異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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032 原作知識

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 話をしているうちに部屋の中はすっかり薄暗くなっていた。

 蝋燭と燭台を持ちバスルームで火を付けてから、壁に設置されている棚へ燭台を置く。

 

 

 

 ようやくロクサーヌに自分のことを打ち明けることができた。

 そして、彼女はこんな俺を受け入れてくれた。

 これほど幸せなことがあるだろうか?

 今後もロクサーヌと幸せに暮らしていきたい。

 

 そのためには……。

 

 「ロクサーヌ。これを見てもらえる?」

 

 リュックの中から書籍版とコミック版を取り出し、パイプファイルと並べて置いていく。

 

「これは?」

「これが俺の大好きだった物語『異世界迷宮でハーレムを』だ。そして、この娘がロクサーヌ」

 

 書籍版一巻を手渡すと興味深そうに眺めている。

 

「これがずっと好きだったとおっしゃっていた私なのですね」

 

 ロクサーヌは特に自己同一性について思い悩む様子はない。

 余計な負担を与えることがなくて本当に良かった。

 

 

 

 表紙をまじまじと見つめていた彼女が感想を口にする。

 

「とても緻密な絵ですね。本当に綺麗です」

 

 ページを捲り、ジャージ姿で胡坐をかきながらデュランダルを持っているミチオを見てロクサーヌが尋ねてきた。

 

「この方がミチオさんですか?」

「うん。彼がこの物語の主人公。加賀道夫だ」

「彼もここにいるのでしょうか?」

 

 こちらに顔を向け彼女が問いかけてくる。

 

「おそらくこの世界にはいないと思う」

「そうなのですか?」

 

 この世界は原作のどの媒体とも少しずつ異なる点がある。

 ニンジンをはじめとする野菜の有無。

 それから家の窓にガラスがはまっていたり、二階の部屋数が違っていたりなど。

 おそらく原作と近似してはいるものの、さらに別のパラレルワールドなのだろう。

 

 原作でもミチオの他に異世界からの転移者がいる様子はない。

 そして、俺がこの世界に転移したときの状況は完全に彼と同じだったんだ。

 当て推量になるが、もしかしたらあのサイトは訪問した人をプレイヤーに仕立て上げ、選択した内容によって、それぞれ別の近似世界に用意したスタート地点へ転移させているのかもしれない。

 

 今も誰かがこことは少しだけ異なる世界の馬小屋に転移しているのかもな。

 

 

 

 まあ、完全に妄想だ。こんな無茶苦茶なことができる存在の考えていることを推察しても結論なんて出やしない。そもそも原作でも一切言及がないことだし。

 

 

 

「ご主人様?」

 

 考え込んでいたらロクサーヌに声をかけられた。

 

「ごめんごめん。考えていたんだけど、おそらくミチオはこの世界にはいないと思う」

「そうですか」

 

 彼女はあっさり納得している。物語の中で主人だったからといって特に気になるということはないようだ。

 

 ……ロクサーヌがミチオに興味を持っていなくて本当に良かった。

 こんなことで安心するなんて、我ながら本当に情けない男だな……。

 

 

 

 さて、本題へ入ろう。

 

「これから迷宮探索で生活の糧を得ていくために、また迷宮討伐を成し遂げるためにも、絶対に仲間が必要になる」

「はい」

「物語に出てきた仲間たちはみんな有能で気立てが良く、主人を裏切るようなそぶりは一切なかった。そして、ロクサーヌとも仲良く過ごしていたんだ」

「そうなのですか?」

 

 共に過ごした時間が長いためかセリーとは本当に仲がよさそうだったし、ミリアともバーナ語の通訳をしていた関係もあり姉のように慕われていた。ベスタとは一緒に買い物へ行った描写がある。

 ルティナはウェブ版の加入直後こそいざこざがあったが、その後は上手くやっている様子で、書籍版については最初から問題なさそうだった。

 

「うん。仲間にするなら彼女たちをおいて他にはいないと思っている。だから、そのためにこれを使う」

 

 ローテーブルの上に並んでいる本にポンと手をのせる。

 

「この本には春の一日から夏の途中までの間にミチオが過ごした出来事が綴られている。ある意味予言書みたいなものかな? これを基に行動し確実に仲間を集めたい」

 

 俺の言葉を聞くと彼女は少し考え疑問を口にした。

 

「その仲間たちはそんなに有能なのですか?」

 

 そりゃあ気になるよな。

 

「それじゃあそれも含めてこれからどういうことが起きるのか説明していこう。ただし、これはあくまでもミチオがたどった物語であり、全て同じことが起こるというわけではないはずだ」

「はい」

「本を確認しながら細かいところは省いて大きな出来事だけ話していくから」

「よろしくお願いします」

 

 もうすでにロクサーヌと共に過ごしているんだ。一巻は省略して二巻の出来事から伝えていこう。

 ローテーブルから書籍版の二巻を手に取り話していく。

 

 

 

「ミチオとロクサーヌが一緒に過ごすようになって最初に起こる大きな出来事は、アラン殿の商館が盗賊に襲われる」

「え!?」

 

 彼女から大きな声が上がった。

 それはそうだろう。自分がいた商館が襲撃されたなんて聞けば心中穏やかではいられない。

 嫌な思いもしただろうが、よくしてくれたおばさんがいるということだしな。

 

「鑑定で商館を見張っている盗賊を見つけたことで計画に気が付き、アラン殿に用心棒として雇われてこれを撃退する」

「よかったです」

 

 一つ息を吐き出し安心したように呟いた。

 

「この商館を襲う盗賊というのが俺やミチオが撃退した、ソマーラの村を襲った奴らの残党だ。今どこにいるのか分からないせいでこいつらを潰せていないから、おそらくこの世界でも商館の襲撃は起こると思う」

「そんなっ!」

 

 俺の言葉を聞いたロクサーヌは顔を歪め再び声を上げる。

 

「大丈夫だよ。俺の望みはロクサーヌと幸せに暮らすことなんだ。君の不安を放置するような真似は絶対にしない。もちろん俺も盗賊撃退に協力するから」

「ご主人様! ありがとうございます!」

 

 二巻をペラペラ捲り該当箇所を確認する。

 作中で盗賊の見張りを発見するのはロクサーヌを購入してから五日目。つまり、春の十二日目だ。

 明日はクーラタルの迷宮に行き地図を利用して、人がいない階層まで一気に駆け抜け自宅近くにMP回復拠点を作ろう。

 そして、明後日から盗賊の襲撃が発生するまではベイルの迷宮へ行き、帰りは商館の前を通ることにする。

 

 いつまでたっても盗賊が現れなかったらどうするか……。

 

 とりあえず、セリーの購入までに現れなかったらそのときにまた考えるとしよう。

 

 

 

 次に三巻を手に取りパラパラ捲って確認していく。杖や家、バスタブは既に手に入れてるしなぁ。

 

 あ! 魚醬だ! 帝都で魚醬を買わなければ! 見返してよかったぁ。

 醤油はブラヒム語に変換されないとあるが、この世界でもそうなのだろうか?

 試してみるか。

 

「ロクサーヌ、ショウユやミソって……」

「ご主人様、何ですか?」

「いや。大丈夫。何でもない」

 

 駄目だったかぁ。

 しゃあない。この世界に来るときに覚悟はしていた。ロクサーヌと出会うために必要な代償だったと割り切るさ。

 

 よし。切り替えていこう。

 

 

 

 そのあとはラピッドラビットにやられた男か……。

 この男を救うべきなのか?

 

 ぶっちゃけ、命がけの迷宮探索をしているのはこの男だけではない。

 今、この瞬間にも迷宮で命を落としている人がいることだろう。

 迷宮に入っている他の奴らもそうだし、なんなら俺やロクサーヌだって例外ではない。

 

 それなのに原作で死ぬのが分かっているからとこの男だけを救うのか?

 そんなことをするなら、ロクサーヌをエロい目で見てきた妨害の銅剣を残してパーンにやられた奴ら。あいつらにだって忠告しなければならなくなる。

 

 悪いがわざわざ救う必要性を感じない。

 というか、七階層で二年を過ごしレベルアップを機に決心をしてボスに挑むんだ。忠告をしてもおそらく聞き入れることはないだろう。

 

 それに、ロクサーヌはあの男がボスにやられても特に気にする様子もなかった。

 この世界ではごくありふれた出来事だということだ。

 

 そして何より、あの男はもうすぐ一人目の奴隷の都合がつくと言っていた。

 オークションに出す予定のミリアやベスタは大丈夫だろうが、セリーはあの可愛さなのに値段も手ごろだ。先を越される可能性が捨てきれない。

 

 本当にクソ野郎で申し訳ないがスルーさせてもらおう。

 

 

 

 次に四巻を手に取る。さあ、セリーの登場だ。

 表紙をロクサーヌに見せながら告げる。

 

「この娘が二人目の仲間になるセリー。十六歳のドワーフで鍛冶師としてパーティーの装備品を製造したり、スキル結晶の融合を行っている」

「鍛冶師の奴隷を購入するなんてすごいですね」

 

 まあ、購入した時点では鍛冶師ではないが確かにこの世界の基準で考えれば鍛冶師の奴隷を所有しているのはすごいことだろう。

 

 ドワーフは奴隷になる前にジョブを変更するほど、鍛冶師のまま奴隷になることに忌避感を持っている。

 鑑定を使っていて実感したが装備品はスロットなしの方が圧倒的に多い。

 つまり、それだけスキル結晶の融合に失敗しているということになる。

 失敗の原因が特定できない以上、それは実行したものの腕が悪いと思われるだろう。

 そして、それが奴隷だった場合、主人から責められてしまうはずだ。そんなのは誰だって嫌だもんな。

 だから、鍛冶師の奴隷は少なく、そして高額となるのだ。

 

 

 

「それがセリーは購入時点では鍛冶師ではないんだよ」

「え!」

「ミチオが色々ためして鍛冶師の獲得条件を解き明かしセリーを鍛冶師にしたんだ。成果を横取りするようで悪いけど俺もそれを実行させてもらう」

「おっしゃっていた鍛冶師の心当たりとは彼女のことだったのですね。ご主人様が選んだ装備品なら確実に融合を成功させられるのですから、仲間にドワーフがいるのはとても良いことだと思います」

 

 お。ロクサーヌもセリーの加入に賛成してくれているのかな?

 

「それに、セリーはとても頭がよくパーティーのために装備品のことや魔物の情報。それからジョブについてなど様々なことを調べて助言してくれる」

「ご主人様の役に立とうとするなんて、とても素晴らしい心がけです」

 

 パーティーって言ったんだよとか、俺じゃなくミチオのときの話だよとか、いろいろ言いたいことはあるけどスルーしておこう。

 

 

 

 彼女の表情をうかがうとセリーの加入に関しては特に不満を持っている様子は見えなかった。

 

 しかし、内心はどう思っているのか分からない。

 人は誰だって自分の居場所を奪われることを恐れるものだ。

 まだ出会って三日目だが、俺自身も今の二人きりのパーティーでお互いに支え合い、信頼を積み重ねて絆が生まれている実感がある。

 そこに別の人が入ってきた場合、その関係がおかしくなってしまうのではないかと彼女が恐れていてもおかしくはない。

 

 ロクサーヌはとても嫉妬深い。

 そして、俺は彼女が大好きだから何事に対しても彼女を優先してしまうだろう。

 自分でも何様だと思うが、ハーレムパーティーを目指すつもりならギスギスしないよう、他の娘たちに対しても常に気を配っておかなくてはならない。それを肝に銘じておこう。

 この世界で生きていくうえで彼女たちの助けは不可欠だし、なにより俺は彼女たちのことだって好きなんだ。

 

 

 

 確認をしながらページを捲っていく。

 

 パーンにやられたパーティーが残した詠唱遅延の付いた武器か……。

 ミチオはこれをルークに売るが、俺はその後にハルツ公爵家と縁ができることを知っている。

 商人を通さないため三割アップの恩恵にあずかることはできないが、ルティナを手に入れるためには公爵の覚えをめでたくする必要がある。

 手に入れたら公爵家に持ち込んでみるか。

 

 WIKIによると三十四日目だな。

 その日はベイルの迷宮七階層のボス待機部屋を張っておこう。

 まあ、起こらないなら起こらないで別にそれほど問題もない。

 

 

 

 四巻を置き五巻を取る。この物語の転換点となる巻だ。

 迷宮探索生活者の日常という感じの話だったのが、ここから少しだけ世界が広がり貴族との関わりが出てくる。

 

「ここから物語が少しだけ動き始めることになる。北にあるハルツ公爵領で災害が発生して、ハルツ公騎士団と冒険者ギルドが連携して災害救助を行うことになるんだ」

「そんなことが起こるのですね」

 

 確か雪解けが遅く、大雨のシーズンと重なったことによる水害だったか。

 

「それで、クーラタルの冒険者ギルドで頻繁にワープを行っているのを、ギルド職員に見られていたため、探索者だったのに冒険者だと思われていたんだ。そのせいで救援物資輸送の支援要請を受けることになってしまう」

「インテリジェンスカードを確認されたら冒険者ではないことが知られてしまうのでは? ご主人様、大丈夫でしょうか?」

 

 ロクサーヌさん、めっちゃ感情移入してますやん。

 

「いや。その辺は問題ない。災害救助のため、種族、身分は問わないということでインテリジェンスカードのチェックは行われないんだ」

「良かった。それなら安心ですね」

 

 インテリジェンスカードの確認をされる可能性にそなえ、できれば早めに冒険者になっておきたい。

 しかし、まとめWIKIを確認してみたところ、この出来事が起こるのは春の三十七日目。

 効率よくレベル上げをしても冒険者のジョブを得るのは絶対に無理だと断言できる。

 だが、少しでも早く疑われることなくワープで移動するためにも、レベル上げに勤しもう。

 

「そのとき、ちょっとした出来事をきっかけにハルツ公爵とその家人であるゴスラー殿と面識を得ることになる」

「それはすごい! ご主人様も負けるわけにはいきませんね」

 

 もちろん。ご主人様も知り合う気満々ですよ。

 それがないと帝国解放会へ入会できないだろうし、延いてはルティナ加入にもつながってくる。

 

 このとき、それとなく漁村の話を出したらハーフェンへ案内してもらえないだろうか?

 それが可能なら村の住人に滝の場所を教えてもらい、俺の神官とロクサーヌの巫女を獲得できるのだが。

 いくらなんでも唐突すぎるだろうか? それに、災害救助で冒険者はフル稼働中なんだ、他のところに案内している余裕はないかもしれない。

 様子を見て大丈夫そうなら切り出してみよう。

 

「その出来事のあとは、クーラタルの迷宮九階層でニートアントと戦うことになるんだけど。そこでロクサーヌが魔物を毒にして倒した経験があることを教えてもらうんだ。ところで、本当にノンレムゴーレムを毒にして倒す遊びをやってたの?」

 

 問いかけるとロクサーヌは懐かしそうな表情を浮かべ答える。

 

「確かにやっていました。あれはとてもワクワクする楽しい遊びだったのですが、危ないことをするなと両親に怒られてしまって……」

 

 やっぱりやってるのね。

 そりゃあ怒るに決まっているわ。

 そんなクレイジーな遊びをする娘に親御さんは気が気じゃなかっただろうな。

 

 んじゃ、話を続けよう。

 

「そして、あるとき鏡の話題が出たことから、ペルマスクへ行くため中継地を作る準備を始めることになる」

「噂に聞くペルマスクの鏡ですか……。どんなものなのでしょう……」

 

 それを聞いたロクサーヌの表情がうっとりしたものへと変わる。

 

 この世界の女性にとって憧れらしいしなぁ。

 おそらく、俺が地球から持ち込んだものより映りは悪いだろうが、いずれ彼女専用の物を用意するか。

 

「そんななか商人ギルドへルークを訪ねるとハルツ公爵家のゴスラー殿と再会して、第三皇子の結婚祝いの贈り物について相談を受け、ペルマスクの鏡を勧めることでハルツ公のエンブレムを受け取ることになるんだ」

「公爵家のエンブレム……」

「そう、そして公爵家へ鏡を販売することになる。何度も持ち込んだことで知遇を得て、ハルツ公爵直々に領内の迷宮探索の依頼をされる」

「公爵から直接ですか!?」

 

 ロクサーヌから驚きの声があがる。

 ミチオは大して気にしていなかったが、この世界の人にとってはやはりすごいことなのかもしれない。

 

 ……しかし、五巻を確認していて気が付いたことがある。

 錬金術師を外すとメッキの効果が切れるのか。

 うーん……。当面の間は低階層で過ごすことになる。とりあえずメッキなしで試してみて、どうしても被ダメが大きいようだったら錬金術師をつけるようにしよう。

 

 セットできるジョブの数は最大でも七つ。最終候補の中に錬金術師が入ることはないだろう。

 早めのレベルアップと遊び人取得のため、余計なジョブのレベルをあげている暇はない。

 やはり、身代わりのミサンガを準備して装備を固め、回復を怠らないようにする方がいいな。

 

 メインとなるジョブ以外は、冒険者と遊び人を取得後にレベルアップを図ろう。

 

 

 

 五巻を置いて六巻を取り、ロクサーヌに表紙を見せる。

 

「依頼の迷宮に入りつつ鏡を売却し、公爵領内で採れるコハクをペルマスクで売却することで資金が貯まり、三人目の仲間が加入することになる。それがこの娘、十五歳の猫人族で名前はミリア」

「猫人族ですか……。それはいいかもしれませんね」

 

 おいおい。何を考えているか分かっちゃったんですけどー。

 

 猫人族は恋人や夫婦であっても長時間触れ合ったりしない種族。

 作中でもミリアは気まぐれで、フイっとミチオから離れたりしていた。

 

 ロクサーヌは俺との時間が減ることを嫌がってくれている。

 こんな俺を受け入れてくれたんだ、今更彼女の俺に対する気持ちを疑い不安になることはない。

 できるなら大声で叫びたいところだ。

 

 ロクサーヌは俺のことが好きなんだってー! むちゃくちゃ嬉しいぞー!

 

 

 

「ミリアは暗殺者のジョブについて魔物を石化させるという、迷宮探索において重要な役割を担うことになる」

「暗殺者ですか……」

「実はこの暗殺者のジョブを獲得できたのはロクサーヌのおかげなんだ」

「え!」

 

 おー。驚いてる驚いてる。

 

「ミチオとロクサーヌが戦士のレベル30に到達したとき、ロクサーヌにだけ暗殺者のジョブが発生した」

「どうして私だけなのでしょうか?」

 

 彼女は不思議そうな表情を浮かべながら問いかけてきた。

 

「暗殺者は毒などの状態異常攻撃を行うジョブだとセリーに説明をされて、ロクサーヌが幼いころに行っていた毒でノンレムゴーレムを倒したという話を思い出す。そこで同じことを試してみると暗殺者を得ることに成功したという流れだね」

「そうだったのですか。幼いころにしていた遊びが思わぬところで役立ちました」

 

 そう言うとロクサーヌは嬉しそうに微笑んだ。

 あのクッソ恐ろしい行為を良い思い出風に語っているのがすごすぎる……。

 

 常人には理解できないところで生きてんなぁ。

 そんな娘に修行をつけてもらう俺は大丈夫なんだろうか?

 

 

 

「ミリアが暗殺者のジョブに就き魔物を石化することが可能となることで、殲滅速度が増していくことになる」

「私も暗殺者のジョブを得ているんですよね? ご主人様、私ではだめなのですか?」

 

 ロクサーヌは不満げな顔を隠そうともせずそう言った。

 

 ぷんぷんしてるー!

 なにそれ! めちゃくちゃ可愛いんですど!

 

 重要な役割を自分に任せてもらえなかったことに思うところがあるのだろうなぁ。

 だけど、それは俺がやった事じゃないんですが……。

 

「魔物が石化すると白くなるということだけど、普通は見ても色が変わっているか分からない。だけど、猫人族だけはその特殊な目で色の判別がつくらしい」

「そうなのですか?」

「うん。麻痺や毒になった時にもそれぞれ別の色になるようなんだ。だから、暗殺者のジョブを活かすためには、魔物の状態が石化か麻痺のどちらか判断がつくミリアが最適となる」

「そうですか……。それなら彼女の方が向いていますね……」

 

 話を聞きロクサーヌがしょげてしまった。

 ロクサーヌにはロクサーヌの強みと役割があるから落ち込むことはないのに。

 もっと先の話になるが、慰めるために彼女のジョブについて話しておこう。

 

「落ち込むことはないよ。ロクサーヌは巫女のジョブに就いて、パーティーの回復を一手に担うことになる。いわばパーティーの生命線だね。それから、その高い回避能力で前線を支える。他の人には絶対に真似できない君だけの役割だ」

「私が巫女! 前衛を行いながら回復もこなすのですか! ご主人様のお役に立てるよう頑張ります!」

 

 わーお。なんかいきなりテンションが上がったぞ。

 まあ、元気が出たのなら何よりだ。

 

 ……でも、俺も回復を行うだろうし、一手には大げさすぎたか。

 

 

 

「ミリアが仲間になった後、迷宮で盗賊に襲われることになる。襲ってきたのはセルマー伯爵領を荒らし回り、その後ハルツ公爵領に移動してきた兇賊ハインツや狂犬のシモンの一味だ」

「狂犬のシモンですか!」

 

 原作ではロクサーヌも知っている有名人みたいだし、そりゃあ驚くよな。

 

「狼人族の間ではとても有名な海賊です。片手剣の相当な使い手ということでしたが、そのような者と戦えるとは腕が鳴ります」

 

 おいおい。このお嬢さん自分が戦う気満々だよ。

 

 ロクサーヌには悪いが万が一があっては困る。

 ハルバーの十二階層に入るときには、ハインツ一味を始末するまでデュランダルと歩雲履を常に身に着けておくことにしよう。

 オーバーホエルミングとのコンボを使い速攻で片付けてやる。

 というか、迷宮内で盗賊のジョブが鑑定に引っかかったら、どんな奴であろうと問答無用で首を跳ばす。

 もちろん、この出来事の前に襲われるターレの十三階層にいた盗賊もな。

 

 悪・即・斬だ。

 デュランダルで牙突を叩き込んでやるぞ。

 ……いや、両刃のデュランダルであんな真似をすると、指がどっかに飛んでいきそうだからやめておこう。

 

「そして、こいつらを倒して手に入れた決意の指輪という装備品。これが後々重要な意味を持ってくるんだ」

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv21 英雄Lv18 魔法使いLv21 戦士Lv18 商人Lv2

装備 サンダル

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

鑑定:1

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

ワープ:1

ジョブ設定:1

MP回復速度二十倍:63

結晶化促進四倍:3

 

所持金:386,357ナール

 

春の4日目

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