異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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194 快進撃

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

入口

 

 

 

 

 

 ハルバーの迷宮へ移動し、入口にいる探索者へ銀貨を差し出しながら声を掛けた。

 

「二十七階層まで頼む」

「はい、確かに。では、そちらのパーティーに加えていただけますか?」

「うむ」

 

 彼をパーティーに入れて二十七階層へ移動し、そのまま一緒に入口へ戻る。

 

「世話になった。ロクサーヌ、セリー。次へ行くとしよう」

 

 男の『入らないんかい!』と言いたげな顔を無視してターレへと飛んだ。

 

 

 

 

 

ターレの迷宮

入口

 

 

 

 

 

 自分たちの存在を印象付けるため、入口の探索者に話を振っておく。

 

「どこまで進んでいるんだ?」

「十四階層です」

「一階層上がったようだな」

「はい。つい昨日のことなのでまだ各ギルドへ情報が回っていないと思います」

 

 ドロップアイテム売却のときに彼女たちは攻略情報を確認していたが、何も言っていなかったもんな。

 

「ちなみに十四階層の魔物は?」

「グラスビーです」

 

 オッケー。蜂さんね。

 

 感謝の言葉を告げて、迷宮の入口へ身を埋める。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

二十七階層

 

 

 

 

 

 ターレの十三階層からハルバーの二十七階層へ移動したところでボーナスポイントの振り分けを済ませ、アイテムボックスからカッカラと盾、それからズケットを取り出す。

 そして、魔物についてセリーへ尋ねた。

 

「ハルバーの二十七階層から出現する魔物はモロクタウルス。火属性に耐性を持ち、水魔法を苦手としてます。目にも留まらぬ速さで強烈な体当たりを仕掛けてきますので、食らわないように気を付けてください」

 

 目にも留まらぬ速さだってんなら、気を付けてもどうしようもないんじゃないですかねぇ。

 

 すると、ロクサーヌがドヤ顔で口を開く。

 

「ご主人様のオーバーホエルミングで日々鍛えているのです! なにも問題ありません!」

 

 ご主人様はその訓練を積んでいないんですがねぇ。

 

「そして、頻度は低いですが魔法も使用します。さらにスキル攻撃として頭を下げ、角を突き刺すように突進してきますので、発動させないように気を付けましょう」

 

 こっわ! 角を突き刺すのは反則でしょ! 想像するだけで恐ろしいわ!

 

「それから、残すアイテムはバラです。これはうちでも頻繁に食卓に上がっていますね」

 

 迷宮産の牛肉の中では一番安いこともあって、我が家では定番だ。

 

「また、稀に三角バラを残すこともあり、これは普通のバラに比べてとても美味しいのだそうです」

 

 そんなことを聞いたら料理人とドラウプニルに登場していただきたくなるじゃないか。

 

 湧き上がる欲望と戦っていると、セリーは説明を続ける。

 

「あとは、この階層で出現する可能性がある魔物はケープカープとグミスライムとなっています。この二種については今まで戦ってきたのでご存知ですよね」

「うむ」

 

 俺が頷いたのを確認すると、彼女も頷きを返す。

 

「三階層下の魔物となるため確率は低いですがサイクロプスも出現します。高威力の物理攻撃に加え会心の攻撃も行うため、なるべく物理攻撃を受けないように注意をしてください。火魔法も使用しますが物理攻撃に比べると受けるダメージは少ないでしょう。スキル攻撃は大きな腕による強力な薙ぎ払いです」

 

 会心持ちの上にそんなヤバそうなスキル攻撃を使うの? やだなぁ。

 

「モロクタウルスと同じく火に耐性を持ち、弱点は風魔法となっています。残すアイテムは装備品の素材である銅。ただ、製造には相当な数が必要となるため、作ろうと思ったら何匹も倒さなくてはいけません。そして、レアドロップが以前お話ししたヤスリです」

 

 こんな強力な魔物なのに、残す素材で作れるのはスロット最大数が一つの銅シリーズ……。

 ヤスリは確か霊木の板を製造する際に消耗素材として使用するんだったか。

 いずれにせよ、強さに比べてドロップはそれほど美味しくない。

 

「攻撃を食らわないように注意して次の階層を目指そう。それでは右の壁沿いに進んでいくぞ」

 

 ルートの分からない階層は右手法に限る。

 

 二人が返事をしたところで歩き出す。

 

 

 

「ご主人様、この先に敵です」

 

 ロクサーヌの言葉を聞いて、セリーと共に背負っていた得物を前方に向けた。

 そのまま通路を進んでいくと、魔物が姿を現す。

 

 モロクタウルスは牛の頭に、筋骨隆々な人間の体を持つ、いわゆる牛人だ。

 ミチオは白黒のぶち模様だから愛嬌があると言っていたが、全然そんなことはない。

 無機質な牛の目と、白黒で塗り分けられたような筋肉質の体が不気味すぎる。

 こんな奴が目にも留まらぬ速さで突っ込んでくるなんて、恐ろしいわ。

 

 そんな牛人が三匹に、グミスライムとケープカープが一匹ずつ。

 

 

 鑑定で確認している間にロクサーヌが一気に駆け出し、セリーが俺を守るため前に出た。

 

 ビビっている場合じゃない! サンダーストームのお披露目だ!

 まずはダブルスペルから! 必殺パワー!

 

サンダーストーム

サンダーストーム

 

 念じた瞬間、魔物の周りがチカチカと光り出したが、他の魔法のような派手なエフェクトは発生しない。

 

 その間もロクサーヌはヘイトを取り続け、セリーは離脱を図ったケープカープに攻撃を加えている。

 

 そして、いつの間にか発光現象は収まっており、魔物が次々と倒れていった。

 

 

 

 よっしゃ! 弱点を突かなくてもワンターンキルだぜ!

 

 どうやら装備品のおかげで魔法攻撃力がめちゃくちゃ引き上げられているらしい。

 

「二十七階層の魔物を一撃で倒してしまうなんて! さすがご主人様です!」

「弱点を突いているわけでもないのにこんなにあっさりと! すごすぎます!」

 

 お嬢様たちは大興奮である。

 

 まあまあ、落ち着きたまえ。

 

「これなら問題なさそうだな。アイテムを集めたら先を急ごう」

 

 しかし、ロクサーヌがその言葉に異論を唱えた。

 

「二十七階層の魔物は余裕だったのです。入口の探索者に頼んで二十八階層へ移動した方がよいのではないでしょうか」

 

 そして、セリーも彼女の意見に同意を示す。

 

「トリプルスペル二回で倒せる階層を探っていくというお話でしたよね? それなら、ロクサーヌさんの案が効率的だと思います」

 

 うーん……。確かに言われてみればそうかもしれない。

 

 それじゃあ、入口近くの木にワープで移動し、二十八階層へ送ってもらおう。

 面倒だが探索者と一緒に入口へ戻り、そこからワープを使い再度二十八階層へ行くってことで。

 

 その旨を伝えるとロクサーヌからちょっと待ったコールが。

 

「お待ちください。二十八階層でも同じことが起こるかもしれません。これを何度も繰り返すと不信感を抱かせてしまうはずです。そうですね……。今回は三十四階層まで順番に送ってもらうというのはいかがでしょうか?」

 

 その隠し切れていない嬉しそうな表情。

 不信感云々はそれらしいことを言っているだけで、本音はガンガン先へ進みたいだけだな?

 しかも今回はって、次回があるかのようなことを言っているし……。

 おまけに今までのボスが雑魚として出現するようになる、三十四階層まで含めているぞ……。

 

 彼女を見遣ると、ニッコリ笑顔で見つめ返してきた。

 あら、可愛い。

 

 ……まあいいさ。ブクマだけして、危なそうならいかなければいい。

 安全第一、いのちだいじに。無理は禁物ってことで。

 

「分かった。アイテムを拾ったら入口へ戻り、三十四階層まで移動できるようにしておこう」

 

 俺の言葉にロクサーヌとセリーから歓声が上がる。

 

 

 

 ポイントを振り分けて彼女たちから受け取った赤身の肉に鑑定をかけてみたところ、三つともバラと表示された。

 まあ、そうそうレア食材が残ることはないか。

 

 今は帝国解放会の入会試験に向けてのレベル上げが優先だが、それが終わったらレア食材集めに勤しむとしよう。

 ルティナへ至る道が破綻した今となっては、あれやこれやと忙しなく動く必要もない。

 迷宮の脅威はあっても、この世界に魔王なんて存在しないんだし、異世界スローライフとしゃれこもうじゃないの。

 

 カッカラ、盾、ズケットをアイテムボックスへしまい、ワープゲートを開いた。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

入口

 

 

 

 

 

 戻ってきた俺たちを見て、入口に立っている男は怪訝な表情を浮かべている。

 

「すまんが二十八階層から順番に、三十四階層まで案内してもらえるか?」

「え? あ、はい。可能ですが、七百ナールかかってしまいますよ?」

 

 さっきの分と合わせて八百ナール……。

 キャミソールが一着買えてしまう金額だ……。

 

 ……いや、俺は七百万ナール以上の財産を持つ男。時間を金で買ったと考えればいい。

 

 銀貨を取り出し彼へ差し出す。

 

「では、頼む」

 

 

 

 男の案内で立て続けに階層を巡り、ブクマの登録を済ませていく。

 そして、三十四階層の案内が終わり、入口へ戻ったところで彼がパーティーを抜けた。

 

「よし。次回からはスムーズに移動できるようになったな。それじゃあ、今日のところは引き上げることにしよう」

 

 俺の言い訳を聞き、男は『入らないんかい』と言いたげな表情を浮かべている。

 それを華麗にスルーして、少し離れた木にワープゲートを展開した。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

二十八階層

 

 

 

 

 

 二十八階層に移動し、準備を整えたところでセリーに魔物の確認だ。

 

「二十八階層から出現する魔物はドライブドラゴンです」

 

 マジっ!? 三十三階層以下では最強を誇る魔物じゃないか!

 

 ……やっぱやめません?

 

 内心で怖気づいている俺にかまわず、彼女は説明を続ける。

 

「火、水、風、土に耐性を持っているのに加え、飛行しているため物理攻撃が当てにくく、さらに防御力も高いため生半可な攻撃ではダメージを与えることも難しいです」

 

 えっぐ。さすがドラゴンは格が違う。

 

「攻撃方法は四属性に撃ち分けてくる魔法。そして空中を駆ける突進に、爪や牙を用いた攻撃。さらに長い尻尾を振り回すスキル攻撃と、どれも強力なものばかりなので、もし攻撃を受けてしまったらすぐに回復を行いましょう」

「はい。そのときは私に任せてください」

 

 セリーの言葉にロクサーヌが答えた。

 

 この娘は攻撃を食らわないだろうし、安定して回復をしてくれるはず。実に頼もしい。

 

「ですが、ご主人様の雷魔法があるため耐性を気にする必要はありませんし、他の人たちに比べればだいぶ戦いやすいと思います。ミリアが加入したらここで入会試験の対策を行うのはいかがでしょう」

 

 あー。それはいいかもな。

 いきなりクーラタルの三十三階層で試すのではなく、この階層で予習をしてからの方がいい。

 さすがセリー。さすセリだ。

 

 俺が頷いたのを確認すると彼女は話を締めくくる。

 

「残すアイテムは竜皮。うちでもよく使っているものなので説明は不要ですね」

 

 コンソメキューブやブイヨンの代わりに使っているあれな。

 

 

 

 ブリーフィングを終え、通路へ足を踏み出したところ、すぐに奴らと遭遇した。

 様々な漫画やアニメ、ゲームなどで強さの象徴として描写される圧倒的な存在と。

 

 三メートルほどの緑色の鱗で覆われている蛇のような胴体。

 鋭く尖った爪を持つ手足に、竜と聞いて誰もがイメージするような翼膜。

 トカゲのような顔にはギザギザの歯と大きな牙が覗く。

 そして、縦に割れた瞳孔がこちらを凝視していた。

 

 まるで人の魂に刻まれているような、根源的な恐怖が呼び起こされる。

 そんな存在が四体も……。

 

 

 

「はっ!」

 

 俺がビビり散らかしているというのに、ロクサーヌは気合の声と共に攻撃を入れ始めた。

 立て続けにドライブドラゴン四体のヘイトを取ったかと思えば、奴らの体を足場にピョンピョン跳び回り、攻撃を避けている。

 そして、セリーも駆け寄りスキル攻撃を潰していた。

 

 こえー! よくそんなことができるな! この娘さんたちはすごすぎるぞ!

 

 あっ! 俺も攻撃をしないと!

 

 見惚れている場合じゃないことを思い出し、ダブルスペルを放つ。

 

サンダーストーム

サンダーストーム

 

 念じた瞬間、ドラゴン共の周りがピカピカ光り出した。

 そして、俺のすぐ近くにも雷光が走る。

 

 そちらに目を遣ると口をパクパクさせている鯉さんが。

 

 あ、いたの?

 

 気付いた瞬間、奴は魔法陣を展開し始めた。

 

 やばっ! 潰さないと!

 

 慌てて振るったカッカラが奴の体にあたり、魔法陣が掻き消える。

 

 持っててよかった! 詠唱中断!

 

 

 

 程なくして光の点滅が消えると、奴らも実体を保てなくなり空気に溶けるように消えていった。

 

 マジか……。二十八階層とはいえ、ダブルスペルでドライブドラゴンのワンターンキルが可能なのか……。

 

 あまりのことに呆然としていたロクサーヌとセリーだったが、すぐに事態を把握し駆け寄ってくる。

 

「まさかドライブドラゴンまで一撃だなんて! 本当にご主人様はすごいです!」

「こんなことが可能な人など他にはいないでしょう! 信じられません!」

 

 彼女たちは一頻りはしゃぐとすぐにドロップアイテムをかき集め、次の階層へ行こうと口にした。

 

 いやまあ、その予定だけど、君たちのテンションを見てご主人様は少し不安を覚えているんですが……。

 

 

 

 俺たちはその後、快進撃を続けることとなる。

 

 二十九階層の魔物はノンレムゴーレム。ロクサーヌとは因縁浅からぬ相手だ。

 セリー先生のブリーフィングによると、弱点属性はなしで土耐性を持つ。

 攻撃方法は土魔法と、腕による強力な殴りに加え会心攻撃も持っているらしい。

 そして、スキル攻撃は岩の体を利用した強烈な体当たり。

 だが、そんな強力な魔物もトリプルスペルでワンターンキル。

 ドロップアイテムは遮蔽セメントの材料となる岩。レアドロップは石英とのことだったが、残ることはなかった。

 

 

 

 続いての三十階層はブラックフロッグ。今朝も焼き払っているお馴染みの相手。

 こいつらはトリプルスペルとファイヤーストームのコンボで片が付く。

 

 

 

 お次の三十一階層は身体が岩でできた鳥。ロックバード。

 鳥にしてはデカいがドライブドラゴンやノンレムゴーレムと比べれば威圧感に欠ける。

 セリーによればノンレムゴーレムと同じで、土魔法を使い土属性に耐性があり弱点属性はない。そして魔法より物理攻撃主体で戦うようだ。

 今回はトリプルスペルに加え、サンダーストームで倒すことに成功した。

 ドロップアイテムは羽毛。ダウンとフェザーが合わさったような形状をしていて、そのままインクに付ければ羽根ペンになり、軸を外せば羽毛布団の中身として使えるらしい。

 原作でミチオが作っていたやつだな。いずれ俺もチャレンジしよう。

 

 

 

 いよいよ三十二階層。この階層から魔物の出現数が最大六匹になる。

 出現する魔物はタルタートル。樽のような円筒形をした亀。

 水属性に耐性を持ち、土属性が弱点。

 通常攻撃は全体水魔法と噛みつき。それからスキル攻撃として、頭と手足を引っ込めた上で行う転がり攻撃。

 ものすごい勢いで転がってくるため、食らうと大ダメージを負うとのこと。

 しかし、そんな魔物もトリプルスペルとサンドストームとサンダーストームのダブルスペルで片付いてしまった。

 残ったアイテムは装備品の素材となる甲羅。

 でもまあ、いまの俺たちが身に付けるほどの性能ではないそうだ。

 

 

 

 低階層ラストとなる三十三階層はハーフハーブ。

 そう。ここ数日狩りまくっている、万能丸の素材落とし器くん。

 そして、セリーによるアドバイスが入った。

 この階層からはドライブドラゴンが出現することがほぼなくなる。

 出現するのはハーフハーブ、タルタートル、ロックバード。それから低確率でブラックフロッグ。

 この四種に火耐性はなく、逆にハーフハーブとブラックフロッグは火を弱点としている。

 なので、たとえ雷魔法に追加効果の麻痺があったとしても、遊び人のスキルは中級火魔法にした方がいいとのことだ。

 アドバイスに従い戦闘を行ったところ、バーンストーム二発とファイヤーストームによるトリプルスペルでハーフハーブが倒れる。

 その後は三対三となったため、ロクサーヌ師匠が三匹とも引き受けてくださった。

 後方から余裕をもってサンダーストームとバーンストームのダブルスペルをぶち込んだところ、奴らの体は実体を失い風に流されるように消えていく。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

魔法使いLv50 英雄Lv46 遊び人Lv43 冒険者Lv31 魔道士LV29

装備 ひもろぎのカッカラ ダマスカス鋼の盾 ズケット 頑強のアルバ 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

詠唱省略:3

必要経験値二十分の一:63

結晶化促進四倍:3

獲得経験値二十倍:63

 

所持金:7,299,264ナール

 

春の63日目

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