異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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030 ポトフ

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 家の中に入り、サンダルに履き替えて靴の汚れを落とし、一旦アイテムボックスに収める。

 ついでにその場で全ての防具を外し、こちらもアイテムボックスへ。

 

 リビングでロクサーヌと共に装備品の手入れを行う。

 今日は武器を使っていないので防具の整備のみだ。

 

 彼女の攻撃は非装備品の木剣の上、レベル補正あり、さらに防具を着けていたというのにめちゃくちゃ痛かった。

 もし着けていなかったらあんなものでは済まなかっただろう。

 こいつらには本当に助けられた。感謝を込め丁寧に手入れを行おう。

 

 あれだけ痛かったが俺に対するロクサーヌの攻撃はレベル補正の影響を受けて軽減されていただろう。

 しかし、こちらの攻撃は一切軽減されることなく彼女へダメージを与えてしまったはずだ。

 安全性を高めるためにも装備の買い替えをしなくては……。

 動きを阻害しないような防具で通常の店売りだと硬革シリーズになるだろうか。

 

 多少もったいないような気もするが掘り出し物がすぐに見つからない以上、妥協もやむなしだな。

 

 

 

 手入れを終えたところで声をかける。

 

「ロクサーヌ、俺はキッチンで作業をしているから何かあったら声をかけてくれ」

「はい。私は防具を部屋に置いたら掃除の続きをしたいと思います」

「ありがとう。掃除をロクサーヌだけに任せて申し訳ないがよろしく頼む」

「はい。お任せください、ご主人様」

 

 

 

 エントランスに向かっていく彼女と別れキッチンへ移動する。

 

 ロクサーヌが丹精込めて作ったポトフが入っているであろう鍋からは食欲をそそる良い匂いが漂っている。

 夕食がめちゃくちゃ楽しみだ。

 彼女の手料理が食べられるなんて、本当にこの世界に来てよかった。

 

 

 

 よし。それじゃあ石鹸作りを始めていきますか。

 

 ミチオはシェルパウダーとコイチの実のふすまで石鹸を作っていたが、とりあえずシェルパウダーとオリーブオイルで挑戦してみよう。

 確かパレスチナには重曹とオリーブオイル、そして水だけで作られている伝統的な石鹸があったはずだ。

 それを試してみて、どうしても上手くいかなかったら原作通りにやってみよう。

 

 

 

 最初は少量で試した方がいいよな?

 小鍋に水を入れ五徳に設置し、その下に薪を置く。

 そして、薪を一本持ってバスルームへ行き、ファイヤーウォールで火をつけて再びキッチンに戻って火を移す。

 

 さて、沸騰するまではミルでシェルパウダーを削るか。

 

 

 

 ひたすら無心でガリガリやっているうちに鍋の水はグツグツ煮えている。

 

 シェルパウダーはどのくらい入れればいいんだろう?

 

 ……とりあえず溶けなくなるまで入れてみるか。

 

 なんか鍋にめちゃくちゃ粉っぽい物が付いていくんだが、これでいいもんなのか?

 うーん……。よく分からん。とりあえずそのままオリーブオイルを入れてみよう。

 

 うわっ! なんか、黄色い油の中に白いものがパチパチしてて、かき揚げ作ってるみたいになってる!

 本当に大丈夫かこれ!?

 

 もう後には引けない。水気が飛ぶまでひたすらかき混ぜてみよう。

 

 

 

 出来上がったのは黄色い油まみれの白いダマ状になった粉っぽい物体。いや、なんだこれ?

 うん。試すまでもない。完全に失敗だわ。

 

 オリーブオイル石鹸は一旦保留だ。

 部屋に戻って一度原作を読み返してみよう。

 

 

 

 なるほどな。おそらくシェルパウダーの入れすぎが原因か。

 泡が出るどころか最初から端の方に粉が浮き出てたもんな。

 

 原作の描写通りに再チャレンジだ。

 

 

 

 お湯が沸いた小鍋にシェルパウダーを少し入れ、泡が出るのを待とう。

 その泡が少なくなってきたらコイチの実のふすまを大量に入れ、ひたすらかき混ぜる。

 

 

 

 よし。今度は水気が飛んで徐々にドロドロしてきた。

 しかしこれ、めちゃくちゃかき混ぜるのが大変だな。

 

 そろそろ大丈夫か。小鍋の中に入っている褐色でドロドロなものを調理バットに流し込む。

 

 これ成功してんのかな?

 

 うーん……。まあ、乾燥させてみないと分からないか。使ってみてのお楽しみだな。

 

 あ! 違うわ! ジョブを確認すればいいんだ!

 

 ジョブ設定を開き、フィフスジョブの僧侶を変更しようとしたところバッチリそれが現れた。

 

錬金術師Lv1

効果 知力小上昇 器用微上昇

スキル メッキ

 

 よっしゃー! 錬金術師ゲットだぜ!

 メッキは超重要な防御スキルだ。余裕ができるまでは常にかかっている状態にしておきたい。

 

 そして、錬金術師を取得しているということは、どうやら石鹸も成功しているみたいだな。

 とりあえずバットに入れているものは二階の物置にでも置いておくか。

 

 

 

 よし。ふすまの石鹸はおそらくこれでいいだろう。

 シェルパウダーの量が多すぎたということが分かったんだ。

 今度はコイチの実のふすまとオリーブオイル半々で挑んでみよう。

 

 再び小鍋に水を張り火にかけ沸騰したところでシェルパウダーを入れる。

 先ほどと同じように泡が出てきたので、それが少なくなったタイミングでコイチの実のふすまとオリーブオイルを投下し、あとはひたすらかき混ぜる。

 

 徐々に水分が飛び、橙色っぽくドロドロしてきた。

 連続での撹拌作業に腕はもうパンパンだ。

 

 ふすま石鹸と同じくらいにはなっている。これくらいで十分だろう。

 調理バットは一つしかないため、こちらは鍋に入ったままで乾燥させよう。

 

 

 

 夕方にはまだ早いが食事にするか。

 今日は長い話があるからな……。

 

 ロクサーヌを探そうと考えるとパーティー編成の効果で今いる場所を感じられた。

 すげーなこれ。

 

 彼女もキッチンに向かっているようだし俺も行こう。

 

 

 

 キッチンに入ると俺が放りっぱなしだったミルやシェルパウダー、オリーブオイルなどを片付けてくれている。

 

「すまない。作ったものを物置に持っていったところだったんだ。片付けてくれてありがとう」

 

 感謝の言葉を伝えると彼女は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「いえ。このくらいなんでもありません。ご主人様、何を作っていたのですか?」

 

 そして、疑問の言葉を口にした。

 

「ああ。これは石鹸を作っていたのだ」

「え! 石鹸ですか? それは普通の家庭で作れるようなものなのですか?」

「乾燥させる時間が必要だろうが、おそらく問題ないはずだ」

 

 錬金術師を獲得していたから大丈夫だよな?

 

「すごいです! ご主人様!」

「出来上がったら清潔を保つため一緒に使おう」

「私も使っていいのですか?」

「もちろんだ。常にそばにいるロクサーヌにも清潔であってほしいからな」

「ありがとうございます。ご主人様」

 

 ふっふっふー。ロクサーヌくん。一緒に石鹸プレイを楽しもうではないか。

 

 

 

「ロクサーヌ、夕方にはだいぶ早いが夕食にしよう。食事のあとは色々なことについて話をしておきたい」

「はい。ご主人様のことを色々教えてくださいね」

 

 彼女は嬉しそうに俺を見つめている。

 うん。きっと大丈夫だ。

 

 

 

「ご主人様、温めなおすので火をお願いしてもよろしいでしょうか」

「ああ。持ってくるから少し待っていてくれ」

 

 彼女のお願いに応えてバスルームで薪に火をつけてくる。

 

「では、温めなおしますので、ご主人様はあちらの部屋で椅子に腰かけてお待ちください」

「何か手伝うことはないか?」

「大丈夫です。お任せください」

「それじゃあ頼むな」

 

 

 

 ダイニングに移動し椅子に腰かける。

 先ほど錬金術師を得たんだ。待っている時間でジョブ設定を考え直すか。

 

 今はフィフスジョブで探索者、英雄、魔法使い、戦士、僧侶を設定している。

 これをシックススジョブにするにはボーナスポイントが心もとないんだよなぁ。

 

 キャラクター再設定、必要経験値十分の一、鑑定、詠唱省略は外すことができない。

 また、獲得経験値二十倍とデュランダルに振る分の63ポイントも確保しておく必要がある。

 

 ジョブ設定と結晶化促進四倍、それから迷宮内に移動した後にワープを外せば5ポイント捻出できるから、シックススジョブまであと11ポイント。

 探索者のレベルが32まで上がれば設定可能だ。

 結晶化促進六十四倍を用いたボスマラソンもレベル30からだった。

 そのあたりを迷宮探索における当面の目標にしよう。

 

 現状はフィフスジョブでやり繰りしていくしかない。

 現在、設定しているジョブの中では探索者、英雄、魔法使いは絶対に外すことが出来ない。

 となると戦士か僧侶となるんだが……。

 

 

 

 うーん……。いっそ割り切るか?

 

 良い防具を購入し守りを固めて被ダメを減らし、傷薬を買い込み戦闘中は道具での回復を行う。

 そして、攻撃を食らったら戦闘終了後にジョブを変更して手当で回復し、メッキをかけなおす。

 これを行うことで商人をフィフスジョブに設定することが可能となり、遊び人の早期取得につながる。

 

 そもそも、修行のために防具の新調を検討していたところだ。渡りに船だろう。

 

 

 

 よし。これでいこう。

 戦闘に慣れるまでは1確できる敵のみを相手にするつもりだから、これを実行しても安全マージンは十分確保できているはずだ。

 

 明日、冒険者ギルドで傷薬を買い込んでから、もう一度クーラタルと帝都の防具屋を回ってみるか。

 ついでに武器屋もだな。もしかしたら掘り出し物があるかもしれない。

 

 とりあえずフィフスジョブを僧侶から商人に付け替えておこう。

 

 

 

 そうこうしているうちに食器を持ってロクサーヌが入ってきた。

 

「できあがったのか。それじゃあ俺も配膳を手伝おう」

「大丈夫です。すぐに終わりますのでご主人様は座っていてください」

 

 彼女は食器を並べてパンの入ったバスケットと大皿に入った肉野菜炒めを置き、ダイニングテーブルの中央に鍋敷きを用意した。

 そこにポトフの入った鍋を据えると俺の向かいに腰を下ろし、こちらを見つめている。

 

 ん? なに? どうしたん?

 

「ご主人様、最初にスープを取り分けるのはご主人様の仕事となっています。よろしくお願いします」

 

 あー。確か、そういうのあったな。

 セリーが初めて来たときにミチオはロクサーヌより先にセリーにボルシチを取り分けようとして、彼女の圧力に晒されてたわ。

 

「うむ。では、取り分ける」

 

 ここでレディーファーストとか言ってロクサーヌを先にしたらえらいことになるだろうな。

 さすがに目に見える地雷を踏む気にはなれん。

 先に俺の分をよそってから彼女の分をよそい手渡す。

 

 よく分からないが儀礼的な意味があるのだろう。

 

 

 

「それじゃあ食べるとしよう」

「はい。いただきます」

 

 この世界では普通にいただきますもごちそうさまも使われているため、異世界小説あるあるの『なんですかその言葉』『食材となった命と作ってくれた人に対する感謝を示す言葉だ』からの『とても良い言葉ですね。ご主人様素敵です』の黄金パターンが使えない。

 

 というか一人暮らしが長いせいで、俺自身いただきますもごちそうさまも全然言ってなかったわ。

 今だって普通に言うのを忘れてたし。

 

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 今はこのロクサーヌが作ってくれた料理を楽しもう。

 

 まずは彼女自慢のポトフだ。

 肉をスプーンで掬い口に運ぶ。

 

 うっま。なんだこれ。びっくりするほど美味いんだが。

 牛骨、テール、それからドロップ品を含む色々な部位の肉を買っていたが、それぞれから旨みが出ているのだろう。スープも抜群に美味い。

 じゃがいも、玉ねぎ、ニンジンもバッチリ味が染みておりこちらも最高だ。

 

 食材の力も大きいのだろうがこの味に仕上げたロクサーヌも本当にたいしたものだわ。

 

「これはすごい。間違いなく今まで食べたポトフの中で一番美味い。ロクサーヌは料理まで得意なのだな」

「ありがとうございます。ご主人様に喜んでいただけてとても嬉しいです」

 

 肉野菜炒めを大皿から取り食べてみるが、こっちも相当美味いぞ。

 このお嬢さんは本当にすごいなぁ。

 

 

 

 めちゃくちゃ美味かったがさすがに鍋いっぱいのポトフを二人では食いきれなかった。

 

「ごちそうさま。本当に美味かった。ロクサーヌ、ありがとう」

「ご主人様、こちらこそありがとうございます。残った分は明日の朝食にしますね」

 

 一晩寝かせたカレーはめちゃくちゃ美味いがポトフもそうなんだろうか? 楽しみにしていよう。

 

「片付けが終わったら歯磨きをして体を洗おう」

「え? 体を洗うのですか?」

 

 バスタブこそないものの、風呂用として使う水がめを二つ準備している。

 これにウォーターウォールとファイヤーボールを使えばお湯を作れる。

 まだ固まっていないし、パッチテストもしていないため石鹸を使うことはできないが、四日ぶりにお湯で体を流せる! しかも、ロクサーヌも一緒にだ!

 

「魔法を使い水がめにお湯を溜めて、それを使う」

「とても贅沢な気がするのですが……」

 

 なにをおっしゃるウサギさん。もといオオカミさん。

 バスタブが届いたらお湯で体を洗うだけじゃなくお湯に浸かるんだぞ。

 驚かせたいから今は黙っているがな。

 

「元手がかかっていないんだ。贅沢なんてことはないので遠慮なくお湯を使ってくれ」

「ご主人様、ありがとうございます」

 

 鍋や食器をキッチンに持っていき洗い物を済ませ、歯磨き道具と小さいスプーン、それから着替えとタオルを持ってバスルームに移動する。

 

 

 

 バスルームに置いてある二つの水がめにウォーターウォールで水を貯め、片方にファイヤーボールを放つ。

 

 うん。ぬるいがちゃんと加熱されている。もう一発だな。

 

 続けてファイヤーボールを撃ち込むと今度は手を入れられないくらいの熱湯だ。

 もう片方の水がめから水を足し調整する。

 

 よし! バッチリ!

 

 

 

 それじゃあ、まずは歯磨きからだ。

 

「ロクサーヌ、歯磨き粉を用意したので今後はこれを使って、歯の手入れをしよう」

「そういったものがあると聞いたことはあったのですが、安いものではないので使うのは初めてです。ご主人様、ありがとうございます」

 

 ロクサーヌはニコニコと嬉しそうにしている。

 うむ。よきかなよきかな。歯は大切にしなければいけない。

 

「しかし、研磨効果が高すぎるので、毎日使うと歯を痛めてしまうだろう。二日おきで朝に使用する」

「はい」

「そして、歯磨きに使用しないときはうがい薬として使おう。そうすることで口内を清潔に保っておけるだろうからな」

「本当にご主人様は綺麗好きですね」

 

 歯医者なんていない世界なんだ。歯のケアを欠かすわけにはいかない。

 一緒にハチマルニイマル運動に勤しもうではないか。

 

 それとも万能薬系の薬で虫歯も治るんだろうか?

 

 

 

 シュクレの枝で歯を磨いていく。

 しかしこれ、もうちょっと使いやすいものはないもんかなぁ。

 L字型じゃないと歯の裏側を磨くのが大変だ。

 

 貴族用とかで歯ブラシが作られたりしてないだろうか?

 地球では宋の時代に豚の毛で作られた歯ブラシが作られていたらしいし、この世界にあってもおかしくないよな?

 貴族向けの雑貨を扱っているような店を探して聞いてみよう。

 

 

 

 そして、お待ちかねの歯磨き粉の出番だ。

 今回はうがい薬としての使用だが、ミントフレーバーのおかげでようやく歯磨きをした気になれる。

 

 湯桶に入れておいたフリーザーバッグを取り出し、小匙で歯磨き粉を口に入れ水を含んでぐちゅぐちゅとうがいを行う。

 ミントの爽快感を味わい、ようやく歯を磨いた気になった。

 俺は完全に歯磨きイコールミントフレーバーと脳内に刷り込まれている。今後、こいつを手放すことはできない。

 繰り返し何度もうがいを行う。

 

 

 

「それじゃあ次はロクサーヌの番だな。俺がやったような感じで試してみるといい」

「……あの、ご主人様。その入れ物はなんでしょうか? 一度破れたのになぜ元に戻すことができるのですか? そのようなものは見たことも聞いたこともありません」

 

 あっ! 全然意識してなかったがこれってものすごいテクノロジーの塊だ。

 彼女は驚いた表情を浮かべてそれを凝視している。

 

「故郷から持ってきた品なのだがこれについて説明すると俺の出自に関わってくる。詳しいことはこのあと話をするときにな」

「はい」

 

 ひとまず納得したのか彼女はスプーンを受け取ると、俺が開いたフリーザーバッグから歯磨き粉を取って口に含みうがいを始めた。

 

 

 

「ご主人様! これはすごいです! こんなに口の中がすっきりしたのは初めてです!」

 

 おお。ロクサーヌもハマってくれたようだ。

 

「これから一緒に歯の手入れをしていこう」

「はい!」

 

 

 

 それじゃあ、体を洗っていくか。

 

「では、ロクサーヌ。体を洗うから服を脱ごう」

「はい」

 

 彼女は頭のリボンを外し、服、ズボンを一枚一枚脱いでいく。

 シャツに手をかけ一気に脱ぎ去ると豊かに実る果実がたゆんと揺れた。

 

 なんてすごいんだ。心臓が早鐘のように打ち鳴らされどんどん興奮が高まる。

 昨日、一昨日と見ていたのに全然慣れることができない。

 

 そして、下着をゆっくり脱ぐと左手で胸部、右手で大切なところを覆って隠してしまった。

 

「あの、ご主人様。そんなにじっと見られると恥ずかしいです……」

「あ、ああ。すまない。ロクサーヌのあまりの美しさに見惚れていた」

 

 彼女をガン見していたせいで服を脱いでいなかったため大急ぎで服を脱ぐ。

 

 

 

 壁際に置いてあるスツールを水がめの近くに置き声をかけた。

 

「まずは俺がロクサーヌを洗うからこれに座ってくれ」

「あの、ご主人様を先にお洗いした方がいいのではないでしょうか」

「いや。俺がするのを覚えてあとで同じように洗ってもらえるか」

「はい。お任せください」

 

 

 

 水がめから桶でお湯を汲みゆっくりかけていくと、ロクサーヌから気持ちよさそうな声が漏れる。

 やばいやばい。この声でイチモツの硬度が増してしまう。

 

「お湯を浴びたのは初めてですがこんなに気持ちがいいものなのですね」

 

 そうだろそうだろ。バスタブが完成するともっとすごいものが味わえるんだぞ?

 

「それじゃあ、体を洗っていく」

「はい、お願いします」

 

 お湯で湿らせたタオルを手に取り彼女の体を丹念に磨き上げていく。

 今日はこのあと真剣な話をしなければいけない。

 そしてなにより、受け入れてもらえたならお互いの初めてを交換する夜となるだろう。

 ロクサーヌの体を堪能したいという欲望を抑え無心で拭き終えた。

 

「今度はご主人様の番ですね。座っていただけますか」

 

 彼女は恥ずかしそうな笑みを浮かべながら口を開く。

 

「よろしく頼む」

 

 ロクサーヌもこのあと本番が控えていることを意識しているのだろう。

 昨日とは違い乳首攻めをしてくるようなことはなく、粛々と俺の体を拭いていった。

 

 お互いの体を拭き終わると、水がめに頭を突っ込み、髪を梳いていく。

 場所を代わると彼女も同じようにしている。

 

 そして、ロクサーヌが洗濯を済ませると、もう一度お湯を浴びて体を温めた。

 最後にタオルで体を拭きジョブを入れ替えて髪と頭皮に手当てをかけ、再びジョブを戻してバスルームをあとにする。

 

 

 

 バスルームからリビングに移動するとロクサーヌをソファーに座らせた。

 

「これから俺のことについて話をしたいと思うが、分かりやすいよう故郷から持ってきたものを準備してくるので少し待っていてもらえるか」

「はい」

 

 緊張したような表情のロクサーヌに見送られながらリビングを後にする。

 

 

 自室に着くと窓から差し込む光はすっかりオレンジに染まっていた。

 夕暮れ時のもの悲しさにあてられたのか、受け入れてもらえないのではないかという不安が、どんどん大きくなってくる。

 

 

 

 鍵のかかるチェストを開き日本から持ち込んだリュックに荷物を詰めることにした。

 

 ファイリング済みのパイプファイルと書籍版十二冊、それからコミック版九冊。

 

 書籍版やコミック版の表紙を飾るロクサーヌが目に留まる。

 彼女はこれを自分だと認識するんだろうか? 認識した場合、自己同一性に対する不安を招いてしまわないか? そして、ミチオを見てそちらの方がよかったと思われないだろうか?

 

 いや。迷うな。きっと大丈夫だ。ロクサーヌなら受け入れてくれる。

 不安を振り払い続きを行う。

 

 フリーザーバッグに入った文具一式、泡立て器、書籍版とコミック版を入れていた普通サイズのフリーザーバッグが二十枚。一枚は歯磨き粉入れにしちゃったしな。

 それからパイプファイルを入れていた特大サイズが一枚。

 あとはおにぎりを包んでいたラップと空きペットボトルが二本か。

 寝室に置いてあるプラスチック手鏡と爪切りは以前見せているし持っていかなくていいだろう。

 

 それからクローゼットを開きジャンパー、ポロシャツ、ジーパン、ベルト、パンツ、ウォーキングシューズを入れる。

 

 

 

 ……よし。これで準備完了だ。

 さあ、ロクサーヌに打ち明けるとしよう。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv21 英雄Lv18 魔法使いLv21 戦士Lv18 商人Lv2

装備 サンダル

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

鑑定:1

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

ワープ:1

ジョブ設定:1

MP回復速度二十倍:63

結晶化促進四倍:3

 

所持金:386,357ナール

 

春の4日目

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