異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

180 / 300
178 ワンポイントリリーフ

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

「おはようございます、ご主人様」

 

 目を覚ますと涼やかで美しい声が耳をくすぐる。

 

「おはよう、ロクサーヌ。昨日はすごかったけど体は大丈夫?」

 

 セリーと二人で過ごしたことに対する嫉妬があったのだろう。

 色魔を就けていた俺が押されてしまうほど何度も激しく求められ、お互いの体が解けて混じり合うような快感の末、彼女は気を失いそのまま眠りについた。

 無理をしたことで体に不調をきたしていたとしてもおかしくない。

 

「ふふ。何の問題もありません。ご主人様のお情けをいただいたことで、かえって調子がいいくらいです」

 

 サキュバスじゃないんだから、そんなはずないでしょうよ。

 

 でもまあ、無理している様子はないし、本当に問題ないのだろう。

 

 

 

 ロクサーヌと挨拶を交わしていると、逆サイドからも特徴的で愛らしい声が聞こえてきた。

 

「おはようございます、ご主人様」

「おはよう。セリーも体調は問題ない?」

 

 昨日はお昼前から夕方にかけて体を重ね合ったというのに、ロクサーヌの勢いに巻き込まれ彼女の方もノックアウトしてしまったからなぁ。

 

「はい。問題ありません。ロクサーヌさんの言う通り、普段より調子がいいです」

 

 んなわきゃないでしょ。

 

 いや? 本当にその可能性も?

 もしかしたら色魔のジョブには、愛し合った相手の体調を整える効果があったり?

 

 

 

 ……まあ、今考えることじゃないな。

 

 思索を打ち切り、朝の準備を始める。

 

 

 

 身支度を整えたらリビングへ集まり一日の予定を確認しよう。

 とはいえ今日は大きな予定がないため、迷宮探索についての話だ。

 

「今日からロクサーヌのジョブが巫女になる。それに伴いレベルも1に戻るので、いつも以上に気を付けて戦闘を行おう」

 

 そう告げると二人は表情を引き締め頷いた。

 

「それじゃあ、ジョブを変更するから少し待っててね」

 

 パーティー項目解除とパーティージョブ設定にポイントを振り、ロクサーヌのジョブ設定を開く。

 

戦士Lv25 村人Lv8 農夫Lv1 探索者Lv1 薬草採取士Lv1 商人Lv1 剣士Lv1 錬金術師Lv1 巫女Lv1 獣戦士Lv6

 

 あれ? 商人を取得してる?

 買う方はともかく、彼女が物を売ったことがあっただろうか?

 

 

 

 あっ。そうか。

 

 少し考え理由に思い至る。

 

 おそらくコハクのネックレスの売却だ。

 交渉はセリーが担当したのだろうが、その取引自体にロクサーヌも絡んでいるため、物を売ったと判定されたのだろう。

 

「あの……。ご主人様?」

 

 ロクサーヌの方を見ながら考え込んでいたため、戸惑ったような表情で声を掛けてくる。

 

「ごめん、ごめん。すぐに変更しよう」

 

 その言葉に答え、戦士と巫女を入れ替えた。

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

巫女Lv1

装備 身代わりのミサンガ

 

 オッケー。バッチリバッチリ、チリバツだ。

 

 そして、二人にも確認してもらうためにジョブ変更を開き、フォースジョブの遊び人を奴隷商人に入れ替える。

 

「ロクサーヌ、左手を出して」

「はい」

 

 差し出された細くしなやかで美しい左手へ念じた。

 

インテリジェンスカード操作

 

 彼女は左手から飛び出したそれに目を通し頷く。

 

「確かに巫女になっています。それに体も重くなりました」

 

 レベル25からレベル1へ落ちてるんだもんなぁ。

 

「戦闘は大丈夫? 無理なら階層を下げることにしよう」

「いえ。ご主人様が英雄のジョブを外した時ほどの影響はないので、まったく問題ありません」

 

 なるほど。普段はその状態で俺とセリーの攻撃をさばいてるんだ。ロクサーヌにとってはどうということもないのだろう。

 

 俺が納得したところで彼女はインテリジェンスカードをこちらへ向ける。

 

ロクサーヌ ♀ 16歳 巫女 奴隷

所有者 田川歩

 

 うん。問題なし。

 

 そして、セリーが確認したところでそれを左手へ収めた。

 

 よし。ミーティングはこんなもんかな。それじゃあ、今日も一日頑張りまっしょい。

 

 

 

 装備を整え玄関へ移動し、二人が来る前にジョブの設定とポイントの振り分けを行う。

 まずはジョブ設定画面を開き、ファーストジョブから魔法使い、英雄、遊び人、冒険者、料理人の順に変更しておいた。

 そして、料理人のアイテムボックスに入っている物を全て冒険者の方へ移し、それが済んだところで錬金術師に入れ替える。

 

 今日からしばらくの間、お世話になりやす。ロクサーヌを守っておくんなまし。

 

 次はボーナスポイントの設定だ。

 とはいえ選択の余地はない。MP回復速度十倍を外し、余ったポイントで獲得経験値二十倍にチェックを入れる。

 さらに鑑定とワープを入れ替えたら準備完了。

 

 

 

「ご主人様、お待たせいたしました」

「お待たせして申し訳ありません」

 

 考え事をしているとロクサーヌとセリーが二階から下りてきた。

 

「大丈夫。全然待ってないよ。それじゃあ、行こうか」

 

 二人が靴を履き替えたところでワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

二十六階層

 

 

 

 

 

 ベイルの迷宮へ移動したところでワープと鑑定の入れ替えを行う。

 そして、ロクサーヌへ向けて念じた。

 

メッキ

 

 MPが減る感覚はあったものの、何のエフェクトも発生しないため、ちゃんと発動しているのかがわからない。

 

 何気に初めての使用だったわ。

 

 本当なら超重要な防御スキルとなるはずだったのに、転移後数日で盗賊狩りによって大金を稼ぎ、掘り出し物の防具を見つけたため、こいつの出番がなくなってしまった。

 まあ、その効果を確かめようじゃないの。

 

 見せてもらおうか錬金術師のメッキの性能とやらを。

 

 同じように自分とセリーにもメッキをかけたところでロクサーヌに告げた。

 

「では、魔物の所へ案内してくれ」

「はい。お任せください」

 

 尻尾を揺らしながらウキウキで通路を進む彼女の後ろについて歩き出す。

 

 

 

「この先にいます!」

 

 通路に響き渡るその声に反応し、腰に差したスタッフを引き抜き前方へ向けた。

 

ハーフハーブ

ハーフハーブ

ハーフハーブ

グミスライム

 

 そして、魔物が見えたと同時に走り出したロクサーヌに合わせ魔法を放つ。

 

ファイヤーストーム

ファイヤーストーム

 

 火の粉が舞い、四匹の魔物の体が炎に包まれると、彼女はヘイトを取るために攻撃を入れ始める。

 レベルが1になっているというのに躊躇するそぶりがまったく見えない。さすがロクサーヌ。さすロクだ。

 

 動きが鈍くなっているはずなのに、普段と変わらず最小限の動きによる回避を行うため、全然弱体しているように感じない。

 問題なく一人で全ての魔物の気を引いている。

 

 本当に頼りになるわー。

 

 ハーフハーブの鞭のように振るわれている葉っぱ。そしてスライムの飛び掛かりを、剣による切り払いと盾でのいなしを織り交ぜながら、涼しい顔でかわし続けていた。

 そして、ときおり発生する魔法陣についても的確に把握し、発動前に潰している。

 

 いつものことだけど、どうやって背後にいる魔物のスキル使用を察知しているんだ?

 やっぱり原作より動きが極まっている気がするぞ……。

 

 セリーと共にその様子を呆然と見つめていたところ、リキャストタイムが明けていたことに気が付いた。

 

 いけね! さっさと片付けないと!

 

 ロクサーヌが被弾すると不味いため、慌ててダブルスペルを使用する。

 

 

 

 魔物が倒れ、ドロップアイテムを拾っているロクサーヌへ尋ねた。

 

「魔物の攻撃がかすったりしていないか? その場合メッキが切れているはずなのでかけなおしが必要になるが、どうなんだ?」

 

 すると、彼女はこちらへ振り向き、笑みを浮かべながら弾むような声で答える。

 

「大丈夫です。あの程度の攻撃が当たることなどありません」

 

 ですよねー。私もそうじゃないかと思っていました。

 

 ……いや、すごすぎん?

 

 

 

 ドロップアイテムをしまい込み、一応ロクサーヌに鑑定をかける。

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

メイン:巫女Lv2

装備 強権のエストック ダマスカス鋼の盾 耐風のダマスカス鋼額金 オラクル竜革ジャケット 古代樹の手甲 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

 うんうん。オッケー、オッケー。

 

「では次の魔物へ頼む」

「かしこまりました」

 

 

 

 程なくして再び魔物の群れに遭遇したが、その編成を見て舌打ちが出そうになってしまった。

 

ハーフハーブ

ハーフハーブ

グミスライム

ブラックフロッグ

ケープカープ

 

 他の近寄ってくる魔物とは違い、ケープカープは距離を取って魔法を使おうとする。

 ロクサーヌのレベルが低いこの状況ではなるべく出会いたくない。

 

 おっと。余計なことを考えてないで攻撃だ。

 

ファイヤーストーム

ファイヤーストーム

 

 魔物共が身体に炎を纏わりつかせながら動き出すも、ロクサーヌが攻撃を加え俺へのヘイトを剥がしていく。

 だが、ケープカープは彼女から一気に距離を取り、ブラックフロッグはピョンピョン跳ねながらこちらへ向かってきた。

 セリーがブラックフロッグの動きを抑えたものの、ケープカープを完全にフリーにしてしまっている。

 

 不味い!

 

 炎に包まれたその体の下に魔法陣が展開されていく。

 そして、目の前が緑に染まり、一拍遅れて痛みに襲われた。

 

メッキ

 

 次に備えてロクサーヌへメッキを飛ばし、リキャストタイムが明けたため再び魔法を放つ。

 

ファイヤーストーム

ファイヤーストーム

 

 

 

 魔法のエフェクトと共に魔物の姿が消えたところで確認を行う。

 

「ロクサーヌ、体は大丈夫か?」

「はい。大丈夫です。何の問題もありません」

 

 彼女は笑いながらそう言うと、グッと力こぶを作る真似をした。

 

 可愛いな、おい。

 

 すると、セリーが頷きながら口を開く。

 

「ケープカープが放ったのは風魔法でした。ロクサーヌさんは耐風のダマスカス鋼額金を装備しているので、それほどダメージを受けなかったのでしょう」

 

 なるほどなぁ。どうやら運が良かったようだ。

 

 それにしても、以前から気になっていたのだが、どうして魔物が放つ全体攻撃魔法には派手なエフェクトがないのだろう?

 人が放つそれは各属性に対応したエフェクトが発生して魔物の体を覆い、それがしばらく継続する。

 対して、魔物の全体攻撃魔法は各属性に対応した色に一瞬だけ光り、直後にダメージを受けるだけ。

 いや。そもそも魔物は詠唱をしておらず、魔法陣を展開することで魔法やスキルを使用している。

 それなのに、詠唱中断で潰すことが可能だ。

 

 うーん……。まあ、考えたところで答えなんか出ない。いつものように棚上げにしておこう。

 

 

 

 おっと。魔法を食らっているんだ。回復をしておかなければ。

 

「回復を行うので少し待っていてくれ」

 

 いつものようにフィフスジョブを僧侶に変えようとしてハタと気付く。

 

 錬金術師を外したらロクサーヌにかけたメッキが解けるじゃん。

 

 ファーストジョブの魔法使い、効果が大きい英雄、アイテムボックスに物が入っている冒険者を外すわけにはいかないため、遊び人と入れ替えロクサーヌに手当てを使用する。

 

「セリーはどうだ?」

「大丈夫です。私には必要ありません」

 

 俺の方も問題ないのでサードジョブを遊び人に戻した。

 

 

 

 これ、何気に手間だよなぁ。

 割と時間を取られるため、時間当たりの経験値効率がだいぶ落ちてしまうぞ……。

 かといって回復薬を使うのももったいないしなぁ。

 

 ん? あっ。この階層ではいくらでも万能丸が手に入るので、それを使うのはありか?

 あー。でも、被弾するたびに万能丸を飲んでいたらお腹がいっぱいになるかね?

 どのくらい攻撃を食らうかによるよな。どんなもんだろう?

 

 二人へその旨を尋ねたところ、彼女たちの顔が驚愕の色に染まる。

 

「たいしたことないダメージを受けただけで万能丸を使用するのですか……」

 

 ロクサーヌがそう呟くと、セリーもそれに続いた。

 

「あの、そんなことをするのは、少しのダメージで大げさに騒ぎ立てるような甘やかされて育った貴族の子女だけで、まともな貴族や普通の人はそんなことはしません。それをするくらいなら、MP回復の時間を短縮するために飲む方が効果的ではないでしょうか」

 

 言われてみれば確かにその通りだ。万能丸はMPも回復するので、それなら大幅な時間短縮が可能だろう。

 ただ、懸念事項はそれをすることで食事をとることができなくなるんじゃないかということだ。

 

 改めてそのことを尋ねたところ、かぶりを振ってセリーが答える。

 

「ご心配には及びません。アイテムの薬は飲みこんで効果が表れた時点で消えてしまいます」

「そうなのか?」

「はい。昔の偉い学者さんが死刑囚に回復薬を飲ませた上で、胃を切り開いて内容物を確認したところ、回復薬は見つからなかったそうです」

 

 こわっ! 昔の偉い学者さん、こわっ!

 

「これを行なったのは、以前お話しした滋養錠によって再生された腕から出現するインテリジェンスカードについての研究を行なったのと同じ人物です」

 

 やばっ! そいつ、やばっ!

 そのマッド野郎、『科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース』とか言うだろ、絶対。

 

 

 

 ま、まあ。お腹が膨れる心配はいらないってことは分かった。

 あとは依存性や耐性の問題があるか。使いすぎて薬物中毒になったり、効きが悪くなっても困るぞ。

 

 その旨を確認したところ、二人ともそんな話は聞いたことがないらしい。

 まあ、薬学的な効果ではなく、不思議なパワーで治っているのだ。そういうものなのだろう。

 

 んじゃ、続けていきますかね。

 

 

 

 

 

 その後は朝食と昼食を挟みつつひたすら狩りを行う。

 MP回復の時間を取られなくなったため、レベル上げに集中することができ、ロクサーヌがいつもの言葉を発したときには相当な数の魔物を倒していた。

 

 とりあえず、俺のレベルから確認してみよう。

 

田川 歩 男 18歳

魔法使いLv49 英雄Lv43 遊び人Lv40 冒険者Lv23 錬金術師Lv25

装備 ひもろぎのスタッフ ダマスカス鋼の盾 身代わりの硬革帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 竜燐の靴 よりしろのイアリング

 

 魔法使いが50に到達しなかったのは残念だが、遊び人が上がっているし、冒険者と錬金術師のレベルは大幅に上がっている。うん。問題なし。

 というか、今日だけで錬金術師が冒険者のレベルを抜いている。経験値テーブルに相当な差がありそうだ。

 

 次はロクサーヌっと。

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

巫女Lv13

装備 強権のエストック ダマスカス鋼の盾 耐風のダマスカス鋼額金 オラクル竜革ジャケット 古代樹の手甲 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

 13……。13かぁ……。

 確かに普通の人と比べればすごいのだろうが、ミリアの戦士は二十二階層で戦っていたのにもかかわらず、一日で15に達していた。

 

 二十六階層の方が経験値効率はいいと思っていたんだが、そんなことはないのか?

 いや、戦士に比べて巫女のレベルが上がり難い可能性もある。

 うーん……。悩ましいところだ……。

 

 まあ、考えたところで答えなんかわからない。

 実験を行うにしても、セリーの村人のレベルを5にして戦士と巫女のジョブを取得した上で、戦士を就けてこの階層で戦う。もしくは巫女を付けて二十二階層で戦う必要がある。

 そんな面倒なことはやってられまへん。

 いつものように棚上げにしよう。

 

 最後にセリーっと。

 

セリー ♀ 16歳

鍛冶師Lv22

装備 強権のダマスカス鋼槍 竜革の帽子 ダマスカス鋼のチェインメイル ダマスカス鋼のガントレット オラクルダマスカス鋼グリーヴ 身代わりのミサンガ

 

 オッケー。彼女のレベルも上がっている。順調順調。

 

 レベルアップを二人に伝え、喜びを分かち合ったところでロクサーヌが口を開いた。

 

「ご主人様、オラクル竜革ジャケットのおかげでそれほどダメージを受けていませんし、レベルも13まで上がりました。もうメッキは必要ないと思います」

 

 うーん……。確かにそうなんだよなぁ。

 それに、この階層で戦っているゴンザレスは魔道士のレベルがまだ一桁なのに、全然問題なさそうだった。

 

 ……よし。

 

「では、メッキを使うのはここまでにしておこう」

 

 俺の言葉に二人は頷きを返す。

 

 錬金術師はほんの少しの登板だったかぁ。

 ミリアのレベルも順調だし、次はベスタが加入したときにマウンドへ上がってもらおう。

 

 ジョブの変更とポイントの振り分けを済ませ、待機部屋へ乗り込んだ。

 

 

 

 

 

クーラタル

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 いつものようにドロップアイテムの売却を行おうとしたところでふと気づく。

 

 そういや、多少のタイムラグはあるものの、冒険者ギルドや探索者ギルドには全ての迷宮の情報が集まるんだったな。

 

「ロクサーヌ、セリー。今後、俺がドロップアイテムの売却を行なっている間、各迷宮の攻略状況を調べてもらえないか?」

「かしこまりました」

 

 ロクサーヌが頷きながら答え、セリーは逆に問いかけてくる。

 

「これまでも攻略情報に目を通していましたが、迷宮の数はかなりのものです。どのような迷宮を調べればよろしいでしょうか?」

 

 あー、そうか。たくさんあるってんなら、絞り込まないといけないわな。

 

 うーん……。まず、ハルツ公爵領の三つはマストだ。それに、現在入っているベイルの迷宮についても調べておくべきだろう。

 討伐を目指すためザビルの迷宮の情報もいるか。

 

 今はこんなとこかな?

 書籍版の十二巻で出てきたネスコの迷宮や、えーっと、なんだっけ? グリニアへ行く途中で立ち寄ったいくつかの迷宮については必要ないだろう。

 原作で出てきた迷宮はこんなもんだったよな?

 

「ハルツ公爵領にできた三つの迷宮。それからベイルとザビルの迷宮について調べてほしい」

 

 そう告げたところ、セリーが尋ねる。

 

「その五つだけでよろしいのですか?」

「うむ。その五つをたの――」

 

 答えようとして、あることに気が付いた。

 

 考えてみれば、もう一つ原作で名前が出た迷宮があったか。

 

 確かカシアの故郷にある、ハルツ公から入らないように言われたノルトセルムの迷宮。

 彼女の故郷ということはセルマー伯爵領にあるということだ。

 

 おそらく彼はミチオが攻略する可能性を考え、立ち入りを控えるように言ったのだろう。

 万が一、ミチオが伯爵領内の迷宮を攻略してしまった場合、迷宮を放置している咎によりセルマー伯を討つという大義名分が揺らぎかねない。

 念には念を入れ、攻略できる可能性のある者を遠ざけたのだろう。

 

 俺もセルマー伯討伐までは入るのを控える、というより元々入るつもりもないが、明日視察に行くことになっているのだ。調べておいた方がいい。

 それに、ルティナの故郷でもあるわけだしな。

 

「あの……」

 

 考え込んでいると、セリーが戸惑ったような声を漏らす。

 

「ああ、すまん。もう一つノルトセルムの迷宮も追加してくれ」

 

 俺の言葉に二人は笑みを浮かべ、良い子のお返事をしてくれた。

 

 

 

 一度自宅へ戻り、筆記用具を持って冒険者ギルドへ戻る。

 

「では頼む」

「かしこまりました。セリー、手分けして調べましょう」

「それでは私がベイル、ザビル、ノルトセルムの迷宮を調べますので、ロクサーヌさんはハルツ公爵領の三つをお願いします」

 

 お願いすると、二人は話しながら離れていく。

 

 んじゃ、ドロップアイテムの売却を済ませますかね。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv50 魔法使いLv49 英雄Lv43 遊び人Lv40 料理人Lv9

装備 身代わりの硬革帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 竜燐の靴 よりしろのイアリング

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

詠唱省略:3

必要経験値二十分の一:63

ワープ:1

買取価格三十パーセント上昇:63

 

所持金:4,316,465ナール

 

春の58日目

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