異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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219 放出品

 三十五階層に足を踏み入れたその日のうちに、ボスであるスパイクスパイダーと戦うことができた。

 

 俺たちの身長を遥かに上回る巨体に、杭のように鋭く尖った脚を幾本も備え、壁や天井を縦横無尽に駆け巡る様はまるで悪夢を具現化したような感じだ。

 蜘蛛が苦手な人なら意識を失ってもおかしくはない。

 しかも奴のスキル攻撃は、一瞬でフロア全体に巣を張り巡らせるという凶悪な大技。

 

 本来なら難敵のはずのスパイクスパイダーだったが、ロクサーヌ師匠が二体を楽々と引き受けてくださったため、トリプルアタックであっさりと片が付く。

 

 ほんま、恐ろしい娘さんやで……。

 

 通常ドロップはジュニパーベリーというスパイス。爽やかな香りが特徴で肉の臭み消しに用いるのだとか。

 そして、驚いたことにレアドロップは聖銀スレッド。

 鉱物である聖銀とは性能が異なるそうで、製造できる装備品は制限がかかるほどにはならないそうだ。以前耳にしたミスリルスレッドについても同様らしい。

 こいつは聖銀のメッシュウェアやアルバ、オペラグローブなどの素材になるということなので、必要な分が集まるまでは大切に保管しておく。

 

 三十六階層に進んだものの、そこではハーフハーブの出現率が大幅に低下する。

 奴は万能丸の材料となる麻黄を残すのだ。

 俺たちはMP回復を万能丸に依存しているため、十分な量を備蓄しておきたい。

 当面は三十五階層でレベルを上げつつ、麻黄集めに勤しもう。

 きっと十分な量が集まるころにはレベルも上がり、三十六階層でも二ターンキルが可能になっているはず。

 

 よーし、いっちょがんばってみっか。

 

 

 

 

 

 翌日から三十五階層でひたすら魔物を狩っていく日々が始まった。

 

 一日の始まりには、まずスリープウールを十個確保する。

 それが済むとサーチアンドデストロイで魔物を殲滅だ。

 

 そして、彼女たちの日々のモチベーションを維持するため、デザートを用意するのも忘れない。

 いやまあ、俺が食べたいってのもあるんだが、三人も喜んでいるから無問題。

 

 コーラにアイスを浮かべてコーラフロートにしたり、コーラルゼラチンと牛乳でホイップクリームをこしらえてプリンに添えたり、クレープにしてみたり。

 どれも大好評で、大輪の花のような笑顔を見ることができたし、寝所では濃厚なサービスを堪能させていただいた。

 もちろん毎日というわけにはいかないが、これからも折を見て用意していこう。

 

 そして、五日に一度のお楽しみであるルークの伝言。

 春の七十七日目の受け取りはコボルトが四、ウサギが一、芋虫が一、はさみ式食虫植物が一、そしてハチが一。

 今回落札分には防御力を強化できるものがなかったため、この機会に貫通のオリハルコン剣へ詠唱中断を付与することにした。

 これにより俺もボス戦でスキルを潰すことが可能となったため、安全性が大幅に高まったことだろう。

 

 また、状態異常対策にヒツジ、サンゴ、アリ、灌木のスキル結晶に買いを出したところ、ルークの目は狂人を通り越して理解しがたい生物を見るようなものへと変わっていた。

 いいさ、いいさ。あいつに何と思われようと安全性が高まるのなら問題ないさ。

 

 一方、武器屋と防具屋を回ったものの、その日も全て空振りに終わる。

 しかも、クーラタルの店舗には毎日顔を出しているというのに、バラダム家の放出品が一向に現れない。

 いやー。世知辛いですなぁ。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

三十五階層

 

 

 

 

 

 二度目のダブルスペルで魔物を倒し、ドロップアイテムをアイテムボックスにしまったところでロクサーヌからいつもの言葉が届く。

 

「ご主人様、そろそろパン屋が開く時間です」

 

 オッケー。それじゃあ、早朝の探索はここまでにしておくか。

 迷宮を出る準備をする前にレベルの確認だ。

 

 自分自身へ向けて鑑定を使用する。

 

田川 歩 男 18歳

遊び人Lv52 勇者Lv36 冒険者Lv47 魔道士Lv46 商人Lv47

装備 ひもろぎのカッカラ ダマスカス鋼の盾 ズケット 頑強のアルバ 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

 おお! 早朝の探索で勇者に遊び人、それから魔道士のレベルが上がっている!

 どれも上がりにくくなってきているというのに、三つまとめてレベルアップとは幸先がいい。

 今日は良い事あるかもね。アル・カポネ。

 

 それに冒険者、魔道士、商人は50が見えてきた。この調子でいけば近いうちに到達するだろう。

 商人の中級ジョブが豪商だということは分かるものの、冒険者と魔道士の上級ジョブは原作にも出てきていないため一切不明。

 おそらく何らかの条件が設定されていると思われるので、すぐに取得できるはずはないのだが、どうしてもゲットできるのではないかと期待してしまう。

 

 そして、三人のレベルを確認したところ、ロクサーヌの巫女とセリーの鍛冶師はともに27で動きはない。

 しかし、ミリアの戦士が28になっていた。

 

 おっしゃ! こっちも上がってる! あと2で暗殺者が解禁だ!

 彼女が暗殺者になれば戦闘が格段に安定するだろう。オッケー、オッケー。順調、順調。

 

 レベルの推移を皆に伝えて喜びを分かち合ったところで、ロクサーヌが表情を輝かせながら話しかけてくる。

 

「ご主人様、もう充分レベルが上がったことですし、三十六階層に挑んでもよいのではないでしょうか」

 

 その言葉に頷きながらセリーも続く。

 

「これまでは麻黄集めも兼ねて三十五階層に留まっていましたが、すでに十分な在庫を確保しています。そろそろ狩場を変えるべきだと思います」

「はい! 私も早く暗殺者になりたいので、お姉ちゃんたちの意見に賛成です!」

 

 ミリアも瞳を輝かせながらそう言った。

 

 うーん……。確かにその通りではあるんだよなぁ。

 物置部屋には既に麻黄の在庫が唸っている。いまの消費ペースなら一年は余裕で持つ計算だ。

 それなら、ハーフハーブの出現率が低い階層へ進んでも問題ないだろう。

 

 よし。それじゃあ、狩場の変更を試すとしますかね。

 

「分かった。次の探索では三十六階層に挑んでみよう」

 

 その瞬間、通路に三人の歓声が響き渡った。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 食材の買い出しを済ませて自宅へ戻ると、ドアにパピルスが挟まっている。

 

 それを目にした瞬間、心臓がドクンと跳ねた。

 

 これはついにきたのか?

 

 期待で胸の鼓動が高鳴っていたところ、ロクサーヌが荷物をミリアに預け、手を伸ばしてパピルスを抜き取った。

 しばし目を走らせた後、ゆっくりと顔を上げる。

 

「ご主人様、ルーク氏の伝言です。至急商人ギルドへ顔を出してほしいそうです」

 

 やはりルークだったか。おそらくバラダム家がオークションの出品物を持ち込んだのだろう。

 とにかく急いで商人ギルドに向かった方がよさそうだ。

 

「それじゃあ、俺はこのまま商人ギルドに行ってくるから、朝食の準備をお願いね」

「かしこまりました。いってらっしゃいませ、ご主人様」

 

 ロクサーヌの返事に合わせて、三人はぴたりと揃ったお辞儀を見せる。

 外見の美しさだけではなく、所作まで整っているその姿に感動で心が揺さぶられてしまった。

 

 オークションに対する期待より、こちらの方が心にグッとくる。

 

 ……本当に俺は幸せ者だ。

 

 余韻を抱きながらワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

クーラタル

商人ギルド

 

 

 

 

 

 商人ギルドへ移動して受付でルークを呼び出すと、程なくしてベレー帽のイカした男が近づいてきた。

 悔しいことに、どこか芝居がかった立ち居振る舞いがバッチリ似合ってやがる。

 

「お待ちしておりました。早速ですが、昨晩バラダム家よりいくつかの装備品とスキル結晶が持ち込まれました。オークション開始は本日正午からとなりますが、すでに出品物の確認は可能となっております」

 

 マジで!? 絶対にチェックしておかなければ!

 

 その言葉で再び心臓が早鐘のように打ち鳴らされていく。

 

「すぐに案内してくれ」

 

 テンションマックスで告げたところ、ルークはほんの僅かに眉を下げ、困ったような笑みを浮かべた。

 

「オークション会場に入場されますと参加費が発生してしまいます。入札を行えば支払う必要はないのですが、オークション開始前であろうと入札せずに退出した場合、千ナールを支払わなくてはなりません」

 

 うそー!? そんなシステムなの!?

 

 てか、まだ数時間あるじゃん。その間にトイレとかに行きたくなったらどうするのさ。

 

 確認したところ、会場内にはトイレも設置されているため問題はないらしい。

 しかも、商業ギルドは遮蔽セメントが使用してあり、ロビーの壁以外は移動することができないと釘を刺されてしまう。

 

 くっ! なんてこった! 焦らしやがる!

 

 たかだか数時間早く確認するためだけに千ナールを払うわけにはいかない。

 いや、本音を言えば、それでも見てみたいという気持ちは強い。

 だが、千ナールといえばキャミソールより二百ナールも高く、軽々しく出していい額ではない。いくらなんでも無駄遣いに過ぎる。

 

 内心の焦燥感を必死に押し殺し、平静を装いつつ彼に告げた。

 

「それでは、昼前にもう一度顔を出そう」

「はい。お待ちしております」

 

 ルークはいつものアルカイックスマイルを浮かべ、優雅に一礼する。

 その笑みを背に受けながら、自宅へと続くゲートを開いた。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 朝食をとり、歯磨きと洗い物を済ませたあと、リビングへ移動して商人ギルドでの出来事を話す。

 

「そうですか……。仲買人との約束なので心配していましたが、きちんとバラダム家の出品を伝えてきたのですね」

 

 一通り話を聞き終えると、俺の脚の間に腰を下ろしているセリーが小さく呟いた。

 

 一方、ロクサーヌは楽しそうに問いかけてくる。

 

「お話では聖槍が出品されていたのですよね? 私たちはすでに入手していますので、何が出品されるのでしょうか? とても楽しみです」

 

 ミリアもニコニコと笑みを浮かべ、声を弾ませた。

 

「ご主人様とベスタはオリハルコンの剣、お姉ちゃんにはミセリコルデ、セリーさんにはオリハルコンの槍、そしてルティナには聖槍があるのに、私だけ高性能な制限付きの武器がありませんからねー。そういうのを出品していてほしいです」

 

 あー。言われてみれば確かにそうだわ。

 この娘だけ、まだ高性能武器を用意できていない。

 すぐに装備できるわけじゃないにせよ、できるだけ早めに手に入れてやりたいところだ。

 

 もっとも、そう都合よく望んだものが出品されるはずがないんだけどさ。

 

 

 

 仲買人への敵愾心に折り合いをつけたのか、セリーが振り返りこちらを見つめて言葉を紡ぐ。

 

「ご主人様、オークションに出品しているということは、それに出すほどではない装備品を店舗に売却しているはずです。約束をしているとはいえ、他の者に販売する可能性もないとは言い切れません。今日は早めに家を出ませんか?」

 

 なるほど。確かにそうだ。

 商人ギルドに持ち込まれたのは昨晩だというし、武器屋や防具屋に流れている可能性は十分にある。

 

 ロクサーヌも頷き、落ち着いた声音で問いかけてきた。

 

「既にお店も開いている時間です。今から出発いたしますか?」

 

 そうだな。目の前で掻っ攫われたら目も当てられない。

 

「よし、じゃあもう出ることにしよう」

 

 俺の一言を合図に、全員がそろってソファーから腰を上げる。

 

 

 

 

 

クーラタル

武器屋

 

 

 

 

 

 武器屋に足を踏み入れると、カウンターに立っていた店主がすぐにこちらへ気付き、にこやかに声を掛けてきた。

 

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。昨日の晩、お客様がおっしゃっておられた通り、バラダム家の放出品が持ち込まれました」

 

 よっしゃ! ビンゴ!

 

 内心でガッツポーズを決めていると、店主は声を落として話を続ける。

 

「お約束通り、まずはお客様へご確認いただけるよう、店内には出さず奥で保管しております。こちらへどうぞ」

 

 そう言うとカウンターの奥の扉を開き、俺たちを招き入れた。

 

 

 

 おお! あるある! いっぱいある!

 

 目ぼしいものだと、ダマスカス鋼の剣やエストック、スタッフにダマスカス鋼のステッキ、ダマスカス鋼の槍にモーニングスターなんてのもあるぞ。

 

 しかし、原作にあったスロ四のエストックは見当たらない。やはりミリアが持っているあれがそうだったのだろう。

 スキル付きの装備品も多少はあるが、今更ほむらのエストックや妨害の鋼鉄槍を手に入れたところでなぁ。

 

 すべてに目を通したところ、スロットの数は二つが最高で、一つ付いているのすら少なく、付いていないものがほとんど。

 

 うーん……。思っていたほどじゃない。というか、ぶっちゃけ微妙だ。

 とりあえずベスタ用でスロ二とスロ一のダマスカス鋼の剣を一本ずつ確保する。

 正直、かなりものたりないが、どうせ繋ぎの武器だ。彼女が長く使うことはないだろう。

 

 残りはどうするかなぁ。

 スキル結晶を融合して売りさばけばかなりの大金が手に入る。

 しかし、世間的には融合の成功率は低いと思われているため、そう何度も使える手ではない。

 それに千五百万ナールを超える資金を手に入れた今となっては、妙な注目を集めてしまうリスクを冒してまで金を稼ぐのはなぁ。

 

 うん。今回はスルーしておこう。

 

 八十枚の銀貨をお伴に金貨九枚が飛んでいったものの、この程度なら痛くも痒くもない。

 ついさっき千ナールをケチった男が言えたことではないが、金ならある。成金ムーブ全開だ。

 

 

 

 

 

クーラタル

防具屋

 

 

 

 

 

 防具屋の方へ足を運ぶと、ほとんど同じやり取りの後にカウンターの奥の部屋へ招かれた。

 

 部屋の中にはかなりの数の防具が置かれてある。

 

 だが、先ほどと同じように、原作であったスロット二つのアルバやスロット四つのダマスカス鋼の額金、それからスロット三つの竜革のジャケットは見当たらない。

 やはり決闘で入手した物がそうだったのだろう。

 

 

 

 あっ。いいもんめっけ。

 

 一つ一つ確認していると、鑑定に出物がヒットした。

 

古代樹の盾 盾

スキル 空き 空き

 

 確か古代樹製の防具はダマスカス鋼に匹敵する物理防御力がありつつ、魔法に対する防御力も備えているんだったよな?

 

 よし。それじゃあ、こいつはロクサーヌのものにするとして、いままで彼女が使っていたスロットが一つのダマスカス鋼の盾は俺へおさがりに。

 そして、俺が使っていたスロなしのダマスカス鋼の盾は、次に防具屋を回るときに売却するってことで。

 

 

 

 そして、さらに確認していくと、もう一つ掘り出し物が見つかった。

 

サッシュ アクセサリー

スキル 空き 空き 空き 空き

 

 同じものを持っているが、今後俺たちはアクセサリーに攻撃力二倍と腕力二倍、それからダメージ逓増を付けての運用を計画している。

 スロットが多いアクセサリーはいくらあっても困らない。これも購入しておくべきだろう。

 

 

 

 すべての防具を確認したところ、目を引いたのはその二つだけで、他にはスロットが一つ付いたものが少しだけ。

 スロット付きを見つけるたびにそれを全て購入していては、いくら大金を持っていようと破産してしまう。

 よし。今回はスパッと諦めるってことで。

 

 古代樹の盾とサッシュを購入し、一旦自宅へ戻る。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

三十六階層

 

 

 

 

 

 装備品と持ち出していたお金を自宅に保管し、ハルバーの迷宮三十六階層へ移動した。

 二ターンキルができなかった場合は三十五階層に戻ると伝えたところ、彼女たちは不承不承頷きを返す。

 不満はあるだろうが、もう少しだけ堪えてもろて。

 

 気を取り直してブリーフィング開始だ。

 

「セリー、この階層から出現する魔物について教えてくれ」

「かしこまりました」

 

 彼女は一度頷き、説明を始める。

 

「この階層から出現するのはコラージュコーラル。複数の種類を継ぎ接ぎしたサンゴに手足を生やしたような魔物です」

 

 ロクサーヌと二人だったころに、クーラタルの五階層のボスだったそいつと戦った。

 しかし、例によってオーバーホエルミングとデュランダルで即殺だったため、強さがよく分からない。

 

「攻撃方法は手で殴りかかってきたり、体当たりといった物理攻撃に加え、水魔法も放ってきます。また、物理攻撃を食らってしまうと石化する危険性があるので注意してください。これは自然に治ることがなく、全員が石化してしまえば一巻の終わりです。誰かが石になってしまった場合、速やかに柔化丸を使用しましょう」

 

 全員が石化したり麻痺したりで全滅って、RPGあるあるじゃん……。クソ恐ろしいで……。

 

「スキル攻撃は強力な全体水魔法。かなりの威力を誇るので、発動は確実に阻止した方がいいです」

 

 おうともさ。ひもろぎのカッカラをぶちかましてやるぜ。

 

「水魔法と土魔法に耐性を持ち、火魔法が弱点となっています。スパイススパイダーの弱点は水ですが、火に耐性があるわけではないので、火魔法を使用した方がいいでしょう」

 

 だな。遊び人のスキルも中級火魔法にしておこう。

 

「そして、残すアイテムは石灰。これは建材など様々な用途に使用されています。コラージュコーラルについてはこんなところですね」

 

 オッケー。それじゃあ、始めるとするか。

 

 おっと、その前に。

 

「正午にはオークションがあるだろう? あらかじめ出品物の確認を行いたいので、一時間くらい前には会場へ入っておきたい。ロクサーヌ、いつもの時間より早めに知らせてくれるか」

 

 お願いしたところ、彼女は自信満々の表情で頷いた。

 

「お任せください。一時間前には会場入りできるようお知らせいたします」

 

 さすがタイムキーパーロクサーヌ。頼りになるー。

 

 ……どうでもいいが、タイムキーパーロクサーヌって、アニメのタイトルみたいだな。

 

 愚にもつかないことを考えつつ、探索を開始した。

 

 

 

 彼女の案内で通路を進むと、すぐに魔物の群れが姿を現す。

 継ぎ接ぎのサンゴが三匹に蜘蛛が三匹。

 いつものように開幕ダブルスペルを叩き込んだ。

 

 たった数日だというのに、ロクサーヌはすっかりスパイススパイダーのトリッキーな動きに慣れたらしく、淀みない動きでサンゴや蜘蛛の体を足場にしながらピョンピョン跳び回り、壁や天井にいる奴にも果敢に攻撃を入れている。

 しかも、ミリアまでその動きを真似るようになり、驚くほどのバランス感覚で魔物の間を縦横無尽に跳ね回っていた。

 

 ほんと、とんでもないお嬢さんたちだなぁ……。

 

 俺とセリーは文字通り地に足のついた動きで魔物に対応し、リキャストタイムが明けるのを待つ。

 そして、そのときが訪れると即座に魔法をぶっ放した。

 

 

 

 炎を纏わりつかせていた魔物の体がエフェクトごと空気へ溶けていく。

 奴らがいた場所にはドロップアイテムのみが残されていた。

 

 よっしゃ! 三十六階層でも二ターンキルが可能だぜ!

 これでレベル上げも加速するはず!

 

 満足感に浸りながら、ロクサーヌへ告げる。

 

「これなら問題なさそうだな。待機部屋を探しながらどんどん魔物のところへ案内してくれ」

「お任せください!」

 

 良い子のお返事をすると、彼女は尻尾を振りながら威風堂々と通路を進んでいく。

 

 

 

 本当に待機部屋を探しているのか疑いたくなるくらい、ロクサーヌは次から次へと魔物の下へ案内するので、こちらもひたすら魔法撃ちマシーンとしての務めを果たす。

 少し前までは魔法使いや英雄の補助なしでは、魔法の威力も十分ではなかったというのに、我ながらエゲツないほどの成長だ。

 つくづく経験値効率四百倍の壊れっぷりを実感する。あと、装備品の大切さもだな。

 

 それにロクサーヌとミリアの動きや、セリーの冷静な立ち回りにも大いに助けられている。

 誰かが石化したとき、いやまあ、誰かというかまだ俺しか食らっていないのだが、彼女たちはすぐに立て直してくれた。

 自分の体が動かなくなるという感覚はとてつもなく恐ろしいものだったが、それでも三人を信じ探索を続けることができている。

 

 まったく、本当に頼もしいお嬢さんたちだこと。

 

 

 

「ご主人様、そろそろ時間になります」

 

 ひたすら魔物を狩り続けていると、ロクサーヌから終了の合図が聞こえてきた。

 

 よし。今回は時間もないことだし、とっとと迷宮を出よう。

 

「分かった。準備をするから少し待っていてくれ」

 

 装備品をしまい、ボーナスポイントとジョブの変更に取り掛かる。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

冒険者Lv47 勇者Lv36 遊び人Lv52 商人Lv47

装備 頑強のアルバ 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

BP振分 残BP:5

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

鑑定:1

ワープ:1

ジョブ設定:1

三十パーセント値引:63

 

所持金:15,073,530ナール

 

春の78日目

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