異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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305 ピンクアンバー

 

 

 

 

 

帝都

高級服屋

 

 

 

 

 

 クーラタルの商人ギルドから高級服屋に戻ったものの、当然のように彼女たちの姿は見当たらない。

 カイゼル髭の紳士店員に尋ねたところ、購入するものは決まったようだが別室でルティナのドレスやエプロン、それにベスタのセクシーランジェリーを注文中とのことだ。

 他にもベスタのドレスの進捗確認もあるだろう。これは長丁場になりそうですな。

 

 うーん……。ルティナも加入したことだし、今後の戦術確認でもしようかね。

 

 すっかりおなじみとなった壁際の椅子に腰を下ろし、キャラクター再設定を開く。

 

 

 

 キャラクター再設定とジョブ設定を見ながら、ああでもない、こうでもないと頭を悩ませていると不意に奥部屋の扉が開いた。

 そして、華やかな声と共に愛しい妻たちが笑みを浮かべながら、こちらに向かってくる。

 

 俺の前まで来たところで、金髪と長い耳を持つ妖精のようなお嬢さんが勢い込んで喋り出す。

 

「アユム様! ベスタ姉様のドレスを拝見させていただいたのですが、とても素晴らしいデザインで感心してしまいました! 自宅へ戻ったらロクサーヌ姉様たちのドレスも拝見させていただけるそうなのです!」

 

 え、あ、うん。そうなんだ……。

 

 呆気に取られていると、妖精姫はテンション高くそのまま言葉を続けた。

 

「わたくしのドレスも細部にこだわって注文いたしましたので、間違いのない逸品となることでしょう。早くアユム様にご覧いただきたいです!」

 

 彼女はフンスとばかりに両手を握り締める。

 

 めちゃくちゃ可愛い娘だなぁ。

 辛いことがあったばかりなのに、こんな風に喜んでもらえて少し安心したぞ。

 

 きっとそれは彼女が薄情だとか割り切っているということではなく、父親の死についてはあらかじめ覚悟ができていたことに加え、最期が胸を張れるようなものだったことが大きいのだろう。

 他にも領地や領民を守らなくてはいけないという重圧や、それを果たせていないことによる処罰を受けるかもしれないという恐怖から解放されたことで、気持ちが楽になったというのもあるかもしれない。

 

 それは決して悪いことではないはずだ。

 

 そんなことを考えながら、彼女の言葉に答える。

 

「そうだな。ルティナとベスタのドレス姿を楽しみにしているぞ」

 

 その言葉を聞き、二人は顔を見合わせて笑みを交わし合う。

 

「はい! ご期待ください!」

「少し恥ずかしいですけど、早くドレス姿をご主人様に見ていただきたいです」

 

 春加入組の先輩たちは、夏加入組の様子を柔らかな表情で見守っていた。

 ほんと、みんな良い娘ばかりだわ。

 

 ルティナのテンションが落ち着いたところで支払いを行ったのだが、既製品が合計五万六千三百ナール。

 オーダー品についてはルティナのドレスが三十五万ナールにエプロンが千三百ナール。そしてベスタのキャミソールが三着で三千六百ナールにセクシーランジェリーが一着で三千三百ナール。

 総額にして四十一万四千五百ナール……。

 今日一日で六百万ナール以上の金を放出したことになる……。

 しかもこの後はコハクのネックレスも買いに行く予定だし、さらに出費が積み上がるだろう……。

 

 い、いや。このうちの三百五十万ナールは戻ってくるんだ。

 それにバラダム家の放出品をゲットしたときは千二百万ナール以上の金をブッパしている。あれに比べれば何でもない。

 あとあれだ、スヴェルは間違いなく五千万ナールを超えるであろう逸品だし、スキルが六つだと判明していれば一億を超える可能性だってある。

 そう。流動資産の残額だけに注目するのではなく、利益で考えるべきではないだろうか?

 この世界に来てから稼ぎ出した額は、日本なら最高税率が課せられるようなレベルなのは間違いない。

 トータルではプラス、確実にプラスなのだ。資金繰りにも余裕があるし、全然問題ない。ないったらない。

 

 動揺を悟られないようダンディな雰囲気を演出しつつ、頭の中でブラックカードを差し出すところをイメージしながらお髭の紳士に声をかける。

 

「では、会計を頼む」

 

 彼はその言葉に佇まいを整え、スッと頭を下げた。

 

「日頃より当店をご愛顧賜り、誠にありがとうございます。それではあちらの方でお願いいたします」

 

 

 

 白金貨が四枚にまで減ったのを見て、内心でため息を漏らす。

 

 ……残金が五百万ナールを割っちゃったかぁ。

 どんな言い訳をしようと俺の金の使い方は現実に即したものではなく、完全にゲームのそれだよなぁ。

 先ほども考えたようにセブンリーグブーツやアスカロン、それからスヴェルを入手しているため、利益や資産そのものはとんでもない額に膨れ上がっている。

 だが、同じような資金があったとして、日本円で同じことができただろうか?

 

 ……おそらく無理だろう。

 良いことなのか悪いことなのかは分からないが、俺のナールに対する金銭感覚は完全にブレーキがぶっ壊れている。

 

 ……まあいいさ。稼ぐ手段はいくらでもあるし、あまり悩まないようにしよう。

 

 結論が出たところで、彼女たちと共に店を後にした。

 

 

 

 

 

ボーデ

 

 

 

 

 

 ボーデの冒険者ギルドから外へ出ると、いつもと違って通りが賑やかで人が多い。

 

 ああ。今日は市が立つ日だったのか。

 

 買い物はベイルで市が開かれる日に設定していたため、こちらの方には全然足を運んでいなかった。

 

 そんなことを考えていると、セリーがこちらを見上げながら声を掛けてくる。

 

「ご主人様。せっかくの機会なので、ボーデの武器屋と防具屋を回ってみませんか?」

 

 その声は弾んでおり、表情もワクワクを隠せていない。

 

 そうだな。滅多にない機会なんだし、確認してみよう。

 

「よし。コハク商の所へ行く前に装備品の確認をしてみるか」

「以前サッシュを見つけたように、掘り出し物があるかもしれませんね」

 

 ロクサーヌの言葉に、ニコニコ笑顔のミリアも頷いた。

 

「そうですね。オリハルコンの剣とか、ミスリルの剣とかがあるかもしれません」

 

 さらにベスタも穏やかな声でそれに続く。

 

「もしかしたらスキルの付いた装備品があるかもしれません」

「そのようなものがあった場合、迷宮討伐の助けとなることでしょう」

 

 ルティナが頷きながらそう言うと、彼女たちはどんな装備品が欲しいかを話し始める。

 

 いやぁ……。オリハルコンの剣だの、ミスリルの剣だの、スキル付きの装備品だのはなかなか難しいんじゃないかなぁ。

 仮に店の者が仕入に成功したとしても、店頭に出すとは考えにくい。

 きっと貴族や富豪といった太客に回す気がするぞ。

 

 楽しそうに会話をしている娘さんたちにわざわざ水を差すこともないため、おとなしくその様子を鑑賞させてもらうことにした。

 

 

 

 まずは防具屋を覗いてみたのだが、やはりこれといったものはなく、空振りに終わる。

 

 まあそんなもんだよな。

 

 そう思っている俺とは違い、女性陣は武器屋こそ本命とばかりに意気込んでいた。

 

 実に元気な娘さんたちだこと。まるで全身から若さが迸っているようだ。

 中身が四十五のどこかのオジさんとは大違いである。

 

 一人だけアダルトチームに所属している俺は、ヤングチームの空気にあてられっぱなしですわ。

 

 ……クイズ年の差なんてだっけ? 久しぶりに思い出したわ。確かドラゴンボールの後にやってたよな?

 

 子供だった俺はヤングチームに感情移入しており、ヤングチームに出題される問題は解答者が生まれる前の出来事で知りようがないのに対し、アダルトチームに出題される問題は当時最先端の出来事でテレビを見ていれば知っていることばかりだろうと、その不公平さに憤っていたものだった。

 しかし、実際におっさんになると理解できたのだが、年齢を重ねると何かに興味を引かれることが少なくなるし、興味がないことは一切記憶に残らない。

 今あの番組をみるとアダルトチームに感情移入するんだろうなぁ。

 

 ……ん? いやいやいや。俺はぴちぴちの十八歳。きっとアダルトチームではなくヤングチームに思い入れを持つはず。きっとそう。きっと。

 

 どうでもいいことを考えながら、通りを進む。

 

 

 

 

 

ボーデ

武器屋

 

 

 

 

 

「おっ?」

 

 武器屋に入り、目につく端から鑑定をかけていたところ思わず声を漏らしてしまった。

 

言霊のダマスカス鋼ステッキ

スキル 魔法攻撃力上昇 空き

 

 おお。スキルの付いた武器があんじゃん。魔法攻撃力上昇が付いてるぞ。しかも空きスロットまである。

 

 もっとも、魔法攻撃力二倍ではなく上昇。さらにワンド系ならともかく、ステッキというのもいただけない。

 空きがあるってことは固定で出したのではなく、鍛冶師が作ったということなのだろうが、どうしてコボルトのスキル結晶と一緒に融合しなかったのかね?

 ぶっちゃけ、かなりもったいないぞ。

 これを作り出した鍛冶師は悔しさでのたうち回ったんじゃないか?

 

 価格の書かれた紙を確認したところ、十八万ナール。

 ひもろぎのスタッフがオークションで二十五万だったことを考えると、この価格はかなり低い。

 鳥のスキル結晶はヤギより高価だし、これがよりしろのダマスカス鋼ステッキだったら、白金貨は確実だっただろう。

 五千ちょっとのコボルトのスキル結晶を惜しんだばかりに、大損をこいてるよなぁ。

 

 まあ、これはスロットが確認できるからこその考えなのかもしれないどさ。

 普通の人ならコボルトと一緒に融合しなかったおかげで難易度が下がって融合に成功したとか、純粋に運が良かったと考えるのかも。

 

 セリーもしょっぱい顔で呟きを漏らす。

 

「言霊のダマスカス鋼ステッキですか……。魔法攻撃力二倍ではなく、魔法攻撃力上昇なのは残念ですね」

 

 ロクサーヌも頷きながら同意を示した。

 

「ええ。私たちには必要ありません」

 

 それを聞いたルティナは胸を張って答える。

 

「わたくしにはアユム様より賜ったひもろぎのスタッフがあるのです! あれを用いて迷宮討伐を成し遂げてご覧にいれます!」

 

 彼女たちの言葉に店主がジトッとした視線を向けてきた。

 

 あの、君たち? 店の商品を貶すような言葉は自重してもらえませんかね?

 

 しかし店主の目を気にしている俺とは違い、ミリアがからかうような口調でロクサーヌに話しかける。

 

「巫女ならステッキを使いますよね? それならお姉ちゃんが使うのはどうですか?」

 

 すると、彼女はその大きくて形の良い胸を誇らしげに張り、腰に刺してある剣をポンと叩く。

 

「私にはご主人様から賜った、この貫通のミセリコルデがあるのです。その程度の武器など持つ気にはなりません」

 

 こら。その程度とか言うんじゃありません。

 基本的には優しくて良い娘なんだけど、こういう部分も持ってるんだよなぁ。

 いやまあ、そんなところも可愛いけどね。

 

 セリー、ミリア、ルティナはさもありなんといった感じで頷いているが、ベスタだけは店主の方をうかがいおろおろしている。

 

 君はそのままこっちサイドでいてね?

 

 掘り出し物がないことを確認したところで、店主の視線を背中に感じながらその場を後にする。

 

 何の成果もなかったというのに、五人の足取りは軽やかだった。

 改めて自分たちが手にしている装備品の価値に感銘を受けたのかもしれない。

 ほんと、スキルスロットが確認できる鑑定はチートやで。

 

 

 

 

 

ボーデ

コハク商の店

 

 

 

 

 

 コハク商の店へ入ると、ネコミミが愛らしい娘さんとその祖父である店主が顔を上げた。

 そして俺たちに気が付き、にこやかな表情で椅子から立ち上がる。

 

「いらっしゃいませ。本日はどのよ――」

 

 だが、ルティナの姿を目にした瞬間、彼らの表情が一変した。

 

 うん? 動揺してる? 何だってんだ?

 

 気になったものの、彼らが落ち着くのを待つわけにもいかないため、こちらから声をかける。

 

「新しい仲間が加わったのでコハクのネックレスを購入するために寄らせてもらった。これまでのように彼女に似合いそうなのを選んでもらえるか?」

 

 その言葉に店主は笑顔を取り戻した。

 

「承知いたしました」

 

 彼は頷きながらそう答えると、ルティナへ視線を注ぐ。

 

 ……一見、平静を取り戻したように見えるけど、尻尾がめっちゃ膨らんでるぞ。

 それに、孫の方は完全に委縮してしまっている。

 

 なんでこんなに狼狽えてるんだ?

 

 釈然としないものを感じながら彼の様子をうかがっていると、視線をルティナの頭のてっぺんからつま先まで移動させ、もう一度視線を上げたかと思うと、今度は麗しいかんばせとデコルテラインを凝視していた。

 その目にいやらしさは微塵も含まれておらず、その眼光はまさに陶磁器を鑑定する古美術商のようだった。

 

 うーん……。商売の一環だと理解していても、なんかやだなぁ。

 俺のルティナをそんなに凝視しないでほしいんですけどぉ。

 

 もっとも、当の本人はまったく気にしている様子はなく、堂々としたものだ。

 まあ、この娘は伯爵令嬢だったわけだし、こういうことには慣れっこなのかもしれない。

 

 その様子を見て、うちのネコミミさんが彼女に話しかける。

 

「私もすごく良い物を選んでもらったからね。きっとルティナに似合うやつを薦めてくれるはずだよ」

 

 ベスタも頷きながら言葉を重ねた。

 

「お姉ちゃんの言う通りです。私も素敵なものを選んでもらえたから、期待していいと思うよ」

 

 それを聞いたルティナの顔に上品な笑みが浮かぶ。

 

「はい。わたくしも以前、姉様からボーデのコハクは質が良いと聞いたことがありますので、本当に楽しみです」

 

 ロクサーヌとセリーは後輩たちの様子を微笑ましげに眺めている。

 

 しかし、俺たちの和やかな雰囲気とは異なり、店側の二人の緊張はさらに高まってしまった。

 

 何だ? 彼らは何に引っかかってるんだ?

 

 疑問を覚えつつ、ルティナを見定めている店主の様子をうかがっていると、不意に彼がこちらに顔を向ける。

 

「お待たせいたしました。こちらのお客様にお似合いになりそうなネックレスの候補がいくつか思い浮かびました。用意してまいりますので、申し訳ございませんがタガワ様にも確認していただいてよろしいでしょうか?」

 

 え? 俺? いやいやいや。俺にそんなセンスはないってばよ。

 

 唐突な言葉に泡を食っていると、彼が意味ありげな視線をよこす。

 

 うん? 何か話があるってことなんだろうか?

 もしかしたら、彼らが緊張していることに関係があるのかもしれない。

 そういうことなら一緒に行きますかね。

 

「うむ。では、確認させてもらうことにしよう」

 

 店主はその言葉に感謝を述べると、そのまま女性店員へ話しかけた。

 

「お前はお連れ様のお相手を頼む」

「えっ!?」

 

 彼女は思わずといった様子で声を上げる。

 しかし店主は無慈悲にもそれを華麗にスルーし、再び俺の方へ顔を向けた。

 

「では、まいりましょう」

 

 いや、行くのは構わないんだが、あんたの孫が縋るような顔でこっちを見ているぞ。それはいいのか?

 

 気になったものの、彼に促されて奥へと続く廊下を歩く。

 

 

 

 以前入ったことのある商談室のような部屋に入ると、店主は真剣な表情でこちらを見つめた。

 

「新しくパーティーに加わったとおっしゃっていた先ほどの女性ですが、公爵夫人のお身内でしょうか?」

 

 はあ!? 何でバレてるんだ!?

 あ、いや。別に隠しているわけではないが、いきなりそんなことを言われたら驚くじゃないのさ。

 

「ふむ? どうしてそう思ったのだ?」

 

 内心の動揺を悟られないよう、顎に手を添えながら問いかける。

 

「金髪碧眼のエルフであることに加え、美しく手入れの行き届いた長い御髪。そして気品を感じさせる優雅な身のこなしは、とても庶民や自由民の仕草ではございません。また、私どもはありがたくも何度か公爵夫人にお目にかかる機会を賜っております。その際に目にした、かのお方とよく似たお顔立ちでございました」

 

 あー。なるほどねぇ。

 他のメンバーも髪の手入れはしており、ルティナに負けないほどの綺麗な髪をしているが、長いのはセリーだけ。

 また見る人が見れば、あの娘の所作は明らかに高貴な礼儀作法を身に付けていると分かるはず。

 そして、はっきりと血のつながりを感じるほどカシアによく似た顔立ち。

 そりゃ、分かる人には分かるわな。

 

 もっとも、あまり隠すつもりもないんだけどさ。

 

 その言葉に納得していると、彼が話を続ける。

 

「やはりそうでございましたか。先ほどセルマー伯爵家の当主が代わったとの噂が回ってきました。公爵夫人のお身内となりますと……」

 

 おいおい。そこまで察するのかよ。商人って怖いわ。

 

 とはいえ、別に隠すようなことじゃない。

 

「そちらの察している通りだ。公爵閣下は彼女の命を繋ぐために奴隷へ落とし、継嫡家名を剥奪した上で功のあった俺に下げ渡したのだ」

「そうでございましたか……」

 

 店主は少し考えると、再度問いかけてきた。

 

「ネックレスについてなのですが、他のお客様と同水準に留めておくべきでしょうか? それとも伯爵令嬢に相応しいものをご用意した方がよろしいですか?」

 

 いかん。それはいかん。

 我が最愛の人は優しくて良い娘だが、めちゃくちゃ嫉妬深いのだ。

 サイズがなくてオーダーせざるを得ないベスタの下着ならともかく、ネックレスで特別扱いをした日にはどうなるのか想像もつかない。

 ほっぺを膨らませてぷんぷん怒るかもしれないじゃないか。

 

 ……めちゃくちゃ可愛いじゃないの。

 

 脳内で可愛い嫉妬をしているイヌミミ美女にご退場いただき、その問いに答える。

 

「他の娘たちと同じような品を頼む」

「かしこまりました」

 

 彼は丁寧に頭を下げ、テキパキと準備を始めた。

 

 

 

 店内に戻ると、先ほどの空気はどこへやら。六人の女性たちはコハクのアクセサリーを体に添え、お互いに綺麗だの、可愛いだの、似合うだのと褒め合っている。

 

 この店員、めちゃくちゃうちの娘たちに馴染んでんなぁ。心配して損したわ。

 

 そして、彼女たちは俺たちが戻ってきたことに気が付くと、ワクワク顔をこちらへ向ける。

 あら、可愛い。

 

「どのようなネックレスなのでしょう。ルティナ、楽しみですね」

 

 ロクサーヌの言葉を受け、ルティナは胸に手を添え頷いた。

 

「はい。期待で胸の鼓動が速くなってしまいました」

 

 ここでセクハラオヤジなら『どれどれ、確かめてみようか』というところだろうが、あいにく俺は紳士を標榜する男。そんなことを口にするわけがない。

 

 ……もっとも、紳士は言う言わない以前に、考えすらしないのだろうが。

 紳士への道はまだまだ遠い。

 

 内省している間に店主が三つのタルエム製の宝石入れの蓋を開いた。

 すると、店内に華やかな歓声が響き渡る。

 

 我が家の女神たちは一つ一つのネックレスを慎重に取り出し、ルティナの首元にあてて、品評会を行いだす。

 そして、その審査委員長に選出されてしまったのは、何を隠そうこの私。そう、田川歩。

 

 候補は三つ。

 一つ目は中央に黄色い大粒のコハクが据えられた品で、その中にはシダっぽい植物が封じ込められている。金額は七万五千ナール。

 二つ目は色が赤褐色で統一されており、大きさもほぼ均一。調和の取れた美しさを誇る逸品で、こちらは七万三千ナール。

 三つ目は光の当たり方のせいだろうか? 薄いピンクに見える、可愛らしさにとんだネックレス。こういう色のコハクもあるんだな。こちらは八万千ナールで、ちょっとお高めになっている。

 

 他の五人の審査員の顔をうかがうと、全員が全員、三つ目のネックレスに視線を注いでいた。

 ぶっちゃけ、審査委員長も彼女たちと同じ意見だ。この中では三つ目が一番ルティナに似合っている気がするわけで……。

 

 ロクサーヌ、セリー、ミリア、ベスタと順番に目を合わせていくと、彼女たちはしっかりと頷いた。

 最後にルティナと視線を絡ませたところ、彼女は静かに口を開く。

 

「……アユム様はどれがお好みですか?」

 

 明らかに気に入っている物があるというのに、こちらの好みを確認するのか。

 ほんと、健気な娘だなぁ。

 

「この三番目のピンクがかったものがよいのではないか? とても愛らしくてルティナによく似合うと思う」

「本当ですか?」

 

 彼女は不安そうにそう尋ねた。

 

「もちろんだ」

 

 しっかり頷くと、ルティナの顔にはにかんだような笑みが浮かぶ。

 

「わたくしもこちらがよいと思っておりました。アユム様、ありがとうございます」

 

 至近距離で天使の微笑みを浴びてしまい、心臓がドクンと跳ねる。

 

 

 

 その後、支払いを行ったのだが、店主は八万千ナールのところを八万ナールにまけてくれた。

 もちろん、今回は三割引を使わず八万ナールをきっちり払いましたとも。

 こんなに気前が良い人の儲けを削っていたことに罪悪感を覚えてしまうよなぁ。

 ハルツ公と共同で行う商売で大儲けをしてもらいたいものだ。

 

 ルティナは受け取った小箱をしばらく胸に抱え、しばらくしてから大切そうにリュックへしまう。

 実にいたいけな少女である。

 

 彼女の準備が整ったところで、また訪れる旨を告げて店を出た。

 

 さて、最後に鍵のかかるチェストを購入して家に帰るとしますかね。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

冒険者Lv62 勇者Lv57 遊び人Lv68 魔道士Lv62 防具商人Lv46 神官Lv49

装備 オラクルビットローファー 身代わりのミサンガ

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

巫女Lv39

装備 貫通のミセリコルデ セブンリーグブーツ 身代わりのミサンガ

 

セリー ♀ 16歳

鍛冶師Lv37

装備 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

ミリア ♀ 15歳

探索者Lv35

装備 強権のエストック 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

ベスタ ♀ 15歳

竜騎士Lv32

装備 皮の靴 身代わりのミサンガ

 

ルティナ ♀ 15歳

魔法使いLv21

装備 バックルシューズ 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:28/160

ワープ:1

必要経験値二十分の一:63

シックススジョブ:31

MP回復速度十倍:31

鑑定:1

パーティー項目解除:1

パーティージョブ設定:3

キャラクター再設定:1

 

所持金:4,523,794ナール

 

夏の18日目

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