異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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175 首飾り

 

 

 

 

 

ボーデ

宮城

 

 

 

 

 

 ゴスラーは開錠するとこちらへ振り向いた。

 

「あの後、購入した物や団員が使用しなくなった物もあったはずです。時間のことは気にせず、どうぞごゆっくりお探しください」

 

 マジで!? 鑑定をフル活用しないと!

 

「ありがとうございます。お言葉に甘えてじっくり確認させていただきます」

 

 さあ、気合を入れていくぞ!

 

 彼と共に武器庫へ足を踏み入れる。

 

 

 

 あれから増えたというのなら、面倒だが一から確認しなおさないと。

 とりあえず確実にスロット付きがあるオリハルコンの剣は後回しにして、まずは手前から順番に探していこう。

 

 

 

 一つずつ念入りに鑑定をかけていくが結果は芳しくない。

 

 スロットが一つの竜革やダマスカス鋼でできた装備品はあるにはあるが、せっかくの機会なのだ。それらを選ぶわけにはいかん。

 それならスロットが一つのオリハルコンの剣を二つ選ぶ方がマシだ。

 

 うーん……。プレートアーマーねぇ。

 以前からおいてあったが、セリーによるとダマスカス鋼のプレートメイルよりは性能が上らしい。

 でも、スロットが一つだけだしなぁ。

 

 

 

 鑑定を繰り返していたところ、宝石の付いたネックレスに目が留まった。

 

 金色のチェーンが花のような形に編まれ、そこに赤、青、緑、黄色の宝石が据えられている。

 まるでクレオパトラが身に受けていそうな、幅広でゴージャスなネックレスだ。

 

 前回はなかったよな? これも装備品なのか?

 

 まあいいや。確認してみよう。鑑定っと。

 

首飾り アクセサリー

スキル 空き 空き 空き 空き 空き

 

 情報を確認した瞬間、叫び声を上げそうになったのを必死で堪える。

 

 ヤバい! これはヤバい!

 

 これほどの一品となると、攻撃力二倍や魔法攻撃力二倍といったスキルを付けるわけにはいかないため、長期間寝かせておくことになるだろう。

 しかし、絶対に確保しておかなければならない。

 現在所有している知力五倍が付く慈母ヤギのスキル結晶とともに、腕力五倍、攻撃力五倍、魔法攻撃力五倍を付けて運用すると、とんでもないことになるぞ。

 

 それを手に取りゴスラーへ告げた。

 

「一つ目はこれをお願いします」

「ほう。それを選ばれますか」

「ええ。これほど美しいアクセサリーなのです。私のパーティーメンバーも喜ぶことでしょう」

 

 適当なことを言ってごまかしたところ、彼の顔に笑みが浮かぶ。

 

「なるほど。女性に贈るのでしたらこれは間違いなく喜ばれることでしょう」

 

 まあ、装備するのは俺で、彼女たちは戦力が強化されることを喜ぶって意味なんですけどね。

 

 

 

 その後も鑑定を続けるが目ぼしいものは発見できず、オリハルコンの剣の確認に移ろうかと考えたところでスタッフが目に入った。

 

 まあ、念のため確認しておくか。

 

スタッフ 杖

スキル 空き 空き 空き 空き

 

 その情報を認識して一瞬思考が止まる。

 

 

 

 いやいやいや。おかしい、おかしい。

 なんでスタッフに空きスロットが四つも付いてるんだ!? 最大三個のはずだろ!? 原作にスロット四つのスタッフなんて出てきてない!

 

 

 

 ……落ち着け。ゴスラーがすぐそばにいる。冷静に考えろ。

 

 動揺している気持ちを落ち着かせるため、自分に言い聞かせる。

 

 これは原作とは異なる要素の一つなのだろうか。それとも、あの世界でもそうだったが作中に出てきていなかっただけなのだろうか……。

 

 考えてみればスタッフは公爵夫人であるカシアや騎士団長のゴスラーが装備している杖だ。

 それに同じワンド系の武器であるロッドの最大スキル数は、おそらくミチオが持っていたものに付いていた三。

 魔法の威力がだいぶ上がるというのに、最大数が同じなのは違和感がある。

 もしかしたらあの世界でもそうだったのかもしれない……。

 

 

 

 いや。考えたところで答えなんか出ない。いつものように棚上げだ。

 そんなことより、いま重要なのはこれを選ぶか否か。

 

 オークションで入手したスタッフは五万ナールちょっと。ルークによると高い時には八万ナールほどで落札されているらしい。

 これが店頭価格となれば、二十万から三十万ナールくらいだろう。

 一方、オリハルコンの剣はオークションに出したとしたら、百万ナールはくだらない代物。

 それに、貴重すぎて一般の店舗に出回ることはないため、店頭価格なんてないも同然だ。

 

 普通に考えるならオリハルコンの剣一択だろう。考えるまでもない。

 しかし、なまじスキルスロットが見えているだけに迷いが生じる。

 

 どうするべきだ?

 

 製造難易度は間違いなくスタッフの方が低いはず。

 となると、セリーが同じ物を作れるようになるのはこちらの方が早いだろう。

 それに、ルティナには聖槍を装備させるつもりだし、予備があってもそれほど意味があるとは思えない。

 

 いやでも、聖槍との交換に用いるスタッフはバラダム家からの放出品を使うつもりだったが、そもそも奴らと出会わなかったり、サボーを倒したところで聖槍も含めた装備品を放出するとはかぎらないし……。

 

 いや、でも、うーん……。

 

 

 

 ……もういいや。自分じゃ選べない。神様に聞いてみよう。

 ついでにプレートアーマーも含めてっと。

 

 どれにしようかな、天の神様の言う通り――。

 

 

 

 装備品を選び終え、武器庫を出てエンブレムの前まで移動すると、見送りをしてくれたゴスラーが声を発する。

 

「アユム殿、あなたのおかげで我が領はハインツ一味による犠牲者をほとんど出すことがありませんでした。領内の安全を守る騎士団長として感謝申し上げます」

 

 そう言って頭を下げた。

 

「もったいないお言葉、痛み入ります。偶然でしたがお役に立てたようで何よりです」

 

 頭を上げた彼と握手を交わし、ワープゲートを開く。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅へ戻ると愛しい娘たちの姿が目に入った。

 彼女たちは俺の帰宅に気が付くと綺麗なお辞儀を披露する。

 

 うん。実に美しい。

 挨拶の声もそろっていたし本当にすごいわ。練習でもしてるのかね?

 

 そんなことをぼーっと考えていたらロクサーヌに問いかけられた。

 

「ご主人様、ずいぶん時間がかかっていたようですが、何かあったのですか?」

「詳しくは食事のときにね。部屋に荷物を置いたらすぐに行くからダイニングで待ってて」

 

 二人の返事に頷きを返し二階へ上がる。

 

 

 

 自室で巾着袋の中身を確認したところ、金貨が三十九枚、銀貨が五十九枚で合計三十九万五千九百ナール。

 一見多く感じるが、ソマーラの村で倒した盗賊の懸賞金が二人分で十六万ちょっと。そこまで有名ではない奴らでその額だ。

 それなのに、音に聞こえし盗賊団のハインツ一味十二人分。しかも頭目まで含んだ上で三十九万ナールってのは少なく感じるぞ。

 ハルツ公が疑問を覚えたのも無理はない。

 

 ……まあ、シモンの懸賞金に期待するとしますかね。

 

 金貨はアイテムボックスに、銀貨は巾着袋に戻して引き出しにしまい鍵を掛けた。

 

 

 

 ダイニングへ移動し、話をする前にまずはロクサーヌとセリーが作ってくれた朝食をいただく。

 

「うん。赤身の唐揚げもカツもめちゃくちゃ美味しいよ。二人ともありがとう」

「ふふ。ご主人様にお喜びいただけて嬉しいです」

「はい。ロクサーヌさんと頑張った甲斐がありました」

 

 その言葉を聞いた彼女たちは顔を見合わせて喜んでいる。

 本当に可愛いなぁ。

 

 

 

 食事をとりながら、先ほどボーデの宮城で起こったことを話すと、ナイスなリアクションで聞き入ってくれた。

 ほんと、聞き上手な娘さんたちだこと。

 

「それにしても明後日ですか……。急な話ですね」

 

 ロクサーヌの言葉に口の中の物を飲み込んで答える。

 

「うん。でも、君たちがペルマスクでコハクの注文を受ける日だしちょうどいいさ」

「なるほど。そうかもしれません」

 

 安心したのか、ロクサーヌの表情が緩む。

 

「それにやること自体は元々の予定と変わらないから問題ないと思うよ」

「セルマー伯の居城でエンブレムの入った垂れ幕を見ておくだけでいいのですよね? 確かにそれなら問題なさそうです」

 

 セリーはそう言って納得したように頷いた。

 

 おそらくこれでセルマー伯爵を攻めるときに声がかかるだろう。

 ルティナの加入に少しずつ近づいているはずだ。

 

 

 

 考え込んでいると、彼女はそのまま話を続ける。

 

「私としてはそれよりも空きスロットが五つも付いている首飾りの方が気になります。どのようなスキル結晶を融合するのですか?」

 

 鍛冶師としての血がさわぐのか、セリーの目は好奇心で輝いていた。

 

 アイテムボックスから首飾りを取り出し、ロクサーヌに手渡すと二人は魅入られたようにそれを見つめる。

 

「とても素敵ですね……」

「はい。ため息が出るほどの美しさです」

 

 ロクサーヌの呟きにセリーも頷き同意していた。

 

 

 

 彼女たちは一頻り眺めてから首飾りをこちらへ戻す。

 それをアイテムボックスへしまい、先ほどの問いに答える。

 

「ここまですごい装備品はそうそう見つからないだろうからね。まずは手持ちの慈母ヤギのスキル結晶で知力五倍を。それから、トロールの最上位種が残すと思われるスキル結晶で腕力五倍かな」

「トロールの最上位種……。バロールトロールですか……。稀にオリハルコンを残すので、いずれ何度も挑むことになりそうです」

 

 バロールトロール?

 

「へー。トロールの最上位種はそんな名前なんだ?」

「はい。バロールトロールは通常攻撃も強力だそうですが、会心の攻撃はそれとは比較にならない威力を誇り、直撃すると八十階層で戦える者であっても即死しかねないそうです」

 

 こわっ! キャラクター再設定なしでそんな奴に挑むなんて、頭がイカれてるぞ。

 

「そして、さらに脅威となるのがスキル攻撃で、ひとたび発動すると視界に映ったすべての敵に壊滅的なダメージを与えると言われています。しかも、後頭部にも目を持つため、逃れる術はありません」

 

 えー! マジで!? それってアイルランド神話のバロールじゃん!

 バロールトロールのバロールって、あのバロールがモデルってこと!?

 

 

 

 あまりにも凶悪な能力に絶句していると、不敵な笑みを浮かべながらロクサーヌが口を開く。

 

「最上位種というからにはそのくらいの力は持っていて当然でしょう。そうでなければ拍子抜けというものです。ご主人様、戦える日が待ち遠しいですね」

 

 全然待ち遠しくないんですが……。

 

 

 

 彼女の言葉にドン引きしたものの、話が途中だったことを思い出す。

 

「えっと。それに加えて、いつかはサイクロプスと鳥の最上位種のスキル結晶で攻撃力五倍と魔法攻撃力五倍を付けたいかなって……」

 

 バロールトロールのエグイ能力を聞いてしまった後なだけに、さらに上の階層に出現するボスのスキル結晶については入手できる自信がなくなってしまった。

 

「とても良い組み合わせだと思います。私もそのときに向けて、隻眼になれるよう努力しなければいけません」

 

 セリーはそう言うと両手をぎゅっと握りしめる。

 

 可愛いな、おい。

 怖気づいていた心が再び立ち上がっていくようだぞ。

 

「そうですね。サイクロプスや鳥の最上位種がどんな能力を持っていようとご主人様の敵ではありません。なるべく早くそれらのスキル結晶を入手できるよう、私たちも頑張ります」

 

 いや、あの、安全に気を配りながら一歩一歩進んでいこうよぉ。ね? ね?

 

 

 

 話が一段落着いたところで、セリーがさらに問いかけてきた。

 

「スキルスロットが四つのスタッフはどのように用いるのですか?」

 

 えーっと、それは俺じゃなく神様に聞いてほしいかなぁって……。

 

 

 

 それから明後日の予定について話し合う。

 そのときはファーストジョブが探索者となるため、ワープで移動するわけにはいかない。

 自宅から徒歩でクーラタルの冒険者ギルドへ行って、そこからボーデの冒険者ギルドへ飛び、さらに歩きでハルツ公の宮城へ行く必要がある。

 なので、早朝の探索はナシにして、朝食を食べたら彼女たちをペルマスクへ送り、一度自宅に戻ることにしよう。

 面倒くさいが余計な疑念を持たれないためだ。一日だけだし我慢我慢。

 

 話がまとまったところで彼女たちが作ってくれた料理を楽しんだ。

 

 

 

 準備を整えて玄関に集合したところで、リュックからハルツ公爵家のエンブレムが刺繍されているワッペンを取り出し、ロクサーヌへ差し出す。

 

「今日は帝都で過ごすんだよね? ないとは思うけど万が一、貴族や富豪にからまれるようなことがあったらこれを見せて、ハルツ公爵家の関係者であるアユムの身内だと告げるんだ。ハルツ公に借りを作ってしまうことになるけど、そうすれば穏便に済むと思う。いいね?」

 

 たいていの場合はそれで引くだろうし、万が一引かなかった場合は公爵に間に入ってもらい決闘で片を付ければいい。

 先ほどの彼らの様子ならそのくらいのことはしてくれるだろう。

 

 彼女はその言葉を聞くと嬉しそうに微笑みながらそれを受け取った。

 

「ふふ。ご主人様は本当に心配性ですね。ですが、ご心配いただけていることがとても嬉しいです」

 

 そして、アイテムボックスから銀貨五枚を取り出す。

 

「それからクーラタルへ戻るフィールドウォークの代金と飲食代を渡しておくから好きに使って。あっ、これは返す必要はないからね」

 

 すると、ロクサーヌは差し出している手を、両手で包み込む。

 

「……ご主人様。本当にありがとうございます。私は間違いなくこの世界で一番の幸せ者でしょう」

 

 何を言う。君に出会えて共に過ごしている俺の方が世界一の幸せ者だから。

 

 彼女が落ち着いたところでワープゲートを展開した。

 

 

 

 

 

ベイル

アランの館

 

 

 

 

 

 顔見知りである男性商人に案内されいつもの部屋で待っていると、程なくしてミリアとアランが入ってくる。

 彼女の顔には輝くような笑みが浮かんでおり、面会に来たことを喜んでいるのが見て取れた。

 

「ご主人様、おねえちゃん、セリーさん。あいにきた、うれしいです」

 

 天真爛漫な笑顔がめちゃくちゃ可愛いわぁ。

 それに、流暢とは言い難いがちゃんと話せるようになっている。

 本当にここの教育はたいしたものだ。

 

「俺たちもミリアの元気な顔を見ることができて安心した。それに、ブラヒム語もだいぶ上達しているぞ」

「ありがとうございます」

 

 それを聞くと白い歯がこぼれ、特徴的な犬歯が顔をのぞかせる。

 丸っこくて愛らしい顔にそれが映え、実に魅力的だ。

 

 

 

 挨拶を済ませたアランが部屋を去り、俺たちだけになったところでロクサーヌが葉っぱに包まれた朝食を渡したところ、笑顔の輝きがさらに増す。

 

「魚をありがとうございます!」

 

 魚に関してはめっちゃ流暢やん。

 

 我慢させるのはかわいそうなので、食べるように促すと大急ぎで葉っぱを取り除いていく。

 そして、赤身の唐揚げとカツを見てさらにギアを上げた。

 

「これ、なに、ですか!?」

 

 顔をガッとロクサーヌの方へ向け、大きな声で疑問を投げかける。

 彼女はほほえましい物を見るような表情を浮かべ、その問いに答え始めた。

 

 まだブラヒム語だけでは完全に理解することはできないようで、ロクサーヌの説明はバーナ語交じりだ。

 一頻り説明を受けたところで彼女は瞳をキラキラさせながら俺を見つめる。

 

「ご主人様、魚、たべる、ほうほう、すごいです!」

 

 魚料理のレパートリーがすごいって言いたいのかな?

 まあ、今回作ったのはロクサーヌとセリーだけどね。

 

「ありがとう。それよりお腹がすいているだろう? 遠慮せずに食べるといい」

「はい! ありがとうございます!」

 

 良い子のお返事をすませ、手始めに唐揚げを口に入れたところで、彼女の動きがピタッと止まる。

 美人で可愛い娘が目をかっぴらき、身体を全然動かさないのに、咀嚼だけは続いているという、めちゃくちゃシュールな光景に戸惑ってしまう。

 

 おいおい。前回みたいに叫ばないだろうな?

 

 不安になりながら様子をうかがっていると、ミリアは再起動して貪るように唐揚げを口に入れていく。

 

 えっ? それだけを食べるの?

 

 

 

 唐揚げだけを食べ続けてしまったため、あっという間になくなり彼女の口から切ない声が漏れた。

 

「あぁ……」

 

 えー。恋人と永遠の離別を体験したかのような声じゃないのさ。

 

 一緒に彼女の様子を見守っていたロクサーヌとセリーの顔には苦笑が浮かんでおり、おそらく俺もそうなっているだろう。

 

「ミリア、赤身カツの方も食べてみてください。そちらも美味しいと思いますよ」

 

 セリーが声を掛けると、コクリと頷きそれを手に取る。

 そして、彼女はまるでリピート再生したかのように、同じ行動を繰り返した。

 

 食事が終わったところで、三人は楽しそうに話し始める。

 

 彼女たちの共通の話題といえばこの商館のことなので、おばさんの説明は分かりやすくて教え方が上手いだの、優しくてよく声を掛けてくれるだのと喋っていた。

 そして、段々話がズレていき、お互いの故郷での話に変わっていく。

 

 女の子たちが仲良さげに話している光景って、なんでこんなに微笑ましいんだろう。

 本当に日常系アニメを観ているような気になるぞ。

 きっと『いせはれ!』は覇権アニメだな。うん。

 

 歓談している様子を見ているうちにふと気づいた。

 

 そういえばミリアのレベルをチェックしていない。ちゃんと確認しておかなければ。

 んじゃ、鑑定っと。

 

ミリア ♀ 15歳

戦士Lv19

装備 皮の靴

 

 おお! 前回から3上がってる! これは二十六階層で狩りを行っているおかげだろうか?

 この調子だと割と早く暗殺者を取得できるかもしれない。

 でも、そうなるとロクサーヌを戦士にしておくのはもったいない気がするなぁ……。

 

 原作のレベル推移を参考にした当初の計画では、ミリア加入前にロクサーヌが騎士を獲得し、俺を村長に任命してもらってから巫女になってもらうつもりだった。

 つまり、春の五十五日目までにそれは終わっているはずだったのだ。

 

 だが、現在のロクサーヌのレベルは25。まだまだかかりそうな上に、ミリアと6しか変わらない。

 それなら騎士はミリアに任せて彼女は巫女になってもらうべきだろうか?

 

 でも、冒険者のジョブを切り替えるせいで、ミリアがパーティーから外れているんだよなぁ。そのせいで今後は彼女へ経験値が入らなくなってしまう。

 そうなるとロクサーヌをこのままにした方が良い気も……。

 

 うーん……。夜にでも本人へ確認してみよう。

 

 それにしても、俺のレベルはミチオのそれを上回っているのにもかかわらず、ロクサーヌとセリーのレベルは原作の同時期とほとんど変わらないんだよなぁ。

 以前にも疑問を覚えたが、どうしてこんなことが起こっているんだろう? 実に不思議だ。

 

 考え事をしながら、笑顔で会話を楽しんでいる彼女たちの様子を眺めていると、アランが部屋に戻ってくる。

 

 残念。今日はここまでか。

 

 ミリアに別れを告げようとしたところ、こちらを見つめていた彼女の方が先に声を発する。

 

「ご主人様。ブラヒム語、がんばる、ます。いえにかえれる、たのしみです」

 

 そんないじらしい言葉と無邪気な笑顔を向けられたら、もっともっと好きになってしまうじゃないか!

 まったく。君たちは俺を惑わせすぎだぞ。

 

「うむ。俺たちもミリアが戻ってくるのを楽しみにしているからな」

「はい!」

 

 彼女の笑みを目に焼き付け商館を後にした。

 

 

 

 

 

ベイル

市場通り

 

 

 

 

 

 三人でミリアのブラヒム語の上達具合について話しながら市場通りを歩く。

 原作では加入して九十日以上経過しても流暢に喋ることはできず、意思の疎通に問題があった。

 それを考えると本当に素晴らしい成果だ。

 

 神様、仏様、アラン様。ありがたやー、ありがたやー。

 

 しかし、今後は彼の商館へ足を運ぶ機会も少なくなるだろう。

 ベスタはオークションでの落札だし、ルティナはセルマー伯討伐に伴う譲渡。さらに、二人ともブラヒム語には何の問題もないため、教育してもらう必要はない。

 彼女たち以外の奴隷を購入するつもりもないし、本当にもう利用することはないかもな。

 

 あっ。メイド服の件があったか。

 

 なるべく差を付けたくないので、一着目のそれは全員アランのところでお願いしよう。

 二着目以降は帝都の高級服屋に依頼すればいい。

 

 うーん……。本当に今後の取引はベスタとルティナのメイド服だけかもしれない。

 

 だが、ロクサーヌと出会わせてくれたアランは、俺の四十五年の人生においてガチで一番の恩人だ。

 もし何かで頼られるようなことがあれば全力で力になろう。

 三割アップと三割引を使いまくる上に息を吐くように嘘を吐く男だが、せめてそのくらいのことはしなければ。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

冒険者Lv18 英雄Lv43 遊び人Lv39 魔法使いLv49 料理人Lv9

装備 竜燐の靴 身代わりのミサンガ

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

戦士Lv25

装備 強権のエストック 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

セリー ♀ 16歳

鍛冶師Lv21

装備 皮の靴 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

詠唱省略:3

必要経験値二十分の一:63

鑑定:1

ワープ:1

ジョブ設定:1

MP回復速度十倍:31

 

所持金:4,367,570ナール

 

春の57日目

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