食事の後はミリアとの話し合いだ。
まずは自室に戻り、日本から持ち込んだ物の確認を行う。
ファスナー式のリュックとそれに入っている原作。それから、文具やフリーザーバッグ。
その他の細々したものは要らないはず。
んー。服関係もいいかな。
それじゃあ、リュックを持ってリビングへ移動しよう。
リビングへ入ると三人は立ったままで俺を待っていた。
話し合いをするとだけ聞かされているミリアは少し戸惑っているように見える。
すべてを伝えたわけじゃないが、この娘にはキャラクター再設定の一部を見せているため、どんな話が飛び出すのか気になっているのかもしれない。
先に座らなければ彼女たちも座ることができないため、ローテーブルに荷物を置いてすぐにソファーへ座る。
シリアスな話し合いになるからだろうか? 三人はこちらの正面に腰を下ろした。
さて、それじゃあ話を始めよう。
ロクサーヌとセリーに続き、三度目の説明となるため、すっかり話の道筋が出来上がっている。
すべてのジョブにはレベルがあり、レベルアップに伴いボーナスポイントを得ていること。
俺はそれを自由に割り振ることにより、様々なスキルや魔法、それからジョブを使用することが可能なこと。
ワープに鑑定、三割アップや三割引、経験値系など様々なスキル。
それから、ダブルスペルにダブルアタック、オーバーホエルミングといった迷宮探索の基本となる能力についてなど。
さらに、デュランダルや毘盧帽、ドラウプニルといったボーナス装備品についても説明しておいた。
話を聞いていたミリアの表情には眩しいほどの笑顔が浮かび、頬は赤みを帯びている。
「ということは、そのドラウプニルという装備品を身に付ければトロや尾頭付きがたくさん手に入るんですね!」
そこに食いついちゃったかー。
世界の知られていなかった真実みたいな、結構すごい話をしたつもりなんだけど……。
「そうだね。実際トロはこれを使って手に入れたんだよ」
「やっぱり! こんなにすごいご主人様の下で働ける私は本当に恵まれています!」
えっと、まあ、うん。喜んでるならいいか……。
「それじゃあ、次は俺自身について話していきたいと思う」
夢見るような表情で魚系のレアドロップに想いを馳せていたミリアへ告げる。
「ご主人様のことですか?」
彼女の問いかけに頷き、本当の年齢や今までの人生、地球のことや原作知識について話していく。
よほど衝撃を受けただろう。どんぐりのような大きくて愛らしい目を見開き、形の整った口もぽかんと開いていた。
それからこれも伝えておかなくてはならない。
「いま言った通り部分的ではあるものの、俺は夏の途中までに起こることをある程度知っていた。もちろんミリアが奴隷に落ちることについてもだ。それにもかかわらず君を助けることができなかった。本当に申し訳ない」
その言葉を聞いたミリアは不思議そうに首を傾げる。
そして、しばらく考えてから俺の言葉の意味を理解したのか、恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
「いえいえ。私が奴隷になったのはご主人様のせいじゃありません。悪いのは網を打つことに夢中になって、神域のことがすっかり頭から抜け落ちていた自分自身です。気にしないでください」
どうして助けてくれなかったんだと恨まれてもおかしくはないのに、彼女は本当に気にしていないように見える。
というか、自分の失敗を恥ずかしく思っているっぽい。
「両親からは、お前は考えなしに行動するから周りをよく見なさいといつも注意されていたのにこんなことになっちゃいました。ほんと私は馬鹿なのでー」
ミリアはそう言うと照れ笑いをしながら自分の頭をコツンと小突く。
割と深刻な話をしているってのに、あざと可愛い娘だなぁ。
でもまあ、実際にこんなことになってしまって、親御さんはとても心配をしているんだろう。
ロクサーヌやセリーのご家族だけではなく、彼女の家族にも恩返しをしないとな。
内心でそう考えているとミリアがドヤ顔で告げる。
「あっ、でも、これからは気を付けるので、ご主人様もお姉ちゃんたちもいろいろ頼ってくださいね」
「えっと、うん。いろいろ頼りにしてるよ、ミリア」
「はい! 任せてください!」
彼女の返事を聞き、ロクサーヌとセリーも心配そうに話しかけていた。
良い娘なのは確かなんだよなぁ……。
俺たちに頼りにしていると言われて嬉しそうにしていたミリアだったが、ふと何かに気が付いたように口を開く。
「ご主人様しか知らない魚料理というは違う世界のものだったのですね。これからどんな料理が食べられるのか楽しみです」
そんなにキラキラした瞳で期待されるとプレッシャーが……。
まだ見ぬ魚料理に想いを馳せていたミリアへ、怖いくらいに表情を引き締めたロクサーヌが話しかける。
「ミリア、以前にも言いましたが、有力者がご主人様の知識や能力を知った場合、どんな手を使ってでも配下に加えようとするでしょう。そのようなことは絶対に許すわけにはいきません」
「ロクサーヌさんの言う通りです。そうなれば私たちはご主人様から引き離されてしまいます」
二人の言葉を聞き、彼女の表情も真剣なものへと変わる。
「それは駄目です。強くて優しくて美味しい魚料理を食べさせてくれるだけじゃなく、とっても気持ちよくしてくれる最高のご主人様なんです。いなくなったら駄目です」
この娘、ちょっと即物的すぎん?
……いやまあ、好意を持たれていることを喜んでおこう。
それにしてもロクサーヌやセリーとは違い、ミリアは異世界についてまったく気にした様子がない。
この辺りは性格の違いなのかな?
俺の抱えている秘密をいかにして守るかという話し合いが終わったところで、探索再開まではのんびり過ごすことにする。
すると、ロクサーヌに耳打ちをされたミリアがこちらのソファーへ近づき、俺の体をぎゅっと抱きしめた。
そして、至近距離で上目遣いをしながらおねだりをする。
「ご主人様、前にやってもらったトントンをお願いします」
以前にも思ったが、このお嬢さんは割と欲しがり屋さんだ。
でもまあ、こちらだってやぶさかではないわけで、彼女の臀部にそっと手を添える。
「ミリアが望んでくれるなら喜んで」
「はい! お願いします!」
俺の言葉を聞き、彼女の大きな瞳がまるで天の川のように輝きだす。
猫人族特有の虹彩が実に美しい。
まずは逆撫でしないように気を付けながら、親指と人差し指で輪っかを作ってしごくように撫でていく。
すると、ミリアの口元には薄っすら笑みが浮かび、表情はうっとりしたものに変わった。
ほんと、可愛いなぁ。
自分がこの表情を引き出しているのだと思うと、嬉しさでどうにかなってしまいそうだ。
しばらくそれを続けていたところ、若干だが彼女の顔に不満の色が浮かぶ。
「ご主人様。なでなでも気持ちいいですけど、トントンをしてほしいです」
可愛すぎるー!
ストレートに愛撫を求められると、ドキドキしてしまうぞ。
「分かった。それじゃあ、気持ちよくなってね」
「はい。いっぱい気持ちよくしてください」
彼女のいじらしい言葉に思わず力が入りそうになるが、それをグッと堪えて優しく刺激を加えていく。
それを続けているうちに、ミリアの呼吸が激しくなってきた。
「はあっ、んっ……。あっ、あっ……」
こちらの体をぎゅっと抱きしめているため、吐息が耳を刺激する。
ミリアの愛らしい声でダイレクトにASMRを食らっているようでゾクゾクしまくりだ。
彼女の様子をうかがい、痛くないように気を付けながら刺激を与え続けていると、大きな声を上がる。
「気持ちいい! 駄目! こんなのおかしくなる!」
その言葉でついに我慢の糸が切れてしまい、スパートをかけるように彼女の臀部を刺激していく。
「あー!」
ミリアは体を反らしてひときわ大きな声を上げると、全身の力が抜けたように俺の体へ頽れた。
荒い呼吸を繰り返し、興奮で体温が上がった柔らかな体を抱きしめ、今度はゆっくりと撫でさする。
しばらくそうしていると、彼女は照れ笑いを浮かべながらこちらを見つめた。
「えへへ。気持ちよすぎて頭が馬鹿になるかと思っちゃいましたー」
この娘、可愛すぎでしょうよ。
あまりにも嬉しい言葉を聞いてしまったため、無意識にネコミミを撫でてしまう。
「ミリアに喜んでもらえてよかった」
「はい。とってもすごかったです。前のときも思ったんですけど、ご主人様は女の子を気持ちよくするのが上手なんですね。たくさんの女の子を喜ばせてきたんですか?」
なんちゅうことを言いなさる。
それではまるで好色家や竿師、色魔、色情狂、色事師ではないか。こっちとら清い体を四十五年間守り通していたんだぞ?
……あっ。でも色魔ではあるのか。
すると、ミリアはいたずらっぽい表情で目を合わせ、手を逸物に添えた。
「えへへ。ここがおっきくなってますよ? 今度はご主人様が気持ちよくなってください」
そう言って添えた手をゆっくり動かし始める。
おいおい。朝っぱらからこの娘は何をするつもりなんだ!?
……いや、やぶさかじゃないけどね?
「ミリア」
彼女の手に身を任せようかと考えた瞬間、押しつぶされそうなほどのプレッシャーを纏った声がリビングに響く。
そちらに目を遣ると、我が愛しの人はゆっくりかぶりを振った。
「抜け駆けをしてはいけません」
セリーも困ったような表情で彼女を見つめている。
「どうやらミリアはちゃっかりしていて油断できないタイプのようです」
すると、ネコミミ娘がマイサンから手を離す。
「てへへ。怒られちゃいました」
軽いな、おい。
「ご主人様、ちゃんと平等に可愛がってくださいね」
「そうです。贔屓はよくありません」
あ、はい。以後気を付けます……。
……え? これ俺のせい?
その後は明日の予定を確認だ。
明日はドレスの受け取りと肖像画の依頼を行うことになっている。
早朝の探索は行わず、朝風呂に入りモデルとなるロクサーヌの身支度を整えよう。
朝食をとったら高級服屋でドレスを受け取り、美術店へゴー。
無事に視野記憶ってやつが済んだら自宅へ戻り、ドレスを大切に保管しないとな。
すると、セリーが意見を述べる。
「高額なドレスを保管することになるのです。虫に食われないようシュラブの葉を購入してもよろしいでしょうか?」
ロクサーヌも頷きながらそれに続く。
「そうですね。ご主人様からいただく大切なドレスなのです。万が一があってはいけません」
どういうことなのか問いかけるとセリー先生が説明を始めた。
「シュラブの葉は害虫駆除だけではなく、布製品や紙類などと一緒に置くことで虫に食われるのを防いでくれるのです」
なるほど。毒餌としてだけではなく防虫剤としても利用できるのか。
食べさせることが目的の毒餌と、食べさせないことがも目的の防虫剤のどちらでも使えるなんて、不思議な感じがする。
それに、そんな効果のある物を服と一緒に置いて問題はないのかね?
「それは衣服についても大丈夫なの?」
「はい。飲み込まない限り、人体には影響ありません」
へー。さすがファンタジーなアイテム。便利なもんだ。
「ロクサーヌ、セリー。それは日用品だから俺が購入するよ。どのくらい必要なの?」
「ご主人様、ありがとうございます」
それを聞いたロクサーヌは嬉しそうに笑みを浮かべる。
あら、可愛い。
セリーも笑顔で答えた。
「ありがとうございます。えっと、少なくとも一個で三年くらいは持つそうなので、私とロクサーヌさんの分で二個あれば十分です。必要になったらそのときに買い足せばいいでしょう」
オッケー。ミリアたちの分はそのときにってことで。
話し合いをしている間、ミリアは俺に抱きつき寝息を立てている。
もしかしたら正式加入ということで気を張っていて、精神的な疲れがあったのかもしれない。
気になって彼女の顔をうかがったところ、幸せそのものといった表情を浮かべていた。
……ただ単にマイペースなだけかも。
ロクサーヌとセリーもその様子をほほえましげに眺めている。
まあ、こんなに安心してくれているんだ。どっちだろうと関係ないさ。
食休みが終わると再び迷宮へ赴きレベル上げを再開する。
昨日までとは段違いの安定感を保ちつつ、ひたすら魔物を焼き続けた。
昼食は赤身唐揚げの野菜甘酢あんかけ。
ミリアだけではなく他の二人にも初めて出す料理だったが、好評だったので一安心だ。
デザートは朝食に引き続いてプリンをいただく。うん。実に美味である。
そして、昼食後の食休みではロクサーヌがピッタリと抱き着いて離れようとしない。
たわわに実った果実を押し付けながら、俺の首筋に顔を埋め自分の物だという刻印を刻み続けていた。
ミリアに順番を譲ったのは彼女自身だったが、嫉妬の気持ちを抑え込んでいたのだろう。
俺には何も言う資格がないため、ロクサーヌの体を撫でながら身を任せた。
午後も同じく魔物をガンガン狩っていく。
レベルもすさまじい勢いで上がり、魔法使い、遊び人、冒険者が一つずつ。そして魔道士は二つも上がった。
遊び人と魔道士のレベルが上がるたびに魔法使いを外してみたが、いまだ二ターンキルには届かない。
しかし、ダブルスペル二回とバーンストーム一回でビープシープが沈むようになっているため、もう少しで可能になるだろう。
実験が終わったところでロクサーヌが話しかけてきた。
「ご主人様、この先は待機部屋です。いつもより少し早いですが、最後にボスと戦って終わりにしましょう」
ミリアの歓迎会の準備があるので、今日の探索は早めに終えるとあらかじめ伝えていたもんな。
「分かった。それじゃあボスに挑むとしよう」
ロクサーヌの案内で待機部屋を目指す。
待機部屋に入ったところで杖と盾をしまい、ジョブとボーナスポイントの変更だ。
ミリアが合流したし、スリープシープを問題なく倒せることも分かっている。ここでトリプルアタックの確認をしておこう。
設定するジョブはパーティー効果とオーバーホエルミングで必須の英雄。
ラッシュを持つ戦士と、スラッシュを持つ剣士。そのどちらかのスキルを設定する遊び人。
そして、アイテムボックスを持っている冒険者。
となるとファーストジョブは一番レベルの高い英雄だな。
ジョブが決まったところで獲得経験値二十倍を外してジョブを入れ替え、遊び人のスキルにはラッシュを設定しておいた。
ボーナスポイントは、キャラクター再設定で1、フィフスジョブで15,詠唱省略で3、必要経験値二十分の一で64、鑑定で1、ジョブ設定で1、結晶化促進四倍で3。そして残ポイントが59。
うん。迷うまでもない。
ジョブ設定と結晶化促進を外し、武器六へポイントを振る。
田川 歩 男 18歳
英雄Lv48 遊び人Lv46 戦士Lv37 冒険者Lv36 剣士Lv12
装備 聖剣デュランダル ズケット 頑強のアルバ 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー よりしろのイアリング
オッケー。問題ナッシング。
準備が整ったところで、ボスについての情報共有をしていたお嬢様方に声を掛ける。
「よし。それではヒツジ狩りといこうじゃないか」
彼女たちはその言葉に好戦的な笑みを浮かべながら頷いた。
いきなり三十四階層のボスへ挑むというのに、ミリアは全然怖気づいたような様子がない。
ほんと、頼もしいわぁ。
感心しながらボス部屋へと続く扉へ向かい歩き出す。
扉が閉まったところでフロア中央に煙が集まりだし、俺たちはそこを目指してゆっくり進む。
程なくして煙が晴れ、ぐっすりと眠る二頭のヒツジが現れた。
「作戦は前回と同じだ。一匹ずつ片付けていく」
三人が頷いたところでミッションスタート!
オーバーホエルミング
引き延ばされた時間の中、立て続けに念じる。
ラッシュ
ラッシュ
スラッシュ
その瞬間、デュランダルを通していつもとは比べ物にならないほどの手ごたえが伝わってきた。
乗ってる! 間違いなく三つのスキルが乗ってるぞ!
反撃を食らわないよう注意しつつ、野太い悲鳴を上げるスリープシープに新必殺技を浴びせ続ける。
そして、二回目のオーバーホエルミングに入って早々、奴の体は霧となって消えていった。
マジか!? 前回は一匹当たりオーバーホエルミングを三回使う必要があったのに、半分くらいになってるぞ!
仮にラッシュとスラッシュの攻撃倍率が二倍だとすると、二足す二足す二で六倍の攻撃倍率になっているわけではなく、二掛ける二掛ける二で八倍になっているのではないだろうか。
つまり、スキルの重ね掛けによる攻撃倍率は加算ではなく乗算ということになる。
複数ジョブや詠唱省略を持っていない人には何の意味もないが、俺にとってはまさに神仕様。
今後、さらに攻撃倍率の高いスキルを習得したときにはとんでもない火力を叩き出すはず。
戦士や剣士の上位ジョブに期待が膨らんでしまうな。
思索に耽っているうちにボーナスタイムが終了する。
すると、ロクサーヌが驚愕の表情で問いかけてきた。
「ご主人様! 今の攻撃は何ですか!?」
そして、セリーも好奇心で表情を輝かせながらそれに続く。
「明らかに前回より攻撃回数が少なくなっています! 何かしていたのですか!?」
一方、ミリアはというと、彼女たちの様子を不思議そうに見つめている。
普通じゃないことばっかり見せられているんだ。昨日のスリープシープ戦を知らなければこれが普通だと思うわな。
眠りこけているもう一匹のヒツジさんを放置して説明を行う。
「今まで使ってきた技は、戦士のラッシュと剣士のスラッシュを二つまとめて放つダブルアタック。しかし、そのどちらかのスキルを遊び人に設定するこ――」
「まさか三回分を放ったのですか!?」
説明の途中でロクサーヌから大きな声が上がった。
あー! 自分の能力を解説するという、漫画なら大盛り上がり間違いなしの場面だったのにインターセプトをされてしまった!
……まあいい。気にせず話を続けよう。
「ご名答。先ほどの攻撃はラッシュ二発とスラッシュを放つ俺の新必殺技」
話しながら目いっぱいの決め顔を作り、右手でサムズアップを行いその親指で自分の顔を示す。
「そう。名付けて、トリ――」
「トリプルアタックですね!」
あの、セリーさん……。今のセリフは超重要な見せ場だったんですが……。
すごいすごいとはしゃいでいる二人と、それにつられてニコニコ顔のミリア。
……まあ、可愛いからいいか。
「では、もう一匹も片付けてクーラタルへ戻ろう」
彼女たちが落ち着きを取り戻したところでそう告げると、セリーが異議を唱える。
「これだけ早く倒すことができたのです。貫通のオリハルコン剣でも問題ないのではないでしょうか」
すると、ロクサーヌも賛同を示す。
「セリー、とても良い意見ですね! ご主人様、是非そうするべきだと思います!」
君はただ単に歯ごたえのある戦闘を楽しみたいだけでしょうが。
でもまあ、実際のところ問題はなさそうだよな?
「分かった。では試してみよう。ボーナスポイントの振り分けを行うので少し待っていてくれ」
ボス戦の真っ最中だというのに、のんきにボーナスポイントの振り分けを行う。
いくらなんでも油断しすぎだろうか?
いや、戦闘に対しては超クレバーなロクサーヌと、論理的思考の持ち主であるセリーがそうするように言ったのだ。おそらく何の問題もないのだろう。
キャラクター再設定を開いて武器六のチェックを外し、よりしろのイアリングをアイテムボックスへ入れる。
そして、アクセサリー六にチェックを入れて、出現したドラウプニルを装備した。
さらに、アイテムボックスから貫通のオリハルコン剣を出せば準備完了。
「ロクサーヌ、セリー、ミリア。準備はいいか?」
問いかけると三人は好戦的な笑みを浮かべながら頷きを返す。
この娘さんたち、めちゃくちゃ楽しそうだなぁ……。
まあいいや。んじゃ、いきますかね。
オーバーホエルミング
意識が加速したところで、寝そべっているヒツジにトリプルアタックをぶち込んだ。
結局、オーバーホエルミング三回の間にスリープシープは消えることとなる。
デュランダルじゃないというのにとんでもないわぁ。
我ながらヤバい必殺技を編み出してしまったものだ。
貫通のオリハルコン剣をしまい、興奮している三人と一頻り喜びを分かち合ったところでドロップアイテムの確認を行う。
おっ。どっちも白いモコモコだ。
鑑定結果はスリープウール。ドラウプニルを装備していなかった一匹目もレアを引いてたってことか。
セリーによると残りやすいようだし、割と早く必要な数を確保できるかもしれん。
拾ったそれをアイテムボックスにしまいながら三人に告げる。
「しばらくはこの階層でレベル上げを行うことだし、スリープウールで布団を作ろうと思うのだがどうだろう?」
「さすがご主人様。素晴らしいお考えです」
ロクサーヌはいつものように微笑みながら肯定してくれた。
さらに、興奮した様子のミリアがそれに続く。
「スリープウール製の寝具は猫人族の憧れなんです! 魚を食べさせてくれるだけではなく、スリープウールの寝具で眠ることができるなんて! ご主人様、大好きです!」
大好きって言われたのは嬉しいんだけど、やっぱこの娘さんは即物的だなぁ。
いやまあ、可愛いからいいんだけどね。
そして、考え込んでいたセリーが口を開く。
「ご主人様、スリープウールのマットレスはへたりにくくて安眠でき、そのうえ夏場は涼しく冬場は温かいと言われています。布団よりたくさんの素材が必要となりますが、せっかくなのでマットレスを作ってみませんか?」
へー。機能盛り盛りじゃん。それは良いなぁ。
そのうち暑い夜には体温が下がり、寒い夜には体温が上がる、天然の抱き枕こと竜人族の娘さんが加入するが、それはそれとして寝苦しい夜の対策は多い方がいい。
ナイスアドバイス。さすがセリー、さすセリだ。
でも、六人用のベッドを注文しているため、今のベッドで使用する物を作るのはもったいない気がする。
それに、マットレスなんて自作できるものなのか?
その旨を確認したところ、にこやかな笑みを浮かべて答えてくれた。
「マットレスを自分たちで作るのは難しいと思います。なので、家具屋に相談して素材を持ち込み、製作してもらう物をスリープウールのマットレスに変更するのはいかがでしょうか」
なるほど。このままスリープウールのマットレスを作製した場合、超巨大なマットレスが二つあるという事態に陥ってしまう。
材料も持ち込むわけだし、既に作り終えていない限り拒否することはないはずだ。
明日、武器屋や防具屋を回るときに家具屋へ寄って確認してみよう。
ついでに自室とリビングのソファーも注文しておかないと。
あとは四人パーティーが三十四階層以降に出現する魔物のドロップアイテムを大量に持ち込む不自然さか……。
……いや。三人パーティーだったときに帝国解放会の勧誘を受けているわけだし、いまさら気にしてもしょうがない。
俺たちは魔法使いがいなくても三十三階層を突破するスペシャルなパーティーってことで。
田川 歩 男 18歳
英雄Lv48 遊び人Lv46 戦士Lv37 冒険者Lv36 剣士Lv12
装備 ズケット 頑強のアルバ 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー ドラウプニル
BP振分 残BP:0
キャラクター再設定:1
フィフスジョブ:15
詠唱省略:3
必要経験値二十分の一:63
鑑定:1
アクセサリー六:63
所持金:12,255,667ナール
春の66日目