異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

203 / 300
201 ドレス

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 目を覚ますと体にあたるふわふわな感触に気が付いた。

 そちらに手を伸ばしたところ、柔らかな毛とコリコリした感触が伝わってくる。

 

「ご主人様、おはようございます」

 

 いつものように清らかで麗しい声が耳朶をくすぐった。

 

「おはよう、ロクサーヌ」

「ふふ。ミリアはご主人様を喜ばせようと頑張っていましたからね。疲れてしまったのかもしれません」

 

 ああ。ミリアの頭と耳か。

 

 ロクサーヌの言う通り、まだ痛みもあっただろうに彼女は何度も俺を求めてくれた。

 なんでも、お姉ちゃんたちみたいにご主人様を喜ばせたかったのだそうだ。

 あまりのいじらしさに理性の糸がブッツリいってしまい、無理をさせてしまったかもしれない。

 

 ミリアの頭をそっと撫でていると、特徴的で愛らしい声が聞こえてくる。

 

「おはようございます、ご主人様」

「おはよう、セリー」

 

 今日は午前中の探索がないため、少しだけベッドの中でのんびり過ごすことにした。

 

 

 

 二人とちょっかいをかけあって戯れている間にミリアが目を覚ます。

 

「ふあー。おはようごらいまふ」

 

 あくび交じりの挨拶を行い、顔を俺の胸にこすりつけている。

 

 ほんと、可愛い娘だなぁ。

 

「おはよう、ミリア。体は大丈夫?」

「はい。ご主人様が優しくしてくれたおかげで何の問題もありません。なんだか普段より調子が良い気がするくらいです」

 

 激しく求めすぎたせいで迷宮探索に支障をきたすなんて、さすがに問題ありすぎるからな。何事もなくてよかったわ。

 

 それにしても、普段より調子が良い、ねぇ……。

 やはり色魔の効果なんだろうか?

 

 まあ、いま考えることじゃない。

 

「それじゃあ、今日は準備の前にミーティングをしよう」

 

 彼女たちの返事を聞きながら体を起こす。

 

 

 

 俺はインナーシャツとトランクス。三人はキャミソール姿のままリビングへ移動して打ち合わせだ。

 

 この後は風呂へ入って髪と体を洗い、カメリアオイルでのケアを行う。

 それが済んだら朝食をとろう。昨晩の残りがあるのでパンを買うだけで済むはずだ。

 その後は帝都の高級服屋へ出陣となる。

 

 ついにロクサーヌとセリーのドレス姿を目にすることができるのか。

 いったいどれほどの美しさなのだろう? 今からワクワクが止まらないぞ。

 

 逸る心を抑えながら彼女たちに告げる。

 

「予定を確認する前に、まずは給金の支給をしておこうか。ロクサーヌ、セリー。ミリアが加わったのは昨日からだけど、満額を支給してもいい?」

 

 もしかしたら不公平感を覚えるかもしれない。一応、確認しておかないと。

 

「さすがご主人様。とても良いお考えだと思います」

「このような厚遇を受けることで、きっとミリアの気持ちも奮い立つことでしょう」

 

 彼女たちの顔にはにこやかな表情が浮かんでおり、俺の言葉に忖度した様子はない。心底そう思っているのだろう。

 本当に優しい娘たちだ。

 

 ミリアはそのやり取りを見て驚いていたようだが、まあ説明するより実際に渡した方が早い。

 ロクサーヌとセリーに給金を手渡し、アイテムボックスからさらに銀貨二十五枚を取り出した。

 

「ミリア、昨日の迷宮探索では本当に素晴らしい動きで頼もしかった。それにブラヒム語が流暢になっていて君が頑張っていたことがよく分かるよ。これからもよろしくね」

「こんなにたくさん……。本当にいいんですか?」

 

 彼女は戸惑ったようにこちらをうかがう。

 

「もちろん。ミリアの働きに対する正当な対価だから遠慮はナシで」

「あの! あの! ありがとうございます! これからもご主人様のお役に立てるように頑張ります!」

 

 その顔には向日葵のような笑みが咲き誇っていた。

 あら、可愛い。

 

 

 

 それじゃあ、予定の確認に移るとしよう。

 

「今回は美術店へ行く必要があるので、ドレスを受け取ったらすぐに店を出ることになる。なので、ミリアのドレスは次回の春の七十二日目に注文しよう。あっ、コハクのネックレスもそのときにね。ロクサーヌ、セリー。アドバイスをしてあげて」

 

 その言葉を聞き、ミリアから大きな声が上がった。

 

「えー! 昨日加入したばっかりの私にも、そんなすごいものをいただけるんですか!」

 

 驚いている彼女にロクサーヌとセリーが声を掛けている。

 帝都の高級服屋でのオーダーの仕方や担当の店員がいかに優秀かといったこと。

 それに、コハク商も良い人たちで間違いのない品をすすめてくれるといったことを、楽しそうに喋っている。

 

 お嬢様方。確かにアドバイスを頼んだけど、今じゃなくてそのときって意味だったんですが……。

 

 

 

 頑是ない娘さんたちの会話を眺めていると、しばらくして落ち着きを取り戻す。

 んじゃ、ミーティングを再開ってことで。

 

 ドレスを受け取ったら美術店で契約を交わし、画家に視野記憶ってスキルを使ってもらう。

 その後は武器屋と防具屋を回り掘り出し物の確認をしながら、バラダム家からゲットしたスロなし装備品も売却だな。

 そうそう。マットレスとソファーの注文で家具屋にも寄らないと。

 例によって彼女たちの買い物は必要ないとのことだ。

 初任給をもらったミリアも散財はせず、貯金をするらしい。

 

 ほんと、地に足の付いた娘さんたちだこと。

 俺なんて初任給はLDデッキと機動戦艦ナデシコの一巻を買ったもんだ。

 その後も給料が入るたびにLDのディスクを買い足していったというのに、まさかほんの二、三年でPS2が発売されてDVDの天下になるとは思いもしなかった。

 場所をとって邪魔だったけど、捨てることができずに部屋に置いていたら、実家を出た後でいつの間にか処分されててめちゃくちゃへこんだなぁ。

 

 

 

 おっと。余計なことを考えてないでミーティングの続きだ。

 

 家に戻ったら俺はそのまま商人ギルドへ、彼女たちには昼食の支度や家事をお願いする。

 午後からは迷宮探索を行うが、その前にソマーラの村へ行って寄生ワームの売却。

 そして、騎士と暗殺者の獲得条件を満たすため、ミリアに毒針と槍でスローラビットを倒してもらおう。

 その後はいつも通りってことで。

 

 こんなところかな?

 

「それじゃあ、今日も一日頑張ろう」

 

 彼女たちの返事を聞きながら腰を上げた。

 

 

 

 朝から風呂を沸かして身体と髪の毛を洗い、ビネガーリンスでケアして、カメリアオイルで全身のコンディションを整える。

 俺とセリーとミリアで今日の主役であるロクサーヌをピカピカに磨き上げたところ、普段から美しい彼女が光り輝いているように見えた。

 

「ロクサーヌ、俺の女神……」

 

 思わず漏れた呟きを聞き、彼女は笑みをこぼす。

 

「ふふ。ご主人様はいつも大袈裟すぎます」

 

 いやいや。全然大袈裟じゃないから。ガチでそう思ってるから。

 

 すると、セリーも援護をしてくれる。

 

「ご主人様のおっしゃる通り、本当に綺麗です」

「はい。お姉ちゃんはとっても美人ですよ」

 

 三人がかりで褒め倒したところ、彼女ははにかんだような笑みを浮かべていた。

 

 

 

 ロクサーヌとセリーが部屋で髪の毛のお手入れを。ミリアが昨日の夕食を温めなおしている間に俺がパンを買いに行き、準備が整ったところで二人に声を掛ける。

 部屋から出てきたロクサーヌの栗色の髪は陽光を受けて輝いており、普段にも増して神々しい。

 セリーはというとその艶のある長い黒髪を下ろしており、まさに烏の濡れ羽色という言葉がしっくりくる。

 

「ロクサーヌ、セリー。とても綺麗だ」

「ふふ。ありがとうございます」

「あの、はい。嬉しいです……」

 

 

 

 準備万端な彼女たちと共に食事をとり、歯磨きと洗い物を済ませたら帝都へ出発だ。

 

 

 

 

 

帝都

高級服屋

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」

 

 店に入ると紳士風の男性と注文を受けた女性店員が出迎えてくれた。

 そして、女性はロクサーヌとセリーの方を向いて口を開く。

 

「ドレスのご用意が整っております。よろしければ、お袖をお通しいただき、ご確認いただけますでしょうか」

 

 それを聞いた彼女たちは期待で輝く瞳をこちらへ向ける。

 綺麗なおべべが見られるからだろうか? 当事者ではないミリアもワクワクしたような顔をしていた。

 

「うむ。いってくるといい」

「ご主人様、ありがとうございます。セリー、ミリア。いきましょう」

「はい。ご主人様、いってまいりますね」

「お姉ちゃんたちのドレス姿が楽しみです」

 

 三人は満面の笑みを浮かべ、弾むような足取りで歩き出す。

 

 可愛い娘たちだなぁ。

 

 

 

 おっと。そうだそうだ。

 

 彼女たちが部屋に入ったところで、男性店員に感謝を伝えなければならないことを思い出した。

 

「先日は世話になったな。紹介状のおかげで話がスムーズに進み本当に助かった。感謝している」

「それは何よりでございます。平素より格別のお引き立てを賜っております中、僅かながらでもお役立てできましたこと、誠に光栄に存じます」

 

 あちらさんからすると高額な注文をしてくれる上に、今までにない下着のアイデアをもらったんだし、紹介状を書くくらいなんでもないのかもしれない。

 まあ、今後も持ちつ持たれつでやっていこうじゃないの。

 

 

 

 世間話をしながら待っていると、ロクサーヌたちが入った部屋の扉が開いた。

 そちらに目を遣った瞬間、あまりの衝撃で思考が停止してしまう。

 

 

 

 女神と妖精のような女性たちはしずしずこちらへ近づくと、期待に満ちた表情で見つめてきた。

 

 改めて二人の姿を確認する。

 

 ロクサーヌの着ているのは、まるでさわやかな春の木漏れ日を思わせるようなミントグリーンのドレス。

 肩ひもやデコルテを覆うものはなく、肩や胸元を大胆に見せつけていた。

 ウエストはキュッとしまっており、そこから下はボリュームがあるため、彼女のスタイルの良さが一目瞭然だ。

 あまりの美しさに気後れしてしまう。

 

 一方、セリーは淡い花びらのような薄いピンクのドレスに身を包む。

 肌の露出は少なく、肩の部分がふわふわした清楚なデザインで、彼女の可憐で愛らしい雰囲気にマッチしていた。

 黒髪ロングストレートとの組み合わせは純粋無垢なお姫様のよう。

 

 思わず彼女たちへ手を伸ばすと、オペラグローブに覆われた二対の手がそれを包み込んだ。

 

「ああ……。ロクサーヌ、セリー。本当に美しい。この感動を表現する言葉が見当たらないよ……。君たちと一緒に過ごせるなんて、俺は間違いなく世界一の幸せ者だ……」

「こんなに素敵なドレスを身に付けることができたのです。世界一の幸せ者は私の方でしょう」

 

 嬉しそうにそう言ったロクサーヌに続き、セリーも口を開く。

 

「私の人生でこのような服を着る機会があるとは夢にも思いませんでした。ご主人様、ありがとうございます」

 

 二人の表情で心の底から喜んでくれていることが分かる。

 ドレスを贈って本当に良かった。これからも彼女たちのことを大切にするぞ。

 

 

 

 セリーがドレスを脱ぎにいっている間、どちらも素敵だったとか、ミリアのドレスはどんな色やデザインにするかなど、二人は楽しそうに話していた。

 

 彼女たちの言葉を聞き、男性店員がこちらに視線を向ける。

 

「うむ。もちろん彼女の分もオーダーさせてもらうつもりだ。しかし、この後は美術店でドレス姿の肖像画を依頼することになっているため、五日後に注文を行おう」

 

 彼は納得したように頷いた。

 

「なるほど。これほどまでにお美しいお姿なのです。肖像画とするにふさわしいと存じます」

 

 だしょー? そう思うっしょ? スマホがあったら写真を撮りまくってるところだぞ。

 

 

 

「お待たせしました」

 

 程なくして布の袋を持ってセリーが戻ってきた。

 一緒に戻ってきた女性店員がロクサーヌにも布袋を差し出す。

 布袋からはハンガーの頭が飛び出ており、そのままかけられるようになっている。

 

 一頻り保管方法などを確認したところで彼女たちはこちらへ頷いた。

 

 よし。んじゃ、いったん自宅へ戻りますかね。

 

 店員に見送られながら店を後にする。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅へ戻り靴を履き替える時に気が付いた。

 ロクサーヌとセリーが履いているのは装備品ではなくパンプスだ。

 そして、セリーはアイテムボックスを開き、駿馬の竜革靴と皮の靴を取り出し靴箱にしまっている。

 

 なるほど。靴もドレス代に含まれていたんだな。

 

 納得したところでそのまま彼女たちの部屋へゴー。

 

 

 

 セリーは部屋に備え付けのクローゼットを開き、袋に包まれたドレスをかけた。

 

「ご主人様、シュラブの葉をいただいてもよろしいでしょうか」

 

 そうだった、そうだった。三十万ナールもする服を虫に食われるわけにはいかないよな。

 

 アイテムボックスから取り出し手渡すと、布袋の裏に縫い付けられていたポケットへそれを入れる。

 

 へー。そんな感じになってんのか。

 あの布は高額な服を入れるための物で、シュラブの葉と一緒に保管するのが常識なのかも。

 

 

 

 セリーがドレスをしまったところでキャラクター再設定を開き、三十パーセント値引を二十五パーセント値引に落とす。

 余ったポイントでアクセサリー五にチェックを入れるとブリーシンガメンが出現する。

 そして、アイテムボックスから首飾りを取り出し、それらをロクサーヌに差し出した。

 

「ロクサーヌ、肖像画のモデルをするときはどっちを身に着けたい? あっ、もちろん自分のコハクのネックレスでもいいから」

 

 すると、彼女は恐縮したように問いかけてくる。

 

「それらの貴重な装備品を、私が身に着けてもよいのですか?」

「大丈夫だよ。遠慮せずに好きな方を選んでね」

「ありがとうございます。それでは両方試してみたいのですが……」

 

 まあ、そうだな。彼女の言う通り二つとも身に着けて確認する方がいいだろう。

 

「オッケー。じゃあどっちから着けてみる?」

「まずはブリーシンガメンをお願いします。あの……。ご主人様、着けていただけますか?」

 

 尋ねたところ、ロクサーヌはそう言ってこちらに背を向けた。

 六十日余りで髪の毛が伸びているためうなじを見ることはかなわないが、背中の上部や肩が露になっている。それがなんとも艶めかしく、引力でも発生しているかのように俺の目を捉えて離さない。

 

 

 

 いつまでも惚けているわけにはいかないので、首飾りをアイテムボックスにしまい、ブリーシンガメンをロクサーヌの首にかけると、彼女はセリーとミリアを伴い鏡の前であれこれと話し合いを始める。

 確認が済むと今度は首飾りでも同じことを行い、その次はコハクのネックレスでもそれを繰り返す。

 

 どれもよく似合っていたが、個人的にはブリーシンガメンかな。

 ゴージャスで煌びやかなネックレスだが、ロクサーヌはその華やかさに決して負けておらず、逆にそれが彼女の魅力を引き出しているまである。

 

 

 

 やり取りを眺めていると、やがて三人は頷きを交わし合う。

 どうやら決まったらしい。

 

 そして、こちらへ振り返りロクサーヌが告げた。

 

「ご主人様、ブリーシンガメンをお願いいたします」

 

 おー。いままでこういう風に何かを選ぶような場合では、俺の意見を聞いてそれに決めていたというのに、今回は自分が気に入ったものを選んだぞ。

 おそらく、そうしても信頼関係が揺らぐことはないと思ってくれているのだろう。

 これは間違いなくいい傾向だ。

 

「分かった。それじゃあ、物は美術店で渡すから、出かけるとしよう」

 

 すると、セリーが渋い顔で異議を唱える。

 

「それはやめておいた方がいいと思います。アイテムボックスから取り出した場合、装備品だと気付かれてしまうでしょう。しかも、一般的な装備品とは見かけがまったく異なるので、固定で賜る固有名の付いた高性能な装備品であることは一目瞭然です」

 

 あー。彼女の言う通りかもしれない。

 いくら美しくてもただの装飾品と、高性能な装備品では価格に天と地ほどの差がありそうだ。

 そんなものを持っていると知られれば、面倒なことに巻き込まれるのは確定的に明らか。

 

「あらかじめ身に着けておけば装備品ではなく、職人の作った装飾品だと思われるはずなので、そうした方がいいと思います」

 

 オッケー。そんじゃそういうことで。

 

 ところで彼女の言葉で気になったことがある。

 固有名の付いた装備品っていうのはデュランダルのようなボーナス装備品のことだよな?

 それはどのくらいの頻度で出るものなのだろう?

 

 問いかけたところ、セリー先生が解説してくれた。

 

「頻度ですか? そうですね……。それらは秘匿されているので正確なところは分かりませんが、固有名の付いた装備品が出現するのは何十年に一度なのだとか。そして、そのほとんどはオークションでの争奪戦の末、皇族や貴族、富豪といった有力者が家宝として所有しています」

 

 うわぁ……。持っていることを知られたら超面倒なことになりそう……。

 

 今まで、人前でボーナス装備品を使ったのはどのくらいあっただろう?

 

 えーっと、ソマーラの村での初陣とアランの館が襲撃された際にデュランダルとタラリアを見られている。

 あっ。初陣の後でスローラビットを狩りに行ったとき、フラガラッハを手に持ったまま移動したか……。

 うーん……。でもまあ、これ以外に人前で使ったことはないはずだし、盗賊はすべて始末しているから何も問題ない。何も問題ないはずだ。

 

 自分に言い聞かせていると、セリーが呆れたような顔で話を続ける。

 

「ご主人様がデュランダルや毘盧帽、それからドラウプニルを普段使いするので感覚がおかしくなっていますが、固有名の付いた装備品とはそれほど貴重なものなのです。感覚がおかしくなっていますが」

 

 え? 今なんで二回言ったん?

 

 ……まあいい。そんなことより確認しないといけないことが。

 

「ちなみに三人は俺のボーナス装備品以外で知っているものはある?」

 

 尋ねたところロクサーヌが頷きながら答えた。

 

「私が知っているのは片手剣のグラムです。なんでもものすごい攻撃力を持ち、どんな魔物も切り裂いてしまうのだとか」

 

 すると、ミリアも声を上げる。

 

「あっ。私も聞いたことがあります。確か国宝として帝宮に保管されているのですよね」

 

 へー。国宝ね。それなら一般に名が知られていてもおかしくはない。

 

 だが、二人が知っているのはそれだけらしい。

 そして、三対の瞳で見つめられたセリー先生は咳払いをして説明を始める。

 

「グラム以外だと、槍のゲイ・ジャルグ、杖のカドゥケウス、それから盾のアンキレーなど知られており、いずれも始まりの五公爵の下にあるのだとか」

「始まりの五公爵?」

 

 なんだそれは?

 

「各地の迷宮を討伐して帝国の礎を築いた初代皇帝のパーティーメンバーです。それぞれ種族が異なり、初代皇帝の人間族を筆頭にドワーフ、狼人族、猫人族、竜人族、エルフとなっています。そして、帝国を興した後はそれぞれ公爵となりました。それが始まりの五公爵ですね」

 

 ミチオのパーティー編成と、ひいては俺の目指すパーティー編成と同じ……。

 

 原作でそんな話は出てきていないはず……。

 やはりこの世界は原作とは明らかに異なっている……。

 

 

 

 思索に耽っていると、セリーがさらにぶっ込んだ。

 

「そのうちの一つがハルツ公爵家です」

 

 はあ!? マジ!? ハルツ公の祖先って初代皇帝のパーティーメンバーだったの!?

 

 衝撃の発言に度肝を抜かれてしまったが、ロクサーヌとミリアに驚いている様子は見られない。

 

「これって常識?」

 

 尋ねたところ、三人はコクリと頷いた。

 

 何も知らない人からすれば俺はとんでもない世間知らずに見えるんだろうなぁ。まあ、実際そうなんだけどさ。

 

 

 

 気になることは多々あるものの、いつまでも話し合いをしているわけにはいかない。

 気を取り直してアイテムボックスからブリーシンガメンを取り出し、ロクサーヌへ着けた。

 

 豊かなふくらみの上を彩る豪華な輝き。

 彼女の美貌やスタイルと相まって気後れするほどの神々しさだ。

 

 ロクサーヌに見とれていたところ、恥ずかしそうな笑みを浮かべてお願いの言葉を口にした。

 

「ご主人様、ドレスのままでは転んでしまわないか不安なので、お手をお借りしてもよろしいですか?」

 

 バランス感覚ガチ勢の彼女がそんなことくらいで転ぶはずはないが、エスコートを求められたことがめちゃくちゃ嬉しい。

 

 ロクサーヌへ手を差し出しながら告げる。

 

「私でよろしければ喜んで。麗しきお嬢様、どうぞこちらへ」

 

 驚いたような表情を浮かべたものの、すぐに嬉しそうに笑いながら手を添えた。

 

「ふふ。ありがとうございます。アユム様、よろしくお願いしますね」

 

 ロクサーヌに名前を呼ばれた!

 

 普段は奴隷と主人という関係を崩すことはないのに、ドレスを身に纏ったことで彼女も浮かれているのかもしれない。

 

 嬉しすぎるぞー!

 

 内心の浮かれポンチをグッと堪えてロクサーヌへ告げる。

 

「それでは、まいりましょう」

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

魔法使いLv52 英雄Lv48 遊び人Lv46 冒険者Lv36 魔道士LV35

装備 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:4

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

詠唱省略:3

必要経験値二十分の一:63

鑑定:1

ワープ:1

アクセサリー5:31

二十五パーセント値引:31

 

所持金:12,258,819ナール

 

春の67日目

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