異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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017 家捜し

 

 

 

 

 

ベイル

スラム街

 

 

 

 

 

 逃げている盗賊は恐慌状態なのだろう。訳もわからず闇雲に走っている気がする。

 そのおかげでアジトに戻る前に姿を確認することができた。

 いや、ロクサーヌの鼻のおかげだな。

 

「ロクサーヌ、助かった。このまま泳がせてアジトを突き止めよう」

「はい。ご主人様」

 

 

 

 

 

ベイルスラム街

盗賊のアジト

 

 

 

 

 

 ブツブツと何かを言いながら走っている男を追跡していたところアジトと思われる屋敷の前で立ち止る。

 そのまま扉を開こうとガチャガチャしていた。

 しばらくそれを続けていたが我に返ったのだろう。ズボンのポケットから鍵を取り出す。

 

 ここだ!

 

オーバーホエルミング

 

 盗賊の動きがスローになると同時に駆け出しその勢いのまま首を刎ね飛ばす。

 そして、鍵を拾いそれでドアを開けて男の体を屋敷の中に引きずり込んだ。

 MPが減った感じはしないが念のためにアイテムボックスから強壮丸を取り出して飲み込んでおく。

 

 オーバーホエルミングの効果が終わるとロクサーヌも中に入ってきたので小声で尋ねる。

 

「人がいる部屋とそこにいる人が寝ているかはわかるか?」

「はい。人は全員廊下の突き当りの部屋にいます。匂いが動かないのでおそらく寝ているのでしょう」

 

 よっしゃ!

 ラッキーだ。このまま寝ているうちに片づけてしまおう。

 

「俺が踏み込むので入り口から部屋を照らしていてくれ」

「かしこまりました」

 

 ドアを開け中に入るとロクサーヌの持つカンテラの明かりで中の様子が確認できた。

 手前のベッドに盗賊レベル35の男とレベル11の女。それから、奥のベッドにレベル38の男とレベル14女。それぞれ男女ペアで寝ている。

 原作でも確かこんな感じだったはず。おそらくミチオが殺ったやつらだ。

 目を覚ます前にとっとと始末してしまおう。

 

 眠っているが念には念を入れオーバーホエルミングを使用しておいた。

 

 

 

 四人目の女盗賊の首を落としたところで念のため彼女へ確認する。

 

「ロクサーヌ、他に人はいるか?」

「いいえ。もうこの家の中には私たち以外の人はいません」

「ふぅ」

 

 安堵からか思わず大きな息を漏らしてしまった。

 

「よし。ではこの四人の左手を確保しよう」

「はい」

 

 四人の左手を切り離しリュックに入れようとしたがさすがにこれ以上は入りそうにない。

 そりゃ、7本の人の手が入ってんだもんなぁ。

 あーあ。リュックが血でドロドロだ。

 

 部屋の中を見回し見つけたバッグの中へ左手四本をしまっておいた。

 

「他に金目の物がないか探すか」

「ご主人様、それなら私にお任せください」

 

 さすがロクサーヌの鼻! 頼りになるー!

 

「じゃあ頼むな」

 

 俺の言葉に頷きスンスンと鼻を鳴らして確認をし始める。

 死体が転がっている中で思うことじゃないだろうけど、これすっごい可愛いんよな。

 

「ご主人様、こちらです」

 

 そう言うとロクサーヌはクローゼットを開く。

 彼女と共に覗き込むと剣と鎧、それに靴が入っていた。鑑定、鑑定。

 

 おお! なかなかいいものがあるじゃないか!

 

レイピア 片手剣

スキル 空き

 

 これはロクサーヌに使ってもらおう。

 他には鉄の剣が一本、銅の剣が二本、鉄の鎧が二個、皮のジャケットが二個、皮の靴が四個。どれもスロットは付いていないか。

 

 とりあえず全てアイテムボックスに突っ込んでおこう。確認はベイル亭の部屋に戻ってからだ。

 

「それからこちらです」

 

 そう言うと彼女はクローゼットの中へ手を入れ奥の壁を軽くノックした。

 すると、部屋にポコポコという空洞音が響く。

 なるほどな、隠し収納があるわけか。開け方がわからなくてもデュランダルがあればどうとでもなる。

 

 ロクサーヌと場所を代わり中の物を傷つけないよう慎重にデュランダルで壁を切っていく。

 切り終えると中にはものすごい量の硬貨があった。

 

 ヤバい! こいつはヤバい! 根こそぎ確保だ!

 テンションゲージが一気にマックスへ跳ね上がる。

 おそらく脳内ではドーパミンがドクドクと溢れていることだろう。

 

「それにしても、よくこんなものに気が付いたな。やはりロクサーヌはすごい」

「お金はその金属の匂いと様々な人が触れた匂いが混ざり合って独特なものになります。なので、それを見つけるのはそう難しいことではありません」

 

 以前観た麻薬犬のドキュメンタリー番組を思い出した。

 壁の中や車の中に隠してある麻薬を探す訓練をしていたが、ロクサーヌはそれ以上ではないだろうか?

 

 ベッドのシーツを近くまで持ってきてその上にアイテムボックスから金貨と銀貨、それと念のための強壮丸以外のアイテムを取り出し置いていく。

 今はこいつらで容量を使っている場合じゃない。

 ああ。ロッドだけはベルトに差しておくか。

 

 全て出し終えたところで、雑に置かれた硬貨を片っ端からアイテムボックスへ流し込む。

 金貨、銀貨は自動でスタックされアイテムではない銅貨は弾かれるので、ある程度溜まるとシーツの上に移していく。

 なんかパチスロのジェットカウンターみたいだな。

 好きなアニメがパチスロになったときに数回試したことがある。

 しかし、毎回何が何だか分からないうちにコインが無くなっていたからそれを利用したことはないんだけどさ。

 

 作業をしばらく続けるとアイテムボックスがいっぱいになり金貨と銀貨も入らなくなった。

 その後は全てシーツの上に移しておく。

 

「ロクサーヌ、一旦ワープで宿まで戻りこれを置いてくるから少しだけ待っていてもらえるか」

「はい。いってらっしゃいませ、ご主人様」

 

 念のため強壮丸を一つ飲み込みさらにもう一つ口に含む。

 シーツで包んだ荷物を持って壁へ向かい、ベイル亭の部屋を思い浮かべながらワープと念じ。

 そして、開いたゲートへ向かって歩き出す。

 

 

 

 

 

ベイル亭五階

ダブルルーム五一七号室

 

 

 

 

 

 ゲートを通り抜けたところでMPが抜ける感覚に襲われるが気分が落ち込むほどではなかった。

 そこまでの重量ではなかったのだろう。

 そりゃそうだな。最大六人で移動するのだ。この程度の重量で問題になるはずがない。

 

 暗闇のなか音をたてないように持ってきた荷物を床に置く。

 そして、念のために口の中の強壮丸を飲み込み再び壁に向かって先ほどの部屋をイメージしながらワープを使用した。

 

 

 

 

 

ベイルスラム街

盗賊のアジト

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 

 戻るとロクサーヌの優雅な挨拶で迎えられる。

 ……いや、めちゃくちゃ綺麗で可愛い。うん。可愛いけどさ。

 できれば首と左手がない人体という前衛的すぎるオブジェがない部屋でそれを受けたかったなぁ。

 まあ、オブジェの制作者の言えたことではないが。

 

 さて、家捜しの続きだがどうするべきか?

 おそらくここが頭目の部屋だったのだろう。めぼしいものは全て回収したはずだ。

 他の部屋にはたいした物がない可能性が高い。さっさとこの場から去るか?

 いや、それほど手間じゃないんだ。各部屋を回りロクサーヌに確認だけしてもらおう。

 それをしなかった場合、ちゃんと見ておけばよかったと絶対に後で悔やむことになる。

 

「他の部屋も回ってみよう。とりあえず匂いで確認をしてもらえるか」

「かしこまりました。お任せください」

 

 

 

「他にはなさそうだな」

「はい。お金の匂いもしませんし装備品もないと思います」

 

 全ての部屋を回ったが結局銅貨を数枚見つけただけだった。

 おそらく硬貨や装備品は持ち歩いているのだろう。

 しまったなぁ。先に殺った方の奴らを剥いて探しておくべきだったか。

 今から戻ったところでもう残っているはずないわな。

 

 ……ん?

 ヤバい。完全に思考が追い剥ぎのそれだ。相手が盗賊といえども現代日本人としてこれはまずいんじゃないのか?

 いや、現在進行形で行っている押し込み強盗のような真似も相当だぞ?

 

 昨日の村を襲っていた盗賊を撃退したのとは違い今回は金のために積極的に狩りにいったのだ。

 それなのに全然メンタルに負担がかかっていない自分自身に驚く。

 良心の呵責が一切ないせいで逆に大丈夫かと思うくらいだ。

 

 ロクサーヌの方を見ると俺の視線を感じたのかこちらを向いて笑みを浮かべた。

 よかった。彼女は全然引いていない。

 そうだよな。この世界では誰はばかることない正しい行いなのだ。何の問題もない。合法だ、合法。

 

 

 

「それじゃあ最後に入り口にある男の死体が何か持っていないかを確認してここを去ろう」

「はい。ご主人様」

 

 

 

 入り口まで戻りロクサーヌの鼻を頼りに死体から硬貨が入った袋を確保した。

 確認は後でもできる。さっさとずらかるか。

 

「ロクサーヌ、インテリジェンスカードが出てくるまでは迷宮へ退避しておこう。カードが出たら手を捨ててベイル亭へ戻る」

「わかりました」

 

 

 

 

ベイルの迷宮

一階層

 

 

 

 

 

 彼女と共にゲートを抜けて迷宮へたどり着くと肩の力が抜けてしまった。

 自分では冷静なつもりだったがいつ盗賊が戻ってくるかわからない状況ということで、知らず知らずのうちに力が入っていたようだ。

 

「それじゃあ人も魔物もいない場所に案内してくれるか?」

「え? 魔物と戦わないのですか?」

 

 マジか……。

 この娘さん。盗賊を殺ったばかりの地に足がついていない状態で魔物を狩るつもりですよ。

 

 あ、いや、ロクサーヌは落ち着いている。浮ついているのは俺だけだわ。

 よし。落ち着きを取り戻すためにも一狩りいくとしよう。

 

 キャラクター再設定を開きデュランダルと獲得経験値二十倍を入れ替えて腰に差してあるロッドを引き抜いた。

 

「日中のように最初は魔法で戦うから近くに人がいない魔物のところへ案内してくれ」

「お任せください、ご主人様」

 

 

 

 彼女の案内ですぐに遭遇したニードルウッドをファイヤーボールで焼き払う。

 うん。問題なくやれるな。やはり飛び道具は安心感がある。近距離での切った張ったは俺には向いていない。

 迷宮で雑魚を相手にするならともかくボスや対人で白兵戦をするならオーバーホエルミングは必須だな。

 これがないと例えデュランダルがあったとしても本物の強者には反射神経やセンスの差で押し負けるだろう。

 

 

 

 その後、八匹目のニードルウッドを倒したところで全てのインテリジェンスカードが出現していた。

 その場で残っていた手を捨ててロクサーヌに声をかける。

 

「インテリジェンスカードが全て出たな。では、デュランダルを出すから魔物を二匹狩って宿に戻ろう」

「あの、ご主人様。昼間もそうでしたが途中途中にデュランダルを使うのは何故ですか?」

 

 おお! 原作ではミチオの秘密について問いかけることをほとんどしなかったロクサーヌが疑問の言葉を口にした!

 ボーナスポイントについて説明したことで俺に対して質問をしても問題ないと思ってくれたのだろうか?

 そうだとするとめちゃくちゃ嬉しいぞ。

 

「ああ。ロクサーヌからすると意味不明な行動だよな。このデュランダルにはMP吸収のスキルがついている。魔法を使ってMPがなくなりそうになるとこれを使って回復を図っていたのだ」

「なるほど。そういうことだったのですね。教えていただきありがとうございます」

「これからも何か疑問があったら遠慮なく質問してくれ。ロクサーヌが俺について知りたがってくれるのはとても嬉しい」

「ご主人様……。ありがとうございます。では、もう一つ聞いてもいいですか?」

「ああ。大丈夫だ」

「あの、最初に盗賊を倒したときと家の前で首を刎ねたとき、それから部屋に踏み込んで寝ている盗賊を倒したときにご主人様はものすごい速さで動いていました。危うく私の目でも見失いそうなほどでしたがあれは何だったのでしょう?」

 

 あー。目の良さとそれに付随する回避能力に自信を持ってるロクサーヌは気になるか。

 

「あれは英雄のジョブが持つオーバーホエルミングのスキルを使ったからだな」

「えー! 英雄ってあの英雄ですか!?」

「うむ。初代皇帝がついていたという伝説のジョブ英雄だ。だが、このことを知られると簒奪を企てていると疑われかねないため絶対に人には知られないようにしてくれ」

「はい。分かりました。それにしても、伝説のジョブについているなんてさすがご主人様です!」

 

 ロクサーヌがキラキラの目で俺を見ている。

 うーん……。これだって原作知識とボーナスポイントのおかげであって、俺自身の功績とはいいがたいんだよなぁ。

 まあいいさ。ロクサーヌにあれだけ励ましてもらったんだ。今でも俺自身の力だとは思えないが必要以上に自分を卑下するのはやめておこう。

 

「オーバーホエルミングを使うと俺には全てのものが遅くなったように感じるんだが、他の者からは俺が速く動いているように見えるのだろう」

「そういうことだったのですね。教えていただきありがとうございます」

「俺について興味を持ってくれてありがとうな。それがとても嬉しい」

「ご主人様。これからもご主人様のことについて色々教えてくださいね」

 

 そう言うとロクサーヌは美しい笑顔を俺に向けた。

 

 

 

 キャラクター再設定を開き獲得経験値二十倍とデュランダルを入れ替えついでにレベルの確認を行う。

 

田川 歩 男 18歳

魔法使いLv19 英雄Lv16 探索者Lv18 戦士Lv13 僧侶Lv6

装備 聖剣デュランダル 皮の帽子 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

戦士Lv9

装備 シミター 木の盾 皮の帽子 皮のジャケット 皮のグローブ 皮の靴

 

 お。魔法使いと探索者も上がっているな。さすが効率二百倍だ。

 

「ロクサーヌ、魔物のところへ頼む」

「お任せください、ご主人様」

 

 

 

 ニードルウッドを二匹狩りMPを回復させたところでベイル亭の部屋へゲートを開いた。

 

 

 

 

 

ベイル亭五階

ダブルルーム五一七号室

 

 

 

 

 

 ゲートを通り抜け真っ暗な部屋に到着する。

 

「すまないが持っているカンテラに火をつけてきてくれないか」

「かしこまりました」

 

 ロクサーヌがドアを開けたときに廊下の明るさで、部屋の中が少し確認出来たが床が血で汚れているようだった。

 

 火をつけたカンテラを持ってくると、その部屋の様子が確認できる。

 

 うわぁ……。

 血を踏んだ靴で部屋に戻ったせいで足跡がついてしまっている。

 そして、俺たちも切り取った手を入れたリュックやバッグを持っていたせいで外套が血みどろだ。

 

「この外套は捨てるしかないか」

「いえ。大丈夫です。私にお任せください」

「それじゃあ夜も遅いがロクサーヌは掃除と洗濯を頼むな。俺は戦利品の確認をするからそれが終わってから寝ることにしよう」

「かしこまりました」

 

 血の臭いが部屋に染みついても困るので窓を開け俺たちは静かに作業に取り掛かる。

 

 アイテムボックス内の銀貨と強壮丸を全て取り出し床に置かれたシーツに置いていく。もとから持っていた巾着袋の銅貨とレベル9の男から奪った袋に入っている硬貨もそこに置いた。

 

 そして、逆にその中から金貨を探しアイテムボックスへ入れていく。

 目についた金貨を全て入れ終わると盗賊のアジトで行ったように硬貨をまとめてアイテムボックスへ流し込み、弾かれた銅貨を分けておいた。

 入らなくなったところで残った硬貨を選別だ。

 お。金貨もまだ残っているな。

 

 

 

 アイテムボックスと選別して置いている分を合わせて金貨が三十一枚、銀貨が三百十五枚、銅貨が五百五十六枚。合計三十四万二千五十六ナール!

 とんでもないことになってんな!

 今すぐにでもセリーが買える額だ。まあ、セリーはまだ奴隷になっていないんだろうが。

 家もすぐに契約できる。明日は住居の準備だな。

 

 床の掃除を終えて洗濯をしているロクサーヌに声をかける。

 

「ロクサーヌ、ちょっといいか?」

「はい。なんでしょう?」

「臨時収入があったおかげで家を借りる算段が付いた。明日はクーラタルへ行き家を借りよう。そのあとは家具類や日用品の買い出しだな」

「はい。家を借りた後の家事については私にお任せください」

「ロクサーヌには頼りっぱなしだな、本当にありがとう」

「ご主人様……。頼りにしていただけて嬉しいです……」

 

 感謝を述べると彼女は感激したように瞳を潤ませていた。

 

 

 

 

 少しの間見つめ合い笑顔を交わし合ったところでお互い作業に戻る。

 

 さて、俺は確認を続けないとな。

 

 他にはスロット付きのレイピアが一本、鉄の剣が一本、銅の剣が二本、鉄の鎧が二個、皮のジャケットが二個、皮の靴が四個か。

 

「ロクサーヌ、度々すまない」

「大丈夫ですよ、ご主人様。何かありましたか?」

「盗賊のアジトから手に入れたこのレイピアはロクサーヌが使ってくれ。今持っているシミターと交換しておこう」

「よろしいのですか?」

「ああ。なるべくいい装備品にしておくべきだからな」

「ご主人様、ありがとうございます」

 

 レイピアとシミターを交換すると彼女は再び洗濯に戻る。

 

 続きだ、続き。

 マストでアイテムボックスに入れるのは金貨だ。これは表に出しておくべきではない。

 銀貨については全て収まらないためアイテムボックスに入れるのは他の嵩張るものを優先していこう。

 

 ロッド、銅の槍、鉄の剣、銅の剣二本、鉄の鎧二個、皮のジャケット二個、皮の靴四個、盗賊のバンダナ、強壮丸七個、黒魔結晶四個をアイテムボックスへ移す。

 シミターは舐められないための威圧用として俺の腰に差しておくから他の装備品と一緒に置いておくか。

 赤魔結晶はどうせリュックに入れるのだからアイテムボックスには入れないでおこう。

 残りの空きスタックに銀貨を入れ、入りきらなかった分と銅貨をそれぞれ別の巾着袋に入れておく。

 シミターをクローゼットに、赤魔結晶と巾着袋を鍵がかかる方のクローゼットにしまいアイテム整理を終えた。

 

 ロクサーヌがまだ洗濯を続けているので今のうちにジョブの変更を済ませておこう。

 明日は朝のうちに騎士団でインテリジェンスカードの懸賞金を確認しに行くが、その際のジョブはやはり戦士にしておくべきだろう。

 魔法使いや英雄は論外だとして探索者でも昨日ジョブ変更をしたんだなと印象に残ってしまうかもしれない。

 ただでさえ自由民で盗賊を大量に狩った人物として覚えられているだろうに、昨日の今日でまた盗賊のインテリジェンスカードを持ち込むのだ。これ以上記憶に残るような真似は不味いだろう。

 獲得経験値二十倍を外しファーストジョブとフォースジョブを入れ替えた。

 

 彼女の様子をうかがうとたらいが真っ赤に染まっている。

 あの小さなたらい二つでは血を落としきることができないようだ。

 宿の井戸を使わせてもらうか?

 

 ……いや、だめだな。血で汚れた衣類を洗っているなんていくらなんでも怪しすぎる。

 迷宮でウォーターウォールを使うか。

 

 ロクサーヌへ近づき小声で尋ねる。

 

「迷宮でウォーターウォールを使って洗うか?」

「ご主人様が大変ではないですか?」

「いや、ロクサーヌが人や魔物の場所を確認してくれるから問題ない」

「では、お願いできますか」

「ああ。任せてくれ」

 

 

 ファーストジョブを戦士にしたせいでデュランダルを出すにはボーナスポイントが足りない。

 まあ、今回は魔物をほとんど狩らないだろうから経験値効率は気にしなくていい。フォースジョブにしておくか。

 フィフスジョブをフォースジョブに変え、捻出したポイントを振りデュランダルを出す。

 そして、再度装備品を身につけ赤魔結晶を持ち、部屋の窓を閉めてから迷宮へと移動した。

 

 

 

 

ベイルの迷宮

一階層

 

 

 

 

 

「ロクサーヌ、人も魔物もいないところへ頼む」

「はい。ご主人様」

 

 

 

 最初にウォーターウォールで口を濯ぎうがいをしてから水を飲む。

 

「ふぅ」

 

 一息ついた気分だ。

 

 そして、ロクサーヌにも同じように勧める。

 それが済むと彼女はウォーターウォールを利用して外套とリュック、それからバッグとたらいを濯ぎコイチの実のふすまを利用して血を落とし始めた。

 

 その間俺は周囲の警戒だ。

 まあ、俺が気付くより先にロクサーヌの鼻が気付くんだろうがそれでも警戒していれば即応できるはずだしな。

 

 

 

 ロクサーヌに乞われ何度かウォーターウォールを出しつつ警戒を続けていると、しばらくして声を掛けられた。

 

「ご主人様、お待たせいたしました。洗濯が終わりました」

「血は問題なく落ちたか?」

「はい。ご主人様が似合うと言ってくださった外套には汚れ一つありません」

 

 あーもー。可愛すぎるー!

 好き! 大好き!

 

「俺が選んだものを気に入ってくれてありがとうな。それじゃあ念のために魔物を二匹狩って帰るか。案内を頼む」

「はい。お任せください」

 

 サクッとニードルウッド二匹を倒しワープゲートを開く。

 

 

 

 

 

ベイル亭五階

ダブルルーム五一七号室

 

 

 

 

 

 部屋に戻ると荷物と装備品を片付け、洗濯物を干してからベッドへ入る。

 俺に続きベッドへ入ってきたロクサーヌを抱きしめそのままキスをする。

 彼女の口の中に舌を侵入させると歓迎するようにそのまま吸ってきた。

 それが落ち着くと全力でお互いの舌を絡め合う。

 

「ロクサーヌ。これからは一日の終わりはロクサーヌとのキスで締めくくりたい。いいだろうか?」

「はい。お願いします。ご主人様とのキスはとても気持ちがいいです」

「受け入れてくれてありがとう。俺もロクサーヌとのキスは最高に気持ちいい」

 

 キスが終わるとそのまま抱き合い眠りにつく。

 

 長い一日だった。とても長い一日だった。

 だが、間違いなく今まで生きてきた中で一番幸せな一日だったな……。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

戦士Lv13 英雄Lv16 探索者Lv18 魔法使いLv19

 

BP振分 残BP:66

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

鑑定:1

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

ワープ:1

ジョブ設定:1

 

所持金:342,056ナール

 

春の2日目

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