異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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276 聖剣アスカロン

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 オーダー品のキャミソールや下着がよほど嬉しかったようで、昨夜はベスタが何度も俺を求めてくれた。

 それにつられたのか、ロクサーヌたちからも激しくせがまれてしまい、色魔が八面六臂の大活躍。

 可愛い子猫ちゃんたちを返り討ちにしてやりましたとも。

 あ、猫人族のミリアがいるんだ。この例えは種族差別と取られかねないよな。いかん、いかん。反省、反省。

 

 身だしなみを整えたら、いつものようにミーティングだ。

 早朝の探索でアスカロンの性能を確認し、それが済んだらベリッサ南未開地域の迷宮の五十三階層を探索しつつ陳皮を集める。

 そして、迷宮を出る前にハルバーの迷宮最上階の予行演習として、バトルマーメイドとの戦闘訓練。

 

 朝食と食休みを終えたら商人ギルドへ赴き、バラダム家へ装備品を売却して、ルークとの話し合いだ。

 奴の話によると俺が買い占めのような真似をしたため、他の仲買人から突き上げを食らい、入手が困難になっているとのことだった。

 しかし、昨日の仲買人たちの様子を見るに、正直その言葉はかなり疑わしい。

 その件を問い詰め、態度を改めるようなら取引を継続するが、舐めた真似を続けるようならクーラタルではなく帝都あたりの仲買人に乗り換えることも視野に入れる。

 まあ、あいつの出方次第ってことで。

 

 その後はいつものように迷宮探索だな。

 

 打ち合わせが終わったところで、各々ソファーから立ち上がる。

 

 さあ、今日も一日ガンバンベーヤ。

 

 

 

 

 

 

ベリッサ南未開地域の迷宮

五十三階層

 

 

 

 

 

 ハルバーの五十階層を経由し、現在の主戦場へ移動する。

 

 昨日、仲買人たちと共にアスカロンの性能を確認したものの、あれはあくまでも出荷前検査のようなもの。

 今回がお披露目といえるだろう。

 

 期待でキラキラ輝いている四対の瞳に見守られながら装備の変更を済ませ、自分へ向けて鑑定を使用する。

 

田川 歩 男 18歳

遊び人Lv63 勇者Lv54 冒険者Lv58 武者Lv8 武器商人Lv40 剣豪Lv7

装備 聖剣アスカロン 身代わりの硬革帽子 頑強のアルバ 剛腕のミスリル手甲 オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

 オッケー。バッチリ、バッチリ。

 そんじゃ、次だ。

 

 彼女たちから距離を取り、しばらく素振りを繰り返す。

 金属製の手甲だが特に違和感はなく、アスカロンのグリップをしっかり握ることができている。

 

 うん。問題はなさそうだ。まあ指は完全にフリーなんだから、当然と言えば当然か。

 これでロクサーヌの装備品を奪うような真似をしなくて済む。よきかな、よきかな。

 

 確認が終わったところで鑑定を外して獲得経験値二十倍を付ける。

 キャラクター再設定が1、必要経験値二十分の一で63、シックススジョブで31、詠唱省略で3、獲得経験値二十倍で63、合計161ポイント。

 

 オッケー! 準備完了!

 

「我が騎士、ロクサーヌよ! 近くに人はいるか!」

 

 この迷宮で他の人を見たことはないが、念のために確認だ。

 

 彼女は一瞬戸惑ったものの、すぐに輝くような表情で応じた。

 

「少々お待ちください! すぐに確認いたします!」

 

 ミリアとベスタはロクサーヌが匂いを確認しているのを、ワクワクした様子で見守っており、普段なら白けた目をしていそうなセリーも好奇心を刺激されているのか、高揚感が見て取れる。

 我がパーティーは全員揃ってウキウキだ。お昼休みでもないのにウキウキウォッチングだ。

 

 程なくして、ロクサーヌがこちらへ顔を向けた。

 

「大丈夫です! 近くには誰もいません!」

 

 うむ。結構。

 では、武器のアクティブスキルを確認していこうではないか。

 

「よし。まずは属性付与を試してみよう」

 

 そう言うとお嬢様方の表情が期待で輝き出す。

 ナイスリアクション。実にめんこい。

 

 アユムズ・エンジェルに見守られながらスキル名を念じる。

 

火炎剣

水流剣

烈風剣

岩砕剣

 

 その直後、剣身が炎に包まれ赤く染まった。

 

「わ。これが属性付与なんですね。初めて見ました」

「私も初めて見たよ。こんな風になるんだねー」

 

 ベスタとミリアが興味深そうに見ているのに対し、ロクサーヌとセリーは訝しげな表情だ。

 

「ご主人様、火炎剣だけを使用したのですか?」

 

 ロクサーヌが疑問を呈すると、セリーもそれに続く。

 

「複数発動した場合はこのようになるのでしょうか?」

 

 そうなんだよなぁ。どう見ても他の属性が付与されているようには見えないし、消費MPで判断しようにも基準となる量が分からない。

 

「四つすべてを使おうとしたんだがなぁ」

 

 彼女たちと共にアスカロンを眺めていると、一分ほどして炎のエフェクトが消える。

 

 これってエフェクトが出現している間は効果が持続するのかね? それとも一回攻撃すると効果が切れるんだろうか?

 原作で属性付与を使ったのは、ソマーラの村でほむらのレイピアの火炎剣を発動させた時だけ。

 その時は描写がなかったため、どうやって消えたのかよく分からない。

 

 疑問を口にしたところ、セリー先生は右手の親指をピッと立てた。

 

「属性付与の効果は武器を覆う炎や水が消えるまで持続します。その間であれば何度攻撃を行ってもダメージ量は増加するそうです」

 

 それってめちゃくちゃすごない?

 ダメージ倍率は微々たるものだろうから普通の人がこのスキルを活かすことは難しいだろうが、俺にとっては相当な神スキルだぞ。

 

 よっしゃ。まずは複数発動についての実験からだ。

 

 その旨を告げると、セリーがキラキラした目で声を上げる。

 

「はい! とても興味深いです!」

 

 あいかわらず好奇心旺盛で可愛らしいこと。

 

 

 

 属性付与を一つずつ発動させて消費MPを確認し、再び複数同時に使おうとしたところ、最初に念じたものしか発動しないことが分かった。

 さらに効果が継続している間はリキャストタイムとなっており、スキル名を念じてもうんともすんとも言わない。

 残念ながら四属性分のダメージ倍率アップは不可能だったようだ。

 考えてみれば一つのジョブで同時に複数の魔法を使うことはできないんだから、この世界におけるゲーム的なシステムの仕様通りなのだろう。

 でもまあ、一属性だけでも助かるし、弱点を突けば大幅な与ダメ増加が期待できる。属性付与の価値はいささかも減じない。

 

 結論が出たところで、今度は魔物相手の実験だ。

 待ちきれないといった様子で尻尾を揺らしているお嬢さんへ声を掛ける。

 

「ロクサーヌ、案内を頼む」

「お任せください!」

 

 彼女はテンション高く答えると、尻尾をブンブン振りながら通路を歩き出す。

 ほんと、可愛い娘だなぁ。

 

 

 

 通路を進むとすぐに魔物と鉢合わせた。

 アニマルトラップが三匹にネペンテスが一匹、そしてボトルマーメイドが二匹の布陣。

 

 ロクサーヌ師匠……。実験だというのに最大出現数である六匹のところに案内するんですね……。

 

 俺の内心をよそに彼女たちは一斉に駆け出した。

 

 おっと。アスカロンのデビュー戦なんだ。余計なことを考えている場合じゃない。

 とりあえず今回はオーバードライビングなしで挑んでみよう。

 アユム、いきまーす。

 

 ロクサーヌとミリアは宙を駆け、壁を蹴って魔物の背後に回り込み、二人で四匹の魔物を引き付けていた。

 そして、セリーとベスタはそれぞれボトルマーメイドを相手取っている。

 

 よし。まずは手前のセリーが受け持っている奴からだ。

 

 グリップを両手でギュッと握り、一気に距離を詰めてバックスタブを叩き込む。

 

バッシュ

スマッシュ

 

 剣身が通り抜けると魔物は実体を維持できなくなり、空気に溶けるように消えていく。

 

 オッケー! かなりの威力だ!

 

 そのままの勢いで、次々と始末していった。

 

 

 

「さすがご主人様! 五十三階層の魔物も簡単に片付けてしまわれました! 本当にすごいです!」

 

 戦闘が終了すると通路にロクサーヌの声が響き渡る。

 

 はいはい。さすごしゅ、ありがとさん。まあ、ただ後ろから攻撃してただけなんですけど。

 

 ベスタもアスカロンを見ながら感心したように呟いた。

 

「これがアスカロンの力なのですね。本当にすごい剣です」

 

 ふふん。せやろ? これがスキル六個のユニーク装備の力なんやで?

 

 しかし、納得がいかない表情でミリアが声を上げる。

 

「えー? そうかなぁ? 正直あんまり貫通のオリハルコン剣との差が分からなかったよ?」

 

 その言葉にセリーも同意を示す。

 

「そうですね。おそらくダブルアタックを使えば、貫通のオリハルコン剣でも同じことができたのではないでしょうか」

 

 ここしばらく雑魚戦で剣を使っていなかったから、実際のところよく分からない。

 それにボス戦ではドラウプニルを装備していたため、攻撃力五倍のスキルが乗っていたし比較も難しい。

 貫通のオリハルコン剣を手放した今となっては、確かめることは不可能だ。

 

 ……まあいいさ。ユニーク装備なんだから高性能に違いない。

 それにギルド神殿が手に入れば、制限を解除して基本性能を高めることが出来るはず。

 あまり気にしないようにしよう。

 

 それじゃあ、次の実験だ。

 

「次は攻撃スキルを使わずに戦ってみよう。倒すまでに時間がかかり、君たちに負担をかけてしまうがよろしく頼む」

 

 その言葉を聞くとロクサーヌは不敵な笑みを浮かべる。

 

「たとえスキルを使用していなくても、ご主人様は桁外れな速さで魔物を殲滅なさいます。その間、引き付けておくことなど造作もありません」

 

 他の三人も好戦的な表情で大きく頷いた。

 本当に頼もしい娘さんたちだこと。

 

「では、次の魔物がいる場所へ案内してくれ」

「かしこまりました」

 

 匂いを嗅ぎながら歩きだしたロクサーヌの後に続く。

 

 

 

 実験の結果、攻撃スキルなしで魔物を倒すまでに必要な攻撃回数は七回か八回。

 四人も攻撃を入れているためブレはあるが、概ね八回と考えていいはず。

 そして属性付与を追加すると六、七回になり、弱点を突いた場合は五、六回で片が付く。

 攻撃回数を最大で二十五パーセントも削減していると考えれば、かなりの神スキルだ。

 これに攻撃スキルを組み合わせれば、一体どのくらいの影響を及ぼすのだろう。

 ビビりの俺だが、いまはボス戦が待ち遠しい。

 

 次にアクセサリーを攻撃力二倍のよりしろのイアリングから、五倍のドラウプニルに変更したところ、四回で魔物が倒れた。

 それに加え、彼女たちが攻撃を入れた魔物に属性付与を使用して弱点を突くと、ワンパンすら可能。

 もっとも、裏を返せば俺が討ち漏らした魔物に誰かが攻撃を加えた場合、ラストアタックを取られてしまうことを意味する。

 俺が魔物を倒さなければ獲得経験値上昇や、結晶化促進のスキルが乗らないため、もったいないと思わなくもない。

 しかし、今後も雑魚戦で剣を使うことはないだろうから、それほど問題にはならないはずだ。

 

 最後に比較のためデュランダルで戦闘を行ったところ、三回から四回で魔物が倒れることが確認できた。

 属性付与を使わない場合、アスカロンは確実に四回の攻撃が必要だったため、若干ではあるもののデュランダルの方が基礎攻撃力が高い、もしくはレベル補正無視のスキルの影響があると思われる。

 でもまあ、そこまで大きな差がない上に、属性付与を用いれば威力は逆転するのだ。

 汎用性という意味ではデュランダルに譲るものの、やはりアスカロンは紛れもなくぶっ壊れ武器。

 今後、相棒として長く付き合うことになるだろう。

 

 仲買人たちよ。君らのおかげでとんでもない装備品が手に入ったぞ。

 担当を代えるかもしれないという案は撤回しておこう。

 ルーク、今後も仲良くやっていこうじゃないか。

 俺のことを思う存分侮っていいから、この調子でガンガン貴重な装備品を持ち込んでくれたまえ。期待しているからな。

 

 でもまあ、スキル結晶の件については話が別だから、釘は刺させてもらうけどね。

 

 

 

 検証が終わると、彼女たちは興奮で頬を紅潮させながらアスカロンに視線を注いでいる。

 

「さすが固有名を持つ装備品! すさまじい性能です!」

 

 セリーの言葉に続いて、ミリアが両手でオッケーサインを作り、こちらへ突き出した。

 

「あの取引はとってもお得なものでした! 儲かっちゃいましたね!」

 

 ……この世界でもそれがお金をあらわすサインなのか。

 可愛いけど、そのジェスチャーどうなんだろう?

 

 ベスタも柔らかな笑みを浮かべながら口を開く。

 

「最初に話を聞いた時にはどうなることかと心配しましたが、アスカロンを得られたのでよかったと思います。これもセリーさんのおかげですね」

「ええ。本当にセリーは素晴らしい働きをしました」

 

 ロクサーヌがその言葉に同意を示すと、セリーは恥ずかしそうに顔を伏せた。

 

 めちゃくちゃ良い雰囲気だなぁ。『いせはれ!』は今日も大好評オンエアー中らしい。

 ご主人様も仲間に入れてほしいでござるよ。

 

 

 

 その後はいつもの探索だ。

 トリプルスペルの圧倒的な火力により、一切の慈悲なく魔物を薙ぎ払っていく。

 

 うん。やっぱこっちの方が体に馴染むな。

 やはり俺の本質はスペルキャスター。

 オーバードライビングと反則級の武器という下駄を履いているおかげで何とか形になってはいるが、おそらく近接戦闘の適性はそれほど高くない。

 

 魔物の攻撃絶対かわすマンのロクサーヌに、そんな彼女についていけるミリア。腕力と防御力に優れたセリーや、それをはるかに上回るフィジカルモンスターのベスタ。

 彼女たちを基準とした場合、誰であっても適性がないという判定になるんだろうけどさ。

 

 とはいえ、ボス戦は近接戦闘の方が効率的なため、適性の有無なんて言ってられない。

 少しでも戦闘のセンスを磨くため、日々の修業に挑む所存である。

 

 

 

「ご主人様、もうすぐパン屋が開く時間です。クーラタルに戻る前に、バトルマーメイドに挑みましょう」

 

 やがて、いつものようにロクサーヌからタイムアップを告げられた。

 

「ハルバーの迷宮最上階での戦闘を想定して訓練を行いましょう。ロクサーヌさん、ボスの攻撃を二十分間避け続けてもらえますか?」

「ええ。任せてください」

 

 セリーの要望に対し、ロクサーヌは自信満々で頷きを返す。

 

「お姉ちゃんなら余裕です」

「はい。ロクサーヌさんが攻撃を食らうはずありません」

 

 ミリアとベスタも信頼のこもった眼差しで彼女を見つめていた。

 

 うちの戦女神は人望があるなぁ。

 俺にしたって、彼女が攻撃を受けるところはまったく想像できない。

 

「ロクサーヌになら安心して任せられる。よろしく頼むな」

 

 そう言った瞬間、ロクサーヌの表情がまばゆいばかりに輝き出す。

 

「はい! 必ずやご主人様のご期待に応えてご覧に入れます!」

 

 彼女は両手をグッと握り、大きな声で答えた。

 

 強い、強い。圧が強いって。

 

 鼻息の荒い彼女をなだめつつ、ワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

ベリッサ南未開地域の迷宮五十二階層

ボス部屋

 

 

 

 

 

 俺たち四人の視線の先では、ヴァルキリーと人魚が激しく空中を動き回っている。

 

 ……めちゃくちゃ楽しそうに戦ってんなぁ。

 

 こちらの戦闘はアスカロンの性能が完全に発揮され、一回のオーバードライビング中にすべてが終了してしまった。

 アスカロンの防御力無視、剛腕のミスリル手甲の腕力二倍、ドラウプニルの攻撃力五倍。それに加え、オーバードライビングには攻撃力が上昇する効果がある。

 さらに遊び人のスキルにバッシュを設定した上で、バッシュ二発とスマッシュ、さらにバトルマーメイドの弱点である土属性の岩砕剣によるクアドラプルアタック。

 これらの前ではたとえ五十二階層のボスといえどもひとたまりもない。

 我ながらとんでもない力を手に入れたもんだ。

 

 そんなことを考えながらロクサーヌの様子を見守っていると、セリーがぽつりと声を漏らす。

 

「ご主人様もロクサーヌさんも規格外すぎます……。正直、私のような凡人ではついていけません……」

「ほんとにそうです。ちょっと普通じゃないですよねー」

「お姉ちゃんもセリーさんもすごいですけど、ご主人様とロクサーヌさんは、えっと、なんと言うか、言葉にならない感じです……」

 

 ちょっと、ちょっと、君たち。違うから。素の能力であれが可能なロクサーヌと、キャラクター再設定込みの俺は全然違うから。

 あの娘と俺を一緒にしないでおくれ。

 

 ツッコミを入れたいのをグッと堪え、戦闘を見守り続ける。

 

 

 

 ロクサーヌは危なげなく攻撃を回避し続けると、二十分が経過したところで俺たちの前へバトルマーメイドを叩き落とした。

 もちろんその後は全員で取り囲んで袋叩きである。

 

 ……いつも同じことをしているとはいえ、相手が美しい人魚なせいでちょっとアレな光景になってるよなぁ。

 

 情け容赦なく殲滅したところで、楽しい楽しいドロップアイテムの回収。

 ラブローションは大きめのビー玉サイズなため、まだまだ数が必要になる。

 だが、これでヌルヌルローションプレイに近づいたことは確かだ。

 商人ギルドでの予定を終えたら最上階ボスの予行演習を兼ねて、ローション集めに精を出すべきなのかもしれない。

 ヌルヌルローションプレイは昔からの憧れで、その夢がもう手が届くところまで来ているのだ。

 いつやるか? いまでしょ!

 

 夢を目指して決意を新たにしていると視線を感じ、そちらへ顔を向ける。

 

 ……この娘、なんちゅう目で人を見るんだ。

 

 セリーは呆れ果てたような顔で大きなため息を吐いていた。

 そして、ロクサーヌも微笑みながら口を開く。

 

「今回は誰も攻撃を食らいませんでした。これならバトルマーメイドとの戦闘を繰り返す必要はないでしょう」

 

 何……だと……?

 

「それはいかん! 最上階のボスなのだ、慎重に対策を講じる必要がある! そのためには繰り返し戦闘を行い、相手の動きを頭に叩き込まなければ!」

 

 しかし、俺の深謀遠慮な計画に対し、ミリアとベスタも声を上げる。

 

「えー? でも、全然問題ありませんでしたよー?」

「お姉ちゃんの言う通りです。片方をロクサーヌさんが完璧に抑えてくれるので、これ以上訓練をする必要はないと思います」

 

 いかん。このままでは押し切られる。

 頑是ない娘たちに、リスクマネジメントの大切さを叩きこまねば。

 

 四対一の状況に追い込まれたものの、二十五年間の社会人経験を総動員し、安全衛生の大切さや、事故を防止するための声かけ、ヒヤリハット対策、指差し呼称を用いたヒューマンエラー回避についてを懇々と語って聞かせる。

 いろいろな事例を交えて講義を行っていたところ、セリーが俺の言葉を遮った。

 

「分かりました。私たちの命を預かるご主人様の責任感がよく理解できました。ハルバーの迷宮を討伐するまではバトルマーメイドとの訓練を行いますので、お話はその辺で……」

 

 ん? おお! 安全確保に関する俺の懸念について理解してもらえたのか!

 そうだよな。言葉を用いれば人と人は分かり合える。今回は素晴らしい気付きを得られたな。

 今後も問題が起きたら話し合いで解決することにしよう。

 

 帰り支度を整えたら、なぜだか疲れたような顔をしている四人と共に、ワープゲートへ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

遊び人Lv63 勇者Lv54 冒険者Lv59 魔道士Lv58 武器商人Lv41 僧侶Lv39

装備 カッカラ 倹約のダマスカス鋼盾 身代わりの硬革帽子 頑強のアルバ 剛腕のミスリル手甲 オラクルビットローファー よりしろのイアリング

 

BP振分 残BP:29

キャラクター再設定:1

必要経験値二十分の一:63

シックススジョブ:31

詠唱省略:3

ワープ:1

鑑定:1

ジョブ設定:1

MP回復速度十倍:31

 

所持金:3,540,513ナール

 

夏の13日目

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