異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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179 情報収集

 

 

 

 

 

クーラタル

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 ドロップアイテムの売却を済ませ、二人が迷宮の情報を書き写している間に自分でも確認を行うことにする。

 

 

 

 ふーん。載っているのは攻略済み階層と魔物の名称だけか。

 まあ、ここで弱点や耐性、それから攻撃方法やドロップアイテムが分かるなら、わざわざ図書館に行く必要はないもんな。

 

 へー。以前セリーから聞いたように、八十階層以上の迷宮も結構あるぞ。

 しかし、クーラタルの迷宮を除けば、最高でも八十五階層までの情報しか掲載されていない。

 おそらくその先に進んだ者がいないのだろう。

 

 また、クーラタルの迷宮についても、初代皇帝のパーティーが倒しているはずの、八十九階層と九十階層のボスの名称は載っていなかった。

 当時の情報が失われているのかね?

 

 それらを見ているとふと気が付く。

 

 うーん……。なんか情報が偏っている気がするなぁ。

 七十八階層以降の情報はそれなりにあるものの、その下となると一気に四十五階層以下になっている。

 これはどういうことだ?

 

 

 

 ……あっ。分かったかも。

 

 考え込んでいるうち、理由に思い至る。

 

 迷宮討伐は早い者勝ちだ。最終ボスがリポップすることはなく、迷宮そのものが消滅してしまう。

 最高到達階層を更新してそれをギルドに伝えた場合、誰でもその階層に行くことができるようになり、別のパーティーに先を越される可能性が否めない。

 というか俺もその手段でゴスラーのパーティーが討伐する予定のハルバーの迷宮を横取りするつもりだったしな。

 

 そのため、自分たちで倒すことができそうな迷宮については、最上階が近づいてきたと思った段階で、攻略情報を秘匿するのだろう。

 

 でも、それならなんで七十八階層以降の情報はあるんだ?

 これを討伐することができたら、きっと地位も名誉も思いのままなはず。

 普通に考えるとわざわざ他の人にチャンスを与えるような真似をするわけはない。

 

 

 

「ご主人様、お待たせいたしました」

 

 迷宮の情報を見ながら思索に耽っていたところ、耳が幸せになるようなロクサーヌの美声が聞こえてくる。

 

「大丈夫だ。もう調べ終わったのか?」

 

 尋ねてみると二人は笑顔で頷いた。

 

「ご主人様がおっしゃっていた六つの迷宮は調べ終わりました。今後は毎日確認を行い、更新された場合はお知らせします」

 

 おお。それは助かる。さすがセリー、さすセリだ。

 

「ロクサーヌ、セリー。ありがとう。それでは、買い物に行こう」

「かしこまりました」

「はい」

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 買い物を終えて自宅に戻ると、いつものように修行を行う。

 

 それが済んだら装備品の手入れを行い、夕食はミートスパとハンバーグ、そしてミネストローネを多めに作った。

 明日の朝は早めに家を出ることになるが、これならパンを買いに行く必要がないからな。

 

 

 

 夕食をとったらバスルームへ移動し、体を洗って湯船に浸かる。

 

「それじゃあ、調べた迷宮について教えてもらえる? あっ、魔物の配置についての情報はいいからね」

 

 問いかけたところ、ロクサーヌが頷きながら答えた。

 

「では、私から。ハルバーの迷宮ですが攻略階層は先日、入口にいた探索者から聞いた四十三階層のままで、探索終了宣言は十一階層となっています。ターレの迷宮は攻略階層が十三階層、ボーデの迷宮は二階層となっており、両方とも探索終了宣言は出ていません」

 

 ふむ。ターレとボーデの進捗が悪いな。

 まあ、一つの迷宮へ戦力を集中させ、各個撃破する方が効率的なのだろう。

 

「ありがとう。参考になった」

「ふふ。どういたしまして」

 

 感謝の言葉を述べるとまるでつぼみが綻ぶように彼女の顔に笑みが浮かぶ。

 あら、可愛い。

 

「次は私ですね。ベイルの迷宮の攻略階層は三十階層のまま変わっておらず、探索終了宣言は八階層となっています」

 

 なるほど。九階層以降には魔物部屋が残っている可能性があるってことだな。

 でもまあ、二十六階層は人が多いみたいだし魔物部屋も全て潰されているのだろう。

 そうじゃなければ、右腕に幸せなふくらみを押し付けているこのお嬢さんが見逃すはずがない。

 

「続いてザビルの迷宮ですが、いつも入っているところは管理されていないので情報がありませんでした。でも、似たような名前でザビル西の森の迷宮というところがあり、そこは攻略階層は三十六階層で探索終了宣言は六階層となっていました」

 

 あっ。そういえばそうだ。確かに別の迷宮だったわ。

 うーん……。ザビル西の森の迷宮を討伐するか? それともザビルの冒険者ギルドで、案内できる者がいないか尋ねた方がいいのかね?

 

「最後にノルトセルムの迷宮ですが、ここは少し不味いかもしれません」

 

 考え込んでいると、セリーが深刻な表情でそう告げた。

 

 続きを促すと彼女は俺の目をじっと見つめて話し始める。

 

「現伯爵が爵位を継承してから、セルマー伯爵領では討伐された迷宮が一つもなく、最初に出来た迷宮は十年を超えています」

 

 おいおいおい。マジかよ。

 

「通常、迷宮の外に出るのは一階層の魔物ですが、迷宮へ入る人が少なかったり、周辺に人が住んでいなかった場合、十二階層の魔物を出すようになり、まったく人が来ない迷宮は二十三階層の魔物を出して積極的に人を襲わせるようになるのはご存じですか?」

「うん。物語で出てきたからね」

 

 彼女の問いかけに答えると、そのまま話を続ける。

 

「ですが、五十六階層まで育ってしまうと、その法則に関係なく十二階層の魔物を出すようになるのです」

 

 作中でも五十六階層に至った迷宮が出す魔物は厄介になるという話があったが、そういう意味だったのか……。

 もしかしたらクーラタルの迷宮はサラセニアを出しているのかもしれない。

 いや。あそこは最低でも九十一階層まであるんだ。グミスライムを頻繁に出している可能性もあるか。

 

「そして、近くにある迷宮はお互いに影響を与え合っていて、階層が高くなるにつれ、周囲の迷宮を大幅に強化してしまいます」

 

 はあ!? 原作ではそんな話はなかったはずだぞ!? どういうことだ!?

 

「強化というのは具体的にどういうこと? 階層が高くなったり、出現する魔物が変わったりする感じ?」

 

 初めて聞いた情報により浮かんだ疑問を尋ねてみる。

 

「いいえ。そのようなことはありません。一度に出会う魔物の数が最大になることが多くなったり、階層あたりに出現する数が増えるため魔物部屋が発生しやすくなります」

 

 例えば現在探索をしているベイルの迷宮二十六階層なら、最大数である五匹と出会う確率が上がるってことか。

 

「ですが、逆にその地域にある一番大きな迷宮を討伐してしまえば、周辺の迷宮を比較的かんたんに倒すことが可能となるでしょう」

 

 なるほど。確かに理屈からいえばそうなる。そうなるが……。

 

 その言葉を聞いて考え込んでいると、ロクサーヌがこちらを見つめながら口を開く。

 

「未開地域や放棄された土地を解放して貴族に叙爵された者は、当然それを成し遂げています。他の者にできて、私のご主人様にできないわけがありません」

 

 セリーも頷きながらその言葉に続く。

 

「はい。ご主人様なら問題ないと思います」

 

 まったくこの娘たちは……。

 こんな俺のことを信頼してくれている人がいるんだ。なら、やるしかないよな。

 

 

 

 わき道に逸れた話題を元に戻す。

 

「それで、ノルトセルムの迷宮が不味いっていうのは?」

「はい。ノルトセルムはセルマー伯爵領の領都となっているのですが、そんなところにできた迷宮でさえ数年間放置しているようです」

 

 へー。ノルトセルムは領都だったのか。

 

「このままだとそう遠くないうちに五十六階層まで成長し、迷宮外に十二階層の魔物を出すようになってしまうでしょう。もし伯爵家の騎士団が抑え込めなかった場合、領都を放棄することになるかもしれません」

 

 ……なるほど。ハルツ公や全エルフ最高代表者会議がセルマー伯討伐を急ぐわけだ。これは伯爵領だけで済む話ではない。

 それにカシアがあれだけミチオをノルトセルムの迷宮へ入れようとしていたことにも合点がいく。故郷を守ろうと必死だったのだろう。

 

 

 

 それにしても、そういうことだったのか。

 

 先ほどギルドで見た攻略情報。

 自分たちで迷宮を討伐するつもりなら、絶対にギルドへ情報を伝えない方がいい。そんなことをしたら出し抜かれるかもしれない。

 なのにギルドの攻略情報には七十八階層以降の情報が掲載されており、それが気になっていたのだ。

 

 だが、今の話で腑に落ちた。

 高階層の迷宮が周りの迷宮を強化するとなれば、そんなことは言っていられない。

 自分が討伐できそうにないなら個人の利益を度外視して、誰でもいいから倒してくれとなるのだろう。

 常に迷宮の脅威にさらされているこの世界なら、そう考える人が多いはずだ。

 

 しかし、そう考えるとますますセルマー伯爵領の状況は目に余る。

 

 ルティナ……。

 父親から迷宮に入る必要はないと言われているとはいえ、君はこんな状況を座して見ているのか?

 それとも領地や迷宮について知ろうともしていないのだろうか……。

 

 

 

 考え込んでいると、ロクサーヌとセリーが気遣わしげにこちらを見つめている。

 

 思索を打ち切って声を掛けた。

 

「そろそろ上がろうか」

 

 

 

 

 

 今日も昨晩の情交によりすがすがしい朝を迎える。

 

 真面目な懊悩は長く続かず、ベッドの上ではバーバリアンに変身してしまった。

 

 まったく。本当にシリアスが続かない男だこと。

 

 自分自身に呆れながら彼女たちとあいさつを交わす。

 

 

 

 身支度を整えたらミーティングは行わず、そのまま朝食の支度だ。

 ミートソースの中にハンバーグをぶち込んで、それを茹でたパスタにからめる。

 ハンバーグミートスパと温めたミネストローネをダイニングへ運び、いただきまーす。

 

 

 

 準備を終えて玄関へ集合したところで、アイテムボックスから銀貨二十枚を取り出し告げた。

 

「ペルマスクへの入市税とおこづかいだよ。これは返す必要はないから好きに使ってね」

 

 すると、ロクサーヌが感激したように声を出す。

 

「ご主人様、本当にありがとうございます」

「こんなことをしていただけるなんて思ってもいませんでした。ありがとうございます」

 

 二人は感謝を伝え、嬉しそうに受け取りいそいそとしまい込む。

 めちゃくちゃ可愛いなぁ。

 

「それじゃあ、行こう」

 

 彼女たちの返事を聞きながらワープゲートを展開した。

 

 

 

 恙なく二人をペルマスクへ送り自宅へ戻る。

 そして、冒険者ギルドへ向かうためまだ薄暗い道を歩き出す。

 

 

 

 

 

クーラタル

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 やっと着いた……。

 肉体的な疲労はまったくないが、めちゃくちゃ面倒だったなぁ。途中何度もワープしようかと思ったぞ……。

 人間、楽を覚えるといかんな。

 

 受付のカウンターへ近づき、ギルド職員の女性に声を掛ける。

 

「ボーデまで送ってほしいのだが、頼めるか」

「えっ?」

 

 すると、彼女から戸惑ったような声が上がった。

 

 ん? 何だ?

 

「あの、お客様は災害救助の際にボーデへ行っていますよね? どうしてご自分でフィールドウォークを使用しないのですか?」

 

 あー! このギルド職員、あの時の人か!

 いいじゃん! 自分で移動しなくてもいいじゃん! カラスの勝手でしょ!

 

 えーっと、えーっと、どうする? どうすればいい?

 

 脳みそをフル回転させ、適当な言葉を口にする。

 

「うむ。詳しくは言えないのだが、よんどころない事情があってな」

 

 事は公爵家の体面に関わることなのだ。何も嘘は言っていない。

 

「なるほど。そういうこともあるのですね」

 

 女性は何やら納得したように頷いている。

 よく分からんが、そういうこともあるらしい。

 

「では、少々お待ちください」

 

 支払いを行うと、彼女はカウンターに載っているハンドベルを鳴らした。

 そして、程なくして女性の冒険者が現れる。

 

アリアナ ♀ 45歳

冒険者Lv36

装備 身代わりのミサンガ

 

 あっ。以前、ハーフェンへ送ってくれたエルフさんだ。

 

 その女性は俺を見ると怪訝な表情を浮かべながら口を開く。

 

「前にボーデへ行った方ですよね? 冒険者ではなかったのですか?」

 

 そんなのどうでもいいじゃん! 黙って任務を遂行しなよ!

 

「うむ。詳しくは言えないのだが、よんどころない事情があってな」

「なるほど。そういうこともあるでしょう」

 

 そういうこともあるらしい。……ほんとか?

 

 彼女は納得したように頷くと、パーティー編成の詠唱を開始した。

 

 おっと。こっちのパーティーを解散しとかないと。

 

 ロクサーヌとセリーの存在を感じられなくなったことにより、軽い喪失感に苛まれながらパーティー申請を承諾する。

 

 この感覚、マジで慣れないわぁ。

 

「それでは、参りましょう」

 

 そう言うと彼女は壁に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

ボーデ

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

 ゲートを抜け出したところで女性冒険者はそう言ってパーティーを解散し、再びフィールドウォークを使い去っていく。

 

 あっさりしたもんだなぁ。

 まあ、世間話をされたところでこちらも困るだけだからいいんだけど。

 

 さて、それじゃあ行きますかね。

 

 

 

 

 

ボーデ

 

 

 

 

 

 冒険者ギルドから出て通りを歩く。

 コハクを購入するため頻繁に訪れているが、市の立つ日じゃなくてもそれなりに賑わっている。

 ハルツ公爵家のお膝元なのだ。ボーデは帝国の中でも栄えている街なのかもしれない。

 もちろん帝都やクーラタルとは比較にならないが、ベイルに比べると活気に満ちている。

 行き交う人の顔にも笑みが浮かんでおり、ハルツ公の統治が確かなことがうかがえた。

 

 領地運営の能力が高いことに加え、高階層を探索できる武力も兼ね備えており、信じられないような美形で、おまけに嫁が超絶美人。

 

 ほんま、世界中から嫉妬されそうなお人やで。

 

 でもまあ、嫁に関してはこちらの方が上なんですけどね。ふふん。

 ロクサーヌが共にいてくれるのだ。俺は一生しっとマスクに変身することはないだろう。

 

 

 

 つらつらと考えながら通りを進んでいるうちに、開け放たれている城門が見えてきた。

 

 

 

 

 

ボーデ

宮城

 

 

 

 

 

 訓練をしている騎士たちや、忙しそうに足を動かしている者を見ながら城の中を歩いていると声を掛けられる。

 

「アユム殿ではありませんか。わざわざ城門から歩いてきたのですか?」

 

 声が聞こえてきた方へ顔を向けたところ、訝しげにこちらを見つめるゴスラーの姿が。

 

「ええ。取り越し苦労だとは思ったのですが、一応念のためにこのような形でうかがいました」

 

 彼は一瞬、不思議そうな表情を浮かべるものの、気にしないことにしたのか話を続ける。

 

「そうですか。それでは、私がこのまま閣下の下へご案内します」

 

 騎士にエンブレムを手渡して確認とか面倒だし、手間が省けて助かるわ。さすがゴスラー、気遣いの人だ。

 

「よろしくお願いします」

「参りましょう」

 

 そう言って歩き出した彼と共に城内を進む。

 

 

 

 城の中へ入ったところでゴスラーが尋ねた。

 

「そういえばコハクの販売の件についてはどうなりましたか?」

「そちらは本日、私の仲間がペルマスクで注文を受けております。ゴスラー殿、ご許可をいただきましたこと、今一度感謝申し上げます」

 

 感謝を告げると彼は笑みを浮かべながら答える。

 

「アユム殿にはさまざまなことでご助力をいただいている上、もともとはアユム殿のアイデアなのです。今回限りということであれば、何も問題ありません」

 

 つまり、これ以上は売ってくれるなということですな?

 この田川、しかと承り申した。

 

 

 

 毎度お馴染み公爵閣下の執務室へ到着したところで、ゴスラーがノックを行う。

 入室を促す声に従い中へ入ると、こちらに気付いたハルツ公が破顔しながら声を上げた。

 

「おお! よくまいった! 今日はアユム殿もセルマー伯爵領の状況をつぶさに観察するがよい」

 

 開口一番にそんなことを言われても……。

 

「私などが気付くことがあるとは思えませんが、そのように努めます」

「うむ。その方なら間違いなく何かを感じ取ることだろう」

 

 この人は俺に何を期待してるんだろう……。

 

 

 

 勧められゴスラーと共にソファーへ座ると、公爵はベルを鳴らし現れた男にカシアを呼ぶよう伝えていた。

 

 それにしても他領へ行くからだろうか? ハルツ公はいつもよりフォーマルな格好でビシッと決めており、ただでさえ美形な彼がとんでもないことになっている。

 

 俺ももっとちゃんとした格好で来ればよかっただろうか?

 

 ……いや。どうせ俺はおまけみたいなものだし、それにゴスラーだっていつも通りなんだ。気にする必要はない。

 

 

 

 そして、彼も向かいのソファーへ腰を下ろすと話し始める。

 

「先日、その方が申しておった狼人族の娘だが、本当に攻撃を食らわぬのか?」

 

 おいおい。いきなりぶっこんできたぞ。

 

「はい。私の知る限り、必中である全体攻撃魔法以外の攻撃を食らったことはありません」

 

 ただし、チート野郎のオーバーホエルミングによる攻撃を除く。

 といってもそれさえ食らわなくなってきてるんだよなぁ……。

 

 ハルツ公は顎に手を当て何やら考え始める。

 

 閣下。腕試しならいつでもオッケーですよ。

 うちのお嬢様なら大喜びで相手をするでしょう。

 

「ふむ。一度見てみたいものだ。どうであろう? 近いうちに騎士団の中で一番腕が立つ者とその者で手合わせを願えぬか?」

 

 フィーッシュ! 食いついた!

 

「こちらは問題ありません。彼女も自分の実力を知るいい機会となるでしょう。よろしくお願いします」

「うむ。では、今日の視察から戻ってから行おうではないか」

 

 近いうちにって、いくらなんでも近すぎでしょうが。

 

 公爵! 即決即断が過ぎますぞ! フッ軽も大概になさいませ!

 

「閣下、アユム殿のお仲間は本日ペルマスクへ行っているのだそうです」

「なに? そうなのか……。では、明日のいつもと同じ時間にしておこう」

 

 明日でも急すぎますって。

 ほんと、せっかちな人だなぁ。

 

 でもまあ、これでロクサーヌの実力を示すことができるし、万が一バラダム家と遭遇することがなかったとしても帝国解放会へ勧誘されるはず。

 なら少しでも早い方がいいか。

 

「かしこまりました。明日、いつもの時間にうかがいます」

 

 提案を承諾すると、彼は満足そうに頷いている。

 

 それにしても、食事会はナシかぁ。貴族料理ってのを食べてみたかったんだけどなぁ。

 

 

 

 その後、今日の視察について尋ねたところ、セルマー伯爵領へ行くのは公爵夫妻にゴスラーと俺。そして、送迎の冒険者と騎士が一名とのことだった。

 まずはノルトセルムの探索者ギルドへ移動し、そこでギルド長と会談を行う。

 それが済んだところで街を確認しながらセルマー伯爵の居城へ向かうらしい。

 

 原作ではゴスラーは同行してなかったよな?

 まあ、日にちも違うし、視察でもなかったのだから気にすることはないか。

 

 

 

 そのまま雑談を続けているとノックの音が響き、公爵が入室を促すと扉が開く。

 

 金色の長い髪に輝く宝石の散りばめられたティアラ。

 スラリとしているのに凹凸感のある体を彩る淡い紫色の豪華なドレス。

 細長くしなやかな手を覆う白いオペラグローブ。

 だが、それらが霞むほどの存在感を示す、圧倒的な美しさを誇るかんばせ。

 

 ただ立っているだけでも美人さんなのに、着飾ると信じられないような美しさだなぁ。

 

 見惚れていると彼らが立ち上がったので、急いでそれに続く。

 公爵がオリハルコンの剣を取り腰に下げたのを確認すると、カシアは彼の隣に移動し寄り添った。

 

 うわー。めちゃくちゃ絵になるー。まるで映画のワンシーンだぞ。

 

 内心感動していたところ、公爵に促され部屋を出る。

 

 

 

 いつもワープゲートを開くのに利用しているエンブレムの下へ行くと、その前で男性二人と女性一人が話をしていた。

 一人は顔馴染みとなっているフィールドウォークで現れる者を確認している男。

 そして、女性の方はペルマスクへ連れていった、彼の奥さんである女性冒険者。

 もう一人の男性はボーデの迷宮へ案内してもらった際、公爵のパーティーにいた騎士だ。

 

 俺たちが来たことに気が付くと、いつもの男は頭を下げて持ち場に戻っていく。

 

「以前顔を合わせておるが、改めて紹介しておこう。今回同行する騎士のクラウスと冒険者のフィーネだ」

「フィーネはわたくしが実家から供として連れてきた者です」

 

 なるほど。セルマー伯爵領のことをよく知っているってわけか。

 

 軽い挨拶を交わしたところで彼女がパーティー編成の詠唱を行い、次々とパーティーに加えていく。

 最後にこちらへ届いた申請を承諾したところで、今度はフィールドウォークの詠唱を開始した。

 

 そして、俺たちはエンブレムに展開されたゲートへ向かって歩き出す。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv50 英雄Lv43 魔法使いLv49 遊び人Lv40 戦士Lv37

装備 竜燐の靴 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

詠唱省略:3

必要経験値二十分の一:63

鑑定:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:4,346,295ナール

 

春の59日目

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