異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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237 春の終わり

 休みの次の日は春の八十八日目。季節代わりのオークションまであと三日。

 ベスタに会える日を指折り数えながら、迷宮探索に勤しもう。

 

 

 

 休み明け。その日の夕方近くに、四十二階層の待機部屋へとたどり着いた。

 俺のレベルは冒険者が52、勇者が44、遊び人が56、そして剣士が34に上昇。

 さらにセリーの鍛冶師とミリアの暗殺者のレベルも上がっている。

 

 パーンのボスはバフォメット。巨大なツノを生やしたヤギの頭に、同じく蹄の付いたヤギの脚。そして背中には漆黒の翼と、完全に悪魔としか思えないような外見を持った魔物だ。

 四属性の魔法を操り、状況に応じてボール系、ストーム系、ウォール系と使い分ける強敵。

 スキル攻撃は身の毛もよだつような声を上げて相手を恐慌状態にしてしまうというもの。

 セリーによると、経験を積んでいないパーティーでは、パニックを起こして全滅しかねないらしい。

 

 だが、初陣となった武者の性能は凄まじく、そんな不安など吹き飛ばしてしまう。

 あとは帰るだけだったので遊び人のスキルをバッシュに変更し、バッシュ二発とスラッシュ一発のトリプルアタック・改を叩き込んだところ、一匹当たりオーバードライビング二回で片が付いた。

 強い。あまりにも強すぎる。攻撃倍率は間違いなく三倍以上。下手したら四倍の可能性すらあるだろう。

 これにクリティカルが乗った場合、どれほどの威力を叩き出すのか想像もつかない。『田川はボス部屋において最強』そう言われる日も近いな。

 

 そして、残ったアイテムはモヘヤ。これもアンゴラと同じく高級な衣装に使われる繊維で、高級服屋に持ち込めば高く売れるとのこと。数が集まるまでは大切に保管しておこう。

 さらに武者のレベルも3になっていた。一匹ごとに上がってたわけか。

 

 

 

 

 

 春の八十九日目。その日は四十三階層からのスタートだ。

 この階層から出現するようになる魔物はハントアント。

 強力な毒攻撃を使用する難敵となっている。

 しかし、そんな魔物もメテオクラッシュ二発の前では灰燼と化す。

 使用する魔法の数が増えなかったことに安堵しつつ、それでも懸念事項がないわけでもない。

 あまりにも消費が激しすぎて、戦闘後に毎回MPを回復している状態となっている。

 消費MP半減や削減のスキルがなくても二発放つことができ、あと数回はストーム系の魔法を使えそうなことだけが救いだが、このままでは万能薬が尽きてしまう。その前に四十六階層へたどり着ければいいんだが。

 

 俺とセリーが毒を受けてしまうことはあるものの、すぐに回復してもらえるため、まるで砕氷船が氷を砕いて進むかの如く、魔物を蹴散らしながら先へ先へと進み続ける。

 だが、その日のうちに待機部屋を見つけ出すことはできなかった。

 言葉にはしていないが、彼女たちは一日一階層ずつ上げていくことを目標にしている節がある。落胆するかと思いきや、それほど気にしている様子はない。

 まあ、あくまでも努力目標であり、こだわっているわけではないのだろう。

 

 この日の成果はというと、勇者が45に、魔道士が52に、剣士が38に上がっている。

 そして、昨日に引き続きミリアの暗殺者も23にレベルアップ。

 オッケー、オッケー。順調、順調。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

「タガワ様!」

 

 ドロップアイテムの売却を済ませ、パンを購入するために通りを歩いていると、雑踏に混じって、不意に名前を呼ばれる。

 カクテルパーティー効果ってやつだろうか? タガワという名を呼ぶ声がはっきり認識できた。

 

 振り返ったところ、見覚えのある女性の姿が目に映る。

 

 家具屋の店員だよな? どうしたんだ?

 

 戸惑っていると、彼女は笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる。

 

「ちょうどよいところでお会いできました。このあとそちらへ使いを出す予定だったのです」

 

 おっ!? もしかして……。

 

「ご注文いただいておりましたベッドが完成いたしました。配達日のご希望はございますか?」

 

 やっぱり! 予定より少しだけ早く仕上がったようだな。

 それなら、ベスタが加入する前に搬入してもらおう。今のベッドだと彼女には小さすぎるだろう。

 

「明日の午前中に運んでもらうことは可能か?」

 

 問いかけてみると、家具屋の女性は笑みを浮かべながら頷きを返す。

 

「ええ。もちろん問題ございません」

「では、それで頼む」

「かしこまりました。それでは明日の午前中にお持ちいたします」

 

 よっしゃ! 体が大きいであろうベスタも手足を伸ばしてゆったりできるに違いない。間に合って本当に良かった。

 

 それから今使っているベッドを下取りするかと聞かれたが、それは断った。

 昼寝をしたり、横になって本を読んだりするかもしれないため、自室に設置することにする。

 ……まあ、この世界の本を読む機会があるのかは分からないんだけどね。

 

 

 

「この度はご注文いただき、まことにありがとうございました」

 

 彼女は深く頭を下げると、この場を去っていった。

 

 それを見送ったところで、期待で瞳を輝かせながら声を上げる。

 

「スリープウールのベッドで眠れるなんて、とっても楽しみです!」

 

 ミリアの言葉にセリーも賛同を示す。

 

「ぐっすり眠れて疲れも残らないという話なので、日々の迷宮探索にも役立つでしょう」

 

 ロクサーヌも頷きながらそれに続く。

 

「そうですね。万全の体調で迷宮に挑めるというのは、とても素晴らしいことです」

 

 まあ、確かにそれも大切なんだろうが、俺的には広いベッドという点が最も重要だ。

 頭の中では既に、その広さを利用してロクサーヌたちと組んず解れつ、絡み合っている場面が再生されている。

 

 ……良い。実に良い。

 

 天下の往来でいつまでもボーっとしているわけにもいかないので、ピンクな妄想を振り払って歩き出す。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 春の最終日である九十日目。

 目が覚めたら身支度を整え、ワープを利用してついさっきまで使用していたベッドを俺の部屋へ運ぶ。

 場所を決めて設置したところで、ロクサーヌが感慨深げに呟いた。

 

「初めてご主人様にお情けをいただいた想い出のベッドですが、今後これで眠ることはなくなるのですね……」

 

 確かにこのベッドでは、今まで生きてきた中で最も幸せな時間を過ごしてきたと断言できる。

 そんな大切なベッドで眠ることは少なくなるだろう。しかし……。

 

「それならいつでも俺の部屋にくるといいよ。このベッドで横になりながら二人でのんびり過ごそう」

 

 すると、ロクサーヌの顔に透き通るような美しい表情が浮かんだ。

 

「ありがとうございます。ご主人様と二人きりでのんびり過ごせるなんて、とても幸せな時間ですね」

 

 そうだなぁ……。ロクサーヌとそんな時間が過ごせるなら本当に幸せだろうなぁ……。

 

 しんみり浸っていると、部屋に明るい声が響き渡る。

 

「ご主人様! 私も! 私もお願いします!」

 

 ニコニコ笑顔のミリアが、挙手をしながらこちらを見つめていた。

 うん。天衣無縫な表情が実に愛らしい。

 

「あの……。私もまた、ご主人様と二人きりで過ごしたいです……」

 

 照れたような表情でセリーもお願いの言葉を口にする。

 控えめにお願いする様子がめちゃくちゃキュートだ。シニカルな時とのギャップでクラクラするぞ。

 

 たまには部屋で二人きりで過ごす時間を作ろうと話しながら、探索の準備を行う。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

 

 

 

 

 

 早朝の探索を行っていたところ、無事待機部屋を発見することができた。

 レベルを確認すると、剣士が39になっている。オッケー、オッケー。

 

 ハントアントのボスはコマンドアント。

 素早い動きで床だけではなく壁や天井を駆けまわり、鋏のような顎で襲い掛かってくる。

 すべての攻撃に強力な毒を持ち、毒消し丸ではなかなか回復することができないらしい。

 スキルは仲間呼びで、発動するとどこからともなくハントアントが現れるそうだ。

 これがゲームなら連射コントローラーのボタン固定で無限狩りをするところだが、現実だとめちゃくちゃ質が悪い。

 弱点は水で耐性は土ということだが、ボス戦なのであまり関係ないか。

 そして残すアイテムは蟻卵。セリー曰く、食べれば性力増強の効果があるとのこと。

 別にそれについて困っているわけじゃないし、というか四十五歳だった時点でも困ったことはなかった。

 それに俺には色魔もついているため、一生縁がないんじゃないかなぁ。

 

 ボス部屋へ入り戦闘を行うも、バッシュによるダブルアタックの威力はすさまじく、コマンドアントをあっさり倒すことに成功する。

 ダブルアタックでこれなのだ。剣士の上位ジョブが解放され、そのスキルを使用できるようになったらどうなるんだろう?

 さっきも剣士のレベルが上がったし、それを用いたトリプルアタック……。

 いや、中級スキルが三つ並ぶのだ。真・トリプルアタックと呼ぼう。

 きっとお披露目の日は近い。

 

 

 

 続いて第一ランクの中位最後の魔物はハチノス。

 過去何度も戦ったことがあるため、恐るるに足らず。

 意気揚々と通路に足を踏み出したものの、メテオクラッシュ二発で倒れた魔物はいなかった。

 しかし、追加で放ったバーンストームで片付けることができたため、ほっと胸をなでおろす。

 消費MPは増えたものの、まだまだ何とかなりそうではあるな。このまま探索を続けよう。

 

 しかし、そこでロクサーヌからいつもの声が掛かり、あえなく時間切れとなってしまった。

 んじゃ、続きは朝食とベッドの搬入が終わってからにしますかね。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 朝食をとった後は、ベッドが到着するまでリビングでのんびりしながら、明日の予定を話し合う。

 

 早朝は探索を行うが、朝食後に俺は商業ギルドへ、彼女たちは家で歓迎会の準備をするそうだ。

 俺たちが戻ったらすぐにベスタと顔を合わせて、これからについていろいろ話をしたいらしい。

 その際に俺の事情についても話すことになった。

 

 そして、夕食の歓迎会は色々な料理を用意してビュッフェ形式にするそうだ。

 唐揚げ、トンカツ、赤身カツ。白身フライに尾頭付きの塩焼き。ハンバーグにミートボール。かまぼこにカルパッチョ。ミートスパにツナサンド、卵サンドにハムチーズサンド。そしてロクサーヌのポトフ。

 さらに俺はデザート担当大臣兼コーラ担当大臣に任命されてしまった。

 

 オッケー! やったろうじゃないの!

 

 

 

 ワイワイ盛り上がっていたところで、不意にロクサーヌがスンスン匂いを嗅ぎ始める。

 

「ご主人様、到着したようです」

 

 毎度のことながら、とんでもない性能の鼻だなぁ。

 

 感心しながら家の外に出て到着を待っていたところ、とんでもない大きさのベッドフレームとマットレスを載せた荷馬車が近づいてくる。

 その荷馬車も今までのサイズではなく、四頭立てでかなりの大きさだ。

 

 三人も呆けた顔で実物を見つめていた。

 

「信じられないような大きさです……」

 

 ロクサーヌが思わずといった感じで言葉を漏らすと、セリーもそれに続く。

 

「サイズを聞いてはいましたが、実際目にすると想像以上の大きさでした……」

 

 確かにそうだよなぁ。

 自分で注文していてなんだが幅二百八十センチ、長さ二百二十センチのベッドというものに、いまいちリアリティーが持てていなかった。

 だが、実際目にするとこんなスケール感になるのか。

 家具屋の店員が驚愕していた理由にも納得がいく。

 

 口をポカンと開けているミリアからも呟きが漏れた。

 

「目の錯覚かと思っちゃいました……」

 

 マジでそれな。完全に遠近感バグってるもん。

 

 

 

 俺たちの前で荷馬車を止め、二名の配達員が馬車を降りる。

 一人はテキパキと掛けられている紐を外し始め、もう一人はこちらへ話し掛けてきた。

 

「お待たせしました。ベッドをお持ちしました。今回は部屋までお運びいたしましょうか?」

「いや、大丈夫だ。このくらいなら俺たちだけで何とかなるので、そのままここに置いてくれ」

「承知いたしました。ではそのようにいたします」

 

 以前は玄関の中まで運んでもらい、そこからワープで各部屋へ運んだが、この大きさだと玄関を通るだけでも時間がかかるだろう。

 それなら外から直接寝室へゲートをつないだ方が手っ取り早い。

 

 

 

 ベッドを下ろし終えた彼らにチップを渡す。特注サイズで荷馬車まで大きいものを用意していたようなので、今回は一人当たり銀貨三枚だ。

 

「いつもありがとうございます。また何かありましたら、是非当店をご利用下さい」

 

 そう言うと二人は荷馬車に乗って去っていく。

 

 ワープをみられるわけにはいかないため、彼らが離れていくのを見守っていると、風に乗って『今日はどこに行く?』だの、『豪遊できるぞ!』だのといった声が耳に届く。

 

 喜んでもらえたようで何より。まあ楽しんでくださいな。

 

 

 

「ご主人様、もう大丈夫です」

 

 完全に見えなくなったところで、ロクサーヌからオッケーが出る。

 

 よし。それじゃあ準備をしますかね。

 

 腕力に定評のあるセリーはそのままでも問題ないとして、俺とロクサーヌはそれぞれ腕力二倍のスキルが付いた、よりしろのイアリングと剛腕の古代樹手甲を身に着けた。

 そしてボーナスポイントを腕装備六に振り、腕力五倍のスキルを持つヤールングレイプルをミリアへ渡す。

 

「履き替えるわけにはいかないから、靴のまま寝室へ行こう。運び終わったら拭き掃除をしないとね」

 

 その言葉に彼女たちは良い子のお返事をしてくれた。

 

「家の中で靴を脱ぐことが習慣づいたせいで、そのことに抵抗を覚えてしまいます」

 

 セリーの言葉にミリアが大きく頷く。

 

「本当にそうですよねー。これまでどうして靴のまま家の中に入ることができたんでしょう? 今では理解できません」

「毎日お風呂に入るくらい清潔な生活をしていますからね。そう思うのは当然です」

 

 二人の言葉にロクサーヌも賛同を示す。

 

 せやろ? 他者の文化や生活様式を批判するつもりはないが、外履きのまま家の中に入るのは無理だって。

 もし外でうんこでも踏んでたらどうするんだ? 考えるだけで恐ろしいわ。

 大空寺あゆの口癖である、『お前なんか猫のうんこ踏め』の威力が変わってくるぞ。

 

 

 

 ベッドを寝室へ運び込んだら、まずは徹底的に掃除を行う。

 それが済んだら、彼女たちと相談しながらベストなポジションに配置した。

 

 うん。いいんじゃないかな?

 

 それにしても、部屋に設置したのを改めてみると、やっぱ馬鹿みたいにデカい。

 でも、今後のことを考えるなら絶対にあった方がいいもんな。ありもあり、おおありだ。大アリクイだ。ありをりはべりいまそかりだ。

 

 馬鹿なことを考えながらも、サンダルを脱いでベッドへダイブ。

 すると、得も言われぬ心地よさに襲われる。

 

 これすごいぞ……。話には聞いていたが、スリープウールのマットレスってこんなに気持ちいいものなのか。

 これなら間違いなく安眠できるだろう。

 

 すると、ウズウズしていたネコミミ美少女もこちらへ飛び込んできた。

 

「やっぱりスリープウールのマットレスは違います。ご主人様、とっても気持ちがいいですねー」

 

 ミリアが抜け駆けをしたことにお小言を言っていたものの、ロクサーヌとセリーもすぐにベッドへ体を預ける。

 

「確かにこれは気持ちいいですね……」

 

 ロクサーヌの蕩けるような声に頷き、セリーも声を漏らす。

 

「はい。このまま眠ってしまいそうです……」

 

 ほんとだよ。何もかも忘れてこのまま眠ってしまいたい。

 

 

 

 いつまでもごろごろしているわけにはいかないため、気合を入れてベッドから体を起こした。

 ……今後、朝起きるのがつらくなりそうだなぁ。

 

 さて、装備を整え迷宮へ戻ろう。

 

 

 

 

 

 この世界は原作と違い、食料品を扱っている店以外は季節代わりの休日に休みを取るため、明日はベスタの買い物ができない。

 どうせならベイルの市が立つ日である夏の二日目にまとめて買うことにして、明日と明後日を凌ぐための小物や服を夕方に購入することにした。

 

 それもあって探索を早めに切り上げたせいなのか、待機部屋は見つからず、四十四階層突破は夏に持ち越しとなってしまう。

 しかしレベルは順調に上がっており、勇者が46、遊び人が57、剣士が42。

 そして、ロクサーヌの巫女が32で、ミリアの暗殺者が24。

 

 今度こそはといった感じで、ロクサーヌの意気込みがすごい。

 新しい武器を装備できるかもしれないという気持ちも分かるが、ちょっと落ち着いてもろて。

 

 

 

 買い物も済ませて自宅へ戻り、キッチンに食材を置いたら彼女たちの部屋へと急ぐ。

 その間、ロクサーヌの尻尾は忙しなく動き続けており、興奮のほどがうかがえる。

 もしかしたら本人の中に確信のようなものがあるのかもしれない。

 

 部屋に入るとロクサーヌはクローゼットに歩み寄り、ミセリコルデを手に取った。

 そのまま腰のベルトへ差し、ゆっくり引き抜く。

 

 確かめるように一回、二回と剣を振り、その後はドンドン速度が増していった。

 

 いつの間にか演武のような動きに変わっており、彼女の美しさも相まって、まさに剣の舞だ。

 

 

 

 やがて、動きを止めたロクサーヌはこちらへ振り返る。

 その顔にははじけるような笑みが浮かんでおり、聞くまでもなく結果が理解できた。

 

「ご主人様! ミセリコルデを扱うことができます! 何の問題もありません!」

 

 めちゃくちゃ楽しみにしてたからなぁ。本当によかった。

 

「おめでとう、ロクサーヌ」

「スキル結晶の融合は私に任せてください!」

「さすがお姉ちゃん! すごいです!」

 

 俺たちの祝福の言葉を聞き、その笑みがさらに濃くなる。

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 ほんと、美人で可愛い娘さんだわ。

 

 

 

 俺の部屋へ移動し、スキル結晶の融合をしてもらうために、ウサギとコボルトのスキル結晶をセリーへ渡したところで、ロクサーヌからちょっと待ったコールがかかった。

 

「お待ちください。それはどのスキル結晶ですか?」

 

 え? どの?

 

「ウサギとコボルトだけど……」

 

 戸惑いながらそれを伝えると、彼女は笑みを浮かべながら言葉を続ける。

 

「どうせならご主人様の貫通のオリハルコン剣とおそろいがいいです。竜のスキル結晶を先に融合してはいただけませんか」

 

 ロクサーヌ! なんて可愛いことを言うの! そうだよな! おそろいがいいよな! 好き! 超好き! 愛してるー!

 

 愛の弾丸で心臓を撃ち抜かれながら、彼女の希望通り竜のスキル結晶と交換しておいた。

 

 俺たちの様子を呆れた顔で見ていたセリーだったが、立て続けに四回の融合を成功させてしまう。

 

「ご主人様、確認をお願いいたします」

「分かった。ちょっと待っててね」

 

 んじゃ、鑑定っと。

 

貫通のミセリコルデ 片手剣

スキル 防御力貫通 詠唱中断 HP吸収 MP吸収

 

 オッケー。問題ナッシング。

 

「うん、大丈夫。貫通のミセリコルデ。スキルは防御力貫通、詠唱中断、HP吸収、MP吸収。間違いなし、さすがセリーだね」

 

 そう言い終わるや否や、部屋に歓声が響き渡る。

 

「ありがとうございます。本当にセリーは世界一の鍛冶師ですね」

「お姉ちゃんの言う通りです! さすがセリーさん!」

 

 俺たちの称賛を受け、世界一の鍛冶師さんは頬を朱に染め照れまくっていた。

 うむ。実に可愛らしい。

 

 落ち着きを取り戻したところで、ロクサーヌの使っていた強権のエストックをミリアへ、ミリアの使っていた強権のレイピアは二軍落ちで物置だ。

 

 これでロクサーヌの装備品に腕力二倍と防御力貫通のスキルが揃った。

 レベル補正があるため、劇的な効果は望めないだろうが、魔物にダメージが通るようになるはず。

 そのうち、倉庫に眠っている空きスロットが四つのサッシュに、腕力二倍、攻撃力二倍、知力二倍、魔法攻撃力二倍のスキルを付け、剛腕の古代樹手甲は身代わり装備に変更しないとな。

 

 よし。それじゃあ今日も修業に勤しもうじゃないの。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

冒険者Lv52 勇者Lv46 遊び人Lv57 魔道士Lv52 剣士Lv42

装備 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

詠唱省略:3

必要経験値二十分の一:63

結晶化促進四倍:3

鑑定:1

ワープ:1

三十パーセント値引:63

 

所持金:3,210,971ナール

 

春の90日目

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