異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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251 切り札

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

四十七階層

 

 

 

 

 

 迷宮入口を経由して四十七階層に到着したところで、ワープとメテオクラッシュを入れ替え、アイテムボックスからカラッカ、盾、ズケットを取り出す。

 

 念のため確認っと。

 

田川 歩 男 18歳

冒険者Lv52 勇者Lv46 遊び人Lv57 魔道士Lv52 剣士Lv42

装備 ひもろぎのカッカラ 倹約のダマスカス鋼盾 ズケット 頑強のアルバ 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

 オッケー。問題ナッシング。

 

 準備が整ったところでロクサーヌに声を掛ける。

 

「もう一度地図を確認しておくか?」

「すべて頭に入っているので問題ありません。このままご案内いたします」

 

 ……ほんと、とんでもない能力だわ。

 昨日サラッと流し見しただけで完璧に覚えてるんだもんなぁ。

 というか、他の娘たちも全然驚いている様子はないし、彼女たちも同様なのだろう。

 

 ……まさか俺の物覚えが悪いってことはないよね? こっちが普通だよね? この娘たちの能力がすごすぎるだけだよね?

 

 自分の知力に不安を覚えつつ、ロクサーヌの後に続いて歩き出す。

 

 

 

 通路を進むとすぐに魔物とエンカウントしてしまった。

 ネペンテスが三匹にピックホッグが二匹、そしてキラービーが一匹という布陣。

 

 四人が駆け出したと同時に魔法を放つ。

 

メテオクラッシュ

アクアストーム

アクアストーム

 

 これまでに比べて抜けていくMPが明らかに少ない。間違いなくメテオクラッシュを三発放てると確信が持てた。

 

 消費MPが減ったことにホッとしていると、ロクサーヌが四匹の魔物を翻弄し、ベスタは体を張って魔物の行く手を阻み、ミリアが激しく動き回りながら詠唱を潰し、セリーが的確に槍を突き入れている。

 

 ほんと、この娘たちはスゲーなぁ。

 

 程なくして魔法のエフェクトが終了し、リキャストタイムが明ける。

 

 そんじゃあ、二ターン目いくぜぇ!

 

 

 

 結局、二ターン目にネペンテスが倒れ、三ターン目でピックホッグとキラービーが倒れた。

 メテオクラッシュで弱点が突けた分、ネペンテスへのダメージ量が増加したのだろう。

 そしてピックホッグはメテオクラッシュのダメージこそ減ったものの、六発分のアクアストームでそれを補い、キラービーは増加も減少もなかったという感じか。

 MPもストーム系の魔法をあと数発は撃てそうなくらい残っているし、セリーの作戦は大成功。

 

 ……いや、待てよ? もしかしたらワンチャンメテオクラッシュ三発で片が付いていて、アクアストームは無駄だった可能性もあるな……。

 次の戦闘ではそこらへんを確認してみよう。

 

 その旨を彼女たちに伝えて再び通路を歩き出す。

 

 

 

 次に出現したのはネペンテスが四匹にキラービーとハチノスが一匹ずつ。

 ストーム系の魔法は使わず、一ターンごとにメテオクラッシュを放ったところ、三ターン目にすべての魔物が倒れてしまった。

 

 マジか……。やっぱボーナス呪文というだけあって、めちゃくちゃ威力が高いぞ……。

 火か土に耐性がない魔物に対してはかなりの効果を発揮する。

 燃費は最悪だが、その価値は十分だ。

 

 うーん……。でも、おそらくピックホッグはメテオクラッシュ三発じゃ倒せないよなぁ。

 次にピックホッグが出現したときは、アクアストームを何発追加すればいいのかを探っていこう。

 

 そんなことを考えながら、受け取ったアイテムをしまっていると、ふと気が付いた。

 

 ガンマ線バーストならいけるんじゃね?

 

 以前試したときは消費MP半減のスキルを持つ毘盧帽を使っても、ほぼすべてのMPを持っていかれてしまった。

 しかし、そのときのジョブは探索者、勇者、魔法使いの三つだったし、レベルもだいぶ低かったわけで、大幅にパラメーターが上がっている今なら、消費MP削減でも問題なく発動しそうだよな?

 

 ただでさえ鬼強なガンマ線バーストだ。

 それがひもろぎのカッカラ、ズケット、アルバ、ビットローファー、よりしろのイアリングといった装備品で強化されていれば、ワンパンも期待できるはず。

 おまけに無属性魔法なので、耐性によるダメージ減少を気にしなくていいのもありがたい。

 

 よし。ここはいっちょ確認といこう。

 考え込んでいた俺を不思議そうに眺めている四人に声を掛ける。

 

「次の戦闘では少し実験をしてみたい」

「実験ですか!」

 

 その瞬間、瞳を好奇心で輝かせたセリーの声が迷宮内を駆け抜けていく。

 

「ああ。これまでは最大MPの問題もあってメテオクラッシュを使ってきたが、消費MP削減のスキルが付いた今なら、ガンマ線バーストを発動することも可能だろう」

 

 俺の言葉を聞き、ロクサーヌとセリーは納得したように頷いた。

 

「なるほど。以前試した、あのすごい威力の魔法ですか。確かにあの魔法があればさらに先を目指すこともできますね」

「勇者や魔道士のジョブを得て、MPもかなり増えているはずです。消費MP削減があればおそらく問題ないでしょう」

 

 一方、ミリアとベスタは頭の上に大きなハテナマークが浮かんでいるような表情をしている。

 彼女たちにとっておきの切り札の存在を伝えたところ、表情がパッと輝いた。

 

「そんな魔法があるのですか! すぐに次の魔物の所へ行きましょう!」

「メテオクラッシュ以上の魔法だなんて、すごいと思います!」

 

 ワクワクしてる様子がめちゃくちゃ可愛らしい。超好き。

 

 意気揚々と歩き出した彼女たちにつられ、俺の足取りも軽くなる。

 

 四十七階層の魔物如き、何するものぞ、だ。

 

 

 

 ロクサーヌの案内で通路を進むと、すぐに魔物の群れが現れる。

 食虫植物が二匹に、豚さん、ハチさん、牛さんが一匹ずつ。

 

 よっしゃ。おあつらえ向き!

 

ガンマ線バースト

 

 ロクサーヌたちが走り出したのに合わせて念じたところ、大量のMPが抜けていく感覚に襲われた。

 しかし、それと同時にすべての魔物が実体を失い風に流されるように消えていく。

 

 おっしゃー! ワンパンじゃーい!

 

 しかもあと数回はストーム系の魔法を放てそうなくらいMPも残っている。

 何よりほとんどエフェクトがなく、即座に効果を及ぼしたのがありがたい。

 これとワンパン可能なことで、トリプルスペルに比べて大幅な時間短縮が可能となるだろう。

 リキャストタイムは不明だが、ガンマ線バーストを二発放てるようになるのは遥か先のことだろうし、これについては心配する必要がない。

 

 思索に耽っていると、通路に大きな声が響き渡る。

 

「えー! 本当に一発で倒してしまいました!」

「このようなことができるなんて、ご主人様はすごいです!」

 

 ネコミミさんとフルアーマー竜騎士さんの言葉に対し、一番奴隷さんはドヤ顔で言い放つ。

 

「四十七階層の魔物など、ご主人様の敵ではありません」

 

 ご主人様のというより、ガンマ線バーストと魔法攻撃力マシマシ装備のおかげだけどね。

 

 内心でツッコミを入れていると、セリーが頷きながら感想を述べた。

 

「他の魔法のように派手な音や光がないのもいいですね。ご主人様の体から光が放たれましたが、ほんの一瞬だったのでたとえ見られたとしても、見間違いだと思うでしょう」

 

 なるほど。そんな副次効果もあるのか。

 まあロクサーヌが人の接近に気付かないとは考えにくいが、それなら万が一目撃されたときに言い訳がしやすくなるだろう。

 

 んじゃ、こっからはガンマ線バーストを主体に戦っていくってことで。

 

 その旨を伝えたところ、通路に良い子のお返事がこだました。

 

 

 

 その後は最短距離で待機部屋を目指す。

 鎧袖一触で魔物を蹴散らし、無人の荒野を進軍するかのように、肩で風を切って通路を進んでいく。

 普段なら手応えのない戦闘に異議を唱えそうなロクサーヌさえ、一刻も早く最上階へ進みたいという気持ちが強いのか、ニコニコ顔で尻尾を振りながら歩いていた。

 彼女だけではなく、他の三人も興奮している様子が丸分かりだ。

 かくいう俺も、久しぶりのワンパンにテンションが上がりっぱなしである。

 

 

 

 魔物を薙ぎ払いつつ、先へ先へと急いでいると、やがてロクサーヌが口を開いた。

 

「この先が待機部屋です。そろそろ朝食の時間になるので、ボスを倒したらクーラタルへ戻りましょう」

 

 はやっ! 早朝の探索で待機部屋にたどり着いちゃったよ!

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮四十七階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

 待機部屋に入りボス戦の準備をしようとキャラクター再設定を開いたところ、ボーナスポイントが1余っていた。

 鑑定で確認してみると冒険者が53、剣士が43になっている。

 さらにセリーの鍛冶師が31で、ミリアの探索者が15、そしてベスタの竜騎士も14に上昇っと。

 

 オッケー、オッケー。順調じゃないの。

 

 彼女たちにそのことを伝え、喜びを分かち合ったところでボス戦の準備を再開だ。

 

 

 

 俺とミリアのジョブを変更し、さらにポイントの振り分けを行い、セリーに声を掛ける。

 

「ボスについて教えてくれ」

「かしこまりました」

 

 彼女は一つ頷くと、特徴的な愛らしい声で説明を始めた。

 

「ネペンテスのボスはセファロタス。人がすっぽり入るほどの大きなつぼを持つ魔物です。攻撃方法は長い蔓を鞭のように振るう物理攻撃と、水と土の全体攻撃魔法。他にも消化液を飛ばしてきます。そして、スキル攻撃は捕食。蔓を伸ばして獲物を捕らえ、消化液で満たされたつぼの中へと引きずり込むそうです。防御力が低い場合、ものの数分で溶かされてしまうのだとか。運良く抜け出せても皮膚が溶けた状態なので、滋養錠かエリクシールを使わなければ元に戻ることはないと聞きます」

 

 こわっ! ホラー映画の世界じゃん! それは駄目だろうよ!

 

 あまりのグロさに慄いていると、不敵な笑みを浮かべたロクサーヌが口を開いた。

 

「それなら攻撃をかわし続ければいいだけです」

「はい。捕まらなければ問題ないですもんねー」

 

 ミリアが賛同を示すと、ベスタも続く。

 

「もし捕まったら蔓を引きちぎればいいと思います」

 

 そんなことができるのは君たちだけなんだよなぁ……。

 本当に凡人の気持ちが分からない娘さんたちやで……。

 

 三人の言葉に面食らっていたセリーだったが、一つ咳払いをして話を続ける。

 

「弱点は火属性で、水と土に耐性を持っています。今回はともかく、雑魚として出現した際には属性に気を付けなくてはいけません」

 

 ネペンテスは耐性を持っていなかったのに、セファロタスにはあるのか。雑魚で出てくるときは面倒そうだなぁ。

 

 まあとはいえ、こいつが雑魚として出現するのは最低でも七十八階層。

 そう簡単に行けるような階層じゃないし、今は考える必要はない。

 

「残すアイテムは通常ドロップがネペンテスと同じで半夏。レアドロップは滋養錠の材料となる甘草です。甘草二つで滋養錠を生成できるそうですが、これを扱えるのは薬草採取士の上位ジョブである薬師だけだと言われています」

 

 すると、我が最愛の人が自信満々に告げた。

 

「問題ありません。ご主人様ならすぐに薬師のジョブを得ることでしょう」

「まあ春の間だけで五つの上位ジョブを得るなどという、わけの分らないことをしている人がいますからね。そんな常識外れの人ならそれくらいのことは軽々とやってのけるでしょう」

 

 セリー君? 言葉に棘がありはしないかね? 言いたいことがあるなら聞こうじゃないか。

 

 何はともあれ、作戦はいつもと変わらない。

 彼女たちがボスを引きつけている間に、速攻で雑魚を片付けてバックスタブを決めていく。これだけだ。

 

「よし。それじゃあ、ボスに挑むとしよう」

 

 四人に声を掛けると、待機部屋に気合の入った返事が響き渡った。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮四十七階層

ボス部屋

 

 

 

 

 

 ボス部屋に入ったところでそれぞれの役割を果たすため、セオリーに従いフロアを駆ける。

 背後を突くべく回り込んでいると、中央に立ち込めていた煙が晴れ、魔物が姿を現した。

 

セファロタスLv47

セファロタスLv47

ネペンテスLv47

ピックホッグLv47

 

 セファロタスはとんでもないデカさのフタ付きのつぼに、長く伸びた手のような蔓。それからワサワサ動く根っこを生やした魔物だった。

 ただでさえ恐ろし気な見た目なのに、そのつぼの表面には毒々しい紫の模様が描かれており、それが不気味さに拍車をかけている。

 

 だが、アユムズ・エンジェルが臆することなく戦闘を開始したのだ。

 俺だって負けてはいられない。

 

オーバードライビング

 

 ボーナスタイムを作り出し、一気に距離を詰めてトリプルアタックの連発で雑魚を始末した。

 そして、セリーたち三人が引きつけている方へターゲットを変更する。

 

 

 

 しかしそこは四十七階層のボス。トリプルアタック・改といえど、簡単には沈まない。

 すでにオーバードライビングの数は三回目に入っているが、奴は今も元気に活動中。

 

 くそっ。この後は迷宮を出るんだから、再設定時間を気にせず遊び人のスキルをバッシュにしておくんだった。

 

 内心で歯噛みするものの、今は攻撃を繰り返すしかない。

 

 

 

 結局、ボスを削りきるのには一匹あたり六回のオーバードライビングが必要だった。

 いや、もちろん他の人から見ればあり得ない撃破スピードなんだろうが、無駄な作業をしたという思いが拭えない。

 

 そんなことを考えていたところ、ちょっと高めのキュートな声が聞こえてきた。

 

「ご主人様! 見てください!」

 

 ん? なんだ?

 

 ミリアが指差す方へ視線を向けて鑑定を使用すると、その表示が飛び込んでくる。

 

スキル結晶 つぼ式食虫植物

 

 マジで!? スキル結晶!?

 つぼ式食虫植物の自引きは二回目だぞ!?

 

 驚きながらそれを伝えた途端、ボス部屋に歓声があふれた。

 

 

 

 その他のドロップアイテムは甘草と半夏、それから豚の毛だ。

 滋養錠を作るには甘草が二つと薬師になる必要があるらしいし、今は物置部屋で保管しておこう。

 

 帰り支度を整えたところで、四十八階層へと続く扉を潜る。

 

 

 

 

 

ハルバーの迷宮

四十八階層

 

 

 

 

 

 次の階層へ移動すると、ロクサーヌがスンスンと匂いを確認しだした。

 

「どうやらゴスラー様のパーティーはいないようですね」

 

 鏡の納品をしていたときは今より少し遅い時間帯に行っていたわけだし、ボーデの宮城にいるのだろう。

 彼らが迷宮に入るのは、もう少し後になるんじゃないかな?

 

 まあ、朝食後の探索の際にもう一度確認してもらえばいい。

 

「では、迷宮を出よう」

 

 声を掛けると、ミリアがシュバッと手を挙げた。

 

「ご主人様、ご主人様!」

 

 ミリアさん、ミリアさん。どうしたんだい?

 

 彼女の方へ視線を向けると、花丸笑顔で言葉を続ける。

 

「入口のゲートを潜るのではなく、私のダンジョンウォークで一階層の小部屋に戻ってもいいですか!」

 

 どうやら移動スキルを使ってみたいらしい。本当に可愛い娘だなぁ。

 

 思わず口元が緩んでしまったが、俺だけではなくロクサーヌもセリーもベスタも笑みを浮かべながら彼女を見守っていた。

 

「うむ。頼むな」

「はい! お任せください」

 

 ミリアは大きな声で返事をすると、壁に手を添え詠唱を開始する。

 

「入り組み惑う迷宮の、勇士導く糸玉の、ダンジョンウォーク」

 

 呪文が終わると壁にゲートが展開されたのだった。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

冒険者Lv53 勇者Lv46 遊び人Lv57 魔道士Lv52 剣士Lv43

装備 頑強のアルバ 身代わりの竜革グローブ オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

鑑定:1

結晶化促進四倍:3

MP回復速度二十倍:63

ジョブ設定:1

ワープ:1

 

所持金:2,454,263ナール

 

夏の1日目

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