異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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162 案内

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 いつものように身支度を整えたら、リビングで打ち合わせを行う。

 昨日に引き続き今日も予定が満載だ。しっかり確認しておかないと。

 

 正面のソファーに並んで座っているロクサーヌとセリーへ話し掛けた。

 

「まずは早朝の探索に出るんだけど、今日からは最初にハルバーの十二階層へ立ち寄ってハインツ一味がいないか確認をしよう。ロクサーヌ、よろしくね」

「はい。お任せください」

 

 頼られたことが嬉しいのか彼女は嬉しそうに笑みを浮かべている。

 

 原作において奴らを討伐したのは春の六十日目だが、その際ロクサーヌは数日前から同じ場所に留まっていると言っていた。

 きっと、俺たちも近いうちに発見できるだろう。

 

 そして、原作のセリーは盗賊共が一日中そこにいるはずだと推測していた。

 それなら人が少なく戦闘を目撃される可能性の低い早朝を狙った方がいい。

 朝食後と午後の探索はスルーして早朝のみに絞って探すことにしよう。

 

 しかし、問題はその後だ。

 

 ハルツ公爵家の冒険者をペルマスクへ案内する時間と、ミリアへの差し入れを作る時間が被っているんだよなぁ。

 

 普段、鏡の納品は二人が朝食の準備をしている間に行っていった。

 だが、そうなるとミリアの差し入れ作りに取り掛かれるのは、朝食後となってしまう。

 しかも、今日はペルマスクへの案内があるため、さらに遅くなるはずだ。

 

 面会の日には朝食を食べさせないでほしいとアランに伝えてしまっている。

 そうなれば、彼女にひもじい思いをさせてしまうだろう。

 

 しまったなぁ。ペルマスクへの案内を今日にするんじゃなかった……。

 

 うーん……。早朝の探索を早めに切り上げて朝食の支度をした方がいいだろうか……。

 

 

 

「ご主人様、どうなさったのですか?」

 

 考え込んでいたところ、ロクサーヌに声を掛けられる。

 視線を上げると二人は不思議そうな表情でこちらを見つめていた。

 

 ……そうだな。彼女たちに相談してみるか。

 

 悩んでいたことを伝えられた二人は顔を見合わせて頷き合っている。

 

「一昨日の晩にマヨネーズを仕込んでいたということはフィッシュバーガーを作ろうとしていたのですよね? それなら私たちにお任せください」

「セリーの言う通りです。私たちもご主人様に料理方法を教えていただいているので大丈夫です」

 

 まあ、確かに調理中に聞かれたことには答えていたし、この娘たちはとんでもない記憶力を持っている。任せても問題ないなさそうだ。

 

 実はフィッシュバーガーを作るときにトンカツとカキフライも作ろうと思っていたのだが、それは次の機会にしよう。

 

「二人ともありがとう。それじゃあ、朝食と差し入れは君たちに任せることにするよ」

「はい。お任せください」

 

 ロクサーヌが力強くそう告げるとセリーも隣で頷いていた。

 

「ペルマスクへの案内が済んで食事をとったら、予定が立て込んでいるし、朝食後の食休みは無しにしよう。その後はミリアの面会、武器屋と防具屋巡り、君たちの買い物、帝都の高級服店でドレスの進捗確認、そしてスキル結晶の受け取り。それら全てが済んだら自宅へ戻り装備を整えてから迷宮探索に出よう」

 

 それを聞いたセリーが指摘する。

 

「ご主人様、ベッドの見積もり確認が本日となっています」

 

「あー。それがあったか。じゃあ、クーラタルの武器屋と防具屋を巡るとき、家具屋にも寄ろう」

 

 六人でも問題なく眠ることができるベッドの見積もりなんて超重要事項だ。

 それなのに、すっかり頭から抜けていた。

 

 予定を一つ追加したところ、ロクサーヌがセリーに視線を送る。

 すると、伝えたいことを理解したのか彼女は笑みを浮かべて頷き返す。

 それを確認するとロクサーヌも笑顔で俺に告げた。

 

「ご主人様、私たちの買い物は結構です」

 

 うーん……。ここしばらく個人的な買い物をしていないぞ?

 やはり貯金でもしているのだろうか?

 まあ、ほしいものでもあるのかもしれない。

 

「分かった。それじゃあ、その後はいつも通りってことで」

 

 二人が返事をしたところで大切なことを口にする。

 

「ロクサーヌ、セリー。この五日間もいっぱい助けてもらったね。本当にいつもありがとう。今回の給金を支給だよ」

 

 アイテムボックスから銀貨を取り出してそれぞれに手渡すと、とても喜んでもらえた。

 

 二人がいなければ、こんなに余裕のある生活は送れていなかっただろう。

 ミリアが合流したら昇給を考えなければ。

 

 さて、ミーティングはこんなところか。

 そろそろ準備を整えて迷宮へ出勤するとしますかね。

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮

二十二階層

 

 

 

 

 

 ハルバーの迷宮十二階層を確認してみたが空振りに終わってしまった。

 

 気を取り直してクーラタルの迷宮二十二階層へ移動し、キャラクター再設定を開きワープと結晶化促進二倍を入れ替える。

 

「では、始めよう」

 

 

 

 そこから魔法による殲滅とデュランダルによるMP回復を繰り返す。

 それを続けていると、アイテムボックスに蛤がどんどん貯まっていく。

 

 よしよし。今日中にワンスタックを超えるはず。ある程度貯まったら魚屋に売りに行こう。

 レア食材なのだ。きっと高額買取をしてもらえるだろう。

 

 

 

 ひたすら魔物を狩っていたところ、待ち望んでいたことが起こる。

 

「今、ラブシュラブもダブルスペルで倒れたな」

「はい! 間違いありません! さすがご主人様、すごいです!」

 

 ロクサーヌからのさすごしゅをありがたくいただきながらボーナスポイントの振り分けを行い、自分に対して鑑定を使ってみると英雄のレベルが上がっていた。

 

 なるほど。レベルアップで増加した分の知力がさらに二倍され、それによって引き上げられた魔法攻撃力がさらに倍。

 そして、与ダメが増した二発分の魔法が魔物のHPを削り切ったわけか。

 

 我ながら成長の度合いがエグすぎる。

 

 すると、セリーが戸惑った様子で声を漏らした。

 

「弱点を突かなくても二十二階層の魔物を魔法二発で仕留めるなんて……。たとえ魔道士だったとしても、そのようなことが出来る者は限られるでしょう……。本当にとんでもないです……」

 

 確かにそうだよなぁ。

 英雄の知力中上昇のパーティー効果は魔道士のパーティー効果と同等。

 なのに、俺はそれを遊び人にも設定することで二つも付いている上に、魔法使いの知力小上昇まである。

 これは一つのパーティーに魔道士が二人と魔法使いがいるようなもんだ。

 

 それに、知力二倍と魔法攻撃力二倍のスキルが付いた装備品を所有している。

 考えてみれば公爵夫人であるカシアや公爵家の騎士団長であるゴスラーですら、知力二倍のついたひもろぎのスタッフしか装備していなかった。

 

 となると、彼女の言う通りこんなことが出来る人は限られるのだろう。

 

 ただ、固定で知力五倍や攻撃力五倍の付いた装備品が出たり、慈母ヤギのスキル結晶の融合に成功していることもあるだろう。厳しくはあっても不可能ではない。

 もしかしたらハルツ公爵家にだって、普段使いはしないがいざという時のためにそういった装備品が保管されている可能性があるかもしれないぞ。

 

 まあ、グダグダ考えこんでしまったが、これにより殲滅速度が跳ね上がる。

 こっからは気合を入れていくぜー。

 

「では、再開しよう。ロクサーヌ、次へ頼む」

 

 声を掛けると彼女は困ったような表情で言葉を発した。

 

「あの、もうそろそろパン屋の開く時間です」

 

 あちゃー。無双モードに突入するところだったのにタイムアップかー。

 しゃーない。早朝の狩りはここまでにしよう。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 食材を購入して自宅へ戻り、それらをキッチンへ運び込む。

 そして、アイテムボックスから大量のオリーブオイルと尾頭付きを四尾取り出した。

 これだけあれば一人二個ずつフィッシュバーガーを作れるだろう。

 

「それじゃあ、鏡を回収したらボーデの宮城へ行ってくる」

 

 そう告げると彼女たちは美しい礼で見送ってくれた。

 

 

 

 

 

ボーデ

宮城

 

 

 

 

 

 いつものように鏡を抱えてハルツ公の居城へ飛ぶと、馴染みの男が声を掛けてくる。

 

「アユム殿、本日ペルマスクへ同行する冒険者のうちの一人が私の妻となりました。ご負担をおかけするでしょうが、何卒よろしくお願いいたします」

 

 うん? ご負担?

 ……ああ。複数人で移動するからMP消費が激しくなるってことか。

 

 あっ。そういえば、公爵たちは俺が一人でペルマスクへ移動していると思っていたのに、三人で移動できることにとても驚いていた。

 各中継地を経由するとはいえ、問題なくペルマスクへ着いたら疑念を抱かれる。

 

 うーん……。何度か強壮剤を使う必要があるなぁ。

 

「うむ。無事に案内することを約束しよう」

「ありがとうございます。妻もペルマスクへ行けるようになって、非番の日に自分用の鏡を手に入れるのだと張り切っておりました」

 

 うちのロクサーヌやセリー、それにカシアもそうだったが女性にとってペルマスクの鏡というのはそれほどの価値があるものなのだろう。

 

 しかし、全然関係ないが、こいつ既婚者だったのか。

 

 その後、例によってそのままハルツ公の執務室へ行くよう告げられ、廊下を歩き出す。

 

 

 

 執務室の扉をノックしたところ、入室を促す声が聞こえてくる。

 

 中に入るとハルツ公爵夫妻にゴスラー、そして一組の男女が待っていた。

 鑑定で確認するとその男女は冒険者だ。

 ということは、この美人さんがあの騎士の奥さんってことか。

 だが、俺にはロクサーヌとセリーに加えミリアまでいる。しっとマスクに変身することはない。

 

 

 

 一頻り挨拶を交わすと早速公爵が話を切り出した。

 

「アユム殿、まずは鏡の受け取りを済まそうではないか。そのテーブルに載せるがよい」

「かしこまりました」

 

 その言葉に従ってローテーブルへ鏡を置き、掛かっていた布を外す。

 

 すると、カシアが真剣な表情で確認を始め、冒険者の女性も固唾を飲んでその様子を見つめている。

 

 確認を終え彼女が顔を上げると、そこには女神を思わせるような美しい笑みが浮かんでいた。

 

 ほんと綺麗な人だなぁ。

 でもまあ、俺のロクサーヌの方が女神としての格は上ですけどね。ふふん。

 

「間違いなくペルマスクの鏡です」

「うむ。ゴスラー、アユム殿に支払いを」

「かしこまりました」

 

 

 

 ゴスラーから金貨一枚と銀貨五十枚を受け取りアイテムボックスへしまい込む。

 それを確認して彼は話し始めた。

 

「それでは、この後の段取りを説明いたします」

「お願いいたします」

「まず、この二名をパーティーに加えていただき、出発してください。そして、ペルマスクへ着きましたら、彼らはそのまま街の中へ入ります。アユム殿は予定がおありだということなので、そのままお帰りいただいて結構です」

 

 オッケー。インテリジェンスカードのチェックをされるわけにはいかないからな。

 ペルマスクへ着いたらスタコラサッサっといこう。

 

 俺たちのやり取りを見ていたハルツ公が疑問を口にする。

 

「アユム殿。本当に二人も連れた上でペルマスクへ行くことが可能なのか?」

 

 ……ここは手札を一枚切っておくか。

 

「道中、疲労回復薬を服用いたします。それに、これがあるので問題はないかと」

 

 そう言って装備している倹約の硬革グローブを左右交互にポンポンと叩いた。

 

「ん? その腕装備に何があるのだ?」

「これは消費MP削減のついた倹約の硬革グローブ。この装備品のおかげでペルマスクへ行き来できています」

 

 その途端、全員の視線が俺の手に集まる。

 

「……なるほど。そのような装備品を持っておったのか」

 

 ハルツ公がそう言うとカシアが呟きを漏らす。

 

「消費MP削減……」

 

 そして、感心したような表情を浮かべゴスラーが口を開く。

 

「迷宮探索を行うにあたっては耐久性を高めた方がいいため、そのスキルのついた装備品を使用するのは難しいですが、迷宮外で戦闘以外に魔法やスキルを使う場合、素晴らしいスキルとなるのですね」

 

 二人の冒険者も物欲しそうな目で倹約の硬革グローブを凝視していた。

 フィールドウォークを使うならとんでもない効果を発揮するだろうからな。そんな顔になるのも理解できる。

 

 しかし、よくこの使い方が広まっていなかったな。スコトーマってやつなのか?

 

 考え込んでいた公爵が口を開く。

 

「ゴスラー。ルークに油脂植物のスキル結晶の買いを出すのだ」

「はっ」

 

 えっ!? あー! やっちまった! 強力なライバルを呼び込んじまった!

 この場合、ルークがどちらを優先するかなんて分かりきっている。

 それに、資金力に差があるため提示する額でも上をいかれるだろう。

 

 うーん……。いっそ今装備している物を売るか? そうすれば相場を荒らされずに済むはず。

 

 ……いや。駄目だな。公爵家や騎士団で運用するのだ。一つだけというわけにはいくまい。

 

 くそっ! しくった!

 

 ……今日の受け取り分に油脂植物のスキル結晶があったことだけが救いだわ。

 しばらくは購入できないと考え、融合する装備品は慎重に選ぼう。

 

 

 

 内心の動揺を必死に押し隠していると、ハルツ公が話しかけてきた。

 

「しかし、疲労回復薬か。思えば当然のことであるな。アユム殿は我が公爵家のために働くのだ、それを負担させてしまえば余の面目は丸つぶれとなる。費用については当家で負担しよう」

 

 そう言うとゴスラーに目で合図を送る。

 

「アユム殿、疲労回復薬は何を使用し、どのくらいの数が必要になりますか?」

 

 そんなことを言われてもなぁ。

 使うのは強壮剤ってことでいいだろうが、普段は毘盧帽を使っている上にデュランダルによる回復を行っている。いくつ必要なのか見当もつかない。

 

 費用を負担ってことは金を払ってくれるんだろうけど、ぼったくってしまえば面倒なことになりかねん。

 でも、うーん……。

 

「使用しているのは強壮剤なのですが、普段とは条件が異なるため必要な数については分かりかねます」

「であるか……」

 

 公爵は俺の返事を聞くと少し考え、ゴスラーへ告げた。

 

「では、多めに渡しておくことにしよう。強壮剤十個分の支払いを行うのだ」

 

 十個!? いやいや! 多すぎるって!

 

 俺が驚いていることに気が付いたのだろう、彼はニヤリと笑い説明を行う。

 

「なに。これには案内に対する報酬も含まれておる。遠慮なく受け取るがよい」

 

 ああ。そういうことね。

 強壮剤十個で六千ナール。ペルマスクへの案内に対する報酬なら高いということはないはず。受け取っても問題ないだろう。

 

「ありがたくちょうだいいたします」

 

 

 

 ゴスラーから銀貨六十枚を受け取りアイテムボックスへしまい込む。

 そして、ロクサーヌたちとのパーティーを解散し、二人の冒険者とパーティーを組んだところで告げる。

 

「それではお二人をペルマスクへご案内いたします。公爵閣下、これまで鏡をお取引いただき、本当にありがとうございました。今後も何かありましたらお声がけください。できる限りのことをいたします」

「うむ。我が公爵家もまこと世話になった。今後もアユム殿の力を借りる機会があるだろう。その際はよしなに頼む」

 

 マジで声を掛けてくださいよ? 特にセルマー伯の城を攻める時には絶対ですよ? 頼みますからね?

 

「アユム殿、連絡はルークを通して行いたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

 まあ、ゴスラーが言うその方法しかないしな。

 

「はい。よろしくお願いいたします」

 

 そして、カシアはドレスの裾を摘み、片足を後ろに引くと頭を下げる。

 

「アユム様。この度のお心遣い、まことにありがとうございました。今後とも当家にお力添えをお願いいたします」

 

 おおっ! 綺麗な谷間を拝んじまった。ラッキー。

 

 もう一度、彼らに感謝を伝えて部屋を後にした。

 

 

 

 フィールドウォークの移動ポイントであるエンブレムの設置されている場所へ移動すると、いつもの騎士が女性冒険者に話しかける。

 

「頑張ってこいよ」

「ええ。ペルマスクへのルートを構築して、家に鏡が設置できるようにするから」

「いや。そういうことではなく、鏡の仕入についてだ」

「もちろん。そっちの方もちゃんとするわ」

 

 彼は呆れたようにため息を吐く。そして、俺の方に顔を向け彼女のことを頼んだ。

 問題なく送り届ける旨を伝え、ワープゲートを開く。

 

 

 

 

 

ザビル

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 まずはベイルへ飛び、その次にドブロー、続けてサボージャ、アイエナと彼らに街の名前を告げながら移動を繰り返した。

 その後、いくつかの街を経由してザビルの冒険者ギルドへとたどり着く。

 

 ここがペルマスクの一つ前、ザビルだと告げると二人の表情が強張っている。

 

 ああ……。調子に乗った発言をしたせいで引かれてしまったのだろうか……。

 それはそうだ。俺のような不細工がドヤ顔を晒したところで気持ち悪いだけだろう。

 そんなことをしてしまい、本当に申し訳ありません。

 

 ……ん? あっ。これMP不足のせいか?

 ヤバい。ネガティブな思考が抑えきれない。すぐにMP回復を行わなければ。

 

「すまない。強壮剤を飲むので少し待ってもらえるか」

 

 早口でそう言って強壮剤を服用すると、その途端に思考の靄が晴れていく。

 

 危なかったー。あのままペルマスクへ行けば間違いなく鬱状態に陥っていただろう。MP管理には気を配らないと。

 

 その様子を見ていた男の方がドン引きした様子で口を開く。

 

「まさか、三人パーティーによる移動なのに、回復なしでザビルまで到達するとは思いもよりませんでした……」

 

 えーっと、あ、うん……。

 

「迷宮で経験を積んでいるからな。それに、倹約の硬革グローブもある。そんなことより次がペルマスクだ。さあ、行こう」

 

 何かを聞かれる前に急いでワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

ペルマスク

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 終点、ペルマスク、ペルマスクです。お降りの際はお忘れ物などなさいませんよう、お気を付けください。本日は田川鉄道へご乗車いただき、まことにありがとうございます。

 

 馬鹿なことを考えつつパーティーを解散する。

 何かあると面倒だ。さっさとずらかろう。

 

「ここがペルマスクだ。急ぎの用事があるため俺はこれで失礼するが、鏡の仕入が上手くいくことを願っている」

 

 すると、男性冒険者が手を差し出しながら告げた。

 

「アユム殿のご助力に閣下も大変お喜びでした。この度は本当にありがとうございます」

 

 彼と握手を交わし終えたところ、女性冒険者も同じように手を差し出す。

 

「カシア様もこの事業には力を入れています。それに、当家の女性一同も自分専用の鏡を手に入れることができるかもしれないと感激していました。アユム殿、まことにありがとうございます」

 

 うわー。細長いのに柔らかく滑らかな感触だ。

 日本にいたときこれだけの美人さんに握手を求められたら、それだけで好きになっていただろう。

 

 もう一度、感謝を伝えると彼らは壁から離れていった。

 

 しかし、以前俺も説明を受けた冒険者ギルドの職員だろうか?

 二人はその男に捕まり、立て板に水といった様子で説明を受けている。

 

 うん。まあ、必要なことだろうからちゃんと聞いておきたまえ。

 

 それじゃあ、帰るとしますかね。

 

 壁に向かいワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅に戻ると大切な二人が美しい礼を執って出迎えてくれた。

 そのままダイニングで待つよう告げられ、椅子に座っていると彼女たちは料理を運び込む。

 

 準備が整ったところでクラムチャウダーを取り分け食事を始める。

 

 朝食後の休憩がないんだ、食べながら先ほどのことを話すことにしよう。

 

 

 

「——というわけで、冒険者たちを無事にペルマスクへ案内することができたんだ」

 

 ふんふん頷きながら聞いているロクサーヌと渋い顔のセリーに話を終えて、フィッシュバーガーに齧り付く。

 

 うっま。尾頭付きを使ったからか、以前のものよりさらに美味い。

 タルタルソースも良くできているし、二人とも本当に料理上手だ。

 

 それを伝えると彼女たちは相好を崩す。

 しかし、セリーは再び渋い顔に戻ると口を開いた。

 

「消費MP軽減系のスキルが有用だと気付かれてしまったのは痛いですね。今後、間違いなく高騰することでしょうし、入手機会も少なくなるはずです」

「そうなんだよねぇ……。そのせいで融合する装備品についても吟味する必要が出てきた」

 

 安いスキル結晶だったため、深く考えることもなく硬革のグローブに融合したが、これからはそういうわけにはいかない。

 この油脂植物のスキル結晶が必要なのはスペルキャスターである俺とルティナに加え、ヒーラーになる予定のロクサーヌ。

 最低でも三つは確保しておき、最適な装備品に融合しなければ。

 

 返す返すも余計なことを言ってしまった。自分の迂闊さに心底呆れてしまうわ。

 どうして俺はこうミスが多いんだ……。

 

「大丈夫です。そのくらいなんでもありません。ご主人様ならきっと何とかなります」

 

 内心でへこんでいると輝くような笑みを浮かべながらロクサーヌが励ましてくれた。

 見ているだけで不安が解消されていく。まさしく女神の微笑だ。

 

 ……そうだな。何とかできるかは分からないが、落ち込んでいてもしょうがない。

 反省を次に活かしポジティブに過ごすとしよう。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv48 英雄Lv42 遊び人Lv36 魔法使いLv47

装備 サンダル 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:7

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

ワープ:1

鑑定:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:2,472,724ナール

 

春の52日目

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