異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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022 帝都

 

 

 

 

 

帝都

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 ワープゲートを抜けて帝都の冒険者ギルドの二階に出る。

 周りをみると同じようにフィールドウォークで移動してくる者や、逆にゲートを開き移動していく者でひっきりなしだ。

 そして、落下防止柵の向こうに見える階下は人でごった返し、カウンターに座る受付嬢の前には長蛇の列が形成されていた。

 

 

 

 

 

帝都

 

 

 

 

 

 外へ出ると石畳が敷かれた広い道がまっすぐ延びており、その両サイドには高級そうな店がずらりと立ち並ぶ。

 それらを目指しているのか通りには大勢の人と馬車が行き交っている。街は活気が溢れ喧噪に包まれていた。

 

 遠くに見える丘の上には壁がそびえ立ち、その向こうに大きく堅牢そのものといった城が威容を誇り鎮座する。所謂城塞という奴だろう。

 もしかしたらあれは宮廷なのか? あそこに皇帝であるガイウスが居たり帝国解放会のロッジがあったりするのだろうか?

 

「これはすごいな」

「はい。私もこうして見たのは初めてですが人が多く建物も立派でやはり帝都はすごいです」

 

 そうだな。日本の大都市を知っている身でもこの風景にはグッとくるものがある。

 

 

 

 さあ、いつまでも景色に圧倒されてはいられない。買い物の続きといこう。

 

「まずは武器屋と防具屋に行く。そのあとは絨毯屋を回ってみよう」

「はい」

「寝室とリビングに敷く用で二枚。同じく寝室とリビングの壁に飾る用で二枚。それからドアマットを四枚だな」

「絨毯を敷くのですか? それにドアマットを四枚も?」

 

 地球でもタペストリーのような感じで壁に絨毯を飾ることがあるというのは知っているが、それでもやはり壁に飾るより敷いてこそというという気がする。

 まあ、土足厳禁とするんだ敷いても全然問題ない。

 

「外から汚れを持ち込まなければそれほど絨毯を汚したり傷めたりすることはないはずだ。それにドアマットは汚れたらすぐに交換して洗うので枚数が必要になるだろう」

 

 そのうちの二枚はバスマットにする予定だ。風呂が一般的ではないからバスマットなんて物はないはずだからな。

 

「本当にご主人様は綺麗好きですね」

 

 この世界基準だとそうなるのだろう。快適で衛生的な住環境について妥協するつもりはない。

 

 

 

「最後に服屋だ。そこでは俺とロクサーヌで一着ずつ良い服を買おう」

「今日も服を買っていただけるのですか!? ご主人様、ありがとうございます!」

 

 おお。声が大きくなった。すごい喜んでくれているぞ。

 顔には輝くような笑顔が浮かび、尻尾なんてすごい勢いで揺れている。

 

 いずれどこかの公爵様が会食に招待してくださるかもしれん。

 そういった場でも恥をかかないような服を持っておこう。

 

「俺は服選びのセンスが全くないからロクサーヌに任せる」

「はい! お任せください、ご主人様!」

 

 めちゃくちゃ気合が入っているわぁ。すごく時間がかかりそうだが問題ない。

 そのために服屋を最後にしたのだ。今日は思う存分選んでもらおう。もちろんキャミソールもな。

 

 

 

 

 

 武器屋と防具屋を回ったものの、やはり帝都でも空振りに終わる。とりあえず昨日盗賊のアジトから手に入れた武器と防具の売却だけを済ませた。

 

 うーん……。こまめに足を運んで掘り出し物が売りに出されるのを待つしかないか。

 バラダム家が資金繰りに困り貴重な装備品を手放したようにどこかの家から放出品があるかもしれない。

 それに、普及品の中でもスロットが三つ以上ついているような品が売られている可能性だってある。

 それらを辛抱強く待ち続けよう。

 

 さて、切り替えて次は絨毯屋だ。

 

 

 

 

 

帝都

絨毯屋

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 店に入ると落ち着いた佇まいの女性に迎えられた。

 店内はラグジュアリーな空間が広がっており高級店であることを否が応でも意識させられる。

 こういう雰囲気の店に縁がなかったせいで気後れしてしまうぞ。

 

 だが、この雰囲気をものともせず真剣な目で絨毯を選び始める猛者が。

 さすがのロクサーヌである。この娘さん、本当に頼りになるわぁ。

 

 展示されている絨毯は様々な模様と縁取りがされており所謂ペルシャ絨毯に似ている。

 高級品だというのに彼女は臆することなく次々と触れて作りを確かめていた。

 まさに、さすロクだ。

 

 よし。彼女だけに任せるわけにはいかない。俺もちゃんと探そう。

 

 

 

「ご主人様、こちらはどうでしょう」

 

 店中の絨毯を確認し終えた猛者様が選んだのは、赤を基調とした幾何学模様と蔦のような縁取りが幾重にも重なった品だった。

 

「うん。いいな。リビングに敷くのはそれにしよう。ロクサーヌ、寝室に敷く物はこれなんてどうだ?」

 

 俺が気に入ったものはクリーム色で中央に花の模様と四隅に縁があるだけのシンプルなものだ。

 彼女は一頻り作りを確認した後に口を開く。

 

「はい。いいと思います。寝室で使用する物はこういった落ち着いた柄の方がよさそうですね」

 

 二枚目の絨毯を選び終えたところで店員が声をかけてきた。

 

「どういった品をお探しでしょうか」

「寝室とリビングに敷く用を二枚と壁に飾る用を二枚。それからドアマットを四枚だな。この二枚はどのくらいになる?」

 

 俺たちが選んだ二枚の価格を確認してみる。

 

「お客様がお選びになった物は帝都の職人が制作したもので一枚三千ナールほど。あちらのお客様がお選びになった品はドブローから仕入れた高級品で、一枚五千ナールほどとなります」

 

 うん。知ってた。俺とロクサーヌの目利きに差があるなんて百も承知よ。

 いいさいいさ。俺の見る目が活きるのは人と装備品に関してだ。

 まあ、鑑定を使ったずるっこなんですけど。

 

 彼女は金額を聞いて絶句し、驚きの表情を浮かべていた。

 数万ナールの税金が払えなくて奴隷落ちしてしまっているのだ。そりゃそんな顔にもなるだろう。

 

 俺の実家でも両親は苦労していたようで昔はよく金の事で言い争いをしていた。

 その度、子供心にやるせない思いをしたのを覚えている。

 

 よし。彼女には今後一切金のことで苦労を掛けないことをここに誓おう。

 男、田川歩。魂の宣言である。

 

 

 

 その後、壁に飾るようで薄手のものを二枚とドアマットを四枚選び会計を行った。

 もちろんここでも値引スキル先生は大活躍だ。

 

「お買い上げありがとうございます。当店は遮蔽セメントが使われていますが、フィールドウォークで持ち運びを行うのでしたら奥に見本として垂らしてある絨毯をご利用ください」

「うむ。助かる」

「こちらは閉店後取り外して毎日違うものを垂らしております。後日、当店へお越しの際はフィールドウォークではご来店いただけませんのでご注意ください」

「ああ。気を付けよう」

 

 そりゃそうだわな。それくらいしないと冒険者に窃盗され放題だろう。

 窃盗ぐらいでは強制ジョブチェンジで盗賊になることはないとのことだったが、どのくらいやるとアウトなんだろう? 件数か金額か。

 それとも不法侵入と窃盗の合わせ技で一発アウトとかあるのだろうか?

 あ。それなら俺は他人の馬小屋に入り込んでサンダルをやっちゃってるが強制ジョブチェンジになっていないな。

 合わせ技でアウト説はなしか。

 

 ……いや、この世界に初めて来た場所があそこなんだ。

 強制的に転移しただけで俺に一切の過失がないからセーフだったのだろうか?

 

 それとも、もしかするとあそこで生まれたという扱いだとも考えられる。

 転移先が馬小屋でそこで生まれたという扱い……。なんとも思わせぶりではないか。

 

 まあ、検証するわけにもいかないんだ。考えてもしょうがない。

 

 

 完全に思考が脇道にそれたが、ともかく金に困って馬鹿なことを考える奴やロクサーヌの美しさにとち狂う者がいないとも限らない。うちだって用心するに越したことはないだろう。

 壁に飾った絨毯で移動してこられる可能性がある以上、他人を家の中に入れるわけにはいかない。

 そのとき冒険者ではなくても探索者のレベルを上げて冒険者になるかもしれないのだ。どんな人だろうと信用できない。

 

 

 

 それぞれ二枚の絨毯と二枚のドアマットを抱え、壁に垂らされた絨毯へ向かいワープゲートを開く。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 ゲートを出ると結構な量のMPを持っていかれた感覚があった。

 急いでアイテムボックスを開き強壮丸を飲み込んだ。

 

 毎回毎回、強壮丸を使うのはかなりもったいないよなぁ。

 それに、風呂を沸かすのに何度も往復する必要があるからな。早いところクーラタルの迷宮に入り近場でMP回復の拠点を作っておかなければ。

 何をおいても大切なことである。

 明日、家具の搬入と設置が終わったら迷宮へ行ってこよう。

 

 絨毯を置き再び帝都へ戻ろうとしたところでロクサーヌに声をかけられる。

 

「ご主人様、絨毯を貼るためのコーラルゼラチンはお持ちですか?」

 

 あ。完全に頭から抜けていた。

 

「すっかり忘れていた。ロクサーヌ、気づいてくれてありがとう。ベイルの宿屋に戻るときに冒険者ギルドで買うことにする」

「ふふ。ありがとうございます。ご主人様」

 

 褒められて嬉しそうにしている様子が本当に愛らしい。

 百点満点でいうと一兆点くらいの可愛さだ。

 抱きしめてチューをしたいが我慢して帝都へ戻る。

 

 

 

 

 

帝都

高級服屋

 

 

 

 

 

 そして、やってきました帝都の服屋。

 ロクサーヌにとっては今日一番の山場になるはず。怖いくらいに真剣な表情で服を探し始めた。

 たぶん店中の服全てを見るつもりなんだろうなぁ。

 この店はオーダーメイドがメインなのだろう。既製服の数はそれほど多くないのが救いだ。

 せめてサイズが合わない服は確認せず弾いてほしいのだが。

 

 ……覚悟はしていたがこれは長くなるだろう。

 まあ、その間に俺はキャミソールの確認だ。

 

 

 

 ああ。これだこれだ。

 フィギュアにもなっていたピンクのキャミソールドレス。

 たしかミチオは薄紅色と言ってたよな? これを見てピンクや桃色ではなく薄紅色という言葉が出るとは。

 本当に彼はすごい。十七歳にして古語に造詣も深いし、剣道をやっていたおかげで戦闘能力も高い。それに料理だってお手の物だ。

 

 一方、俺はといえば料理こそやるが古語なんて高校の授業でやったきりで記憶の遥か彼方だ。肉体は十八の頃に戻ってはいるものの当時だって体育以外の運動はしてなかった。

 明確にミチオより上だといえるのが総務事務くらいか。

 俺の仕訳入力や勤怠管理、給与計算が火を噴くぜ!

 

 この世界では無意味なスキルじゃねーか!

 

 あ。でも、複式簿記を広めるのはワンチャンあるか?

 

 ……いや、複式簿記は十四世初頭のイタリアで成立した説が有力だ。この世界に存在していてもおかしくない。

 それになかったとしても貴族に成り上がった後ならともかく、何の力も後ろ盾もない状態でそんな目立つことをするのは自殺行為だ。

 

 

 

 店員に確認しキャミソールを手に取ってみる。

 なめらかな触り心地。おそらく絹なのだろう。

 この世界に蚕が存在しているかはわからないがホワイトキャタピラーから絹の糸がドロップするのだ。もしかしたら地球より入手が容易なのかもしれない。

 

 広げてみると前の部分が開いておりプリーツフリルのように波打っている。

 そして、かなり薄い。これではロクサーヌの霊峰の頂を彩る愛らしい果実が浮き出てしまうではないか。

 なんと見事な仕事をするのだろう。これを作った職人はよくわかっている。

 やはり買っておかねば。

 

「ロクサーヌ、選んでいるところ悪い。ちょっといいか?」

「はい。ご主人様」

 

 呼びかけると手に持っていた服を置きこちらへ近寄ってくる。

 

「この寝間着なのだがロクサーヌにとても似合うと思う。これも二つぐらい買っておこう」

「よろしいのですか!」

「ああ。もちろん」

「ありがとうございます! ご主人様!」

 

 彼女は眩いばかりの笑みを浮かべ大きく尻尾を揺らしながら感謝の言葉を口にした。

 そして、先ほどと同じように。いや、先ほどよりもさらに真剣で鋭さすら感じる表情で選び始める。

 

 

 

 ロクサーヌのキャミソール姿といえばピンクのイメージがあるがあえて勧めないでおく。

 自由に選んだ場合、彼女は何色を選ぶのだろう?

 二枚とも白を選ぶのか、それとも全然違う色になるのか。

 

 原作ではロクサーヌはピンクでセリーは白。ミリアは青にベスタは黒。そして、ルティナは黄色だった。

 ロクサーヌが違う色を選ぶことでスライドして、その後全員違う色になるかもしれない。

 

 選び終わるのを楽しみに待つとしよう。

 

 

 

 

 

帝都

 

 

 

 

 

 買い物が終わり外へ出る。

 よかった。夕方になる前に買い物が終わって本当に良かった。

 

「ご主人様。服と寝間着を買っていただき本当にありがとうございます」

「俺の方こそ服を選んでもらってありがとうな」

 

 そう言うとロクサーヌは俺の方へ近づいてきて小声で告げる。

 

「今夜、あの寝間着を着ますので私の初めてを受け取っていただけますか?」

 

 うおー! 可愛いんじゃー!

 今日このままいってしまえという気持ちもあるが、ここは鋼の意思で我慢だ。

 同じようにロクサーヌの耳に顔を寄せ囁く。

 

「お互いの大切な初めてなんだ。クーラタルの家で思い出に残るような形でしよう」

「ご主人様……。お気遣いいただきありがとうございます」

 

 

 

 明日、何もかも打ち明けた上でそれでも俺を受け入れてもらえたら……。

 そのときは思う存分、全身全霊を以ってロクサーヌを愛する。

 

 だが、受け入れてもらえなかったら……。

 

 ……どうなるんだろう?

 

 無理やりするような真似は絶対にしたくない。

 この世界の一般的な主人と奴隷として接することになるんだろうか?

 それともロクサーヌを解放することになるのか?

 

 

 

 ……やめやめ。後ろ向きなことを考えていてもしょうがない。ポジティブに行こう、ポジティブに。

 

 隣を歩くロクサーヌに目をやると俺の視線に気づいたのかこちらを見て微笑む。

 可愛らしい笑顔を向けられると俺の方も笑顔になってしまう。

 思わず歩みが止まり笑顔で見つめ合ってしまった。

 

 うん。大丈夫だ。

 何の根拠もないがロクサーヌはおそらく俺のことを受け入れてくれるはず。

 なんかストーカーっぽい思考な気がしないでもないがたぶん大丈夫だ。

 

 

 

 ワープができる場所を探し歩いていると雑貨屋の前で櫛が目についた。

 ああ! あんなに大切な物を忘れていたなんて!

 女性のロクサーヌはもちろん、俺だって相棒の手入れをするために必要だろう。

 是非買っておかなければ。

 

「ロクサーヌ、この雑貨屋で櫛を一つずつ買っていこう」

「ありがとうございます、ご主人様」

 

 櫛を購入しようと店内に入るとそれに勝るとも劣らない素晴らしい逸品を見つけてしまった。

 

 目の細かい網だ。

 

 泡立てネットになるんじゃないか?

 重曹石鹸は泡立ちが悪いがこれを使えばロクサーヌとのソーププレイが桃源郷そのものとなるぞ!

 絶対に買っておかなければ!

 

 櫛と網、それからベイルで買い忘れていたコイチの実のふすまを購入して店を出る。

 

 

 

「よし。それじゃあベイルの迷宮に行き夕方まで迷宮探索をしよう。その後は宿に戻る前にもう一箇所だけ寄らせてくれ」

「はい。分かりました」

 

 んじゃ迷宮探索といきますか。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv18 英雄Lv16 魔法使いLv19 戦士Lv13 僧侶Lv6

装備 シミター 皮の帽子 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

鑑定:1

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

ワープ:1

ジョブ設定:1

三十パーセント値引:63

 

所持金:399,283ナール

 

春の3日目

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