異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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155 伝授

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮

二十一階層

 

 

 

 

 

 待機部屋を目指してひたすら歩き続け、立ちふさがる魔物は鎧袖一触で片付けていく。

 もう何度目なのか分からなくなってしまったが、小部屋に入ったところでロクサーヌから声が掛かった。

 

「ご主人様、この先が待機部屋です。どうやら誰もいないようですね」

 

 ようやく待機部屋か……。

 今回はデュランダルを使うためMPを回復する必要はないな。

 

「よし。それじゃあ、入るとしよう」

 

 部屋の奥へ進むと音を立てて壁が下がっていく。

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮二十一階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

 待機部屋に入ったところでレベルの確認を行うと、俺たち三人は上がっていなかったものの、ほんの数時間でミリアのレベルがとんでもないことになっていた。

 

ミリア ♀ 15歳

戦士Lv15

装備 強権のレイピア ダマスカス鋼の盾 耐風のダマスカス鋼額金 頑丈のサーコート 竜革のグローブ 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

 えっぐ。これはえぐいわ。

 

 今回は狩りが目的ではなく、階層を上げるために魔物を避けつつ先を急いだというのにこの成果。

 二十一階層の魔物を獲得経験値二十倍で狩るとこんなことになるんだなぁ。

 

 しかし、ミリアにレベルを伝えるのはやめておこう。

 通訳を介した説明では時間がかかるだろうし、話を理解するのも難しい。

 それに明日にはベイルの商館に預けることになるのだ。余計な情報は与えない方がいいだろう。

 まあ、今更感があるけどさ。

 

 彼女がブラヒム語を覚えた後には色々な話をしなければいけないな……。

 

 

 

 思索を打ち切ってブリーフィングを行うことにする。

 

「セリー、二十一階層のボスについて教えてくれ」

「かしこまりました」

 

 彼女は一つ頷き説明を始めた。

 

「ケトルマーメイドのボスはボトルマーメイドで、攻撃手段は頭突きや嚙みつき、他にも両手を振り回したり、殴りかかってくることもあります。いずれの攻撃も毒を受ける可能性があるので注意してください」

 

 手を使うとなるとボトルマーメイドは人面魚ではなく、人魚のフォルムということだ。

 まあ、原作によると顔はお察しらしいが。

 

「その他にケトルマーメイドと同じく水魔法や、特殊攻撃として全体魔法も使ってきます。常に攻撃を当て続け、発動させないようにしましょう」

 

 オッケー。オーバーホエルミングを用いて攻撃を入れ続けてやるさ。

 

 

 

 ロクサーヌが魔物の情報とボス戦でとるべき行動をミリアへ説明している間に、ボーナスポイントの振り分けを行う。

 獲得経験値二十倍を外してジョブ設定を付け、サードジョブとフォースジョブを戦士と剣士に入れ替えておく。

 さらに、ジョブ設定を解除して武器六にポイントを振り、出現したデュランダルを手に取った。

 

 ミリアへの情報共有が済んだところで三人に声を掛ける。

 

「では、行こう」

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮二十一階層

ボス部屋

 

 

 

 

 

 ボス部屋に入りフロア中央に煙があふれた瞬間、各々がセオリーに従い動き出す。

 ロクサーヌとセリーは魔物の気を引くために正面から中央目指して駆け出し、俺は背後を突くため回り込みながら走る。

 ミリアはというと今回は戦闘に参加しないため、魔物の正面に立たないように壁際を移動していた。

 

 そして、フロア中央に発生していた煙が晴れる。

 

ボトルマーメイドLv21

ケトルマーメイドLv21

 

 現れたのは人魚と人面魚の組み合わせだ。

 

オーバーホエルミング

 

 ボーナスタイムを作り出し、ケトルマーメイドとの距離を一気に詰めてダブルアタックを叩き込む。

 その一撃で体を霧に変えたため、ターゲットを変えてロクサーヌにあしらわれているボトルマーメイドの側面から攻撃を開始するとその姿が目に入った。

 

 上半身は確かに人型、もっというと胸が膨らんでおり女性らしいフォルムをしている。

 しかし、むき出しになっているそこには乳首や乳輪といったものはない。どうやら乳首券は発行されていないようだ。

 ワインボトルのように尖った頭は乱れた髪で覆われており、そこから覗く顔にはこの世全てを恨んでいるような表情が浮かんでいた。

 

 それを目にした瞬間、背筋が凍る。

 

 こっわ! マジで怖いって! なまじ顔が人っぽいだけにリアリティーのある怖さなんだよ! 夢に出てくるわ!

 

 恐怖心を抑え込み、立て続けにラッシュとスラッシュを乗せた攻撃を叩き込むが、やはり二十一階層のボスともなるとHPも高く、一度のオーバーホエルミングでは倒すことができそうもない。

 無理をせず奴のそばから離脱するとそこでボーナスタイムが終了してしまった。

 

 強力な攻撃を何度も入れたため俺の方にヘイトが移ってしまったのだろう。ボトルマーメイドがこちらへ振り向こうとしたが、我らの戦女神がそんなことを許すはずがなく、立て続けに攻撃を加えヘイトを剥がす。

 

 超至近距離から繰り出される攻撃をロクサーヌが捌いている間にリキャストタイムが明けたため、再びオーバーホエルミングを使用する。

 

 さあ、第二ラウンド開始だ!

 

 

 

 再びダブルアタックを連発していると奴が実体を失い、オーバーホエルミングが終了すると空気に溶けるように消えていった。

 

 よっしゃ! 圧勝、完勝、一等賞! 全然問題なかったな。

 

 勝利に酔いしれていると大声を上げながらロクサーヌとセリーが駆け寄ってくる。

 

「さすがご主人様です! 二十一階層のボスも全く相手になりませんでした!」

「本当にすごいです! これならデュランダルではなく貫通のオリハルコン剣でも問題なかったでしょう!」

 

 ハハハ。お嬢様方、すぐに調子に乗ってしまう男なのだ。そう褒めなさんな。

 

 すると、壁際で呆然としていたミリアが表情を輝かせ、叫び声を上げながらすごい勢いで走ってきた。

 そして、目の前まで来ると両手で剣を握っている形にして振り回し、俺の方を見ながら何かを言っている。

 

 ん? あっ! これダブルアタックの真似!? マジ!?

 ロクサーヌだけじゃなく彼女もオーバーホエルミング中の動きが見えているのか!?

 

 その様子に驚愕しているとロクサーヌがミリアに声を掛けている。

 すると、今度はそちらを向きシュバッ、シュバッと回避動作の真似を行う。

 

 それを見たロクサーヌも同じように動いて何やらレクチャーを始めた。

 

 ……そういえば、原作でもミリアはロクサーヌの動きについていこうと教えを乞うていたな。

 

 その様子を見守っていたところ、ミリアはロクサーヌのアドバイスに頷きながらトレースしようと何度も動き続けている。

 

 スゲーなぁ。俺やセリーには絶対に真似できないぞ。

 彼女も本当に頼もしいわ。きっと遊撃として活躍してくれるだろう。

 

 

 

 ミリアがレクチャーを受けている間にドロップアイテムの回収をすることにして、床に転がっている茶色いもこもこした物へ鑑定をかける。

 

人魚の髪

 

「人魚の髪!?」

 

 マジ? これ髪の毛なの? そんなもん何に使うんだ?

 

 拾い上げてそれを見つめているとセリーが話しかけてきた。

 

「人魚の髪はカツラやつけ毛として用いられます」

 

 カツラか……。

 

 数年前はカツラの使用を考えたことがあったが、身近な人間に薄くなっていることがバレている状態でそれをかぶる度胸はなかった。

 再び薄くなったときには早めの使用を検討した方がいいだろうか……。

 

 ……ん? いやいやいや。日々、丁寧にケアしているのだ。カツラが必要な事態に陥ることはあるまい。

 何を考えているんだ俺は。随分と無駄な杞憂をしたもんだ。

 

 

 

 それにしても、これでカツラやつけ毛を作っても茶髪にしか対応できないんじゃないのか?

 

 その旨を尋ねるとセリーが口を開く。

 

「これも人魚の泡で色を抜き、染料を使用することでその人に合った髪色にすることが可能です。理髪店へ行くと自分に合ったカツラを作成してもらえます」

 

 そんなことが出来んの!? ファンタジー世界の理容師スゲー!

 

「庶民はあまり利用することはないですが、王侯貴族が社交界に参加する際に煌びやかな髪にするのだそうです」

 

 あー。なんかちょっと理解できたかも。

 音楽室に飾られていた肖像画みたいな髪ってことだな。

 それに、社交界の様子を描いた絵画にはド派手な髪形をした男女が描かれていた。

 この世界でもそういうことがあるのだろう。

 

 納得しているとセリーはさらに続ける。

 

「他にも加工してロープとして利用することもあります。普通のロープよりだいぶ耐久性が高いようです」

 

 髪の毛でロープなんて作れるのか……。

 

 

 

 ドロップアイテムをしまい、動き続けている二人に目を遣る。

 

 ミリアは本当にロクサーヌのレッスンについていけているようだ。たいしたもんだなぁ。

 

 いつまでもここにいるわけにはいかないため、ボーナスポイントの振り分けとジョブの設定、それから杖と盾を装備してロクサーヌに声を掛けた。

 すると、動きを止めて笑顔で口を開く。

 

「ミリアはなかなか体の使い方が良いですね。きっと一角の戦士になることでしょう」

 

 ロクサーヌに動きを褒められるなんて、それだけでもスゲーわ。

 俺たちはそんなことを言われた試しがないもんなぁ……。

 

 内心でへこんでいると彼女は言葉を続ける。

 

「ご主人様。少し早いですが、そろそろ夕方になります」

 

 んー。そうなのか……。

 それじゃあ、次の階層に進んだら下の階層でMP回復をして迷宮を出ますかね。

 

 杖と盾をアイテムボックスに戻し、再びボーナスポイントとジョブを変更してから次の階層へと続くゲートへ歩き出す。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

 アイテムの売却を済ませて通りを歩いているとミリアがロクサーヌに話し掛けた。

 一頻り話を聞くと彼女は笑みを浮かべながらそれを伝えてくれる。

 

「朝は奴隷として売却されることになってとても落ち込んでいたそうですが、大切にしてもらえて本当に嬉しかったのだそうです」

 

 そうだよなぁ。過失で海賊になってしまって奴隷として売られることになったのだ。落ち込んで当然だろう。

 それに、待遇に満足してもらえたようで俺たちも嬉しいぞ。

 セリーをうかがうと微笑みながらミリアを見つめていた。

 

「なので、そのお礼ということで夕食は自分にも作らせてもらいたいそうです」

 

 こんなことを言ってくれるなんて、ミリアも本当にいい娘だよなぁ。

 

「彼女にありがとうと伝えてくれ。それから、必要な食材があれば遠慮なく言うようにとも」

「かしこまりました」

 

 ロクサーヌは笑顔で頷きそれを伝えたところ、ミリアは怒涛の勢いで話し始めた。

 

 

 

 なんかすごいぞ……。どんだけ力を入れるつもりなんだろう……。

 

 セリーと共にその様子を見守っているとミリアが話し終わり、ロクサーヌは困った様子でこちらへ顔を向ける。

 

「猫人族料理であるブイヤベースを作りたいと言っています……」

 

 ボルシチがドワーフ料理だったように、ブイヤベースは猫人族料理なのか。

 世界三大スープのうち二つが種族の伝統料理ってことは、残りのトムヤムクンとフカヒレスープもそうなのかもしれない。

 その場合、どんな種族の料理なのだろう?

 

 思索に耽っているとロクサーヌが続きを口にする。

 

「必要な食材は白身魚とエビ、それからトマトといくつかの野菜にスパイスだそうです」

 

 白身魚はドロップアイテムの白身や尾頭付きでもいいんだろうか?

 

 それを尋ねたところ、ミリアは鼻息を荒くして本当に尾頭付きを使ってもいいのか、ロクサーヌを通して何度も確認をしてきた。

 

「滅多に残らない貴重な食材ですからね。ミリアが驚くのも当然です」

 

 その様子を見ていたセリーは頷きながらそう言った。

 

 俺のアイテムボックスには、ほぼワンスタック分の在庫があるせいで感覚がおかしくなっているが、彼女の言う通り貴重なレア食材だしな。

 

 ミリアに笑いかけながら問題ない旨を告げると彼女も嬉しそうに頷いている。

 

 しかし、ブイヤベースなのに貝は使わないのだろうか?

 

 それを尋ねてみたところ、ロクサーヌが驚きの声を上げた。

 

「貝ですか!? お祝い事でもないのにそんな貴重な食材を使うことはないと思います!」

 

 その言葉に続きセリーが説明を行う。

 

「ご主人様、迷宮以外で獲れる貝には毒があって食べることができません。食用の貝は全て魔物が残す物で、さらに全てがレアドロップなのでかなりの金額になってしまいます」

 

 そういえば、確かにそんな話があったな。

 

 ということはこの世界で食べることのできる貝は、原作で出てきた蛤と牡蠣の他にあと数種類しかないことになる。

 いや。他の貝系の魔物が食材をドロップしなかった場合、この二種類で打ち止めということに……。

 

「セリー。食用の貝はいくつあるんだ?」

「機会は少ないですが庶民でも口にすることが可能なのはクラムシェルが残す蛤とオイスターシェルの牡蠣です」

 

 気になって尋ねたところ彼女は説明を始めた。

 

 うん。この二つは知っている。

 

「それから、スカラップシェルの残す帆立は普通の人は一生食べる機会はないでしょう」

 

 マジかぁ。もしかしたら一個数千ナールという可能性もあるのかもしれない。

 

「そして、貝系の最上位種であるアバロニシェルが残す鮑はほとんど手に入らず、口にできるのは王侯貴族だけといわれています」

 

 嘘だろ!? 鮑がそんな扱いなの!?

 

 あ、いや。クーラタルの迷宮で貝系の最上位種が出るのは八十八階層のボス部屋だ。

 クーラタルの最高到達階層は九十一階層。倒したボスは九十階層までということになる。

 他の迷宮で一番低い配置を引いても七十八階層だ。

 そうなると、鮑の扱いにも納得がいくな。

 

 どこかの海に毒のない貝はいないもんかねぇ……。

 

 思索を打ち切りロクサーヌに告げる。

 

「ミリアが必要だというなら貝を使っても問題ない。確認してもらえるか」

「分かりました。聞いてみます」

 

 彼女が話しかけると、ミリアは驚いたように首を横に振って声を上げた。

 

「ブイヤベースで貝を使うのはお金持ちだけなので、尾頭付きとエビがあれば十分だと言っています」

 

 まあ、彼女がそう言うんならそれでいいか。

 それに、明日は二十二階層に挑むことになるのだ。きっと蛤も手に入るだろう。

 そうすれば、ミリアも躊躇なく使ってくれるはず。

 

 

 

 

 

クーラタル

魚屋

 

 

 

 

 

 野菜と香辛料を購入し、いつものようにパンを買って隣の魚屋へ入ると馴染みとなった魚屋の店主の声が聞こえてくる。

 

「おお! アユム様、いらっしゃいませ。本日も尾頭付きを売却していただけるのですか?」

 

 その横にいる探索者のじいさんも期待した様子でこちらを見つめていた。

 

 アイテムボックスのワンスタックからあふれた分の白身や尾頭付きを売却しているうちに、すっかり常連っぽい感じになっている。

 

「いや。今日は売却に来たわけではない」

「そうですか……」

 

 俺の言葉に二人の顔に残念そうな表情が浮かんだ。

 まあ、尾頭付きはレア食材だし高く売れるのだろう。

 

「エビを購入したくてな。彼女が選ぶのでよろしく頼む」

「ありがとうございます。どれも本日獲れたての新鮮な品となりますので、きっとご満足いただけることでしょう」

 

 へー。クーラタルの近くに海があるんだろうか? それともフィールドウォークで運んでいるのかね?

 

 考え込んでいるとブラヒム語ではない言葉で、はしゃいだような声が店内に響いた。

 ネコミミのお嬢様はかなりテンションが上がっているのか、尻尾をユラユラと動かしながら楽しそうに店内をキョロキョロ見回している。

 

 これ、すげー可愛い動きだわぁ。

 

 魚に目移りしている彼女へロクサーヌが声を掛けると、照れ笑いを浮かべてエビの方へ目を向けた。

 そして、ロクサーヌとセリーも加わり話しながら選び出す。

 

 

 

 その様子を眺めながら店の二人と雑談をして時間を潰す。

 

 それにしても探索者レベルが78はすごいよなぁ。歴戦の強者って感じだ。

 若いころは迷宮探索で鳴らしていたのかもな。

 そして、リタイヤした後は第二の人生として、アイテムボックスの大きさを活かし足が早い食材の保存係として働いているのだろう。

 こういった形で雇われている高レベルの探索者は多いのかもしれない。

 

 

 

 雑談をしながらふと思いついた。

 

 明日には手に入るだろうが安かったら蛤も買っておくか。値段を確認してみよう。

 

「蛤は扱っているか? もしあるならいくらになるだろう?」

「はい。扱っております。蛤は一個三百二十ナールとなりますが、お求めですか?」

 

 三百二十ナール!? アホか! 三つでキャミソールが買えるわ!

 ないないない。絶対ない。

 

「ず、随分と値の張るものなのだな」

「はい。食用の貝は小さい上に稀にしか残らないため、需要に対して供給が全く追いついておらず、どうしてもこのような価格となってしまいます」

 

 先ほどセリーからも同じようなことは聞いていたが予想以上に高いぞ。

 

 それにしても、迷宮以外で食べられる貝を見つけたら、とんでもない利益を得られそうだ。

 まあ、一迷宮探索者の俺ではそんな事業を行っても権力者に取り上げられてしまう。

 いつものように棚上げしておこう。

 

 三人が選んだエビを購入して店を出る。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

「セリーの言っていた通り貝の値段はすごかった。あれは購入するのではなく自分たちで用意した方がいいな。明日の探索で集めるとしよう」

 

 店を出たところで思わず口を開いてしまった。

 

「ふふ。ちょうど明日から二十二階層なのでそれもいいですね」

 

 それを聞いたロクサーヌが笑いながら答える。

 すると、セリーが小声でそれに続く。

 

「はい。ご主人様にはアレがありますのですぐに集まることでしょう」

 

 確かに料理人とドラウプニルがあればあっという間にワンスタック分が集まるはずだ。

 それに、ボス戦でもこの組み合わせの運用が可能となっている。

 ついでに、ブラックダイヤツナとピックホッグを狩りまくってトロと豚肩ロース肉も集めるか。

 もし可能なら、オイスターシェルもだな。

 

 それを伝えると二人も嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「連続でのボス狩りなんて本当にワクワクしますね」

 

 このお嬢様、完全に趣旨が変わっちゃってるよ……。

 

 

 

 俺たちの様子を不思議そうに眺めていたミリアに気付き、ロクサーヌが説明を行うとすぐに大きな声が上がる。

 そして、輝くような表情で俺の方を見て口を開いた。

 

「ごしゅじんさま。トロ、ありがとう、です」

 

 おお。すごく喜んでくれている。

 彼女が合流するまでに在庫をたっぷり用意しておかなければ。

 

 弾むような足取りで歩くミリアを三人で見守りながら、迷宮を挟んだ向かい側の店舗へ向けて歩き出す。

 

 

 

 

 

クーラタル

金物屋

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 店内に入ると世話役であるオネスタが俺たちの姿に気が付き挨拶をするが、ミリアの姿に気が付きニヤニヤと笑みを浮かべた。

 

「あらあら。アユムさん、もう三人目をお迎えしたのですか? それに、こんなにも美しい娘だなんて」

 

 また、からかおうとしてからに。困った人やで。

 

「うむ。彼女は猫人族のミリア。今日からうちに来ることになった。彼女もロクサーヌやセリーに匹敵する素晴らしい女性だからな。オネスタさんがそう思うのも当然だろう」

 

 こちらがアタフタしないことにがっかりしたようで、彼女は残念そうに言葉を続けた。

 

「迷宮探索が順調そうで何よりです……」

 

 中身はおっさんなのだ。そんな攻撃は効かないぞ。

 

 

 

 俺の言葉をミリアに伝え、嬉しそうに笑い合っているお嬢様たちに声を掛ける。

 

「ロクサーヌ、セリー。ミリア用の持ち運びができる燭台を一緒に選んであげてくれ」

「はい。お任せください」

「かしこまりました」

 

 彼女たちは返事をするとミリアと共に陳列棚へ行き、楽しそうに燭台を選び出した。

 

 本当に愛らしい娘たちだなぁ。

 

 

 

 おっと。見惚れてないでこちらも購入するものを選ばないと。

 

 前々から五徳が二つでは不便だと思っていたのだ。

 スープとおかずで占有されるため、別のものを作るのはそれらの調理が終わってからになる。なので、デザートやちょっとした一品を作るのが本当に面倒だった。

 この機会に増やすことにしよう。

 

 

 

 五徳を選び終わり彼女たちの様子を見守っていると、ロクサーヌがミリアに何かを言っている。

 彼女はコクコク頷くと燭台を手にこちらへ近づいてきた。

 

「ごしゅじんさま。これ、おねがい、です」

 

 おお! 新しい言葉を覚えている!

 それに、ニッコリ笑いながら燭台を差し出す様子はあどけなくて本当に愛らしい。

 

「うむ。では、支払いを行おう」

 

 笑いかけながらそれを受け取ると彼女は再び口を開く。

 

「ありがとう、です」

 

 うん。実にキュートだ。

 

 支払を終え、改めてオネスタにミリアのことを気にかけてもらえるようにお願いして店を後にした。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv47 英雄Lv41 遊び人Lv35

装備 身代わりの硬革帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 竜燐の靴 よりしろのイアリング

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

戦士Lv23

装備 強権のエストック 硬革の帽子 竜革のジャケット 硬革のグローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

セリー ♀ 16歳

鍛冶師Lv20

装備 竜革の帽子 硬革のジャケット ダマスカス鋼のガントレット オラクルダマスカス鋼グリーヴ 身代わりのミサンガ

 

ミリア ♀ 15歳

メイン:戦士Lv15

装備 強権のレイピア 耐風のダマスカス鋼額金 頑丈のサーコート 竜革のグローブ 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:3

キャラクター再設定:1

サードジョブ:3

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

鑑定:1

ワープ:1

胴装備三:7

三十パーセント値引:63

 

所持金:2,443,552ナール

 

春の50日目

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