異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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307 昇格

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 スヴェルの授受を終えると、ルティナが表情を輝かせながら問いかけてくる。

 

「アユム様は貴族でいらしたのですか?」

 

 うん? 俺は庶民も庶民、超庶民だぞ。なんなら年収的には中流よりだいぶ下だ。

 それに何代さかのぼっても、先祖に武士や公家は一切いない。

 

 それを告げようとしたところ、彼女はそのまま言葉を重ねた。

 

「とても堂に入った、素晴らしいお言葉でございました。一朝一夕で身に付くものだとは思えません」

「さすがルティナですね。あなたは物の道理というものをよく理解しています」

 

 左手にスヴェルを装着した我が忠臣が、またとんでもないことを宣っている。

 

 単にオタクの嗜みとして妄想の中で国を興して王になったり、覇王として版図を広げたり、銀河を統べる皇帝になったりしていただけだ。

 もっとも原作と出会ってからは、彼女たちとこの世界を駆け回ってたんだけどね。

 

 だがそんなことを言った日には、俺が中二病だというあらぬ誤解を招いてしまう。さて、何と答えたものやら。

 

 俺が困っていることを察したのか、セリーが苦笑交じりでフォローの言葉を口にする。

 

「これまでがどうだったかより、これからどう成り上がっていくかが肝要ではないでしょうか? ご主人様ならそう遠くないうちに貴族に列せられるはずです」

「そうです、そうです。明日は迷宮を討伐することですし、きっと貴族になるのはすぐですよ」

「はい。私もそう思います」

 

 セリー、ミリア、ベスタの助け舟に乗っかり、適当な言葉でその場を取り繕う。

 

「まあ、今後に乞うご期待ってことで」

 

 

 

 落ち着きを取り戻したところで、ロクサーヌの左腕に装着されているスヴェルを見ながらセリーが告げた。

 

「迷宮で使用する前に、詠唱を確認しておいた方がいいのではないでしょうか?」

 

 あ、そうだな。ぶっつけ本番はまずい。

 

「セリー、提案してくれてありがとう。それじゃあ試してみよう。ロクサーヌ、詠唱をしてみてくれる?」

「かしこまりました」

 

 スキルの使用を促したところ、彼女は一つ頷き呪文を唱えた。

 

「大切な仲間の、作った垣根、堅い、防壁展開」

 

 ……なんかリズムが悪い。というか、全然違うっぽいぞ?

 とりあえず、確認してみるか。

 

「ロクサーヌ、試してみるからちょっと貸してもらえる?」

「あ、はい。お願いいたします」

 

 先ほど授けたばかりのスヴェルを受け取り、意識を向ける。

 

 うん。呪文が思い浮かぶ。別に装着する必要はないらしい。考えてみれば宝物庫で持った時もそうだったもんな。

 

「詠唱するから、それを繰り返してみてね。それじゃあ、いくよ? 心通わすともがらの、連なり築く八重垣の、堅陣、防壁展開」

 

 その瞬間、全員の体を緑の淡い光が包み込み、すぐにそれぞれの体へ吸収されるかのように消えていった。

 

 おお! エフェクトがあるのか! スゲー!

 

「わ。体が光りましたよ!?」

「ね、ね。すごいね!」

 

 ベスタとミリアが声を上げるなか、ロクサーヌの美しい声が呪文を紡ぐ。

 

「心通わす仲間たち、連なり築く生垣の、堅陣、防壁展開」

「惜しい。ちょっとだけ違ってる。じゃあ、一つずついくよ? いいかい? 心通わすともがらの」

「心通わすともがらの?」

 

 彼女は首をかしげながら繰り返す。

 めちゃくちゃ可愛いなぁ。

 

「そうそう。次は、連なり築く八重垣の」

「連なり築く八重垣の」

「オッケー。あとは問題なかったから、続けて言ってみて」

「はい」

 

 ロクサーヌはコクリと頷き、息を吸い込んだ。

 

「心通わすともがらの、連なり築く八重垣の、堅陣、防壁展開」

「パーフェクト! さすがロクサーヌ、覚えが早いね」

 

 その言葉を受け、照れながらも誇らしげな表情が実にキュート。今すぐ結婚してくれないだろうか?

 

 彼女の魅力に骨抜きにされながら、次の呪文の確認に移る。

 

「今度は障壁展開の方ね。いくよ? 心通わすともがらの、幾重に織りし瑞垣の、方陣、障壁展開」

 

 しかし、呪文を唱えても今度はエフェクトが発生しない。

 やはりセリーの言っていた通り、同じ装備品に付いているアクティブスキルは重ね掛けができないのだろう。

 まあそうだわな。残念だが仕方がない。

 

 そんなことを考えていると、物置にロクサーヌの声が響いた。

 

「心通わすともがらの、何度も重ねた垣根、方陣、障壁展開」

「惜しい。一か所だけ違ってるね。幾重に織りし瑞垣の」

「幾重に織りし瑞垣の?」

「バッチリ、バッチリ。それじゃあ、続けて言ってみて」

「はい。心通わすともがらの、幾重に織りし瑞垣の、方陣、障壁展開」

 

 オッケー。問題ナッシング。

 

 スヴェルを彼女に返却しつつ、声をかける。

 

「それじゃあ、防壁展開と障壁展開の運用については君の判断に任せるから、必要に応じて使ってね。あっ、ルティナの魔法との詠唱共鳴については二人で調整してもらえる?」

 

 ロクサーヌはそれを受け取り、大きく頷いた。

 

「かしこまりました。適切な場面で使用できるよう、タイミングを計りたいと思います」

 

 そして、ルティナへ顔を向ける。

 

「スキルを使うタイミングについては、今後二人で打ち合わせを行いましょう」

「はい。ロクサーヌ姉様、よろしくお願いいたします」

 

 ルティナはそう言うと、納得したような表情でこちらを見つめていた。

 

「以前から綺麗な発音だと存じておりましたが、アユム様は本当にブラヒム語が堪能でいらっしゃるのですね。やはり帝王学をお受けになっていたのですか?」

 

 いや、えっと、あの、これは自動翻訳君の功績であって、礼儀作法や君主としての教育を受けたわけでは……。なんなら勉強は嫌いでしたし……。

 

 言い訳を口にしたくなるが、まだ事情を説明していないため、ここはあいまいな笑みで誤魔化しておく。

 事情を知っている他の四人は気まずそうに顔を逸らしていた。

 

 

 

 その後、俺とセリーで話し合い、いくつか検証を行う。

 

 ロクサーヌが装備した状態でスキルを使用してもらったのだが、詠唱は間違っていなかったのにもかかわらず発動することはなかった。どうやら装備者が変わっても効果は持続しているらしい。

 しかし、パーティーの解散をしてから防壁展開を試してもらったところ、こちらは問題なく発動に成功した。

 パーティーを解散すると効果が切れるということなのだろうか?

 

 確認のため、直後に同じことをして今度は障壁展開を試してもらったところ、今度は失敗してしまう。

 気になって少し時間を置いてから再度試してみると、問題なく発動。

 うーん……。どうやらクールタイムも設定されているらしい。

 

 色々試してみて分かったのだが、パーティー内の人数が一人増えたり、一人減ったりしただけで効果が消失していた。

 つまり、発動したときのパーティーの状態を参照しており、それに変更があると効果が切れるということになる。

 

「なるほど……。興味深い結果ですね……」

 

 顎に手を添えながら呟くセリーに頷きを返す。

 

「そうだね。システマチックで実に面白い」

 

 頭の中にあった仮説と実験結果を照らし合わせていると、呆れた視線が突き刺さっていることに気が付いた。

 

 あっ、そうですよね。時間がないんでしたよね。申し訳ありません。

 

 一つ咳払いをして仕切り直す。

 

「それじゃあ、装備品の調整に戻ろう。とりあえずロクサーヌはアルバを装備するってことで。これは暫定的な措置だから、君の胴装備が見つかるまではスキルを付けないことにする」

「かしこまりました」

 

 ロクサーヌが頷きながら答えると、セリーも同意を示した。

 

「そうですね。アルバはいずれルティナが装備することになるでしょうし、その方がいいと思います」

 

 ミリアとベスタも納得していたが、ルティナだけは腑に落ちないというような表情を浮かべ、ロクサーヌがアルバを身に着けている様子を見つめている。

 

 きっと、スキル結晶の融合が成功する前提で話していることを訝しんでいるんだろうなぁ。

 もっとも、いま説明するわけにはいかないため、スルーして次の話題に移るんだけどね。

 

「ルティナはスペルキャスターだから、当初の予定では俺と同じように攻撃系のスキルはアクセサリーへ、身代わりスキルはアルバの方に付けようと考えていた。でもスヴェルが手に入ったことで、アルバはロクサーヌにスライドしている。となると、オペラグローブかバックルシューズになるけど、どっちに付けるのがいいと思う?」

 

 すると、ミリアがあっけらかんとした顔で答える。

 

「バックルシューズだとすぐに履き替えることになりますよね? それならオペラグローブに付ける方がいいんじゃないですか?」

 

 さらにセリーもそれに続く。

 

「ミリアの言う通りかと。それに金額的な意味でもオペラグローブの方が低価格なので、仮に身代わりスキルが発動したとしても、金銭的なダメージは小さいです」

 

 確かに二人の言う通りだな。そんじゃ、そういうことで。

 

 アイテムボックスを開き、芋虫のスキル結晶を取り出してセリーの方へと差し出す。

 

「じゃあ、お願い」

「はい。お任せください」

 

 彼女がそれを受け取ろうとしたところで、部屋に慌てたような声が響いた。

 

「あ、あの! お待ちください! 融合に失敗すると貴重な魔法使い用の装備品であるオペラグローブが失われてしまうのですよ!? それに身代わりスキルをミサンガ以外に付けるなど、聞いたことがありません! 身代わりスキルを付けた防具は大きなダメージを受けると壊れてしまうのです! お考え直しください!」

 

 うおっ。びっくりしたー。

 

 突然の大声に面食らいながらそちらに顔を向けると、必死の形相で俺たちを止めようとしているエルフのお姫様の姿が目に映る。

 その表情はまるで、給食費を競馬にぶち込もうとしている父親を何とか思いとどまらせようとしている、いたいけな娘のようだった。

 

 それを見たベスタは柔らかな笑みを浮かべ、彼女を諭す。

 

「ルティナ。ご主人様とセリーさんなら何の問題もないから、心配することはないよ」

「ええ。ご主人様のお力をもってすれば、装備品にスキルを付けるなど造作もないことです」

 

 ロクサーヌさんや……。君の言葉はあれだ、あの、少しばかりスピリチュアルな匂いが、その、ね?

 

 もっとも、本当に俺の持つ鑑定スキルの力だし、ガチで彼女の言う通りなのが、それはそれでちょっと、な。

 俺は預言者にも救世主にもなるつもりはないのだ。

 

「で、ですが、融合に失敗してし――」

「まあまあ。絶対に失敗しないから平気、平気。それに、失敗したところでたいした問題じゃないし、全然気にしなくていいから」

 

 なおも翻意を促そうとしているルティナの後ろへ回り、両方の肩をポンポン叩きながらミリアが告げる。

 

 いや、失敗したら問題だし、俺は普通に気にするぞ。でもまあ、これに関しては『私失敗しないんで』なんだけどな。

 

 そんなことを考えているとセリーが俺の手からスキル結晶を取り、さらにクローゼットからオペラグローブも取り出した。

 

「ルティナ、見ていてください」

 

 その表情には自信が満ち溢れており、失敗の可能性を欠片も感じさせない。

 パーティー加入直後はあれだけ狼狽えていたというのに、彼女もスキルスロットの有無を確認できる鑑定スキルに全幅の信頼を寄せているようだ。

 

 納得していない顔をしてはいるものの、それでも口をつぐんだルティナに微笑みかけ、スキル結晶をオペラグローブに押し付けると、セリーは詠唱を開始する。

 

「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、スキル結晶融合」

 

 そして、その手から光の奔流が吹き上がり、程なくしてそれが収まった。

 

身代わりのオペラグローブ 腕装備

スキル 身代わり 空き

 

 オッケー、オッケー。バッチグー、バッチグー。

 

 セリーを称える他の三人とは対照的に、ルティナはこぼれ落ちそうなほど目を見開き、驚きの表情を浮かべている。

 それでも口元は手で覆われているあたり、伯爵令嬢としての育ちを感じてしまう。

 

 ルティナ嬢のあまりの愛らしさに、拙者もオタクの嗜みとして萌えると言わせていただきたいところでござるよ。

 

 ……どうでもいいが、『萌える』ってフレーズに懐かしさを覚えるわ。

 

 アホなことを考えていると、セリーが微笑みながらそれをルティナに差し出した。

 

「どうぞ、身に着けてください」

 

 彼女はゆっくり手を伸ばしてオペラグローブを受け取り、おずおずと口を開く。

 

「セリー姉様は有能な鍛冶師でいらっしゃるのですね」

 

 それを聞いたセリーは苦笑を浮かべながら、顔の前でひらひら手を振る。

 

「いえいえ。私がすごいのではなく、ご主人様がすごいのです」

「アユム様が?」

 

 ルティナは少し考え、納得したように呟いた。

 

「なるほど……。たとえ失敗しても責められることがないため、落ち着いて融合に取り組めるのですね……」

 

 いえ、全然違います。

 もしそうだった場合、たとえ責めなかったとしても考えすぎるセリーのことだ、絶対に二の足を踏むに違いない。

 他の娘たちの顔にも苦笑が浮かんでいるため、おそらく俺と同じことを考えているのだろう。

 

 まあいいや。次だ、次。

 

 バックルシューズにどんなスキルを付けるかを相談したところ、彼女たちは全会一致でその案を却下した。

 まあ、バックルシューズはすぐに履き替えることになるし、その判断は妥当だろう。

 もっとも、ルティナだけは失敗を恐れて否決に回っていたわけなのだが……。

 

 足装備の次はアクセサリーだ。

 アイテムボックスから鳥とコボルトのスキル結晶を取り出し、セリーに渡したところでミリアから物言いがついた。

 

「あの、イアリングをルティナに回して、サッシュはご主人様用にした方がいいんじゃないですか?」

 

 え? サッシュを俺用に?

 

「なるほど……。確かにその方がいいかもしれません」

 

 セリーが顎に手をあてながらそう呟くと、ロクサーヌも同意を示す。

 

「そうですね。攻撃系のスキルは集約しておいた方が合理的です」

 

 さらにベスタも大きく頷いた。

 

「はい。ご主人様は何でもおできになりますから、その方がいいと思います」

 

 何でもはできないわよ。できることだけ。

 

 思わずあゆむキャット的なセリフが口を突きそうになるが、それは一旦置いておいて、実際のところ彼女たちの提案は理に適っている。

 

「オッケー。じゃあ、そうしよう」

 

 耳からイアリングを外し、そのまま渡そうとしたところ、ルティナは呆気にとられたような表情でこちらを見つめていた。

 

 そうだよなぁ。この娘からしてみれば、俺たちの言ってることはわけわかんないよなぁ。

 しかし、申し訳ないがいま説明するわけにはいかないのだ。

 後で必ず秘密を打ち明けるからいったん飲み込んでもろて。

 

「ルティナ。身代わりのミサンガをこのよりしろのイアリングに変更しよう。俺もそうしてるんだけど、今後は君も迷宮内外でアクセサリーを切り替えることになる。ちょっと面倒かもしれないけど頼むね」

「え? あの、アユム様は冒険者ですよね? それなのに魔法攻撃力が上がる、よりしろのイアリングを装備されているのですか?」

 

 彼女の困惑の色がますます濃くなった。

 

「いや、これには魔法攻撃力二倍だけではなく、知力二倍と腕力二倍もついている」

「えっ!? こちらは伝世の品なのですか!?」

 

 あー……。融合ではアクセサリーに二つ以上のスキルがつかないと思われているのだ。固定で出したものだと思うのも無理はない。

 しかし、これについても説明は後だ。とりあえず、この場は適当にやり過ごそう。

 

「まあ色々あってね。さあ、どうぞ」

「ですが、加入したばかりのわたくしがそのように貴重な装備品を身に着けるのは……」

 

 怖気づいている彼女の手を取り、イアリングを握らせた。

 

 ……そんな場合じゃないことは百も承知だが、オペラグローブ越しでもその細さと柔らかさが感じられる。

 このまま手をつなぎたくなってしまうぞ。

 

 その瞬間、物置部屋に咳払いが響いた。

 

 聞こえてきた方へ顔を向けると、視線の先にはイヌミミが愛らしい女神の微笑み……。

 

 あ、はい。そんなことを考えている状況じゃないですよね。

 

 もう一度ルティナに勧めようとしたものの、その前に天真爛漫な笑みを浮かべたミリアが明るい声を発する。

 

「いいから、いいから。さあ、着けて、着けて」

 

 ベスタも安心させるように、柔らかな表情で話しかけた。

 

「加入したばかりとか、そういうことは誰も気にしていないから、遠慮することはないよ」

 

 二人の言葉を受け、彼女は自分の手の中にあるイアリングに視線を落とし、すぐに顔を上げる。

 その顔には並々ならぬ決意がみなぎっており、その気合のほどがうかがえた。

 

「ありがとうございます。このイアリングを装備することで、わたくしの魔法の威力は大きく向上することでしょう。パーティー唯一の攻撃魔法の使い手として、必ずや皆様のご期待にお応えすることをお約束いたします」

 

 あ、えっと、それは……。

 

 ルティナの宣言を聞いた俺たちは、互いに顔を見合わせる。

 みんなの顔にはきまり悪げな表情が浮かんでおり、おそらく俺もまったく同じ顔をしていることだろう。

 

 これだけ役に立とうと一生懸命なのに、このあと反則そのものの魔法を見せつけられるのだ。

 きっとめちゃくちゃ落ち込むよなぁ。ほんと、どうしたもんかねぇ。

 

 ルティナはまるで白いアルストロメリアのような、凛とした表情でイアリングを両耳に着けた。

 ポニーテールにまとめられた金髪から突き出る細長くて尖った耳。そこにきらめく水滴型のイアリング。

 先ほどまで俺が着けていた物と同じだとはとても思えない。

 

 ファンタジー感あふれる光景に思わずドギマギしていたところ、彼女はスッとしゃがみ、左足のミサンガをスルリと外した。

 

 おっと。預かっとかないと。

 

 ルティナから受け取ったミサンガをアイテムボックスにしまい、セリーに話しかける。

 

「じゃあ、融合をお願い」

「かしこまりました」

 

 ルティナは不安げな表情をしていたものの、先ほどとは違い融合を止める様子はない。

 

よりしろのサッシュ アクセサリー

スキル 魔法攻撃力二倍 空き 空き 空き

 

 そして、もちろん融合は大成功。

 まあスキルスロットが付いていることは分かっていたし、俺たち五人にとってこの結果はあたり前田のキャプチュード。

 しかしルティナはホッとしたように、息をついている。

 

 すまぬ。これで終わりじゃないんだわ。

 

 今度はヤギとコボルトのスキル結晶を取り出してセリーに渡すと、物置に大きな声が響き渡った。

 

「何をなさるおつもりなのですか!? スキル結晶の融合はそう何度も成功するものではありません! そんなことをすれば壊れてしまいます!」

 

 ルティナはその麗しいかんばせに驚愕の表情を貼り付け、セリーの手元を指差している。

 

 完全に気が動転してるなぁ。

 でも時間もないし、ちゃっちゃと先に進めよう。

 

「いいから、いいから。さあ、セリー」

「はい」

 

 セリーが詠唱を開始すると、ルティナの顔が絶望に染まる。

 そして、見ていられないとばかりにまぶたをぎゅっと閉じ、顔を背けた。

 

 詠唱が終わるとサッシュから光が放たれ、しばらくしてそれが収まってもサッシュはその姿を保ったまま。

 

よりしろのサッシュ アクセサリー

スキル 魔法攻撃力二倍 知力二倍 空き 空き

 

 うん。そりゃそうだ。スロットがある以上、融合に失敗するはずない。

 

 ロクサーヌたちの歓声に気付き、ルティナがセリーの方へ顔を向ける。

 その瞬間、スクラッチされたレコードのような声が上がった。

 

「な、な、な、な」

 

 彼女はそれを指さすと、声を張り上げる。

 

「何が起こっているのですか!?」

 

 この娘の常識はたった今、壊れてしまったようだ。

 まあうちで生活する以上、遅かれ早かれ常識とはおさらばすることになるし、慣れてもらおう。

 

 

 

 続けて行われた三度目の融合で、ルティナはすっかり放心状態。

 光の消えた瞳でセリーの手元をじっと見つめていた。

 

「わたくしはいったい何を見せられているのですか……」

 

 いや。ほんと、申し訳ない。

 スキル結晶の融合でインパクトを与えておくという作戦だったが、やりすぎただろうか?

 

 彼女に気の毒そうな顔を向けているミリアとベスタに対し、ロクサーヌとセリーは作戦通りと言わんばかりに満足そうな表情で頷いている。

 

 こら、君たちの作戦のせいでこうなってるんだぞ。少しは責任を感じなさい。

 

 もっとも、さらに追い打ちをかけるわけだが……。

 

 アイテムボックスからスキル結晶を取り出し、セリーに差し出す。

 

「最後はトロールとコボルトね。それじゃあ、お願い」

「はい。お任せください」

 

 彼女は頷くと左手に持ったサッシュへ二つのスキル結晶を押し付け、大きく息を吸い込み呪文を唱え始めた。

 詠唱が終わると眩しい光が物置を満たし、やがてそれが収まっていく。

 

 しかし、セリーの手に視線を戻すと、何かがおかしいことに気が付いた。

 

 あれ? サッシュじゃない?

 

 彼女の手に載っていたのは先ほどまでの赤い帯ではなく、白い毛皮のストールのようなもの。

 わけのわからない事態に、融合を行った本人であるセリーも含めて全員戸惑いを隠せない。

 正体不明な物体へ向け、思わず鑑定をかけていた。

 

スコル アクセサリー

スキル 魔法攻撃力二倍 知力二倍 攻撃力二倍 腕力二倍

 

「はあ!?」

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

冒険者Lv62 勇者Lv57 遊び人Lv68 魔道士Lv62 防具商人Lv46 神官Lv49

装備 頑強のアルバ サンダル

 

BP振分 残BP:28/160

ワープ:1

必要経験値二十分の一:63

シックススジョブ:31

MP回復速度十倍:31

鑑定:1

パーティー項目解除:1

パーティージョブ設定:3

キャラクター再設定:1

 

所持金:4,601,994ナール

 

夏の18日目

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