異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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191 カツアゲ

 

 

 

 

 

ボーデ

騎士団詰め所

 

 

 

 

 

「そんな……。お嬢様が……」

 

 ゴスラーの言葉を聞き、青ざめた顔で巫女が声を漏らす。

 

 他の奴らの表情も曇っているが、サボーだけは忌々しげに顔をしかめていた。

 原作ではこいつが殺していたわけだし、あの女が死んだこと自体はどうでもいいのだろう。

 

「彼女の所持品が全てロクサーヌの物となったことを認める。これを取り戻そうとすることは公爵家騎士団の裁定を無視し、我らの名誉を傷つける行為であると心得よ」

 

 ゴスラーの言葉に対し、バラダム家の面々はこちらを睨んで歯を食いしばっている。

 

 悪いね。権利放棄なんて絶対にしないから。

 というかお前ら全員同じ目にあうわけだし、装備品のことを考える必要なんてないぞ。

 

 少し離れたところで見守っていたハルツ公は、『やはりな』という笑みを浮かべ頷いていた。

 

 あんた楽しそうでいいな、おい。

 

 

 

 ロクサーヌは抜き身のエストックを携えてこちらへ戻り、セリーからタオルを受け取って手入れを始める。

 魔物を倒すのとは異なり、血の処理をしないといけないので仕方がないが、君は本当にブレないねぇ。

 

 そして、ゴスラーは俺たちに尋ねた。

 

「先に所持品の確保をするか? それとも次の決闘を行うか?」

 

 このあと五人分が追加されるのだ。所持品の確保は後でまとめての方がいいだろう。

 

「次の決闘をお願いします」

「うむ。では、サボーとアユムは前へ」

 

 詠唱省略を外してアイテムボックスから貫通のオリハルコン剣を取り出し、鞘をセリーへ預けた。

 そして、すぐに詠唱省略を戻す。

 

「いってくる」

「はい! サボーを叩きのめし、ご主人様の強さを見せつけてください!」

 

 ロクサーヌの言葉にセリーも続く。

 

「そうです! ご主人様は最強ですから!」

 

 最強は君の隣にいる娘さんだと思うんですがねぇ。

 

 二人ともキャラクター再設定によるチート能力を知っているため、まったく心配していない。

 ミチオの名台詞である『大丈夫だ、ロクサーヌ。おまえのご主人様はそこまで弱くない』ってやつを言えなかったなぁ。

 

 でもまあ、こんなに信頼してもらえてるんだ。それに応えるとしよう。

 

 前へ進みサボーと向き合うと、その向こうにハルツ公が見えた。

 彼は口元の笑みを隠そうともせず、目配せをよこす。

 

 おい。中立はどうした。

 

 それにしてもほんと楽しそうね、あなた。

 

 

 

「ロクサーヌが生き残ったのは予想外だったが、決闘が終わった後はあの二人をなぶってやる。壊れたら後を追わせてやるから精々感謝することだな」

 

 装備品を手に入れるとか、バラダム家の力を削ぐとか一切関係ない。

 ロクサーヌとセリーをなぶると口にしたのだ。こいつは確実に仕留める。

 

「お前の人生はあと一分もしないうちに終わるんだぞ? 出来もしないことを喚くな」

「俺を舐めるな! お前は絶対に八つ裂きにしてやる!」

 

 激昂しているサボーを見ていると、ゴスラーから声が上がる。

 

「では二回戦、始め!」

 

オーバーホエルミング

 

 開始の合図と同時に時間の流れを引き延ばし、立て続けに念じた。

 

エクストリームドロップデッド

 

 すると、MPが抜けていき、サボーの鑑定結果から身代わりのミサンガが消える。

 

 オッケー! 予定通り!

 

 奴に駆け寄りながら再びエクストリームドロップデッドを念じ、貫通のオリハルコン剣を首の直前で止め、もう一度薙ぎ払う。

 何の抵抗もなく剣身が通り抜け、そのまま首が跳んでいった。

 おそらく死亡したため、レベル補正がなくなったのだろう。

 こうすることにより不思議な現象ではなく、剣による攻撃で倒したように見えたはず。

 

 

 

 時の流れが元に戻ったところで、バラダム家の者たちから悲鳴のような声が響く。

 だが、ロクサーヌとセリーの歓声がそれを掻き消した。

 

「そこまで! 勝者アユム! 決闘の結果により、所持品が全てアユムの物となったことを認める」

 

 ゴスラーの言葉に口から安堵の息が漏れる。

 

 ハルツ公の方をチラリとうかがうと、贔屓の球団が勝利したようなテンションで喜びを表に出していた。

 

 あんたは中立じゃないといけないだろうに。

 

 

 

 内心で呆れていると、ゴスラーが問いかけてくる。

 

「このまま続けてよいのか?」

「はい。お願いします」

 

 さて、あと四人。チャッチャといこう。

 

 すると、残った奴らが騒ぎ出した。

 

「待ってくれ! 降参だ! 負けを認める!」

「所持品は全て渡すから勘弁してくれ!」

「これ以上争うつもりはない!」

「私たちはお嬢様の言葉に逆らえなかっただけで、決闘は本意ではなかったのです!」

 

 何を都合のいいことを。散々罵ってくれたじゃないか。

 特に魔法使い。お前は許さん。

 

 彼らの言葉を聞き、ゴスラーがこちらへ問いかけてきた。

 

「降参の申し入れがあったが受け入れるか?」

 

 このまま見逃せばこいつらは絶対に復讐を考えるだろう。

 装備品を取り戻すためではなく、恨みを晴らすために狙われるはず。

 

 

 

 うーん……。よし、そうだな。

 

「バラダム家は逆恨みでロクサーヌの家を困窮させ、彼女を奴隷へ落としました。そして先ほどは私から彼女たちを奪い、辱めると口にしています。このまま見逃せば家の力を使い復讐を企てるでしょう。それを防ぐため、私の奴隷となるのであれば降伏を認めます」

 

 これが受け入れられれば、魔法使いを奴隷としてアランに売却することがなくなり、その金がバラダム家に入らなくなる。

 六人分の装備品がなくなるのと合わせると、かなりの損失だ。

 原作ではバラダム家が傾いたと言われていたが、一家離散までいくかもしれない。

 そうなれば家の力に頼った復讐は不可能。

 

 俺の意思を確認し、ゴスラーは彼らへ問いかける。

 

「アユムはこう言っているが受け入れるか」

 

 四人は小声で話し合い、渋々とそれを受け入れた。

 

「全ての所持品を譲り渡すこと、また奴隷身分となりアユムへ譲渡されることを条件に降伏は受け入れられた! 今回の決闘は正当なものであったとハルツ公爵家騎士団ゴスラーが証言する!」

 

 ゴスラーの宣言を聞いてハルツ公が近寄ってくる。

 

「力が及ばぬ相手に対し、果敢に立ち向かう姿は尊いものであった。また、勝利した側も強者に相応しい立ち居振る舞いが実に見事」

 

 果敢に立ち向かっていましたかねぇ。

 それに、確かに舐めプはしなかったけど俺もロクサーヌも楽勝だったんですが……。

 まったく。物は言いようだなぁ。

 

 そして、彼はバラダム家の奴らへ顔を向ける。

 

「その方らのインテリジェンスカード操作は余が行う。左手を出すがよい」

 

 公爵閣下。いくらなんでもフッ軽がすぎますぞ。

 

 急にそんなことを言われ、彼らは目を白黒させている。

 封建社会において皇帝に次ぐ権力を持つ人物からの言葉なのだ。そうなってしまうのも無理はない。

 

 しかし、待たせてしまえば不敬になると考えたのだろう。彼らは一斉に左手を差し出した。

 ハルツ公は呪文を唱え、奴らのインテリジェンスカードを書き換えていく。

 

 その際に『冒険者か』とか『探索者か。その方のレベルはいくつだ?』とか『ほう、巫女であったか』など、いちいちリアクションを取るため、虚栄心が満たされるのか奴らも満更でもない顔をしている。

 

 仲間二人が死んだ上に、君ら奴隷に落とされてるんやで? そんな顔をしている場合じゃないやろ。

 

 そして、最後の一人のインテリジェンスカードを確認する。

 

「魔法使い……」

 

 呟きを漏らすと彼は意味ありげにこちらを見た。

 

 あー。たぶん俺がこいつをパーティーに加えると思ったんだな。

 

 バラダム家の奴らもいるし、今は公爵の勘違いを訂正することはできない。

 そのうち説明しなければ。

 

 そいつがうちのパーティーに入ることはないですから! うちのパーティーに魔法使いはいませんから!

 もしルティナが奴隷に落ちた場合は俺の下へ! 何卒! 何卒!

 

 内心で拝み倒していると、彼はインテリジェンスカードの書き換えを終える。

 

「これでこの者たちは奴隷となった。売却するにせよ、所有者を確定させるにせよ、早めに奴隷商人を訪ねるがよい」

 

 そう言うと再びベンチへ戻り腰を下ろした。

 

 ほんと、自由奔放な人だなぁ。

 

 

 

 仕分けは後でするとして、四人の装備品を取り上げ、片っ端からアイテムボックスへしまっていく。

 魔法使いからひもろぎのカッカラを受け取ると、ゴスラーが物欲しそうな視線を向けてきた。

 スキルが付いているとは思っていないのだろうが、スタッフより良い装備品みたいだし気になるのだろう。

 

 ……駄目だぞ。絶対に譲らないぞ。

 

 気が付かなかった振りをして、そのままアイテムボックスへしまい込む。

 

 それが終わるとセリーには死体から装備品を回収するよう頼み、ロクサーヌには前に盗賊の死体からお金やアイテムを探し出してもらったように、彼らを確認してもらうことにした。

 

 スンスン匂いを確認し探し当てた物をこちらへよこすので、それを一か所にまとめていく。

 

 しかし、下着に縫い付けられていた硬貨を回収しようとしたところで彼らから抗議の声が。

 

「肌着に縫い付けられている金は奴隷の持ち物として認められるはずだろう! これは俺のものだ!」

 

 はあ? 何を言ってやがる。

 

「決闘の条件は敗者の所持品は全て勝者の物となる、だ。本当なら服や肌着も俺たちの物だが温情で残している。つべこべぬかすなら着ている物まで剥ぎ取るぞ」

 

 冷静に考えると盗賊みたいなことを言ってんなぁ。カツアゲでもしてるような気持ちになるぞ……。

 

「うむ。アユムの言う通りだ。今回の条件では肌着に縫い付けている硬貨はもちろん、服や肌着もその対象となる」

 

 ナイスアシスト!

 さすがゴスラー。さすゴスだ。

 

 不満そうな顔をしていたが騎士の言葉には逆らえないらしく、抵抗がなくなったので、ロクサーヌと共に隠し財産を回収していく。

 

 

 

 それが終わったところで、冒険者と探索者がアイテムボックスを開いていないことに気が付いた。

 

 全ての所持品って言ってんだろうが。まったくよー。

 

 アイテムボックスの中身を出すよう伝えると、彼らは銀貨といくつかのドロップアイテムだけを取り出す。

 

「これで全部だ」

「ああ。シモンを探すつもりだったから物を入れていなかったんだ」

 

 んなわけないだろうが。舐めてんじゃねーぞ。

 

 とはいえ、どうやって出させればいいのか……。

 

 考え込んでいるとゴスラーが彼らに声を掛けた。

 

「本当にそれで全てなのだな? 銀貨を用いた試しを行うが問題ないのだな?」

 

 銀貨を用いた試し? なんのことだ?

 

 ん?

 

 ロクサーヌがクイクイと俺の袖を引き、他の者に聞こえないよう囁く。

 

「アイテムボックスのスキルを持った者を奴隷に落とす際に行われることなのですが、アイテムを全て出させた上で、例えば冒険者なら五十枠に五十枚ずつ銀貨をしまわせてみるのです」

 

 あー、なるほど。それなら確かに空になっているのか確認できる。

 探索者のアイテムボックスの枠とスタック数はレベル依存だが、奴のレベルはドリルヘアーがバラしているし、本人もハルツ公に告げていた。

 しかも、そのレベルは鑑定と一致しているので間違いない。

 アイテムボックスなんてものがある世界なんだから、確認方法が編み出されるのは当然のことか。

 

 奴らへ目を向けると顔から血の気が引いている。

 

 あれは間違いなく嘘を吐いているな。顔を舐めて味を確認するまでもない。

 

 確かめる方法があるってのに、どうして嘘なんか吐いたんだ?

 ワンチャン賭けてみたのだろうか?

 

 まあいい。一発かましてやろう。

 

「このあとゴスラー殿に確認をしていただくが、うっかり残っていたアイテムのことを思い出し、いま提出するのであれば罪には問わない。しかし、もし銀貨が入らないようなことがあれば死をもって償ってもらおう」

 

 自分で言っておいてなんだが、やっぱりカツアゲをしているような気分になるわ……。

 

 すると、彼らは慌てて言い訳を始める。

 

「あー、うっかりしていたー。アイテムが残っていたようだぞー。今すぐ取り出すから少し待っていてくれー」

「あれー。俺の方にも残っていたようだー。こっちも取り出すかなー」

 

 大根か! お前ら演技力クソだな!

 

 ロクサーヌとセリーは半眼で奴らのことを見つめている。

 ゴスラーは顔を手で覆い、何度か横に振ってから銀貨を取りに建物の方へ歩いていく。

 そしてハルツ公は喜劇でも見ているかのように、くつくつと笑い声を漏らしていた。

 

 なんだ、この状況?

 

 

 

 二人のアイテムボックスからは、出るわ出るわの大放出。

 大半はドロップアイテムだが、薬類もそれなりにあって、中には滋養錠も混ざっている。

 予備であろう身代わりのミサンガをそれぞれ二個ずつ。

 そして、銀貨や金貨だけではなく、それぞれ白金貨を隠し持っていやがった。

 うっかり出し忘れたってのは無理があるでしょうよ……。

 

 

 

 二体の死体と四人の奴隷から金とアイテムを全て取り上げ、銀貨による試しをパスしたところで、装備品と二枚の白金貨、それから金貨をアイテムボックスへしまう。

 嵩張る銀貨とアイテムボックスに入らない銅貨は後回しにして、空いている枠へ薬類やドロップアイテムを詰めていく。

 

 ファーストジョブにしてある冒険者のアイテムボックスがいっぱいになったところでゴスラーに尋ねた。

 

「これから彼らを馴染みの奴隷商人の下へ連れていこうと思います。すぐに戻りますので、パーティーメンバーをここへ残してもいいでしょうか?」

「うむ。問題ない」

 

 彼が頷いたものの、ロクサーヌからちょっと待ったコールが。

 

「お待ちください。万が一があってはいけません。私も同行いたします」

 

 あー。確かにそうかも。こいつら一切信用できないし。

 

「うむ。ではセリー、ここを頼めるか?」

「はい。お任せください」

 

 彼女は凛々しい表情で請け負ってくれた。

 ほんと、頼りになる娘さんだこと。

 

 セリーをパーティーから外してバラダム家の四人を加え、ベイルへ飛ぶ。

 

 

 

 

ベイル

アランの館

 

 

 

 

 

 探索者ギルドから商館へ移動し、ドアノッカーを叩く。

 

「おや? アユム様ではありませんか」

 

 すると、いつもの商人が顔を出した。

 

「いつもいきなりで悪いが、奴隷の売却を頼みたい」

 

 それを聞いて彼の表情が引き締まる。

 

「後ろの者たちですか?」

「ああ。俺たちはセリーを迎えに行かなくてはならないので、アラン殿にその旨を伝え、先に査定をしていてもらえないか? それぞれ、レベル66の探索者、冒険者、巫女、魔法使いだ」

「魔法使いですか!?」

 

 魔法使いと聞いて驚きの声が上がった。

 

「うむ。すぐに戻るのでよろしく頼む」

「かしこまりました!」

 

 テンション爆上がりの彼に四人を引き渡し、探索者ギルドへとんぼ返りだ。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

「お風呂場?」

 

 ワープゲートを出るとロクサーヌが不思議そうに声を漏らす。

 

「アイテムボックスが物でいっぱいだからね。いったん中身を出してからボーデへ戻ろう」

「なるほど。確かにその方がいいかもしれません。それなら、銅貨やアイテムボックスに収まらない分もあるはずなので、私はリュックサックを取ってまいります」

 

 あー、確かにそうかも。

 

「さすがロクサーヌ。気が利くね」

「ふふ。ありがとうございます」

 

 彼女は嬉しそうに微笑むとバスルームを出ていった。

 

 それにしても、ことあるごとに盗賊から奪ったリュックの出番がくるなぁ。

 

 

 気を取り直して白金貨や金貨、それに高額そうなものは探索者の方のアイテムボックスへ移し、それ以外はバスタブにガンガン放り込んでいく。

 

 よし。オッケー。

 

 程なくして二つのリュックを持ってロクサーヌが戻ってきたので、ボーデへ移動する。

 

 

 

 

 

ボーデ

騎士団詰め所

 

 

 

 

 

 騎士団詰め所に戻ると、セリーがハルツ公やゴスラーと話をしていた。

 彼女のことだから滅多なことを口にすることはないだろうが少し気になるぞ。

 

 すると、ハルツ公がこちらに気が付き話しかけてくる。

 

「セリー嬢が何度スキル結晶の融合に失敗しても、非難したり、罰を与えることがないそうだな。さすがアユム殿」

 

 うん? なんのこっちゃ?

 

 何と答えればいいのか迷っていたところ、セリーが目配せをよこす。

 

 ああ。そういうことね。

 

「スキル結晶の融合は失敗して当然。そんなことで大切な仲間を責めるわけにはいきません」

「うむ。その方の申す通り当然の話だ。しかし、世の中にはそれを理解できぬ者があまりに多い。まこと嘆かわしい限りだ」

 

 おそらくセリーはどのくらい融合に成功するのか聞かれたのだろう。

 公爵の質問をスルーするわけにはいかないし、かといって百パー成功するなんて言えるはずがない。

 返答に困り、失敗は多いものの俺に叱責されることはないと言ったわけだ。

 

 そして彼は話を変える。

 

「ところで、アユム殿も魔法使いをパーティーに迎えることになったのだな」

 

 おっ。勘違いを訂正するチャンスだ。

 

「公爵閣下。残念ながら先ほどの男をパーティーに加えることはありません」

「む? 何故だ?」

 

 彼は俺の言葉を聞き、怪訝な表情を浮かべる。

 

「あの者は私から彼女たちを奪い慰みものにすると口にしました。たとえ奴隷に落とされ行動を縛られようとも、そのような者を信用することなどできません」

 

 たとえルティナが仲間にならなくてもあいつだけはない。絶対にありえない。

 

「であるか……」

 

 公爵は呟きを漏らし、考え込んでいる。

 

 閣下。うちのパーティーに魔法使いはいませんからね? くれぐれもお忘れなきよう。

 

 

 

 彼の話が途切れると、今度はゴスラーが口を開いた。

 

「ロクサーヌ嬢の余裕を感じさせる回避も見事でしたが、目にも留まらぬ速さで攻撃を放ったアユム殿の動きも凄まじいの一言。ちぎれたミサンガが落ちていたということは、あの一瞬で二回も攻撃を行なっていたのですね」

 

 彼の言葉を聞いて、考え込んでいたハルツ公も顔を上げる。

 

「あのサボーという者は狂犬のシモンと並び、狼人族では最強の一角と称される男。それをいとも容易く片付けるとは、さすがアユム殿である」

 

 はいはい。さすアユありがとさん。

 

「はい。手合わせの際もそうでしたが、今回も目で追うことができませんでした」

 

 そのゴスラーの言葉に公爵は頷いた。

 

「うむ。あの攻撃をかわすことのできる者など、おらぬであろう」

 

 いるんですよねぇ。あなたから向かって左斜め前に。

 

 

 

 二人はまだ話をしたそうにしていたが、奴隷商人を待たせている旨を告げ、戦利品を回収してその場を後にする。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅バスルームに移動してアイテムボックスの中身をバスタブに入れていく。

 そして、それが済んだところでボーナスポイントとジョブの変更だ。まずはロクサーヌから。

 

「ロクサーヌ、ジョブを巫女に戻すね」

「はい。お願いいたします」

 

 声を掛けると、微笑みながら答えた。

 可愛いなぁ。

 

 パーティージョブ設定を開き、戦士から巫女に変更する。

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

巫女Lv19

装備 強権のエストック ダマスカス鋼の盾 耐風のダマスカス鋼額金 オラクル竜革ジャケット 古代樹の手甲 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

 よし。オッケー。

 

 ロクサーヌの変更が終わったところでキャラクター再設定を開き、シックススジョブをフィフスジョブ、パーティージョブ設定をジョブ設定に落とす。

 さらに、パーティライゼイション、エクストリームドロップデッド、パーティー項目解除のチェックを外した。

 

 今度は自分のジョブ設定を開き、ファーストジョブを魔法使い、フォースジョブを冒険者に変更する。

 そして、増加したポイントは……。

 

 おめぇの出番だ、買取価格三十パーセント上昇!

 

 いや、だって、ほら。俺から奴隷を買い取ってそのままオークションに出せば労せずして大金が入るわけですし?

 それなら儲け話を持ち込んだ手数料という考え方もできるわけですし?

 アラン殿、ここは持ちつ持たれつということでどうだろう?

 

 自分に言い訳をしつつ、ワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

魔法使いLv50 英雄Lv46 遊び人Lv43 冒険者Lv31 探索者Lv50

装備 身代わりの硬革帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 竜燐の靴 よりしろのイアリング

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフススジョブ:15

詠唱省略:3

必要経験値二十分の一:63

鑑定:1

ワープ:1

ジョブ設定:1

買取価格三十パーセント上昇:63

 

所持金:6,532,131ナール

 

春の63日目

 

 

 

 

 

バラダム家の皆さんの装備一覧

 

・ドリルヘアーさん 獣戦士

催眠のエストック

剛健のダマスカス鋼盾

オラクルティアラ

頑強の竜革ジャケット

剛腕の古代樹手甲

駿馬の竜革靴

 

・サボー・バラダム 獣戦士

催眠のオリハルコン剣

ダマスカス鋼の額金

頑強のオリハルコンプレートメイル

剛腕のミスリル手甲

ダマスカス鋼のグリーヴ

 

・冒険者

エストック(スロ4)

ダマスカス鋼の盾

竜革の帽子

竜革の鎧

竜革の手甲(スロ1)

竜革の靴

身代わりのミサンガ

 

・探索者

ダマスカス鋼の槍

ダマスカス鋼の額金(スロ4)

竜革の鎧

竜革のグローブ(スロ1)

竜革の靴(スロ1)

身代わりのミサンガ

 

・エリク・バラダム 魔法使い

ひもろぎのカッカラ

ズケット

アルバ(スロ2)

竜革のグローブ

ビットローファー(スロ1)

身代わりのミサンガ

 

・ジェニー・バラダム 巫女

聖槍(スロ5)

ダマスカス鋼の額金

竜革のジャケット(スロ3)

竜革のグローブ

竜革の靴

身代わりのミサンガ

 

冒険者と探索者のアイテムボックスに計四個の身代わりのミサンガ

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