目が覚めると柔らかく温かい感触が体に伝わってきた。
ああ。腕の中にロクサーヌがいる。
よかった。昨日の初体験は夢じゃない。
「おはようございます、ご主人様」
俺が起きたことに気づいたのだろう。可愛らしい挨拶の声が聞こえてくる。
「おはよう、ロクサーヌ。今日もよろしく」
「はい。私の方こそよろしくお願いします」
お互いに全裸だったため、そそくさと服を身に着けた。
「それじゃあ今日の予定だけど、身支度を整えたらパン屋が開く時間までは迷宮へ行き探索をしようと思う。ロクサーヌ、体の調子はどう? 初めてだったんだから痛みがあるようなら無理せず言ってほしい」
俺は最高に気持ち良かったが彼女には痛みがあったことだろう。絶対に無理をさせるわけにはいかない。
「ご主人様、お気遣いありがとうございます。優しくしていただいたおかげで、話に聞いていた初めてとは違い痛みもそれほどありませんでした。それに、終わったあとに手当てを使っていただいたのですよね? 痛みが引いていくのを感じていました。本当にありがとうございます」
あらら。気づかれてたのね。
でもまあ、体に問題はなさそうだな。
「迷宮探索は大丈夫かな?」
「はい。問題ありません」
「それじゃあ今日の午前中はクーラタルの迷宮に行って、MP回復の拠点を作るために地図を利用して人の少ない階層まで一気に駆け抜ける。人や魔物と出会わないようにロクサーヌの鼻に頼ることになるからお願いね」
「はい! お任せください!」
おおっ。自信満々。さすがロクサーヌ。さすロクだ。
これを作っておかなければ風呂を沸かすこともできないからな。真面目に取り組むべ。
「お店が開くくらいの時間になったら一旦探索をやめて食材の買い出しをしよう。それが終わったら家へ戻って朝食の準備だね」
「はい。昨日のポトフが残っていますので、それとパンをいただきましょう」
ロクサーヌが作ってくれた一晩寝かせたポトフ。楽しみだなぁ。
いい機会だから迷宮から冒険者ギルドへ戻ったときに傷薬も買っておくか。
「あと、ロクサーヌには迷惑をかけるけど、今日から食事は朝昼晩の三食にして一食当たりの量を減らそうと思う。朝晩の二食で大量に食べるという生活スタイルがどうにも体に馴染まなくてさ。それにこれは健康にも良くない」
血糖値とかインスリンとかグルコーススパイクとか言っても理解されないだろうが、生活習慣病には気を付けておこう。
まあ、迷宮探索という肉体労働に勤しむのだからそれほど心配する必要はないだろうが念のためだ。
「そうなのですか?」
そうなのです。またメタボになるのは絶対嫌なのです。
「うん。いつまでも健康で長生きをして、ロクサーヌとずっと一緒に暮らしたいからね」
「はい。分かりました。ご主人様、いつまでもおそばにおいてくださいね」
もちろんですとも!
「朝食が終わったら迷宮に戻ってMP回復拠点確保の続きをしよう」
「はい」
おそらく午前中で人の少ない階層まで行けるはず。そこまでたどり着いたら残りの時間は狩りに勤しむとしよう。
「お昼になったら食事に戻る。今日の昼食は俺が作るから」
肉屋にハムが売っていたし、卵とチーズそれから葉野菜を買って、ハムサンドでいいな。
あとは昨晩初めてを捧げてくれ、そして俺の初めてを貰ってくれたロクサーヌへの感謝として、ささやかだがデザートにホットケーキでも作ろうか。
牛乳と卵、そしてバターを用意しないといけない。
それから冒険者ギルドで傷薬を買う時にコボルトフラワーとコボルトスクロースも一緒に購入しよう。コボルトフラワーについては、一個は手に入るはずだがそれじゃあ足りないだろう。
ホットケーキミックスやベーキングパウダーはないが重曹があり、泡立て器だってあるんだからメレンゲだって作れる。ふわふわのホットケーキを食べてもらおう。
泡立て器を持ち込んだその慧眼っぷりに、我ながら感心することしきりである。
……泡立て器じゃなかったよなぁ。持ち込むなら絶対工具セットだっただろ。
ハンマー、のこぎり、コンベックス、ペンチ、ニッパー、ダイヤモンドヤスリ、ラチェットにドリルビット。
はぁ……。
内心へこんでいると彼女が尋ねる。
「よろしいのですか?」
「うん。一人暮らしも長かったせいで、一通り家事はこなしていたから全然問題ないよ。それとロクサーヌ。甘いものは好き?」
「甘いものをいただけるのですか!?」
お嬢さん大興奮である。贅沢はダメとか言われなくてよかったぁ。
めちゃくちゃ嬉しそうにしてくれている。
尻尾がキャミソールを揺らしまくっているのも本当に愛らしいわぁ。
こんなに喜んでくれているんだ。泡立て器で問題なかった。いや逆に泡立て器でよかったんだ。
ロクサーヌに重曹とメレンゲでふわふわに仕上げたホットケーキを食べてもらい、それを証明してやるさ。
「昼食が終わったらクーラタルと帝都の防具屋へ行き防具の見直しを行う。ついでだから武器屋も覗いていこう。他に買いたいものもあるから商店も回ろうか」
「防具の見直しですか?」
彼女は頭の上にはてなマークが浮かんでいるような表情で尋ねた。
まあ、三日前に買ったばかりの防具を更新するんだ。そりゃ疑問に思うか。
「昨日修行をしたときに、お互いに防具の性能が頼りないと思ってね。このままじゃ事故が起きてもおかしくない」
「そうですね。それに迷宮に入る以上、より良い装備品にするのは大切なことだと思います」
そりゃそうだ。迷宮では何が起こるか分からない。
それに、錬金術師を付けず回復を戦闘後に行うつもりなんだ。防具でカッチカチにして被ダメを少しでも減らしておかないと。
今後掘り出し物を探すため、ベイルの市が立つ日に合わせて五日ごとに、ベイルとクーラタル、それから帝都の武器屋と防具屋を確認することにしよう。
六か所も回っていればそのうち何かしら見つけることができるはずだ。
まあ、気長に探してみるさ。
「そのあとは世話役のところからハーブの種を貰って庭作業をしよう。ひとまずこれで引っ越しに関することは終わりかな? 明日からが本格的な迷宮探索の始まりになるね。ロクサーヌ、今後ともよろしく」
「はい。頑張ります」
彼女はぐっと力こぶを作るポーズを取る。
キャミソール姿でそのポーズは可愛すぎじゃございませんこと? ミスマッチ感があってぐっとくるわぁ。
「それが終わったら修行をつけてもらえる?」
「はい! こちらこそよろしくお願いします!」
わーお。むちゃくちゃ嬉しそうにしてるよ。
たぶんオーバーホエルミングに対応されるんだろうなぁ……。
「そのあとは夕食をとって、それからお湯で体を流そう。今日の予定はこんなところかな?」
「あの、ご主人様……」
予定を言い終わるとロクサーヌがこちらに寄ってきて耳元に顔を近づけ囁いた。
「今夜もいっぱい可愛がってくださいね」
その言葉を聞くと我慢できずに柔らかな体を抱きしめてしまった。
そして、そのまま愛らしい犬耳へと囁く。
「ロクサーヌ。これからも毎日よろしくね」
「はい。ご主人様に毎日可愛がっていただけるのを楽しみにしています」
さらに強くロクサーヌの体を抱きしめる。
「ありがとう。俺の大切なロクサーヌ」
「こちらこそありがとうございます。私の大切なご主人様」
バスルームで水がめやたらいに水を貯め、歯磨き粉を使って歯を磨く。
もちろん念のため手当ての使用も忘れずにだ。
そして、歯磨きのあとは大切な朝の習慣を行う。
毎朝こんなキスができるなんて本当に幸せだなぁ。
そのあとは、ロクサーヌに髭を剃ってもらい手当てを使っておいた。
さて、迷宮に行く前にジョブとボーナスポイントの見直しをしておこう。
とりあえずフィフスジョブの僧侶を商人に入れ替えておくか。
今日はMP回復拠点の確保が目標だからとにかく速度優先でいこう。
ロクサーヌの鼻で人も魔物もスルーして、どうしても戦わなくてはいけなくなったときはデュランダルとラッシュを使い速攻で片付ける。
いつでもデュランダルを出せるようにMP回復速度二十倍に振っている63ポイントはフリーにしておこう。
こんなもんかな?
ボーナスポイントの見直しを終え、装備を整えたところで玄関へ向かう。
さあ、サンダルと靴を履き替えたら迷宮に出勤だ。
……自宅から通勤時間〇分の職場って夢みたいだなよぁ。
昨日、自宅に戻った小部屋へワープし通路へ出ると、やはり人がちらほらと見える。
魔法もデュランダルも見られるわけにはいかない。
予定通り人も魔物もスルーだな。
ベイルの迷宮では人を見かけることはなかったが、今後は迷宮で人に出会うこともあるだろう。鑑定でジョブを確認することを怠らないようにしなくては。
もし盗賊を見かけたらそのときは……。
リュックから迷宮地図を取り出しロクサーヌと確認する。
「魔物と戦わず最短距離を行きたいんだが大丈夫そうか?」
「魔物の匂いはほとんどありません。沸くとすぐに狩られているのでしょう。最短距離で大丈夫だと思います」
よし。問題なさそうだ。
「それじゃあ、行くか」
「はい!」
魔物と戦うことなくボス待機部屋へ入ると、結構な数のパーティーが並んでいた。
俺たちも最後尾につけ、順番が来るのを待つ。
すると、次々と待機部屋に入ってくるパーティーがあり、俺たちの後方の列が見る見るうちに伸びていく。
……この行列はすごいな。
ミチオが言ってた通り、まんまアトラクションの待機列だわ。
少しするとボス部屋が開き最前列のパーティーが入っていった。
最弱ボスのコボルトケンプファーなのが救いか。こいつなら待ち時間も短くて済むだろう。
しかし、人型で子供くらいの大きさのやつを六人で囲んでタコ殴りにする光景をそうぞうすると、なかなか酷いものがあるな。
……それにしてもこいつら、俺のロクサーヌをチラチラ見すぎじゃないか?
確かに彼女は美人で可愛くスタイル抜群だが、そんな露骨に見るんじゃない。
そうこうしている間にどんどん列が進み、俺たちの番になる。
「それじゃあ、行くか」
「はい」
ドアを通り抜けると天井が高く広々とした空間が広がっていた。
初めてのボス部屋だがこんなに広いものだったんだな。
「ご主人様! 来ます!」
おっと。キャラクター再設定を開きデュランダルを取り出す。
中央付近に靄のようなものが現れ徐々に形になっていく。
コボルトケンプファーLv1
鑑定をかけているとロクサーヌが飛び出しタゲを取ってくれている。
そのおかげでガラ空きの背後から近づきデュランダルで切りつけた。
すると、先ほどの光景が逆再生されたかのように靄になって消えていく。
さすが最弱ボス。あっさりだったわ。
コボルトフラワー
おっ。コボルトフラワーゲットだぜ!
しかし、こいつはウェブ版だと三十四層のボスであるコボルトイェーガーのドロップ品だったのに、書籍版以降ではずいぶん降格されている。
そして、この世界でもそれは踏襲されているようだな。
小麦粉に混ぜて使うという設定がなくなって使いやすくなっているし、まあ便利でいいか。
「それじゃあ次の階層に行こう」
「はい」
扉を抜けるとロクサーヌが鼻をスンスンさせている。
これ本当に可愛いよなぁ。
「ご主人様、二階層にはほとんど人がいません」
「そうなのか?」
「はい。魔法やデュランダルで戦っても問題ないと思います」
あー……。
そういえば、原作では二階層の半分もコボルトだからうまみがないみたいなことを言っていたな。
人がいないとなるとここをMP回復拠点にしたくなる。
しかし、デュランダルのスキルはMP吸収だ。敵のMPを奪っているのだろう。
だとすると、MPが少ない魔物からはたいして吸えないということになるはずだ。
人の少ない階層に拠点を設けたいところだが、できればMPが多い魔物をターゲットにしたい。
そう考えた場合、ここでは不十分となる。
魔法で1確できる魔物の上限を探りつつ、合間のデュランダルを使ったMP回復のときにターゲットの選定をしていこう。
まあ、条件に合う階層が見つかるまではここを使えばいいさ。
よし。それじゃあ、始める前に実験だ。
キャラクター再設定を開いてデュランダルを獲得経験値二十倍に付け替え、フィフスジョブの商人と剣士を入れ替える。
そして、アイテムボックスからロッドを取り出した。
「ロクサーヌ。ちょっとした実験を行うので、同じ魔物が二体いるところへ案内してもらえるか? できればコボルトじゃない方がいい」
「でしたらナイーブオリーブですね。お任せください」
鼻をスンスンさせている彼女の後をついていく。
少し進むとニードルウッドより細くて緑色の木が二体こちらに向かってくる。
ナイーブオリーブLv2
ナイーブオリーブLv2
さすがロクサーヌ! オーダー通りだ! それじゃあ魔法いっちゃうぜー!
ファイヤーストーム
念じるとナイーブオリーブ周辺に火の粉が舞い、そして一気に燃え上がる。
そのまま燃焼が続き、やがて奴らが倒れ靄のように消えていった。
よし! 二階層も1確だぞ!
ドロップ品のオリーブオイルをアイテムボックスにしまい、自分へ向けて鑑定をかける。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv21 英雄Lv18 魔法使いLv21 戦士Lv18 剣士Lv2
装備 ロッド 皮の帽子 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴
経験値効率二百倍なのに剣士のレベルは1しか上がっていない。
スローラビットやグミスライムを狩っていた分の蓄積があるはずなのにだ。
それじゃあ、条件を変えて再度実験だな。
フィフスジョブを錬金術師に変更してロクサーヌに声をかける。
「ロクサーヌ。悪いが先ほどと同じ組み合わせの魔物のところへ案内してもらえるか?」
「はい。ナイーブオリーブ二匹でよろしいですか?」
「うむ。頼む」
「かしこまりました。ふふ」
どしたん? なんで笑ったん?
「ロクサーヌ。何かあったか?」
問いかけるとニッコリ笑顔で彼女が答えた。
「いえ。ご主人様の口調が凛々しくて素敵だったので思わず声が出てしまいました」
なっ!
……よく考えたら今の俺、別人格を装うタイプの中二病患者そのものじゃないか。
のたうち回りたくなるくらい恥ずかしい……。
しかし、舐められないためにミチオの真似をするのは必要なことだしなぁ。
……ずっとこの口調で喋った方がいいのか?
「ロクサーヌ。ずっとこのままの口調でいた方がいいだろうか?」
「それは駄目です。自宅で二人きりのときには素顔のご主人様でいてください」
あ、はい。
「そ、そうか。ではそうしよう」
「はい。お願いしますね」
彼女の案内で再びナイーブオリーブ二匹とエンカウントする。
ファイヤーボール
こちらに向かってこようとした手前側の方に火球が着弾し、そのまま倒れ消えていった。
よし! ファイヤーボールでも一発だ!
続けてもう一匹にも念じる。
ファイヤーボール
同じように火球が命中し炎に包まれると、やがて空気に溶けるように消えていく。
ほい、鑑定。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv21 英雄Lv18 魔法使いLv21 戦士Lv18 錬金術師Lv3
装備 ロッド 皮の帽子 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴
錬金術師のレベルが3か……。
なるほどな。
ファイヤーストームで同時に二匹倒した場合、経験値の蓄積があったはずの剣士のレベルが1つしか上がらず。
ファイヤーボールで一匹ずつ倒したら、経験値の蓄積がなかった錬金術師のレベルが2つ上がった。
全体攻撃を用いて一度で倒した場合、経験値はまとめられ一回分として獲得することになるのだろう。
そして、レベルアップ時に経験値の繰り越しがない仕様のため、結果1しかレベルが上がらないと。
だとすると全体攻撃で倒した場合、損をすることになる。
だが、これもレベルアップ時に経験値の繰り越しがないのも、損だと思うのはレベルが低いうちだけだな。
次のレベルアップまでに莫大な経験値を要求されるころには、誤差程度にしか感じないだろう。
よし、フィフスジョブを商人に付け替えて上に進むか。
「ロクサーヌ。MP回復拠点を探りつつ次の階層を目指そうと思う。地図を確認して人がいる場所を避けながらボス部屋まで案内してもらえるか?」
「はい。お任せください」
彼女は俺が差し出した地図を確認しながら鼻をスンスンさせて歩き出す。
道中に出会ったコボルトとナイーブオリーブを倒しながら歩き続け、ボス部屋に到着する。
一応、入る前にロッドはしまっておこう。
それにしても、迷宮探索において攻撃魔法の有用性は圧倒的だな。
全ての魔物に対して必中で攻撃ができる上に、威力も物理攻撃を遥かに上回る。
他の職業に比べてDPS性能が桁違いだ。
一度に出現する魔物の数が増えるに従い、重要度はさらに増していくことだろう。
魔法使いの価値が高いというのも当然の話だわ。
思索を打ち切り中へ入ると二階層の待機部屋でも先に並んでいるパーティーがいた。
うーん……。やはり不人気階層でも順番待ちはあるのか。
まあ、ボス戦ではデュランダルを出すんだ。今のうちにキャラクター再設定を見直すとしよう。
鑑定っと。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv22 英雄Lv18 魔法使いLv22 戦士Lv19 商人Lv13
装備 皮の帽子 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴
お! 全てのジョブがレベルアップしている!
二階層の魔物になったことで獲得経験値が増えたのだろう。
商人なんてもう13に到達しているぞ。こんなに変わるものなんだなぁ。
さて、獲得経験値二十倍を外しておくか。
ボーナスポイント64
あと1ポイントあればワープとジョブ設定を外して結晶化促進八倍に振れるんだけどなぁ。
鑑定か詠唱省略を外せば現段階でも可能ではあるんだが、さすがにこれを外すのは怖い。
まあ、ここは無理をする場面じゃないだろう。
知力に振って素の状態で1確できる魔物が分からなくなるのも困るし、この1ポイントは腕力上昇にでも振っておこう。
1ポイントじゃ変わらないと思うけど念のためだ。
……またロクサーヌをじろじろ見ている輩がいる。
美人ってこんなに見られるものなのか。
でも、彼女はあまり気にした様子がないな。
生まれてから今までずっとこんな視線にさらされていて、これが普通になっているのかもしれない。
順番を待っていると声をかけられる。
「ご主人様。そろそろパン屋が開く時間になります」
「そうなのか?」
「はい」
さすがロクサーヌの腹時計。
「では、ボス戦が終わったら一旦引き上げることにしよう」
「かしこまりました」
程なくして俺たちの番が回ってくる。
「では、行くか」
「はい」
ボーナスポイントを振り出現したデュランダルを構えると部屋の中央にボスが出現する。
鑑定
パームバウムLv2
椰子の木みたいな奴が頭にある葉っぱの生えた枝を腕のようにぶんぶん振り回してきた。
ロクサーヌは前に出ると枝攻撃をかわしたり、盾で捌いたりしてタゲを取り続けている。
今のうち!
パームバウムの後ろに回りデュランダルを振りかぶりながら念じる。
ラッシュ
いつもより力強く振り下ろされた剣が魔物の体に食い込むも倒れる様子はない。
くそっ! 一発じゃ無理か!
俺の方に体の向きを変えようとするが、ロクサーヌが攻撃をし続け魔物のヘイトを取り続けていた。
もう一発だ!
ラッシュ
デュランダルを横に薙ぎ、剣身がパームバウムの体を通過すると、奴の体が霧のように消えていった。
「ふぅ」
思わず息が出てしまう。
まだ二階層なのにチート武器のデュランダルを使ってもラッシュ二発が必要だった……。
原作を読んで知っていたし、他の人に比べればめちゃくちゃ恵まれているのは分かるが、ボス戦はなかなか厳しいなぁ。
ん? いやいや。今後より強力なジョブを獲得するし、レベルが上がれば素の能力も上がる。それに、パーティー効果も強力になっていく。
そして、なんといっても頼りになる仲間も増えるんだ。切り替えていこう。
大丈夫、大丈夫。何の問題もない。
気持ちを切り替え、残ったアイテムに鑑定をかけてみる。
パームオイル
雑魚のドロップがオリーブオイルでボスのドロップがパームオイルなのん?
価格的に逆じゃない? この世界はパームオイルの方が貴重なんだろうか?
それとも、ボスのドロップでも高いとは限らないのかな?
んー。まあ、気にしてもしょうがない。
デュランダルをMP回復速度二十倍に変え、アイテムボックスからシミターを取り出して腰のベルトに差す。
「それじゃあ、三階層に行ったら一旦探索を終えて買い物に行こう」
「はい」
扉を出て三階層へ移動し、そのままクーラタルの冒険者ギルドを思い浮かべながらワープゲートを開く。
そして、出現したゲートへ身を埋めた。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv22 英雄Lv18 魔法使いLv22 戦士Lv19 商人Lv13
装備 シミター 皮の帽子 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴
BP振分 残BP:0
キャラクター再設定:1
フィフスジョブ:15
鑑定:1
必要経験値十分の一:31
詠唱省略:3
ワープ:1
ジョブ設定:1
MP回復速度二十倍:63
結晶化促進四倍:3
腕力上昇:1
所持金:386,357ナール
春の5日目