バラダム家!? 嘘だろ!? まだ春の六十三日目だぞ!?
原作に比べて十日以上早い。いくら手配書が回るのが早かったとはいえ、そんなに繰り上がるものなのか?
……いや。あの手配書にはハインツ一味が壊滅してシモンが一人、もしくは少数でハルツ公領の迷宮へ逃亡していると書いてあった。
奴らがそれを確認した場合、シモンを倒して名を上げる千載一遇のチャンスだと考えるはず。
誰かに先を越される前に、大急ぎでハルツ公爵領へ乗り込んできたのだろう。
「まっすぐこちらを目指しているので、あと十分ほどで到着するでしょう。彼女も私に気が付いているのだと思います」
ロクサーヌは瞳に怪しい光を灯しながらそう言った。
そうなのか……。
ここで日和って決闘を避けるなんて選択肢はありえない。
バラダム家の女はロクサーヌに執着しているため、たとえ今回やり過ごしたとしても俺の最愛の人をしつこく狙い続けるだろう。
そんなことを許すわけにはいかない。
たとえあちらが決闘を持ち出してこなかったとしても、俺がその流れに持っていく。
さて、そうと決まれば急いで準備をしよう。
「分かった。入口の近くにいたら迷惑がかかる。少し離れたところで奴らを待つぞ」
その言葉にロクサーヌとセリーは好戦的な笑みを浮かべ頷いた。
迷宮の入口に立っている探索者から確認できず、声も聞こえない場所まで離れたところで決闘の準備に取り掛かる。
「ロクサーヌのジョブを巫女から戦士に変更しよう。少し待っていてくれ」
「かしこまりました」
バラダム家との遭遇が予想外に早かったため、巫女と戦士のレベルがどっちつかずで中途半端になっている。
くそっ。こんなことなら戦士のままにしておくんだった。
後悔しながらパーティー項目解除にチェックを入れ、ジョブ設定をパーティージョブ設定に上げて彼女のジョブを入れ替える。
次は俺のジョブだ。
おそらく決闘の際にインテリジェンスカードを確認されることはないはずだが、絶対にないとは断言できない。
どんなことがあっても魔法使いのジョブを見られるわけにはいかないため、ファーストジョブは冒険者にしておく。
そして、無詠唱で回復のできる僧侶。
さらに、遊び人の効果は英雄の腕力中上昇に替えた方がいいだろう。
ファーストジョブを変更するために獲得経験値十倍のチェックを外し、アイテムの移し替えとジョブの変更をサクッと済ませる。
またミリアがパーティーから外れてしまった……。
まあ、それについては後で考えよう。とりあえず今は確認だ。
田川 歩 男 18歳
冒険者Lv31 英雄Lv46 遊び人Lv43 僧侶Lv15 探索者Lv50
装備 身代わりの硬革帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 竜燐の靴 よりしろのイアリング
オッケー。問題なし。
次はボーナスポイントの振り分けに取り掛かる。
必須となるエクストリームドロップデッドと、万が一に備えてパーティライゼイション。
これで残りは39ポイント……。
悩んでいる時間はない。シックススジョブにポイントを振り、腕力が上がる剣士を設定。
何かでポイントが必要になるかもしれないし、残りはそのままにしておく方がいいだろう。
よし。この構成で決定だ!
ポイントの振り分けを終えたところで作戦会議に移る。
「予定通り、決闘を受ける条件はロクサーヌと俺で二戦すること。それから勝者が所持品を全て得ることとする」
「はい。ご主人様が彼女の所持品を得られるよう、全力を尽くします」
復讐を遂げることができるためか、ロクサーヌの目は爛々と輝いていた。
「ご主人様とロクサーヌさんならどんな相手だろうと問題ありません」
俺たちの勝利を一切疑っていないのだろう。セリーは笑みを浮かべながらそう口にする。
まあ、そうだな。油断は禁物だが、ぶっちゃけ負ける要素は皆無だ。リラックスして決闘に挑もう。
セリーの言葉を聞いて緊張の糸がほぐれたところで、ロクサーヌが小さな言葉を発した。
「もうすぐ来ます」
そのまま待っていると地面を踏みしめる音が近づいてくる。
姿を現したのは尖ったイヌミミを持つ集団。
全員ピンと立った耳をしているんだな。ロクサーヌのようなタレミミはいないのか。
狼人族は髪や目の色のように、耳の形状にも個性があるのだろう。
おっと。今は悠長に考えごとをしている場合じゃない。
そいつらは男が四人に女が二人。そして、そのうち一人の髪には縦ロールが施されている。
こいつがロクサーヌを陥れた女か……。
すると、そいつは俺の大切な人を見ながら口を開く。
「おーほっほっ。やはりロクサーヌでしたのね。貧相な匂いを香水で誤魔化そうとしても無駄ですわ。わたくしの鼻を欺くことなどできません。それにしても、ロクサーヌの分際で髪を伸ばし、香水をつけるなど生意気でしてよ?」
キャラ濃ゆ! めっちゃキャラ濃ゆ!
呆気に取られていると、ロクサーヌが反論を行う。
「ご無沙汰しております。ですが、私は香水などつけていません」
「わたくしの鼻を欺くことはできないと言ったではありませんか。その卑猥な体からはっきりと柑橘系の匂いが漂っています」
あー。石鹸の匂いを香水と勘違いしてるのか。
それに言われて気がついたが、確かに出会った頃に比べても髪は長くなってる。
しかしこいつ、俺のロクサーヌのことを卑猥とか言いやがった。絶対に許さん。
「まったく。相変わらずそうやって人を欺いているのですね。わたくしの婚約者にしたように、誰彼構わず色目を使うビッチの本性はまったく変わっていません。今度はそこの醜い男を籠絡したというわけですか」
「私のご主人様を愚弄しないでください!」
彼女の言葉を聞いたロクサーヌは激しい怒りを示す。
初対面の人に醜いとか言われて多少へこみはするものの、それ以上に俺のためにロクサーヌが怒ってくれたことが嬉しい。
「あら? 半年の間に随分と生意気な口を利くようになったではありませんか」
「世界一のご主人様に仕えているのです。あなたなど恐れる必要がありません」
彼女はその言葉を聞くと、酷薄な笑みを浮かべた。
「ビッチのくせに利いた風な口を。では、そのご主人様とやらの名誉を守るため、わたくしと決闘なさい。それに、いいことを教えて差し上げます。あなたの家にお金が入らないよう、いろいろ手を回したのはこのわたくし。ふふ。そこの醜男と出会うきっかけを作ったことに感謝してほしいものですわ」
ロクサーヌは無言で彼女を睨みつけている。
その視線を鼻で笑いながらこちらへ顔を向け、ロクサーヌとの決闘を認めるのなら、自分がそれ申し込むと告げた。
その前にこの女性のレベルがどんなものかを確かめておかないと。
万が一、レベル99とかだったら面倒だ。
目まぐるしく変わる状況で忘れていた鑑定を彼女にかける。
レベル29の獣戦士で、年齢は十九歳。オッケー、問題なし。
装備品は催眠のエストック、剛健のダマスカス鋼盾、オラクルティアラ、頑強の竜革ジャケット、剛腕の古代樹手甲、駿馬の竜革靴、身代わりのミサンガ。
さすが金持ち。めちゃくちゃ良い装備品を身につけてんなぁ。
それにしても剛健のダマスカス鋼盾に頑強の竜革ジャケットね。
なるほど。20以上のレベル差があった上に物理耐性をガチガチに固められていたのでは、以前のロクサーヌの攻撃がまったく通用しなかったのも頷ける。
次にサボーであろう男の確認を行う。
ビンゴだ。サボー・バラダム、獣戦士レベル99。
彼の装備品は催眠のオリハルコン剣、ダマスカス鋼の額金、頑強のオリハルコンプレートメイル、剛腕のミスリル手甲、ダマスカス鋼のグリーヴ、身代わりのミサンガ……。
いやいやいや。エグイって。スロット付きはないが、どんだけヤバい装備品を身に着けてんの。
おそらく金に飽かせてバラダム家が集めたものなのだろう。
その隣がレベル18の冒険者で次がレベル66の探索者。
あれ? 原作とメンバーが違う?
原作では獣戦士が四人に冒険者が一人、そして僧侶が一人だったはず。探索者はいなかったよな?
疑問に思いながらも、後ろにいる錫杖を持った男へ鑑定をかける。
エリク・バラダム ♂ 27歳
魔法使いLv46
装備 ひもろぎのカッカラ ズケット アルバ 竜革のグローブ ビットローファー 身代わりのミサンガ
魔法使い!? おいおい! マジかよ!?
もしかしたらこいつは資金繰りに困ったバラダム家が奴隷としてアランへ売却した魔法使いなのかもしれない。
原作では苗字がなかったが、ルティナも奴隷に落ちた際に家名と継嫡家名を失っている。おそらく彼もそうなったのだろう。
……いやいやいや。そんなことよりもっとすごいものが!
今度は錫杖へ鑑定をかけた。
ひもろぎのカッカラ 杖
スキル 知力二倍 MP吸収 詠唱中断
ヤバい! ヤバい! 超ヤバい!
このひもろぎのカッカラってやつ、ルークが言っていたオークションに出品された物じゃないか?
確か身内に魔法使いのいる商家が、貴族へ成り上がるために落札したって話だったよな?
バラダム家は叙爵を目指し、大金をつぎ込んでこれを入手したのかもしれない。
おまけにアルバに二つ、ビットローファーにも一つスキルスロットが付いている。
最後は槍を背負った女性。
ダークブラウンの長い髪に整った相貌。その中でも潤んだように見える優しそうなたれ目が印象的だ。
ロクサーヌやセリーとは比べ物にならないが、結構な美人さんである。
ジェニー・バラダム ♀ 18歳
巫女Lv24
装備 聖槍 ダマスカス鋼の額金 竜革のジャケット 竜革のグローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ
聖槍!? これ聖槍なのか!? 嘘だろ!?
動揺しつつ、急いで確認を行う。
聖槍 槍
スキル 空き 空き 空き 空き 空き
きたー! スロ五の聖槍きたー!
それに竜革のジャケットにもスロットが三つ付いている!
きっとこれらが武器屋や防具屋に売却されたり、オークションに出品されたりするのだろう。
ひもろぎのカッカラに聖槍か……。
どうにかして手に入れたいところだが、これを奪うために決闘を吹っ掛けるなんてできるはずがない。
そんなのは、アイスソードを手に入れるためにガラハドを殺っちまうようなもんだ。
うーん……。あの女とサボーを倒した後なら、ワンチャン交渉に応じてもらえないだろうか?
考え込んでいると、しびれを切らしたのかドリルヘアーのお嬢さんが大声を上げる。
「馬鹿みたいな顔で惚けていないで質問に答えなさい! 決闘を認めますの!?」
馬鹿みたいな顔って……。
内心へこんでいるとサボーもそれに続く。
「決闘を受けないつもりか? それはバラダム家への挑戦と見なされるぞ? その場合、俺がお前に決闘を申し込むことになる」
すると、他の奴らも口々にこちらを挑発し始めた。
やれ臆病者だの、やれ軟弱者だの、やれひょうろくだまだの、好き放題言っている。
そして、優しげな雰囲気の巫女さんも声を発した。
「こんなに醜い男は今まで見たことがありません。さすがビッチのロクサーヌ。あなたはこんな男とでも体を重ねることができるのですね。もし私がそんなことになったら死を選ぶでしょう」
あっ。君、そういうタイプの人?
俺についてはどうでもいいが、ロクサーヌのことをビッチと言ったのは絶対に許さん。
「ご主人様のことを愚弄しないでくださいと言ったはずです!」
「その言葉を許すわけにはいきません!」
ロクサーヌとセリーはこぶしを握り締め、体をわなわな震わせながら奴らを睨み続けていた。
そんな場面じゃないが、こんなに想われていることに喜びを感じてしまうな。
にやけてしまわないように表情筋を働かせていると、魔法使いの男が嘲るような表情をこちらへ向ける。
「お前のように貧弱な男ではその女たちを満足させることはできないだろう。バラダム家の男全員で使ってやるから、そいつらを手放し尻尾を巻いて逃げやがれ。まあ、ぶっ壊した後なら返してやってもいいがな」
ああ? いまなんつった?
俺のロクサーヌとセリーを使うだと?
すると、ドリルヘアーの女が薄ら笑いを浮かべながらそれに続く。
「もともとロクサーヌが奴隷に落ちたらバラダム家で買い取り慰みものにする予定でしたの。狼人族やその関係者に売らないなどという余計な条件が付けられていたせいでそれはかないませんでしたが、いい機会に巡り合いましたわ。ロクサーヌを譲るというのならあなたは見逃してもよくってよ?」
その言葉に他の奴もニタニタ笑いながら囃し立てている。
なるほど。お前らは俺に殺してくれと言っているんだな?
上等だよ。決闘はこの女とサボーだけにしようと思っていたが、全員地獄に叩き落とす。
てめぇらがクソ野郎なおかげで良心の呵責なく貴重な装備品を奪うことができるんだ。感謝してやるぜ?
「決闘を受けるのは構わないが、いくつか条件を付けさせろ」
「何だ? 言ってみろ」
サボーを睨みながら条件を告げる。
ロクサーヌとあの女だけではなく、その次に俺とサボー。そして、その後も俺が残ったやつらと決闘を行うこと。
さらに、所持品は全て勝者へ譲り渡すこと。
それを聞いた彼は怒りで顔を歪め、怒鳴り声を上げた。
「この俺を舐めるな! お前のような者が勝てるとでも思っているのか!」
「怖いなら逃げても構わんぞ? 尻尾を内側に丸めキャンキャン鳴き声を上げて逃げるがいいさ」
挑発の言葉を聞き、顔を真っ赤に染める。
「いいだろう。その条件で受けてやる。お前は決闘で八つ裂きになるだろう」
「その程度では無理だな」
「クソがっ! 絶対に殺してやる!」
俺たちのやり取りを見ていたドリルヘアーから笑い声が上がった。
「おーほっほっ。あなたたちの運命が決まりましたわね。それではボーデの騎士団詰め所、いえ処刑場へ参りましょう。逃げずに来ることですわ」
怒りの表情を浮かべているサボーとニヤニヤ笑っている他の五人は、近くの木からフィールドウォークで移動していく。
それを見届けたところでロクサーヌが紅潮した顔で口を開いた。
「私たちのために怒ってくださりありがとうございます! とても格好良かったです!」
「はい! 本当に素敵でした!」
えっと、うん。それは何より……。
落ち着いたところでセリーが告げる。
「ご主人様、決闘の見届け人である騎士団員は中立でなくてはなりません。疑いをもたれないためにも宮城へ移動するのではなく、ボーデの冒険者ギルドを経由しましょう」
あぶな! アドバイスがなければ、普通に城の中に移動するところだった。
「セリー、ありがとう。それでは俺たちも行こう」
「はい! 勝利をご主人様に捧げます!」
「あの程度の者など、ご主人様とロクサーヌさんの敵ではありません」
好戦的な笑みを浮かべている娘さんたちと共に、ワープで移動する。
騎士団詰め所へたどり着くと、奴らは門の前で待っていた。
そして、俺たちの姿を確認し、ドリルヘアーが中に入っていく。
しばらく待っているとゴスラーと共に彼女が戻る。
ゴスラーは一瞬、こちらに視線を向けたものの、中立として振る舞う必要があるからだろう。すぐにそれを外した。
「ハルツ公爵家騎士団のゴスラーである。自由民の持つ自力救済権に基づき、紛争解決のため決闘の申し入れがあった。ロクサーヌという者は誰だ」
「はい」
ロクサーヌは返事をしながら前に出る。
「うむ。それから、アユムという者は?」
少し前まで毎日顔を合わせていた人に名前を確認されるのは変な感じだな。
「私です」
俺もロクサーヌの隣に進む。
「今回の決闘は申し出を行なったこちらの女性とロクサーヌが、続いてサボーとアユムが。そして、アユムがその他のメンバーと闘うこととなる」
ゴスラーの言葉に頷きを返した。
「条件として勝者は敗者の所持品を全て獲得するものとし、また、代理を立てることはできない。そして、非公開のうえ今すぐの決闘となる。ここまでで異議のある者はいるか?」
ロクサーヌと共に問題ない旨を伝える。
「ハルツ公爵家騎士団のゴスラーの名において決闘が成立したと認める。では双方ついてくるがいい」
歩き出したゴスラーの後を追おうとしたところで、あの女がロクサーヌへ顔を向けた。
「お前の忌々しい顔を見るのもこれで最後です」
そう言うと他の奴らと共に歩き出す。
きっと彼女の言ったとおりになるだろう。だが、意味はまったく逆になるわけだが。
二人と頷き合い、俺たちもゴスラーの後を追う。
移動した先は中庭にある訓練場と思しい、露出した地面が広がるグラウンドっぽい場所。
そして、その端にはベンチが設置されており、足を組んで座っている美形の聖騎士が。
というかハルツ公が笑みを浮かべながらこちらを見つめていた。
いや、なんでいるの?
わけが分からない事態に呆気に取られていると、ゴスラーが告げる。
「今回の決闘はハルツ公爵閣下もご覧になる。双方、失礼のないように」
じゃあ連れてこなければいいんじゃないですかねぇ……。
それに非公開のはずなんですが……。
おそらく原作と日時がズレてしまったため騎士団の詰め所に彼がいたのだろう。
そして、俺たちの名前を耳にしたことで首を突っ込んできたと。
まったく。しょうがない人だなぁ。
「それでは、一回戦を行う」
ゴスラーの声に思考を遮られる。
まあいいや。それよりロクサーヌに声をかけなければ。
「叩きのめしてやれ」
「はい。ロクサーヌさんなら何も問題もありません」
俺たちの言葉に笑みを浮かべながら頷きを返して前へ進む。
両者が向かい合ったところでドリルヘアーは高らかに声を上げた。
「おーほっほっ。愚鈍で情報弱者なロクサーヌに教えて差し上げましょう。わたくしのパーティーメンバーであるサボーはドープ薬を上限である五十個まで服用しています。それに探索者であるクロードのレベルは66。おーほっほっ。お前に勝ち目などありませんわ」
勝ち誇っているところ申し訳ないが、そいつらより俺のパーティー効果の方がえげつないんだよなぁ。
ロクサーヌとセリーも呆れ顔で彼女を見つめている。
「それでは、始め!」
ゴスラーの開始の合図と共に、女がロクサーヌの顔を目掛けて剣を突き込んだ。
しかし、そこは我らのロクサーヌ。そんなものを食らうはずはなく、首を傾け回避する。
顔に向かってくる剣をギリギリでかわすなんて……。
よくそんな恐ろしいことができるなぁ。
その後も危なげなく回避を続けていると、相手の顔が苛立ちで段々歪んでいく。
それを見たロクサーヌは距離をとって口を開いた。
「私は手加減をしている状態なのですよ? もっと本気を出してください。これでは決闘ではなくお遊戯です」
おお。ロクサーヌが煽っている。
嫉妬深いところや好戦的なところはあるものの、あの娘は基本的に人当たりが良く優しい娘だ。
しかし、彼女にはあらかじめバラダム家が行なった仕打ちについて伝えている。
ロクサーヌに対する嫉妬から叔母の家を困窮させたこと。
それなのにもかかわらず、叔父は彼女のことを守ろうとしたであろうこと。
それを聞いたロクサーヌの怒りはいかばかりか。
おそらく原作の状況とは異なり、恨みが骨髄まで染み渡っているのだろう。
「ロクサーヌのくせにぃ!」
般若のような表情で叫び声を上げて吶喊するも、あっさりあしらわれる。
怖い顔だなぁ。
生かしておくと逆恨みでどんな報復を企てるか分からないし、悪いが死んでもらうほかない。
ミチオはそう思っていなかったようだったが、性格はクソで目つきも悪いが普通に美人だよな?
あの女の婚約者だって家同士のつながりなんだろうし、ロクサーヌを目で追っただけで、そういうことになろうとは思っていなかったはず。
気にしなければ幸せになれただろうに。
まあ、性格がクソだしそれは無理か。
そんなことを考えていると、戦闘中だというのにロクサーヌはこちらに視線を向ける。
え? 俺の考えを察知したの? エスパーか君は。
ロクサーヌのことが世界で一番好きだから。美人で可愛くスタイル抜群でそのうえ声と性格まで最高な世界一の女性だと思っているから。
すると、彼女はこちらへ頷き、相手の方へ顔を戻す。
……とんでもないお嬢さんだなぁ。
回避を続けていたロクサーヌだが、これ以上は無駄だと判断したのだろう。動きを止めて口を開く。
「これが本気のようですね。それでは終わりにしましょう」
そう言うとエストックであの女の首を薙ぎ払う。
だが、剣身が皮膚に到達することはなく、その衝撃で彼女は横向きに倒れた。
「ロクサーヌなんかに!」
顔色は青ざめているものの、自分を鼓舞するように声を上げながら立ち上がる。
しかしその瞬間、はらりと地面に紐が落ちた。
それを認識し彼女の顔に絶望の色が浮かぶ。
「これで終わりです」
そして、ロクサーヌは突きを放つ。
今度は阻まれることなく、エストックが彼女の喉を貫いていた。
地面に倒れ込み苦しそうにもがいていたが、やがてその動きが止まる。
ゴスラーが近づき確認を行い、声を上げた。
「事切れているのを確認した! 勝者、ロクサーヌ!」
田川 歩 男 18歳
冒険者Lv31 英雄Lv46 遊び人Lv43 僧侶Lv15 探索者Lv50 剣士Lv12
装備 身代わりの硬革帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 竜燐の靴 よりしろのイアリング
ロクサーヌ ♀ 16歳
戦士Lv25
装備 強権のエストック ダマスカス鋼の盾 耐風のダマスカス鋼額金 オラクル竜革ジャケット 古代樹の手甲 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ
セリー ♀ 16歳
鍛冶師Lv23
装備 強権のダマスカス鋼槍 竜革の帽子 ダマスカス鋼のチェインメイル ダマスカス鋼のガントレット オラクルダマスカス鋼グリーヴ 身代わりのミサンガ
ミリア ♀ 15歳
戦士Lv21
装備 皮の靴
BP振分 残BP:23
キャラクター再設定:1
シックススジョブ:31
詠唱省略:3
必要経験値二十分の一:63
鑑定:1
ワープ:1
パーティージョブ設定:3
パーティー項目解除:1
エクストリームドロップデッド:1
パーティライゼイション:1
所持金:3,952,131ナール
春の63日目