剣にスタッフ。このあたりとなるだろう。

 公爵家の武器庫から選ぶと考えた場合、正直微妙だ。

 いや、それでも十分だってことは分かってるんだけどさ。

 

 一縷の願いを込めて問いかけてみる。

 

「前回から装備品が増えていたりするのですか?」

「いえ。団員に貸し与えたため減りはしましたが、増えたということはありません」

 

 ですよねー。たった七日しか経っていませんものねー。

 

 しゃーない。ロクサーヌのモチベーションに関わるし、一つは竜燐の靴で決まりだな。

 もう一つはどれにするか……。

 

 うーん……。オリハルコンの剣かなぁ……。

 

 迷宮に行くためにハルツ公が装備していたのは激情のオリハルコン剣だ。

 もしかしたら家宝として、いかりのオリハルコン剣とか、固定で出したとんでもない逸品があるのかもしれないが、公爵である彼が迷宮探索で使っている武器なのだ。

 同じものを作って売却すればとんでもない値が付きそうだよな?

 

 

 

 竜燐の靴とオリハルコンの剣を選んで執務室に戻り公爵夫妻とともにすぐさまロビーへ移動すると、そこにはすでに男性二人、女性二人が待っていた。

 ハルツ公のパーティーメンバーなんだろうが、彼ら夫妻も含めるとイケメンと美女が三対三で、まるで芸能人の合コンのような組み合わせだ。

 

 ……なんか場違い感がハンパないなぁ。

 

 そして、ハルツ公の聖騎士を筆頭にカシアの魔法使い、それから騎士、巫女、冒険者に高レベルの探索者と隙のない布陣である。

 顔が良い上に有能だなんてしっとマスクに変身してしまいそうになるぞ。

 

 公爵が指示を出すと冒険者がパーティー申請を送り始める。

 

 おっと。こっちのパーティーを解散しておかなければ。

 

 パーティー申請を了承すると冒険者はそれをハルツ公に告げた。

 すると、せっかちな彼はすぐさまフィールドウォークを使うよう指示を出す。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

入口

 

 

 

 

 

 ゲートを通り抜けると薄暗い森の中だった。

 すぐにパーティーは解散され冒険者は再びフィールドウォークを開き一人で移動していく。

 

 辺りを見回すと、すぐ近くにある剥き出しの壁に迷宮の入口が重なっている。

 そして、その横に男が立っており、公爵はつかつかと彼に近づき話しかけた。

 

「四十一階層を突破したものは?」

「まだおりません」

 

 確かこの後すぐにゴスラーのパーティーが四十一階層を突破して、夏の途中に最上階である五十階層のボスを倒したはず。

 つまり、四十二階層から五十階層撃破までに八十日近くかかっているということだ。一階層あたりのペースとしては九日ほどになるのか……。

 いや、上に行くほど探索時間が長くなるだろうから最上階はかなりの日数をかけただろう。

 

 やっぱり俺たちのペースをもってすれば横取りできそうだよな?

 

 ……ん? いやいや。いかん、いかん。完全にロクサーヌに影響されている。

 安全第一。いのちだいじに。我がパーティーの方針を転換するわけにはいかない。

 

 ……でも、ワンチャン狙いで、どこかのパーティーが五十階層に達したら俺たちもそこへ行き、ロクサーヌの鼻で魔物を避けながら待機部屋を探し出す。

 そして、他の奴らに先んじて最上階のボスを倒すという手もあるんじゃないのか?

 

 原作では最上階のボスについての情報が少ない。

 分かっていることといえば攻撃を受けてしまえば装備品を破壊される可能性があるということだけだ。

 その特殊攻撃を持った通常のボスが出るのか、それとも通常の規則とは異なる特別なボスが出るのか、今の段階ではよく分からない。

 だが、オーバーホエルミングとデュランダル。それに、ダブルアタックがあればやってやれないことはない気がする。

 それに、もしかしたら遊び人にラッシュかスラッシュをつけてトリプルアタックを発動することも可能かもしれない。

 これについてもどこかのタイミングで試してみないとな。

 

 ……迷宮討伐についてはそのときの状況によって考えよう。

 

 

 

「公爵閣下。ご案内いただきありがとうございました。それでは、私はこれで失礼いたします」

「うむ。我が領の迷宮探索に協力してもらえると助かる」

「アユム様。よろしくお願いしますね」

 

 ずるいわー。美人が笑顔で頼むとかほぼ強制みたいなものじゃん。ほんとずるいわー。

 

 木の幹にワープゲートを開き、それに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅に戻り靴を履き替えていたところ、廊下を走る音が聞こえてくる。

 

「ご主人様! 何かあったのですか!」

 

 目の前まで来るとロクサーヌは大きな声を上げ、セリーも不安そうにこちらを見つめていた。

 

 かなり時間が掛かった上に途中でパーティーを解散したもんなぁ。

 彼女たちが不安に思うのもしょうがないか。

 

 パーティー申請を送りながら答えた。

 

「特に問題はないから大丈夫だよ。でも、込み入った話になるし二人に相談したいこともあるから、詳しいことは食事の後でね」

「ご主人様に何もなくて安心しました」

 

 そう言うとロクサーヌはホッとしたように微笑みを浮かべる。

 

「そうですね。それに込み入った話というのも気になります」

 

 セリーは好奇心で瞳をキラキラさせながらこちらを見ていた。

 まあ、期待してくださいな。

 

 

 

 昨晩の残りの一晩寝かせたボルシチは味に深みが出ていてものすごく美味い。

 白身魚のムニエルやサラダも彼女たちが作ってくれたことこそが最高のスパイスになっており、幸せの味が口いっぱいに広がってお腹も心も大満足だ。

 

 食べ終わって歯磨きを済ませると、二人が洗い物をしている間に日本から持ち込んだリュックを部屋から取り、リビングへ移動する。

 

 ソファーに腰かけ待っていたところ、程なくして彼女たちもやって来た。

 ロクサーヌは正面のソファーに腰を下ろし、セリーは俺の脚の間にちょこんと腰掛ける。

 その体をそっと抱きしめながら話を始めることにした。

 

「それじゃあボーデの宮城で起こったことを話していこう」

「はい。お願いします」

「どんなことが起こったんでしょう。とても楽しみです」

 

 二人はワクワクしたような表情でこちらを見ている。

 本当に可愛い娘たちだなぁ。

 

「まず、いつものように移動したら城内がなんだか落ち着かない様子だったんだ」

「そうなのですか?」

 

 ロクサーヌの問いかけに頷きを返して話を続ける。

 

「うん。鏡の売却が済んだところでハルツ公より領内に三つ目の迷宮が発生したと告げられ、俺たちにそこへ入ってほしいと頼まれた」

 

 この辺は原作知識を伝えたときに端折ったから、ちゃんと伝えないと。

 

「なるほど。そういうことですか」

「当然、そう考えるでしょうね」

 

 二人はそれを聞いて納得したように頷いている。

 まあ、この世界で生きているなら迷宮の活性化とその対策については常識だろうしな。

 

「新しくボーデに発生した迷宮と災害救助で訪れたターレにある迷宮はそこに行って住人に場所を尋ねればいいので、公爵が入っているハルバーの迷宮へ同行することになってね。カシア夫人もパーティーに入って戦っているらしくて、準備を整えて彼女も部屋に来たんだ」

「はい。貴族が迷宮に入るのは当然のことです」

 

 ロクサーヌがそう言うとセリーも当たり前といった感じで頷いていた。

 まあ、そうだな。だからこそそれを怠ったセルマー伯は討たれ、ルティナが奴隷に落とされることになる。

 

 さて、この先はハルツ公の名誉に関わるため結果だけをサクッと伝えよう。

 

「その際に鏡の仕入を公爵家で行いたいので約束の十五枚で俺からの買取は終了したいこと。それから、ペルマスクの鏡にタルエムで枠を作るというアイデアに対する報酬をいただけることになってね」

 

 ロクサーヌから声が上がる。

 

「報酬ですか! まさか!」

 

 そして、セリーは振り向き期待に輝く瞳でこちらを見上げている。

 これめちゃくちゃ可愛いなぁ。

 

 彼女のお腹をポンポンと軽く叩き続きを口にした。

 

「そう。二人が期待している通り、今回も武器庫から好きな装備品を二ついただけることになった」

「さすがご主人様! 本当にすごいです!」

「何を手に入れたのですか!」

 

 すごい食いつきだ。めちゃくちゃ期待しているみたいだぞ。

 

 セリーに少し離れてもらい、アイテムボックスから竜燐の靴を取り出す。

 

「これはスロットが三つ付いた竜燐の靴。今はコボルトのスキル結晶がないから無理だけど、いずれ鯉とカエルをコボルトと一緒に融合してロクサーヌに使ってもらうつもりだ」

 

 そう告げると弾丸のような勢いでこちらへ飛びつき、俺の体をぎゅっと抱きしめた。

 

「ご主人様! 本当にありがとうございます!」

 

 まあまあ。いいってことよ。

 

 彼女の背中を撫でていると、逆の腕に温かく柔らかな感触が。

 そちらを見遣ると、セリーが不満そうな顔でこちらを見上げている。

 

 すまん。今は君の番だったよな。

 

 

 

 ロクサーヌが落ち着いたところでセリーが口を開いた。

 

「あの、竜燐の靴も経験が足りない場合、重たく感じるはずなのですが……」

「えっ! そうなのですか!?」

 

 その言葉を聞いたロクサーヌから声が上がる。

 

 マジで? そのレベルの装備品ってこと?

 

「はい。ミセリコルデが扱えないとなると難しいと思います」

「そう……、ですか……」

 

 彼女はその言葉で落ち込んでしまったが、一縷の望みにかけているようで玄関へ移動し確認を行った。

 しかし、セリーの言う通りかなりの重量が掛かっているような感じがしたらしく、諦めて竜燐の靴を脱ぐ。

 そして、それをこちらに差し出す。

 

「私が使いこなせるようになるまではご主人様が使うべきだと思います。試していただけますか?」

 

 うん? え? あっ。そうか。

 別に専用装備ってわけじゃないんだから俺が履いてもいいもんな。

 

「分かった。それじゃあ試してみるよ」

 

 竜燐の靴を受け取りサンダルと履き替える。

 多少の重さを感じないわけではないが、バッシュを履いたくらいのものだ。

 ……いや。バッシュが重かったのは俺が若い頃の話か。

 

「うん。特に問題はなさそうだ。ありがとう。それじゃあロクサーヌが装備できるようになるまでは使わせてもらうね」

「はい。ご主人様の防御力が上がるのは良いことです」

 

 感謝を伝えるとロクサーヌは笑顔で頷いた。

 

 

 

 リビングに戻ってソファーへ腰を下ろし、今度はオリハルコンの剣を取り出す。

 

「また、オリハルコンの剣……」

 

 すると、セリーから少しがっかりしたような声が漏れ、ロクサーヌも残念そうな顔をしていた。

 これはすごい武器のはずなのに、俺と共にいることでこの娘たちの感覚も順調に壊れてきてんなぁ。

 

「他に目ぼしいものがなかったからね。でもまあ、一応考えはある」

「考えですか?」

 

 ロクサーヌの言葉に頷きながら答える。

 

「そう。迷宮探索に行くためハルツ公は装備品を身に着けていたんだけど、彼の武器が激情のオリハルコン剣だったんだ。俺たちはそれと同じものを簡単に作れる」

「なるほど。公爵ほどの地位にある者が装備している武器となると、相当な額で売れるでしょうね」

 

 セリーはそう言いながら悪い笑顔を浮かべていた。

 そして、理解したロクサーヌの顔にも悪い笑みが。

 

 

 

 装備品をアイテムボックスにしまい、再びセリーを抱きしめながら話を再開する。

 

「今後はハルツ公領の三つの迷宮にも入ることになるんだけど、そこでは色々な出来事が起こるんだ。それについて二人に相談したい」

 

 彼女たちが頷いたのを確認し、リュックから取り出した本とパイプファイルを見ながらこれから起こる重要な出来事を確認していく。

 

 春の五十二日目にターレの迷宮十三階層で盗賊に襲撃されること。五十五日目にミリアを購入すること。六十日目にハルバーの迷宮十二階層でハインツ一味を討伐し、決意の指輪を手に入れること。六十五日目にハインツ一味のインテリジェンスカードをハルツ公に提出し、決意の指輪を彼に渡すこと。六十八日目にセルマー伯と出会うこと。七十五日目にボーデの迷宮十二階層でバラダム家と遭遇し決闘になることを彼女たちに告げる。

 

 ハインツ一味については二日前から同じ場所にいたとのことだったので、五十八日目には仕留めることが可能なわけか。

 

 それに、バラダム家に出会うのはハインツ一味のインテリジェンスカードを提出した後なんだな。

 彼らの目的は狂犬のシモンを倒し、サボーが狼人族で最強だと証明すること。

 原作では等量交換を使い爆殺してしまったせいで奴のカードは回収できなかった。

 つまり、シモンのインテリジェンスカードを提出しなければ、手配書が撤回されることもない。

 俺たちも奴の分だけは手元に残しておこう。

 

 

 

「そうですか……。もう少しで彼女との因縁に決着が付くのですね……」

 

 ロクサーヌの漏らした言葉で思索が打ち切られる。

 彼女の方を見ると顔には剣呑な色が宿っていた。

 

「そうだね。君の手で復讐を遂げるといい」

「はい。ご主人様、お気遣いありがとうございます」

 

 彼女は返事をすると微笑みを浮かべる。

 

 ……正直これが正しいことなのかはよく分からない。

 ロクサーヌがされた理不尽な行為が法による裁きを受けることはないだろう。

 というか、彼女の受けた仕打ちは日本ですら犯罪となるかは微妙だ。

 しかし、この世界は決闘による復讐が正当な行いだと認められている。

 それなら、本人の気持ち次第だがそれを遂げた方が気持ちは晴れるんじゃないだろうか。

 

 まあ、俺の勝手な考えなんだけどさ。

 

 

 

 気を取り直して話を続ける。

 

「ターレの迷宮十三階層とハルバーの迷宮十二階層は毎日確認することにしたい。ロクサーヌの鼻で不自然な者がいないか確認して、発見次第強襲して仕留める」

「お任せください! ご主人様なら盗賊ごときに後れを取ることはないでしょう!」

 

 おいおい。盗賊狩りにすげー前向きだぞ。

 やはり命を奪うことに対する葛藤というのが全く見えない。本当に頼もしいわー。

 さっき考えたことは余計な気を回し過ぎているだけなのかね?

 

 それを聞いていたセリーが口を開く。

 

「十三階層に十二階層。出来てからそれほど経っておらず人の出入りが多いわけでなく、それでいて全く入らないわけでもない迷宮……。なるほど。盗賊が狙うにはうってつけですね」

 

 彼女の言葉に頷きを返し続きを口にする。

 

「セリーの言う通りだと思うよ。まあ、それは一旦置いといて二人に相談したいことは、どこの迷宮に入るべきかということなんだ」

 

 すると、彼女たちは顔を見合わせ頷き合うと、セリーが振り返りながらこちらを見上げ話し出した。

 

「そのことについて少し前からロクサーヌさんと話していたのですが、クーラタルの迷宮二十一階層のケトルマーメイドと二十二階層のクラムシェルはどちらも土属性が弱点です。ご主人様のレベルもだいぶ上がりましたので、一回分の連続魔法で倒せるようになっているのではないでしょうか?」

 

 彼女が話している間、ロクサーヌは期待で瞳をキラキラ輝かせながらこちらを見ている。

 

 ……なるほど。確かにその可能性はあるだろう。

 もし可能だった場合、そちらの方が適切な狩場になっているはずだ。

 今は彼女たちに伝えるわけにはいかないが、チャンスがあるならゴスラーに先んじてハルバーの迷宮を攻略したい。

 そのためにはレベルを上げる必要があるので、これはありだろう。

 それに、もう少しで冒険者と魔道士が手に入る。

 冒険者になればインテリジェンスカードの確認を恐れる必要はなくなるし、魔道士になれば魔法の威力が大幅に上がる。

 魔道士のレベルが上がるまでは補助輪的に魔法使いも付けたままにしておき、トリプルスペルを使用すれば、かなり階層を上げることができるかもしれない。

 それに、雷魔法を使用することで魔物の弱点や耐性を気にする必要もなくなるため、魔物の組み合わせによって迷宮を変えることもなくなる。

 そしたら、ハルツ公領の迷宮でも問題なくなるだろう。

 

 ……公爵には悪いがしばらくはクーラタルの迷宮でレベル上げを行おう。

 公爵領の迷宮を本格的に探索するのは魔道士を得た後だ。

 

 もちろん、無理なら即転進するつもりだから彼女たちにはダマでいくけどさ。

 

「分かった。この後、ハルツ公領の迷宮を三箇所回ったら、クーラタルの迷宮の階層上げに挑もう」

 

 そう言った瞬間、ロクサーヌとセリーから歓声が上がるのだった。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv47 英雄Lv41 遊び人Lv35 魔法使いLv46

装備 サンダル 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:5

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

鑑定:1

ワープ:1

ジョブ設定:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:2,611,887ナール

 

春の50日目

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