異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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037 盾

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮

四階層

 

 

 

 

 

「四階層の混み具合はどうだ?」

 

 扉を出て四階層に到着したところで尋ねると、ロクサーヌは鼻をスンスン鳴らしてから告げる。

 

「こちらも人の匂いが多いようなので、アレは使わない方がいいでしょう。やはり上へ進むべきだと思います」

 

 隠さないといけないことが多いからな。まあしょうがない。

 四階層はスルーで五階層に上がって戦えるか試してみよう。

 無理そうなら、今日のところは二階層に戻ってレベル上げの続きだな。そして明日、人の少ないベイルの迷宮で改めて1確できる上限を探してみるか。

 

「それじゃあ、先ほどと同じようにボス部屋まで案内を頼む」

 

 迷宮地図をロクサーヌに渡し見てもらう。

 

「はい、おまかせください」

 

 地図の確認が済み、匂いをたどりながら歩き出した彼女の後に続く。

 それにしても、よく一度見ただけで道順を覚えられるなぁ。これもかなりの特殊能力だぞ。

 本当にいくつ特殊能力を持っているんだ。やはりこのお嬢さんはとんでもないわ。

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮四階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

 さすがロクサーヌの鼻。三階層と同じく魔物に一切会うことなくボス待機部屋までたどり着くことが出来た。

 

 中に入るとやはり複数のパーティーが列を形成している。

 

 あー。やっぱそうだよなぁ。

 まあしゃあない。俺たちも列に並び順番を待とう。

 

 四階層のボスはビープシープ。

 こいつは睡眠のスキルを使う厄介な相手だ。そのスキルを食らえば確定で一撃もらうことになってしまう。

 

 とにかく安全第一でいこう。

 スパイススパイダーと同じように、開幕オーバーホエルミングでラッシュ連発。

 デュランダルを当て続けスキルを使わせないことが肝心だな。

 いや、ボス戦ではデュランダルの運用を基本にするから、どのボスだろうとこの作戦でいくことになるか。

 

 ある程度のチャレンジを行うにしても、それは雑魚戦でやればいい。命がかかっているんだ。わざわざ危険なボス相手に冒険する必要なんてまったくない。

 

 

 

 うーん。それにしても列の進みが遅い。

 四階層ともなると魔物のHPや防御力も増し、倒すまでに時間がかかっているのだろう。

 俺たちも気を引き締めて挑まないといけない。

 

 

 

 しかし、暇な時間が出来るとスマホをいじりたくなるな。四十五のおっさんなのに完全に現代っ子だ。

 持つようになってから十数年。出先で時間が空くと常にいじっていたせいで、スマホがなければ待ち時間に何をすればいいのかさっぱりわからないぞ。

 その前はどうやって暇をつぶしていたんだっけ? スマホを持つ前の年月の方が長いはずなのにまったく思い出せない。

 

 

 

 退屈しのぎにロクサーヌの方を見ると、視線に気づいたのかこちらを見てにっこり微笑んだ。

 

 あらためて見ると、とんでもなくかわいい娘だなぁ。

 俺はこんな娘と初めてを迎えることができたのか。

 本当に幸せ者だわ。

 

 思わず抱きしめてキスをしたくなるがグッと堪える。

 

 ……わかってしまったなぁ。

 

 街中で人目も気にせずイチャついていたバカップル。

 TPOも弁えず不愉快だと思っていたが、許されるのなら俺も今ロクサーヌを抱きしめてイチャイチャしたい。

 さすがに人並みの羞恥心を持ち合わせているのでそんなことはしないが、気持ちはわかってしまった。

 

 ……手を繋ぐくらいなら大丈夫じゃね?

 

 いやいやいや、いかんいかん! 童貞喪失して色ボケしてんのか!

 

 ここは生活の糧を得るために労働する場所。職場といってもいいだろう。

 そんな場所で盛る馬鹿がどこにいる!

 ましてや常に命の危険と隣り合わせの迷宮なんだ。自分を律して探索に注力しよう。

 

 仕事中の自分を思い出せ。職場では毅然とした態度で、総務の業務を一人で回していたじゃないか。

 

 そうだ、俺は課長田川歩。

 

 顔を引き締めて気持ちを切り替えるんだ。

 

 

 

 気持ちを切り替えていると、こちらを見ていたロクサーヌと目が合う。

 

「ふふ。ご主人様、凛々しいお顔が素敵です。どうかなさいましたか?」

 

 毅然とするの無理ー! だってかわいいんだもん!

 

「いや、これから四階層のボスに挑むのだ、気を引き締めようと思ってな」

 

 俺の言葉を聞くとロクサーヌの目は鋭くなり雰囲気を一変させる。

 

「そうですね。ご主人様なら問題ないと思いますが、どれだけ格下の相手でも油断は禁物でしょう」

 

 これだ。ロクサーヌの戦闘とそれ以外に対して切り替わるオンオフスイッチ。これは迷宮探索を行う上で見習うべき姿勢だろう。

 緊張感をずっと維持するなんてどだい無理な話だ。適度に切り替えることも重要になるはず。

 俺も意識して取り組んでいこう。

 

「うむ。よろしく頼むな」

「はい。おまかせください、ご主人様」

 

 今はオフだから思う存分ロクサーヌを見てもいいよな?

 

 

 

 ロクサーヌを見ながらとりとめのない話をしていると目の前の扉が開いた。

 

 よし、リフレッシュもバッチリだ。しまってこー!

 

「それじゃあ、行くか」

「はい、ご主人様」

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮四階層

ボス部屋

 

 

 

 

 

 シミターをアイテムボックスに入れて、ボーナスポイントを振りデュランダルを構えたところでフロアの中央にどんどん靄が集まり形になっていく。

 

ビープシープLv4

 

 いやいやいや、大きすぎるって! 間違いなく俺より大きいんだが!

 狂犬病なのかってくらい凶暴な顔つきだし、横長の瞳孔もクッソ怖いわ!

 

 出現すると同時に上げた、でかくて耳障りな鳴き声が威圧感を倍増させている。

 

「いきます!」

 

 しかし、そこはロクサーヌ。ビープシープの威圧感をものともせずにその顔面にレイピアを叩き込み、注意を引き始めた。

 

 怖気づいていられるか! 俺も行くぞ!

 

オーバーホエルミング

 

 スローモーションでロクサーヌとの戦闘を開始したビープシープの背後に回り、ケツ目掛けてデュランダルを振り下ろしながら念じる。

 

ラッシュ

 

 振りぬいたところで、切り上げながら再び念じた。

 

ラッシュ

 

 さらに追撃をかけようとしたところでビープシープの後ろ脚がゆっくりと俺に迫ってくる。

 

 くっ!

 

 とっさに距離を取り、蹴り上げをかわしたところでビープシープの足元に魔法陣が展開された。

 

 まずい!

 

 思いっきり腕を伸ばし、その横っ腹目掛けデュランダルを突き入れる。

 何とか間に合ったのか、スキルが発動することなく魔法陣が掻き消えた。

 

 そして、オーバーホエルミングの効果が切れると、ロクサーヌとビープシープの速度が通常に戻り丁々発止とやり合い始める。

 

 ビープシープは対峙しているロクサーヌへ角をぶちかますような頭突きを放つが、至近距離から受けたそれを華麗にいなし、顔に向け執拗にレイピアを当て続けている。

 ビープシープは一旦距離を取ると今度は助走をつけ再び頭突きを見舞う。しかしロクサーヌはそれをあっさりかわすと好き放題攻撃を当て続けていた。

 

 

 

 すげー。なんかもう、全然参考になんないわ。

 

 あ、いかん。見惚れている場合じゃない。

 

 もういっちょ行くぞ。

 

オーバーホエルミング

 

 時の流れが緩やかになると、ロクサーヌと対峙しているビープシープの背後へ再び回りこみラッシュを載せたデュランダルを叩き込む。

 

 まだか! くそっ、こうなりゃ野郎が倒れるまで何発でもいったるわ!

 

 蹴り上げを警戒し、今度は側面の土手っ腹へ向けラッシュを念じながらデュランダルを突き入れたところで、ようやくビープシープは霧となり辺りへ散っていった。

 

 

 

 はー、やっと終わった。心拍数がえらいことになってるぞ。やっぱボス戦は緊張感が半端ないわ。

 今のところまだ魔物の攻撃を受けていないせいで、かえって恐怖が募っていっているんだが……。

 

 魔物の攻撃を受けたらその痛みに耐えられるのか?

 そして、このままスムーズにいきすぎて、初ダメージが高階層の魔物なんてことになると、あまりの痛みにのたうち回ったりするんじゃないか?

 

 とりあえず、できる対策としては、相手とのレベル差を広げレベル補正の影響を大きくする。それからなるべく良い装備を身に着け防御力を上げる。こんなところだな。

 午後からの防具屋巡りでは真剣に選ぶことにしよう。

 

 あとはそうだな。午後にでもボーナス装備の確認をしてみるか。

 他に回すポイントとの兼ね合いで、せいぜい3ポイントくらいしか振れないだろうが、もしかしたら有用な装備品が見つかるかもしれない。

 そして、デュランダルや歩雲履のように最大までポイントを振った場合、超絶チートな装備品が出ることだろう。

 もしかしたら、デュランダルに代わって使えるような物もあるかもしれない。

 今のうちに確認しておいた方がいいな。

 

 

 

 拾ったドロップアイテムを差し出しながらロクサーヌが話しかけてくる。

 

「四階層のボスを危なげなく倒してしまうなんて、さすがご主人様です。まったく相手になりませんでしたね」

 

 そんなことないんだよなぁ。全然余裕なんてなかったし、オーバーホエルミングとデュランダルがなければ危なかったと思う。

 それになにより、ロクサーヌが回避盾として完璧な仕事をしてくれているおかげだ。

 

「それもこれも、ロクサーヌが相手を引き付けてくれたおかげだな。本当にありがとう。これからもよろしく頼む」

「はい! こちらこそよろしくお願いします!」

 

 差し出されたドロップアイテムを受け取り鑑定を行う。

 

マトン肉

 

 マジか?

 原作ではヤギの肉でジンギスカンをしていたよな?

 ヒツジの肉が手に入るなら、わざわざヤギの肉でジンギスカンなんて言い出すはずがない。なにせパーンよりビープシープの方が倒しやすいのだ。

 ビープシープのドロップアイテムは作中には出てこなかったが、おそらく原作の設定とは異なっているのだろう。

 やはりここは原作と微妙に異なった世界ということか。

 

 

 

 受け取ったマトン肉をアイテムボックスに入れておく。そしてデュランダルもポイントに戻し、念のためシミターを取り出して腰に差した。

 

 さて、いよいよ五階層だな。

 

「それじゃあ、ロクサーヌ。先に進むとしよう」

「はい、ご主人様」

 

 ボスを倒した後に出現した扉を潜る。

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮

五階層

 

 

 

 

 

 目標としていた階層に到着したので、さっそく鼻を鳴らしながら確認しているロクサーヌに尋ねる。

 

「この階層の様子はどうだ?」

「だいぶ人も少ないので、魔法やデュランダルを使っても問題ないと思います」

 

 よし、それじゃあこの階層から試していくか。

 

 五階層で出現する魔物の数は最大で三匹。そして種類はコラーゲンコーラルとチープシープが大体半々。そして、それよりは少ないがスパイスパイダーが混ざるという感じだろう。

 どの魔物も弱点や耐性は気にする必要はないが、気を付ける点はスパイスパイダーが毒持ちで、低確率ながら攻撃を食らうと毒を受けてしまう可能性があることだ。

 

 スパイスパイダーの対策と、毒を受けた場合に取るべき行動についてあらかじめ決めておき、お互いの認識を共有してくべきだろう。

 

「スパイスパイダーの対応についてはロクサーヌにまかせていいか? 俺だと攻撃をもらって毒を受ける可能性が高くなる」

「おまかせください、ご主人様」

「それから、どちらかが毒を受けたときの対応についてだが。まずないだろうがロクサーヌが受けた場合は、俺がオーバーホエルミングを使い魔法か、もしくはデュランダルで一気に殲滅したあとで毒の回復を行う」

「はい」

「そして、俺が毒を受けた場合は、デュランダルを出していたときは俺から取って、これを使い魔物を殲滅してから毒の回復を行ってくれ」

「はい、かしこまりました」

 

 あ、ロクサーヌにデュランダルを使わせるのを忘れていた。

 このあと、一匹だけのところに案内してもらい使わせておこう。見えている地雷は早めに除去しておかないとな。

 

「そして、ロッドを出しているときに毒を受けた場合は、何とか隙をついて俺に毒消し丸を飲ませてくれ。ロクサーヌだけだと殲滅力が足りなくて詰みかねない」

 

 詰みかねないというか、毒の回復ができなければ俺が死に、そしてロクサーヌも殉死しておしまいだろう。

 その言葉を聞いたロクサーヌは表情を引き締め告げる。

 

「おまかせください。ご主人様は私が命を懸けてお守りします。私の目の前でご主人様が討たれてしまうことなど絶対に起こりませんので、どうかご安心ください」

 

 ……今の言葉は心に響いた。

 ロクサーヌが言うならきっとそうだと思える。この絶対の安心感と信頼感よ。

 少女漫画なら俺の横にキュンとかトクンみたいな効果音が描かれていることだろう。

 

「ロクサーヌ、本当にありがとう。頼りにしている」

「はい!」

 

 

 

 あとはそうだな。

 杖の使い方についてはミチオを参考にしていたが、少しばかり工夫を加えよう。

 

 こいつは片手武器なんだ。ということは盾が持てる。

 今後、杖を使う時は盾とセットで運用すべきだ。

 午後の買い物のときに探すことにするが、取り急ぎ今はボーナスポイントで対応してみるか。

 

 キャラクター再設定を開き、腕力上昇、ワープ、ジョブ設定のチェックを外し、ボーナス装備の盾二にポイントを振る。

 

強情の鉄盾 盾

スキル 精神上昇 魔法ダメージ軽減

 

 出現したのはラウンドシールドというのだろうか? 円形の盾だった。

 

 強情の鉄盾って……。

 しばらくは魔法攻撃をしてくるやつと戦うつもりはないってのに……。

 

 ん? いやいやいや、ガッカリすることはない。盾があることが重要なんだ。きっと役立ってくれることだろう。

 

「ご主人様、それは……」

 

 今まで俺が使用していない装備品を出したことに戸惑った様子でロクサーヌが声を漏らした。

 

「例のやつで出したんだ。これからは杖を使うときには一緒に盾を持つことにする」

「そうでしたか。身を守るためにはとても良いことだと思います」

 

 そうだよな。少しでも安全性を高めるため出来ることはやっておこう。

 

 

 

 シミターをアイテムボックスにしまい、左手に盾を装着する。

 武器や防具は持っているだけでは意味がないからな。ちゃんと装備しないとな。

 国民的RPGで学んだ基礎知識である。

 

 盾の裏についているベルトに腕を通し、持ち手を握ると勝手にベルトが締まりベストな装着感になった。

 さすが装備品。すごいもんだ。

 

 そして、ロッドを取り出して腰に差すと準備完了だ。

 

 

 

「デュランダルを渡しておくから魔物が一匹だけの場所に案内してもらえるか? 緊急時にロクサーヌがデュランダルを使うための予行演習をしておこう」

「本当に私が使ってもよろしいのですか?」

「ああ、ロクサーヌになら安心して託せる。もしもの時のために使い心地を確認しておいてくれ」

 

 というか君、先に別の娘に使わせると大変なことになるじゃないですか。

 

「ありがとうございます、ご主人様。その信頼に報いるよう全力を尽くします!」

 

 めちゃくちゃ気合が入っているが、一匹サクッと倒すだけなんだけどな。

 ボーナスポイントを振り出現したデュランダルをロクサーヌに渡し、動きを阻害しないよう、木の盾と腰に差してあったレイピアを俺のアイテムボックスへ移しておく。

 

「では、頼む」

「はい! おまかせください!」

 

 返事をすると、ニコニコと嬉しそうな笑みを浮かべながら意気揚々と歩き出した。

 

 

 

 お、いたな。

 

コラーゲンコーラルLv5

 

「試してみてくれ」

「はい!」

 

 ロクサーヌはコラーゲンコーラルに駆け寄るとそのままの勢いで斬りつける。一撃では倒れず反撃を許すが危なげなくそれをかわし再びデュランダルを振るうと、コラーゲンコーラルの体は空気に溶けていった。

 

 

 

「ご主人様! この剣はすごいです! 私でも五階層の魔物を二回の攻撃で倒すことができました!」

 

 ドロップアイテムを拾い、こちらに戻ってくるとロクサーヌは嬉しそうにそう告げる。

 

「問題なさそうだな。緊急時には俺からデュランダルを取り上げて魔物の殲滅を頼む」

「はい! おまかせください!」

 

 デュランダルを返してもらいポイントへ変える。そしてロクサーヌへレイピアと木の盾を返した。

 

 しかし今、倒すのに二発必要だったな。おそらくこれはロクサーヌだからというわけではなく、俺がやっても同じだっただろう。

 やはり五階層ともなるとデュランダル一振りというわけにはいかないか。

 今後は立ち回りに慎重さが求められるな。

 

 

 

「それじゃあ、魔法で戦っていくので案内を頼む」

「おまかせください」

 

 

 

 ロクサーヌの案内で進むとすぐにエンカウントした。

 

コラーゲンコーラルLv5

チープシープLv5

スパイスパイダーLv5

 

 最初から全部乗せかい!

 

 まあ、ロクサーヌも狙っているわけじゃないだろうし、しょうがないか。

 ⋯⋯狙ってないよね?

 

 こいつらは特に耐性も弱点もないから魔法を撃っていれば問題ない。

 

ファイヤーストーム

 

 敵が動き出す前にファイヤーストームを叩きこむと、ロクサーヌは魔物の方へ駆け出し動き出すのを待ち構えている。

 

 魔物達は炎に包まれたまま動き出し、コラーゲンコーラルとスパイススパイダーがロクサーヌに襲い掛かり、チープシープが脇を抜けようとした。

 ロクサーヌは二体の攻撃を捌きながら、さらにチープシープへ攻撃を入れてヘイトを自分へ向けると、三体の攻撃を掻い潜っている。

 

 とんでもねぇことするなぁ……。

 

 ロクサーヌが信じられないような回避性能を見せつけているうちに、魔物にまとわりついていた炎が消える。

 

 リキャストタイムが終わった! 二発目いくぜー。

 

ファイヤーストーム

 

 再び火の粉が舞い、魔物達が炎に包まれる。

 そして、程なく三体とも倒れたのだった。

 

 

 

 魔法二発か。やはりロッドのおかげでだいぶ魔法が強化されている。

 1確とはいかないが三体ならロクサーヌが前線を支えてくれそうだし、早期レベルアップのために、ここはチャレンジをするべきか?

 

 ドロップアイテムを拾いこちらに持ってきたロクサーヌに問いかける。

 

「倒すまでに魔法二発が必要になり、前衛を張るロクサーヌには負担をかけてしまうが大丈夫か?」

「はい、問題ありません。ご主人様のおかげで戦闘時間も短いですし、あの程度の攻撃なら何の負担にもなりません」

 

 いやぁ、普通の人は三体に囲まれて攻撃されたら相当な負担になると思うんですが……。

 

 ……まあ、ロクサーヌなら問題ないのだろう。

 

 それじゃあ、このまま五階層の探索と行こう。

 そして、六階層、七階層の魔物が何発で倒れるかもチェックしておくか。もし二発で倒れるならそちらで戦ってもいいしな。

 八階層からは敵が最大四匹になるからリスクが高すぎる。今のところは選択肢から外しておこう。

 

「ロクサーヌ。魔法二発で倒れる魔物を探ろうと思う。魔物と戦いながら上を目指そう」

「はい! 素晴らしいことだと思います!」

 

 すげー嬉しそうにしてるよ。この戦闘大好きっ娘め。

 めちゃくちゃかわいいじゃねーか。

 

 

 

 ロクサーヌが差し出したドロップアイテムを鑑定する。

 

コーラルゼラチン

ヒツジの毛

ウコン

 

 ウコン! ターメリックだ!

 これにクミンとコリアンダー、それから唐辛子があればカレーができるぞ!

 よし、確認してみよう!

 

「ロクサーヌ。クミン、コリアンダー、唐辛子はどこで買えるだろうか?」

「スパイスを取り扱うお店で買えると思いますが……」

 

 よっしゃー! 翻訳されたうえに普通に買えるのか!

 というかそれならカレーもあるんじゃないか?

 いきなりスパイスの話を振られて戸惑っているロクサーヌへ続けて問いかける。

 

 

「かれーって……」

「はい? 何でしょうか?」

「いや、大丈夫だ」

 

 ダメだわ。翻訳されなかった。

 この世界にカレーはないのか……。

 

 

 

 まあいいさ。スパイスさえあれば自分で作ればいい。カレーを食えるぞ。ついでにシナモンやカルダモン、それからサフランも探してみるか。

 しかしこうなると、何が何でも米が欲しくなるな。

 この世界に来るとき食事については覚悟をしたつもりだったが、あるとなれば話は別だ。絶対手に入れたい。今後探してみよう。

 

 

 

 んじゃ、気を取り直して探索とレベルアップの続きだ。

 

 ボーナスポイントを調整しながらフィフスジョブの僧侶を商人と入れ替え、63ポイントを獲得経験値二十倍に振っておく。

 

「それじゃあ、敵を倒しながら待機部屋へ向かおう」

「はい」

 

 ロクサーヌは地図を確認すると、鼻をスンスンしながら歩き出した。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv22 英雄Lv18 魔法使いLv22 戦士Lv19 商人Lv13

装備 ロッド 強情の鉄盾 皮の帽子 皮の鎧 皮のグローブ 皮の靴

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

鑑定:1

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

結晶化促進四倍:3

盾二:3

獲得経験値二十倍:63

 

所持金:370,384ナール

 

春の5日目

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