「ご主人様、体を拭いていただきありがとうございます」
「俺も拭いてもらったんだからお互い様だ。それに、ロクサーヌの美しい体に触れることができて嬉しかった」
俺の言葉にロクサーヌは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「それでは下着を履くか」
「はい」
いつまでもモノをブラブラさせてるわけにはいかない。それぞれの下着を出して履いていく。
うーん……。トランクス派だった俺にはこの締め付けが窮屈に感じる。しかも、あまり伸縮性もない上に紐の結び目が肌に当たるのがどうにも気になる。
まあ、これしかない以上、慣れるしかないのだが。
「それじゃあ髪を洗ってみよう。ロクサーヌ、頭のリボンを外したらベッドへ仰向けに寝て頭をこちらの方へ出してもらえるか?」
「あの、ご主人様を先にお洗いした方がいいのではないですか?」
「いや。まずは試してみよう。上手くいったら同じように俺の頭も洗ってくれ」
「はい。お任せください」
ベッドのそばまで椅子を持ってきてその上にタオルを敷き、先ほど使わなかった綺麗な方のたらいを載せる。
その間に彼女はベッドへ仰向けになり側面から頭を出す。
恥ずかしかったのかロクサーヌは体に毛布を掛けて体を隠していた。
だが、その大きなふくらみは毛布越しでもその魅力を存分に主張しており、俺の劣情を誘ってやまない。
あのすごいふくらみに触ることができたのか。本当に信じられないくらいの幸運を掴み取ったんだな。
ロクサーヌの頭をたらいの方に寄せて縁へ首を載せる。
「それじゃあ洗っていくが、もし痛かったり苦しかったりしたらすぐに言ってくれよ?」
「はい。よろしくお願いします」
彼女の髪をたらいに浸しゆっくりと梳いていき、そのまま頭皮とつながっている柔らかく手触りのいいイヌミミも痛みがないように揉み洗う。
「ロクサーヌ、痛くないか?」
「はい。大丈夫です。ご主人様、すごく気持ちがいいです」
よかった。安心してこのまま続けよう。
髪とイヌミミを満遍なく洗ったところで頭を上げてもらい軽く水を切る。
それが終わると使っていないタオルを頭にあてながら体を起こしてもらう。
そして、ベッドに座っているロクサーヌの頭をゆっくりと拭いていった。
この世界にドライヤーがないのは不味いよなぁ。
三十代半ばで頭頂部の状態に気が付きネットで色々調べたことがある。
その時に知ったのだがドライヤーを使わずにタオルで拭いただけの自然乾燥は髪や頭皮に深刻なダメージをあたえ、抜け毛や薄毛の原因になるとのことだった。
それまでドライヤーを一切使用していなかった俺には衝撃的で、それからは使うように心がけたものの、時すでに遅し。
進行を食い止めることは出来なかった。
今後、どうすればいいんだ……。
……あっ。待てよ? 髪や頭皮にダメージがあるんだよな? 僧侶の手当てを使うのはどうだ?
どうせ駄目で元々だ。使ったことでマイナスはないだろうし気休めだとしてもやっておこう。
もしかしたらこれは二十年後の人生において重大な分岐点なのかもしれないのだから……。
取り留めのないことを考えながらロクサーヌの頭を拭き終えた。
「ご主人様、ありがとうございます。とてもさっぱりしました。今度は私がご主人様の頭を洗わせていただきますね」
「ありがとう、ロクサーヌ。じゃあ頼むな」
彼女がベッドから立ち上がると今度は俺がベッドへ仰向けになりたらいの縁に首を載せる。
「それでは頭をお洗いしますね」
そう言うと俺の髪の毛を洗い出す。
その動きに合わせて大きくて美しいふくらみがゆさゆさと揺れ出した。
ああ。本当に綺麗だ。
すごい。これはやはりすごすぎる。
俺が望めば毎日このすごいものに触れることができるのか。
「あの……。ご主人様……。その、また大きくなっています。もう一度お慰めしますか?」
いやー! 言わないでー! 恥ずかしい!
しょうがないじゃん。綺麗なんだもん。エロいんだもん。
「すまない。ロクサーヌのあまりの美しさにまたこうなってしまった。この後は盗賊捜索に出るから今日のところはやめておこう。でも、その気持ちはとても嬉しい。ありがとうな」
「いいえ。ご主人様に喜んでいただくのは私の喜びです。これからはご主人様のこちらにも満足していただけるよう頑張りますね」
この娘さんはなんてことを言ってくれるんだ!
あまりの嬉しさで頭がどうかしてしまうじゃないか。
「ご主人様、拭き終わりました」
「ありがとう。それじゃあ話をしようか」
「あの、洗濯をしますので少々お待ちいただけますか?」
「ああ。それがあったか。すまないがよろしく頼む」
「はい。お任せください」
ロクサーヌは椅子に載っていたたらいを壁側に移動させるとそこで洗濯を始める。
今のうちに僧侶をつけて手当てをかけておこう。
キャラクター再設定を開きフィフスジョブとジョブ設定にチェックを入れ、現れたフィフスジョブに僧侶を設定する。
よし。今後は頭を洗い終わった後と髪が乾いた後に手当てをかけることを習慣付けよう。
手当て
髪と頭皮をイメージしながら念じるとMPが抜ける感覚があった。
本当に髪と頭皮に効いているのかは分からないがやらないよりはやった方がいいに決まっている。
ついでだ。俺だけじゃなくロクサーヌにもかけておくか。
彼女だって髪が綺麗になれば嬉しいはずだからな。
手当て
同じように念じるとこちらも確かにMPが抜ける感覚があった。
オッケー。これで彼女も美しい髪を保つことだろう。
……どうでもいいが手当てを使ったのはこれが初だな。
まさか、戦闘での負傷を癒すのではなく、抜け毛予防に回復スキルを使うことになるなんて思いもよらなかった。
まあいいさ。これでこそ俺らしいってもんだ。
ロクサーヌの洗濯はまだ続いている。
時間があるうちに荷物の整理をしておくか。
リュックを開けて強壮丸十個をアイテムボックスへ移す。
そして、赤魔結晶を一つと黒魔結晶四つも同じくアイテムボックスに移した。当たり前だが赤魔結晶は別アイテム扱いだな。
あ。そうだ。
「ロクサーヌ」
「はい。なんでしょう」
「君に渡してある魔結晶だがこれについては俺に返す必要はないからな」
「え! いけませんご主人様!」
よほど驚いたのかロクサーヌから大きな声が上がる。
「大丈夫。頑張ってくれているロクサーヌへの褒美のようなものだ。売り時も自由に決めていいし、売却金も好きに使ってくれて構わない」
「本当によろしいのですか?」
「ああ。もちろん」
「ご主人様、ありがとうございます。本当にありがとうございます」
ロクサーヌは少し目を潤ませながら頭を下げて一頻り感謝を伝え洗濯を再開した。
しかし、そんなに感動するほどのことかね?
魔物にとどめを刺すのはほとんど俺になるはず。
なので、彼女が倒す数は多めに見積もっても一日十匹くらいのものだろう。だとすると年間で三千六百五十ナール。ボーナスというには少なすぎる額だ。
ああ。でもこれは日本人である俺の感覚か。
奴隷は無賃労働が当たり前だということを考えると、彼女の喜びようにも納得がいく。
それにしても、最初は断ろうとしていたしロクサーヌは相当真面目だよな。
原作にいた自分の美貌を鼻に掛けて主人を選り好みしていた奴隷たち。それから、アランが言っていた主人を手玉に取る奴隷の存在。
そういった者たちに比べ、これほどの美貌を持ちながら真剣に主人に仕えようとする彼女は本当に得難い人材だ。
いや。ロクサーヌだけではない。
セリーもミリアもベスタもどこに出しても恥ずかしくないような美人ぞろいなのに、みんな真面目で主人を裏切ろうとする様子など皆無だった。
ウェブ版のルティナは……。
まあ、うん。ロクサーヌとセリーで行った説得のおかげで改心したことだろう。
やはりパーティーメンバーとしては彼女たち以外考えられない。
正直、ロクサーヌと二人でのんびり生活していくのも悪くない。というか幸せそのものだ。
しかし、誰にも害されない力を求めるならパーティーメンバーが必要となる。
それも、能力があって絶対に裏切らない仲間が。
セリーは鍛冶師として装備品を作成してもらう。それに、パーティーの頭脳としての働きも期待したい。
ミリアは猫人族の目を活かし暗殺者として魔物を石化するという唯一無二の役割がある。
ベスタは竜騎士の効果で圧倒的な防御性能をパーティーにもたらす上に、本人もタンクとして前衛を支えてくれる得難い存在だ。
ルティナは……。
まあ、うん。俺の魔法に対するカモフラージュにもなるし、いずれは魔法自体も強力になっていくだろう。
それに、成り上がるつもりなら叙爵後の立ち居振る舞いを学んだり諸侯会議の際には役に立ってくれるんじゃないかな。たぶん、きっと、いつの日か。
それに、俺はロクサーヌが一番好きだが『異世界迷宮でハーレムを』という作品を彩る彼女たちのことだって好きだったのだ。
ロクサーヌに自分以外とはしないでほしいと言われれば手を出すことはないだろうし、彼女一人と他の四人の命がかかっているようなことがあった場合はノータイムでロクサーヌの方を救ってしまうだろう。
それでも、思い入れのある彼女たちが他の主人に買われ、そこで酷い扱いを受けているかもしれないと想像しながら暮らすのは精神衛生上よろしくない。
つらつらと思索に耽っていると洗濯を終えてロクサーヌが近づいてきた。
「それじゃあ昼間にあった件について話をするか。絶対に人に聞かれるわけにはいかないからベッドに入り顔を近づけて小声で話そう」
「はい。ご主人様、お願いします」
ベッドへ入り毛布を掛けてからロクサーヌを抱きしめる。
彼女の胸が俺の胸にあたってむにゅんと形を変えた。
……今は気にしている場合じゃない。
「今日はそれほど時間があるわけじゃないから俺が持つ能力について話していくことにする」
「はい」
「まずはどこから話すべきか……。そうだな、この世界では探索者にしかレベルがないと思われているが他のジョブにもレベルは存在している」
「えっ。そうなのですか?」
最初の説明の段階で驚いたような声が上がる。
「うむ。村人にも農夫にも、そして獣戦士にだって例外なく存在している。ただ、その確認ができないだけなのだ。そしてこのレベルが1上がるごとに心身が強くなっていく他に、ボーナスポイントというものが1ポイント付与される」
「ボーナスポイント?」
「ああ。ボーナスポイントだ。レベルアップで付与されたそのポイントは徐々に蓄積されていく」
一度話を切りロクサーヌの顔を見てみる。
うん。問題なさそうだな。ちゃんとついてきている。
「ロクサーヌはギルド神殿で行われているジョブの固定については知っているか?」
「はい。固定の祝福を受けると他のジョブにつくことはできなくなる代わりに強さを得られ、ときにはスキルのついた装備品を賜ることもあるのですよね?」
「そうだな。これは推測になるのだが、ギルド神殿で行われている固定はレベルアップで付与されて蓄積していたボーナスポイントを腕力、体力、知力、精神、器用、敏捷のいずれかに振り分けているのではないかな。これが強くなることの理由だと思う」
「そのようなことが……」
「そして、それらに振り分けられなかったポイントは装備品として出現することもあるのだろう」
「あっ。もしかして、ご主人様の使っていたすごい剣は」
おっ。気づいたか。彼女の常識外の話をしているはずなのに察しがいい。
「ロクサーヌは賢いな。俺が使っていたあの剣はデュランダルというのだが、ボーナスポイントで出したものだったのだ。アイテムボックスにしまっているわけではなく、ボーナスポイントを振り分けその都度新品を出しているため手入れの必要もない」
「そうだったのですね」
ロクサーヌは感心したように頷いている。
「俺の持つ特別な能力とはこのボーナスポイントの自由な振り分けだ。そして、ボーナスポイントで行えることはこの二つだけではない。他にもボーナス魔法やボーナススキルといった特別な魔法やスキルが使える」
「そんなことまで。ご主人様、すごいです」
テンションが上がっている様子が可愛らしいわぁ。
彼女の愛らしさににやけそうになるのをグッと堪えて続きを話す。
「夕方にベイルの冒険者ギルドへ移動魔法で戻ってきただろう? あれはフィールドウォークではなくワープというボーナス魔法だ。このワープにはフィールドウォークのような制限がなく、通常移動できないはずの場所にも移動できてしまう」
それを聞いて驚きの声が上がった。
「えっ。遮蔽セメントが使われている場所でもですか?」
「ああ。遮蔽セメントだけではなく迷宮の内外問わず移動できる。魔物との戦闘中だろうとお構いなしだ。おそらく待機部屋への移動やボス部屋からの移動も可能だろう」
俺の返答にテンションが一気に落ちて不安そうな言葉が漏れる。
「それはとんでもないことなのでは……」
「そうだろうな。悪用しようと思えばいくらでも出来てしまう。だから、このことは絶対に人に知られるわけにはいかない。ロクサーヌの胸に秘めておいてもらえると助かる」
「はい。ご主人様の秘密を洩らすようなことは絶対にいたしません」
ロクサーヌは真剣な表情で俺の目を見てそう言った。
まあ、その辺については一切疑っていない。
「他にもジョブを自由に付け替えたり、複数のジョブを持つことが可能であったり、魔物を倒した時に得られる経験を最大二十倍にしたり、魔結晶に貯まる魔力を最大六十四倍にするなど様々な恩恵をもたらす」
告げられたことがあまりにも衝撃的だったのだろう。
しばらく沈黙してから彼女は口を開いた。
「……ご主人様、すごすぎます」
すごいか……。
これからロクサーヌとしっかり向かい合って過ごすためには絶対に言っておかなくてはならないことがある。
これを言うのは怖い。しかし、隠したままではロクサーヌと共に過ごしていても後ろめたさを感じ続けるだろう。
「ロクサーヌ……。何もすごくなんてない。この能力はある日突然与えられたもので俺は何者かに与えられた能力を使っているに過ぎない。本当の俺は弱く、何の能力もない男だ」
ロクサーヌにがっかりされただろうか?
しかし、言わずにはいられなかった。
自分を良く見せようと努力をしてそれを貫き通すのも一つのかっこいい生き様だと思う。
しかし、俺のこれは全く違う。
ある日突然、何の努力もなく何者かに与えられたものを自分の力だと誇るのはやはり何か違うのだ。
いや、原作のミチオを否定しているわけではない。こんなこと気にせず生きていける方が賢いし人としてのタフさがある。
やはり俺はこの年になっても妙なところだけ潔癖で、精神的にどこか未熟な大人になりきれていない人間だ。
外見だけではなくそういうところも異性と付き合うことが出来なかった理由なのだろう。
ロクサーヌは今どんな表情をしているのだろうか? 顔を見るのが怖い。
「ご主人様、それは違います」
とても優しい声が耳朶に触れた。
「人はそれぞれ色々な力を持っています。鍛錬を積んで獲得した力。迷宮に入り魔物を倒して得た力。生まれながらにして与えられた能力。生まれた家の権力。そういったものを全て含めてその人の力だと思うのです」
「ロクサーヌ……」
「私は以前、ある女性と戦いました。そして、その結果は引き分けでした」
バラダム家の女のことだろうか?
「相手の攻撃は私に当たらず、私の攻撃は彼女に通じることはありませんでした。その女性は勢いのある大きな家の娘で、幼いころから探索者のパーティーに入り経験を共有していたのです」
ロクサーヌは言葉を止めると俺の目を見つめた。
そのまま見つめ合いしばらくしてから続きを口にする。
「ご主人様は家の力を使って強くなった彼女を卑怯だと責めますか? それとも生まれ持った能力でそんな彼女と渡り合った私の方を狡いと罵りますか?」
「そんなことはない。どちらも自分の持てる力を使っているだけだ。だが、俺は……」
「同じです。ご主人様の能力も何も変わりません。それに、出会ってからずっと私に優しく接してくださったのはその能力が行ったことではなく、私の大切なご主人様がそのお心でしてくださったことです。どんなことがあっても私がご主人様のことをお守りしますのでどうかご安心ください」
そう言うとロクサーヌは俺の頭を抱きしめ胸元に導いてゆっくり撫で始めた。
ヤバい。涙が出そうだ。
こんなに人に優しくしてもらったのはいつ以来だろう。
思わずロクサーヌにしがみついてしまう。
彼女は抱きついた俺の頭をあやすように優しく撫で続けてくれた。
「ありがとう、ロクサーヌ。泣き言を吐いてすまなかったな」
「いいえ。ご主人様の心と体は何があっても私がお守りします」
本当に良い娘すぎる。絶対にこの娘を失うわけにはいかない。
この能力の源泉がなんであろうと関係ない。これを使って力をつけてやる。
この世界で何者にもロクサーヌを奪われることのない力を。
「本当にありがとう」
「こちらこそ重大な秘密を打ち明けていただきありがとうございます」
「他にも話しておきたいことがあるがとても長い話になるのでな。おちついて時間が取れたときにまた改めて話をしよう」
「はい。よろしくお願いします」
「それじゃあ盗賊捜索まで仮眠を取るか」
カンテラの火を吹き消しお互いに抱きしめ合いながら眠りに落ちていった。
田川 歩 男 18歳
魔法使いLv18 英雄Lv16 探索者Lv17 戦士Lv11 僧侶Lv4
BP振分 残BP:0
キャラクター再設定:1
フィフスジョブ:15
鑑定:1
必要経験値十分の一:31
詠唱省略:3
ワープ:1
MP回復速度二十倍:63
ジョブ設定:1
所持金:20,726ナール
春の2日目