パンを購入して自宅へ戻り、カレーを温めつつサラダの用意を行う。
そして、準備ができたところで寸胴鍋をダイニングに持っていった。
カレーをそれぞれに取り分け準備完了だ。
「それじゃあ、食べようか。いただきます」
「いただきます」
スプーンで口に運ぶと昨日よりさらに増した旨味が口いっぱいに広がる。まさに一晩寝かせたカレーの美味さだな。
寝かせたことで迷宮産の牛肉や竜皮から旨味成分が溶け出し、極上の味わいになっているのだろう。
これだけの味ならば、魯山人でもシャッポを脱ぐに違いない。
「ご主人様! とても美味しいです! 昨日の晩に食べたときも美味しかったですが、一晩寝かせたおかげで深く濃厚なコクが加わっています。そして、調和のとれたスパイスがたまりません!」
ロクサーヌくん。君もカレーの虜になったね?
でも、カレーには米と一緒に食うという、さらに上のステージがあるんだぞ。
いつか一緒にカレーライスを食いたいものだ。
「気に入ってもらえたみたいで嬉しいよ」
「ご主人様に作っていただいた料理はどれも美味しくて、こんな料理が食べられる私は本当に恵まれています」
満面の笑みで話すロクサーヌが本当にかわいすぎる。
恵まれているのはそんな笑顔を見ることができる俺の方だわ。
「そんなに気に入ってくれたんなら、また近いうちに作ろう」
「本当ですか! ありがとうございます、ご主人様!」
その言葉を聞いて大きな声をあげた。
こんなに喜んでもらえるなんてめちゃくちゃ嬉しいよなぁ。
「次は豚肉を使ったポークカレーか、鶏肉を使ったバターチキンカレーにするかな」
「違う種類もあるのですか?」
「うん。具材によって色々なカレーがあるから楽しみにしていてね」
「はい。期待していますね」
よし、期待に応えて近いうちに作るとしよう。
鍋に残っていたカレーを二人ですべて平らげ、洗い物と歯磨きを済ませてからソファーに腰を下ろし、まったりとくつろぐ。
親が死んでも食休みというくらいだからな。食後の休憩は大切なことだろう。
つまり今、脚の間にロクサーヌを座らせ抱き寄せているのも、故事に倣った大切な生活の一部なのだ。
完璧な論理に従いぎゅっと抱きしめる。
引き締まっているのに柔らかい。それに、ロクサーヌの体に顔を埋めると得も言われぬ良い香りが漂っており、俺の鼻を誘惑してくる。
先日見かけた狼人族の男たちが興奮していた気持ちが理解できるな。
しかし、ボディーソープや洗濯洗剤、それに柔軟剤や香水だって使っていないのに何でこんなに魅力的な匂いがするんだろう?
「ロクサーヌはとても良い匂いがするね。抱きしめていると魅了されてしまいそうだよ」
あ、やば。変態のようなことを言ってしまった。引かれていないだろうか。
「ふふ。ありがとうございます。ご主人様も心が安らぐ良い匂いです」
ロクサーヌは恥ずかしさと嬉しさが混ざったような声色でそう答えた。
引かれてなくてよかった。
それに、安らぐ良い匂いか。
加齢臭がするとか言われたらめちゃくちゃ落ち込むところだ。
身に着けていた服や体を拭いたタオル、それに寝具からおっさんの臭いがするのは、かなり精神的ダメージを受けるんだよなぁ。
自分の加齢臭に気づいたときには愕然としたもんだ。
そのままイチャイチャしながらのんびり過ごし、三十分ほど休憩をした後、再び装備品を身に着けベイルの迷宮へ戻ることにする。
キャラクター再設定を開いて、MP回復速度二十倍を外してアクセサリー四にチェックを入れ、出現したメギンギョルズを腰に巻く。
そして、玄関で靴を履き替えてワープゲートを開いた。
迷宮へ戻るとワープのチェックを外して獲得経験値二十倍をセットし、腰に差してあるロッドを引き抜いて、準備が整ったところでロクサーヌに尋ねる。
「人の様子はどうだ? それから、二階層でも人の多い箇所がわかるか」
「少々お待ちください」
一頻り匂いを確認してからロクサーヌが答えた。
「一階層よりさらに人の数が少ないですね。魔法を使っても問題ないと思います。それから、かなり分かりにくいですが、おそらく十人以上の人がいると思われる場所があるのでそちらへご案内します」
この娘マジですごいわー。
しかし、小部屋と待機部屋はスライドする壁で仕切られているのに、よく匂いがわかるな。
原作では扉や壁があるとあまり匂いは出てこないと言っていたが、相当距離があるだろうに本当にすごい。
おそらく、ベイルの迷宮はできたばかりでそこまで広くないため、微かな匂いを嗅ぎ分けられているのかもしれない。
本当にこの鼻のおかげで迷宮探索が捗っている。今後も頼りっぱなしになるだろうことは間違いないだろう。
さすがロクサーヌ。美人でかわいくスタイル抜群のうえ鼻まで利いて最高かよ。
案内に従い通路を歩いていると、反対側から緑色の物体が這い寄ってくる。
グリーンキャタピラーLv2
うわー……。
中型犬サイズの芋虫って、生理的嫌悪感がヤバすぎだ。
複数ある足をワシャワシャ動かして近づいてくるのがマジで気持ち悪い。
ミチオがドン引きしていたのがわかるわ。
とにかくさっさと片付けよう。
ファイヤーボール
ファイヤーボールをぶち込むと一発であっさり消えていった。
よかった。1確できるならこのままサクサク狩っていくべ。
糸
ドロップアイテムの糸をロクサーヌから受け取りアイテムボックスへしまい込む。
糸はミサンガを作るのに必要だから売却せずに取っておくか。
原作ではスロット付きが出るまで、それなりの製造回数が必要だったからな。
そして、そのときセリーにヤールングレイプルを装備した状態と、装備していない状態でミサンガを作成してもらい、パラメーターによってスロットの発生率に差が出るのか比較検証を行おう。
この結果が今後の迷宮探索に影響することは間違いない。
あと、ブランチも鍛冶に必要な素材だが、あれを使うのはまだまだ先だし売り払っても問題ないか。
寄り道をせずロクサーヌの鼻に従って最短ルートを進み、道中に遭遇する魔物を魔法の餌食にしていく。
時間短縮のため一匹ならファイヤーボール。二匹ならファイヤーストームを用いて魔法一発で戦闘を終わらせる。
本格的な戦闘は経験値効率の良い、もっと上の階層で行えばいい。
今はさっさと先に進むことを目標にしよう。
そうしていると、MPが心許なくなってきたのでデュランダルを使い回復を図ることにする。
その際にレベルを確認してみるが、思った通りどれも上がっていなかった。
今のレベルだと一、二階層で得られる経験値では、たとえ効率二百倍でもそうそう簡単には上がらないか。
となると、やはり上を目指すべきだな。
メギンギョルズの最大MP上昇の効果と俺自身のレベルアップのせいもあるのだろうが、満タンにするために狩らなくてはいけない数がかなり増えている。
やはり、低階層の魔物では吸収できるMPが少なく効率が悪いのだな。
MP回復後デュランダルと獲得経験値二十倍を付け替え、先を目指して木人と芋虫を焼き払いながら進んでいく。再びMPが減ってきたところで回復を図り、さらに狩りの続きを行う。
しまった。
かなりの数の魔物を狩り、ドロップアイテムをアイテムボックスに放り込んでいると遂に枠を使い切ってしまった。
ブランチと糸ならそれぞれあと少しは入るが、新しいアイテムはもう入らないぞ。
昨日は一、三、四階層ではボス戦しか行っていないし、二階層でもほとんど戦っていない。五階層から戦い始めたが魔物を倒すのに魔法が二発必要だったし、その分MP回復の時間も取られたため、そう数も狩れなかったので問題にならなかった。
それに、昨日は銀貨も一枠に収まっていたが、今日は四枠も使ってしまっている。
入らない分をリュックに詰めるというのは無理があるだろう。
複数の魔物を魔法一発で片づけるという、とんでもないペースで狩りを行っているため、ドロップアイテムの増加量はかなりのものだ。
おそらく二人分を合わせてもリュックにはそこまで入らないはず。
うーん……。
一度アイテムボックスの整理に戻るか?
とりあえず、ロクサーヌに相談してみよう。
「ロクサーヌ。アイテムボックスの枠にもう空きがないんだが、一度帰ってアイテム整理をした方がいいだろうか?」
相談してみると少し考えてから答えた。
「そうですね……。人が多い場所までもう少しですので、そこが待機部屋か確認してからの方がいいのではないでしょうか? それに、待機部屋だったならボスを倒すころには少し早いですがお昼近くになるはずですので、その後に戻った方がいいと思います」
なるほど。
「それなら、ロクサーヌの言う通りにした方がよさそうだ。さすがロクサーヌは頼りになるな。本当にありがとう」
「ふふ。ありがとうございます、ご主人様」
感謝の言葉を述べると笑みを浮かべ嬉しそうにしている。
いつ見てもかわいい笑みで癒されるわぁ。
そのまま通路を進み、数匹倒したところでロクサーヌから声が掛かった。
「ご主人様。そろそろ、人が多いところに着きます」
よし、じゃあ準備をするか。
アイテムボックスから黒魔結晶四個を取り出しリュックに入れる。
あと一枠分はどれを取り出すか……。
カメリアオイルは激しく動くと膜が破れて中身が出そうだよなぁ。
んー……。
うん。銀貨四枚でいいや。これをそのまま銅貨の入っている巾着袋に入れておこう。
銀貨を取り出し巾着袋に入れてからリュックに納める。
そしてロッドと鋼鉄の盾をアイテムボックスにしまい、キャラクター再設定から獲得経験値二十倍を外して歩き出す。
小部屋から中に入るとそこは予想通り待機部屋だった。さすがロクサーヌの鼻だ。
俺たちが中に入ったのに気が付くと、並んでいた二組のパーティーが一斉に振り返ってこちらを確認する。
毎度のことながら複数の人間にじろじろ見られるのって動揺するよなぁ。心臓がきゅってなるわ。
そのまま小部屋に戻りたくなるくらいだ。
まあ、会う人会う人全員に鑑定をかけてジョブを確認をしている俺が言えたことじゃないんだが。
そのまま列の最後尾につけ、かわいらしいロクサーヌを見ながら話をして時間を潰す。
これのおかげで待ち時間も苦になることはない。
いや、待ち時間が楽しみまであるわ。
……前回のようなことがない限りはな。
「なるほど、そうなのか。では、服を選ぶときにも色などにこだわったりしているのか?」
「そうですね。自分で服を選ぶ場合はつい緑系の色を最初に確認してしまいます」
「では、やはり緑系の色が好みなのだな」
「はい」
「出会ったときに着ていた服もよく似合っていたし、緑色のキャミソールを着たロクサーヌは本当に女神そのものだった」
「ご主人様……。大袈裟すぎです……」
いや、そんなことはない。俺は当然のことを口にしただけだ。
あのキャミソール姿を見た者なら誰だってそう言うだろう。
だが、あの姿を見ていい男は俺だけだ。絶対に他の男に見せるわけにはいかない。
ロクサーヌは恥ずかしそうに後ろを気にしている。
ん? あ、やばっ! 後ろに並んでいる奴らがいるのを気にしてなかった!
俺も振り返り確認してみると、男しかいない二組十人以上の人たちが嫉妬のこもった視線でこちらをねめつけていた。
しっとマスクになれるくらいバカップルが嫌いだった俺なのに!
気がつけばついやってしまっている。
今では俺がしっと団に処される対象だろう。
人前では自重しなければ。
決意を新たにしていると、ボス部屋へと続く扉が開く。
よし。気を取り直して、ここからは戦闘モードだ。
「それじゃあ、行こう」
「はい」
部屋に入るなりロクサーヌが飛び出していく。
俺もボスが出現する前に急いでデュランダルを取り出し部屋の中央へと駆け出す。
噴き出していた煙が晴れると、そこには巨大な白い芋虫が存在していた。
ホワイトキャタピラーLv2
でっか! 確実に俺よりでかいぞこれ!
でも、びびってられるか! 糸を吐かれる前に片づける!
正面はロクサーヌが受け持ってくれているので、そのままサイドへ駆け寄りガラ空きの横っ腹目掛けデュランダルを振るいながら念じる。
ラッシュ
ドカンと威力を増した攻撃が腹を切り裂くと、デュランダル越しにその感触が手に伝わってくるが、ホワイトキャタピラーは倒れることなく体の下にオレンジの魔法陣を展開させた。
上等! 一発で倒れないなんざ百も承知よ!
ラッシュ
再びデュランダルが腹を抉ると、その体を霧散させていった。
「ふう」
よし。オーバーホエルミングがなくても何とかなったか。
ただこれは、ロクサーヌが正面で攻撃を回避し続けてくれるから行えることだ。
攻撃の回数が増えていけば時間がかかり、ボスがスキル攻撃を試みる回数も増えることだろう。
そうなると詠唱中断が間に合わなくなり、スキル攻撃を受けてしまう可能性が出てくる。
やはりボス戦では常時オーバーホエルミングを使用するほうが安定して戦えるだろうな。
そして、気になるのはホワイトキャタピラーの大きさだ。
ウェブ版や書籍版だと、グリーンキャタピラーより一回り大きいという描写だったが、明らかにそれ以上のサイズだった。
コミックやアニメで見た大きさに近いだろう。
思い返せば、スパイススパイダーやビープシープも明らかに書籍版の描写より大きかった。
やはり、メディアごとに異なる設定がいろいろ混ざっていることを実感するな。
しかも、明らかにこれらと違う要素もある。
原作知識を活用する方針は変わらないが、あまり過信しすぎるのも問題かもしれない。
つらつらと巡らせていた思考を打ち切りロクサーヌを見ると、ドロップアイテムの前に立ってこちらをうかがっている。
なんぞなもし?
「ロクサーヌ。どうしたんだ?」
尋ねてみると口を開く。
「いえ、あの、これも何かジョブが得られるのかと思いまして……」
なるほど。そういうことか。
原作だと薬草採取士以外に、ドロップアイテムの拾得が条件で獲得できるジョブはなかったはずだ。
あーでも、作中では描写されず飛ばされている魔物がいるか。
それらのドロップアイテムをミチオが拾っており、それが条件となって獲得したジョブがないとは言い切れない。
よし、そうだな。先ほど考えていた原作知識を過信しすぎないように気を付けるというなら、今後初めて出たドロップアイテムは俺が拾うようにした方がいいか。
「ロクサーヌ。ありがとうな。他にドロップアイテムを拾うことで獲得できるジョブがあるのかはわからないが、今後初めて見る物については俺が拾うことにする」
「はい。かしこまりました」
微笑みながら返事をするロクサーヌに頷いて、床に落ちている束ねられた光沢のある糸を確認する。
絹の糸
うん。絹の糸だ。
これも装備品の材料になるんだろうか?
ダルマティカあたりで使いそうな気がするな。
そのまま拾ってリュックへしまい込む。
「俺はそこまで考えが及ばなかった。ロクサーヌは本当に気が利くな」
「ふふ。ありがとうございます」
褒められて嬉しそうにするのがめちゃくちゃかわいいんじゃぁ。
「それじゃあ、午前中の探索はここまでにして三階層に進んだらクーラタルの冒険者ギルドでアイテムの売却をしよう。そして、買い物をしてから家で昼食だな」
「はい」
キャラクター再設定を開いてデュランダルとメギンギョルズをボーナスポイントへ戻し、買取価格三十パーセント上昇とワープを付ける。
そして、アイテムボックスからシミターを取り出して腰に差し、三階層へと続く黒いゲートへ歩き出した。
三階層のブクマを済ませてから、すぐにクーラタルの冒険者ギルドへ移動する。
そして、毎度のように並ぶことなくカウンターでアイテムの売却を行う。
カウンターに置かれたトレーの上にアイテムボックスから大量のブランチと毒消し丸十七個を載せていき、すべて出し終えたところでリュックから絹の糸を取り出して、トレーに出来た山の上にポンと置いた。
受付嬢はそれを持ち、精算のために奥の部屋へと下がる。
それにしても、午前の探索だけですげー数を狩ったもんだ。
糸は売却していないから、あれでも全体の六割くらいだろう。
ミチオの同じころに比べてだいぶ狩りの効率がいい。
たしか原作ではワンドを手に入れたあとも、六階層で魔法四発が必要だったはずだ。
俺は転移初日に魔法使いのジョブを得て、二日目にロクサーヌを仲間にし、ロッドを手に入れている。
ロクサーヌの鼻のおかげで魔物を素早く見つけ、ロッドで底上げされた魔法攻撃力でサクサク狩り、あっという間にレベルを上げることができた。
そのおかげもあり、メギンギョルズを使用していなかった昨日の時点で五階層の魔物が2確だったのだ。
それが加わると、もしかしたら1確になっているかもしれないし、2確できる階層が五階層より上になるのは間違いないだろう。
今後、レベル上げがめちゃくちゃ捗ることは確実だ。
……ただ、八階層以降が問題だな。
おそらく、セリー言うところの魔の七階層についてはなんの問題もないだろう。
あれは探索に慣れて気を抜くとか、少しずつしか強くなれないことに焦って無茶をするという話だった。
自分が強くなっていくところが目に見えているから焦ることはないし、慣れて気を抜くなんて隣にいるお嬢様が許すはずがない。
このお嬢様はドンドン先へ進みたがるくせに、武器の手入れを怠ったり、装備品を身に着けないといった気の緩みにはものすごく厳しいからな。
しかし、八階層からは魔物が最大四匹出現するのだ。
これをロクサーヌ一人で抑えられるのかという問題が出てくる。
とりあえず、七階層が問題にならないようならロクサーヌと相談して、万全の態勢を期したうえで何度か試し、慎重に判断しよう。
考え込んでいる間に精算が終わって受付嬢が戻ってきた。
おお! トレーの上に銀貨と銅貨がたくさん載せられている!
数えてみると銀貨十九枚。銅貨五十六枚で、合計千九百五十六ナール。
毒消し丸だけで三割近いとはいえ、それでも半日分、しかも糸は売却していないのにこれだけの利益を得られたのはかなり大きい。
やっぱ魔法は最高だぜー!
リュックから巾着袋を取り出し、先ほど迷宮で入れておいた銀貨四枚を抜いてから、受け取った銅貨を入れて再びリュックにしまい込む。
そして、銀貨をまとめてアイテムボックスに放り込むと、それだけで五枠も占有してしまった。
……うん。これはいかんな。やはり、アイテムボックスの整理は急務だ。
キャラクター再設定から買取価格三十パーセント上昇とMP回復速度二十倍を付け替えてギルドを出る。
ギルドから出て昼食の食材を買い、自宅へ戻ったところでロクサーヌに声をかける。
「ロクサーヌ。俺はアイテムボックスの整理をしようと思う。悪いんだけど昼食の用意をまかせてもいい?」
俺の言葉にロクサーヌは、両手を握り力強く答えた。
「おまかせください、ご主人様! 元々家事は私の大切な仕事です!」
この娘、本当にかわいいわぁ。どんどん好きになってしまう。
これ以上、俺を虜にしてどうするつもりなんだ。
責任を取ってもらわないとな。
「じゃあ、お願いね」
「はい」
火のついた薪を渡してから、二階の自室に移動する。
とりあえず、この大量の銀貨を何とかしないと。
今現在、アイテムボックスの枠を五つも潰している。
今後アイテムボックスが大きくなると問題なくなるのだろうが、やり繰りに困っているこの状況で五枠も取られるのは正直厳しい。
盗みに入られるのを警戒するというのなら、銀貨とは比べ物にならないほど大切な日本から持ち込んだ品を置いている。今更気にする必要はないだろう。
……そうだな。銀貨は1スタック分を残して鍵の掛かるチェストに入れておこう。
食材や日用品の買い物にはその分でも過剰なくらいのはずだ。
毎日ドロップアイテムの売却と買い物を終えた後に、自宅へ戻ってから1スタックになるように調整を行う。
そして、装備品を買うときや、ルークからスキル結晶を引き取るといった、大きい金額が動く取引を行うときだけ持ち出せばいい。
アイテムボックスから1スタック分を残し、それ以外の銀貨をすべて取り出す。
八十三枚か。結構な数になるなぁ。
余っていた巾着袋に銀貨を入れ、チェストのカギを開けてそこにしまって再び鍵をかける。
よし、これで四枠開いたぞ。
アイテム九十六個分の容量を確保したことになるな。
残りは物置部屋で整理しよう。
物置部屋に移動し、腰に差していたシミターをそのままクローゼットにしまい込む。
侮られないようにシミターを持ち歩いていたが、それなりの防具を身に着けるようになった今は気にする必要はないはず。
それに、ロクサーヌがレイピアを持っているのだ。それでも俺たちを狙うような奴なら、シミターがあってもなくても変わらないだろう。
さて、整理を再開するとしよう。
カメリアオイルと黒魔結晶四個。これらについては物置部屋に置いておくべきだろうな。
あ、カメリアオイルは近々使うだろうし、時間があるときにペットボトルに移し替えておくか。あとで、ペットボトルを洗ってから乾かしておこう。
そして、抗麻痺丸と柔化丸についても、しばらくはそれらの攻撃を行う敵が出てこないため物置に保管でいいだろう。
おお! 全部で十八枠も空いたぞ!
これで四百三十二個のアイテムが納められるわけか。
よきかな、よきかな。
アイテムボックスの余裕は心の余裕だからな。
うん? これは何気に名言じゃないか?
将来、アユム・タガワ金言集を出版する際には収録されること間違いなしだ。
……さて、馬鹿なことを考えていないでロクサーヌの手伝いをしてこよう。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv24 英雄Lv19 魔法使いLv23 戦士Lv21
装備 サンダル
BP振分 残BP:14
キャラクター再設定:1
フォースジョブ:7
必要経験値十分の一:31
鑑定:1
ジョブ設定:1
詠唱省略:3
MP回復速度二十倍:63
ワープ:1
所持金:160,803ナール
春の6日目