異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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047 安全確保

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

三階層

 

 

 

 

 

 昼食をとり、その後しばらくイチャイチャしながら休憩をしたら、ボーナスポイントの調整を行って再びベイルの迷宮に戻る。

 

「ロクサーヌ。三階層でも人の多い場所はわかるか?」

 

 三階層も最短ルートを突き進みたいためそう尋ねると匂いを確認しだした。

 

 しかし、しばらくスンスンと嗅ぎ続けていたが、その美しい顔には眉が寄っている。

 

「申し訳ありません。三階層にはほとんど人がいないようです。人が集まっている場所もないと思います」

 

 あー、そうか。ベイルの三階層はコボルトだもんな。

 三階層ということはコボルトだけではなくレベル3に強化されたグリーンキャタピラーやニードルウッドも出るのだ。とても初心者向けとは言いがたい。

 そして、ある程度戦えるやつなら、こんな旨味の少ない階層はさっさと飛ばして先に進んだ方がいいと考えるのだろう。

 おそらく腕に覚えがある奴らは四階層以降から探索を始めているはずだ。

 

 そう考えると最弱の魔物であるコボルトがレベル1で一匹しか出現しないクーラタルの一階層は、やはり初心者向けとして相当な需要がありそうだな。

 あの混雑具合も納得できるというものだ。

 

 

 まあ、地道にいきますかね。

 

「それじゃあ、普通に探索していこう」

「はい。ご主人様、どちらに進みますか?」

 

 三階層の入口の小部屋にある三方に延びている通路を一つ一つ確認しながらロクサーヌが尋ねる。

 

 うーん……。

 正解のルートがわからない以上勘に頼るしかないわな。

 

 原作には細かく描写されていただろうか?

 まあ、わざわざ戻って確認するほどのこともないだろう。

 

 

 

 じゃあ、いっちょやってみるか。

 

 どれにしようかな天の神様の言うとおり アタックチャンスをものにして 緑の五番が青になるっと

 

 ……右か。

 

 この決め方はなんか問題ある気がするな……。

 もし声に出してしまいロクサーヌに聞かれたら、真面目にやってくださいと言われるかもしれない……。

 とりあえず、次からは全部右に行ってみるか。

 

 ロクサーヌに進む方向を告げ歩き出す。

 

 

 

 通路を進むとコボルトとグリーンキャタピラーのタッグが出現するが、あわてず騒がずファイヤーストームをぶち込む。

 そして、当然のように一撃で倒れた。

 よし、オッケーオッケー。

 この階層で出現する魔物には弱点と耐性に被りがないためファイヤーボールかファイヤーストームを撃っておけばいいだろう。

 

 

 

 その後もサーチアンドデストロイとばかりに、現れた魔物を次々と始末していく。

 そして、三十匹以上狩ったところでMPが減った気がしてきた。

 もちろん無理はせず、そのままMP回復へ移行だ。何かあってからでは遅いからな。

 

 何匹狩ったのかを確認するためアイテムボックスを見てみると、コボルトソルトが十一個、コボルトナイフが五個、糸が十四個、ブランチが四個並んでいた。

 合計三十四匹狩っていたわけか。

 

 

 

 あ! そうだ! コボルトナイフだ!

 コボルトはレアドロップ枠のある魔物だったわ。

 MPを回復した後にドラウプニルのレアドロップ率二倍について実験してみるか。

 

 昨日はコボルトを倒した数が少なく、下振れしてしまったのか一個もナイフが出なかった。

 だが、今日のドロップ数をみるに、コボルトナイフのドロップ率は三十パーセント以上ありそうな感じだな。確か原作でも三回に一回といっていたような覚えがある。

 ドラウプニルを装備してコボルトを十匹くらい狩ってみて、目に見えてナイフのドロップ数が多くなっていれば効果があると考えていいはずだ。

 まあ、サンプル数が少ないためブレが大きく正確じゃないだろうが、効果が体感できれば十分だ。

 

 

 

 獲得経験値二十倍とデュランダルを入れ替えてMPの回復を図る。

 ロクサーヌがヘイトを取ってくれるため魔物の後ろからこっそり近づき、次々とバックスタブを決めていった。

 

 

 

 MPが満タンになったと感じたところでデュランダルを外し、アクセサリー四から六へ変更する。

 

ドラウプニル アクセサリー

スキル 攻撃力五倍 魔法攻撃力五倍 対人強化 最大MP二倍 レアドロップ率二倍 スキル結晶ドロップ率二倍

 

 改めて見るとこのぶっ壊れスキルの数々よ。マジでヤバすぎるでしょうよ。

 こんだけすごいんだからスキル結晶だってドロップするかもしれないぞ。

 

 あ、いかんいかん。そんなことを考えていると物欲センサーさんに目を付けられる。

 

 スキル結晶? 初めて聞く言葉ですね。たぶん私とは関係ないんじゃないかなぁ。

 

 

 

 ドラウプニルを身に着け、残りのボーナスポイントを獲得経験値五倍へ振っておく。

 

 さて、実験についてロクサーヌに伝えておこう。

 

「ロクサーヌ。今からちょっとした実験を行おうと思う」

「実験ですか?」

「うむ。コボルトのレアドロップ枠であるコボルトナイフは今のところ十匹中三個くらい残っている」

「はい」

 

 俺の説明をふんふんと頷きながら聞いている。

 この聞き上手さんめ。

 こんなに真剣に聞いてくれるなんて、嬉しくてたまらないじゃないか。

 

「そこで、ドラウプニルに付いているレアドロップ率二倍の効果を試すのだ。コボルトを十匹くらい狩ってみて、コボルトナイフをいくつドロップするのか確認してみたい」

「なるほど。そういうことですか」

「まあ、特にコボルトを探して狩るわけじゃない。探索をしながら確認するだけなので、やることは先ほどまでと変わらないんだがな」

「でも、色々考えて実験しようとするなんて、さすがご主人様です」

 

 そう言うと笑顔でこちらを見つめた。

 あら、かわいい。

 

 

 

 よし。では始めるか。

 

 再び通路を進むと二匹のコボルトが反対側から姿を現す。

 

 ナイスタイミング!

 

 こちらにたどり着く前にファイヤーストームを叩き込みあっさり始末した。

 

コボルトナイフ

コボルトナイフ

 

 おお! いきなり!

 

 ロクサーヌは残ったコボルトナイフを拾うと興奮したように俺の方へ差し出した。

 

「ご主人様、どうぞ。それにしても、いきなり二つも出るなんて本当にすごいです」

 

 受け取ってアイテムボックスにしまいながら答える。

 

「確かにいきなり二個は驚いたな。では、続けていこう」

 

 

 

 再び通路を進むと今度はコボルトとニードルウッドのペアに出くわす。

 

 今回もあっさり沈め、ドロップアイテムを確認するとコボルトソルトとブランチだった。

 まあ、そりゃそうだわな。

 

 

 

 その後、コボルトを十匹倒した時点のドロップアイテムはコボルトナイフが7個とコボルトソルトが三個。ついでに糸が九個にブランチが三個だった。

 

 これは、間違いなくレアドロップ率二倍の効果は発揮されていると考えていいだろう。

 あとは料理人のジョブを獲得した時にスキル効果が重複するかの確認だな。

 

 考えを巡らせていると興奮しながらロクサーヌが話しかけてきた。

 

「こんなことができるなんて、ご主人様は本当にすごいです!」

 

 すごいのはご主人様じゃないんだがまあいいか。

 

「ありがとう。それじゃあ、装備を換えて探索の続きに戻ろう」

「はい!」

 

 ……やはり、スキル結晶は出なかったか。

 確率的に分かり切った結果だけどさぁ。少しぐらい夢をさぁ。

 

 気を取り直してキャラクター再設定を開きアクセサリー四に変更する。そして、確保したポイントで獲得経験値二十倍をつける。

 さあ、ボス部屋を目指し迷宮探索を再開だ。

 

 

 

 立ちふさがる魔物を圧倒的火力で薙ぎ払いながら進んでいく。

 今の作戦はさしずめガンガンいこうぜってところだろうか。

 一回あたりに掛かる戦闘時間も相当な短さだ。

 

 そして、何度目かの突き当りの小部屋へ来たときにロクサーヌが告げた。

 

「ご主人様。奥の壁の向こう側からたくさんの魔物の匂いが漏れています」

 

 マジ?

 

「魔物部屋か」

「はい」

 

 三階層の魔物とはいえ大量に狩れば経験値はかなり美味しいだろう。普通に考えたら狩らない手はないはずだ。

 だが、三日前に醜態をさらしているせいで迷いが生じる。

 

 

 

 ……魔物部屋を見つけるたびに怖気づき、それを避けるというわけにはいかない。

 万全の態勢をとったうえで挑むとするか。

 

「ロクサーヌ。MPが心許ないので回復後に入ることにしよう」

「そのまま入っても問題ないと思いますが」

 

 問題しかないと思いますが……。

 

 たとえデュランダルを使ったとしても大量の魔物にたかられたらデッドエンド一直線だ。

 そして、今のレベルで大量の魔物を相手にストーム系の魔法を放つのは正直怖い。

 MP切れで、またあの絶望感に襲われるのかと思うとそれだけで憂鬱になってしまう。

 

 なので、魔物部屋での俺の戦い方はボール系の乱射となる。

 しかし、MPが足りないまま入るとすぐにガス欠になってしまうだろう。そうなると敵が多い状態でキャラクター再設定を行い、デュランダルを出さなければならなくなる。

 そんな余裕があるとはとても思えない。

 だが、あらかじめ満タンにしておけば、途中でMPが切れてもそれまでにある程度の数を狩れているはずなので、落ち着いてボーナスポイントの設定が可能となる。

 

 

 

 とりあえず、その辺の安全確保について納得してもらわないとな。

 

「ロクサーヌは問題ないと思うが、俺はつい数日前まで喧嘩すらしたことがない素人だ。自分の身を守ることさえおぼつかないだろう」

 

 真剣な表情でこちらを見つめるロクサーヌと目を合わせて言葉を続ける。

 

「そんな俺をかばおうとしてロクサーヌが傷つくことには耐えられないし、俺の身に万が一があればロクサーヌも殉死してしまう。それだけは絶対に許容できない」

「ご主人様……」

「なので、今後もなるべく安全を確保したうえで探索を進めていきたい」

 

 その言葉を聞いたロクサーヌは表情を緩め、少しだけ笑みを浮かべ答えた。

 

「そうですね。私もご主人様が傷つくことには耐えられそうにありません。慎重になることもご主人様をお守りすることにつながるのですね」

 

 そう! そうだよ! ロクサーヌ!

 誰もが君のように戦えるわけではないとやっとわかってくれたか。本当に良かった。

 

 

 

 俺の安全について考えてくれているのだろう。ロクサーヌはしばらくしてから口を開いた。

 

「今後、ご主人様の安全を図るためには、ジョブの経験を積むことと併せて戦闘そのものに慣れていく必要がありますね。なるべく早く上へ進む方がいいでしょう」

 

 なんでそうなる! なんにもわかってねー!

 

 なんか迷宮探索や魔物に対する考え方にかなりのズレがあるんだよなぁ。

 いや、この世界からすると俺の安全マージンの取り方の方が異端となるのかもしれないが。

 

 探索者以外は自分のレベルを確認することができず、武器での攻撃は与ダメージが低いため何十。いや、下手をしたら何百回もの攻撃が必要になる。

 そして、魔法には詠唱が必要でMPの回復手段に乏しい。

 これらの要素が重なり適正な狩場というのがわかりにくくなっているのだろう。

 そのため、少しでも余裕ができたらすぐ上に進もうなどという無茶なことを考えるのかもしれない。

 あるいは、目に見える成長がないことで焦りが生じ、無謀な挑戦へと駆り立てられるのか。

 

 そう考えると、余裕を持って戦闘を行えており、日々確かな成長を確認できているのに上を目指さない俺に対して、ロクサーヌはもどかしい思いを抱えている可能性もある。

 

 

 

 そもそも、何をもって適正な狩場とするのかも人によって全然違うだろう。

 今の俺が考える適正な狩場とは、魔法で雑魚が1確できる階層だ。最大限譲歩したとしても2確で終わる階層か。

 それ以上だと正直手に余る。

 

 だが、これでは安全マージンを取りすぎていることは自分でも理解できている。

 あの安全厨といわれていたミチオですら、ここまでチキンではなかった。

 いくら何でも腰抜けすぎると自分でも思うが、こっちとら中身は運動不足の中年オヤジ。自分の能力をまったく信用することが出来ない。

 本格的な迷宮攻略に挑むのはレベルを上げ、仲間を増やし、装備を整え、戦闘に慣れてからだ。

 ここは死んだら終いの現実世界。これだけは絶対に譲るわけにはいかない。

 

 

 

 ロクサーヌとは今後時間をかけてゆっくりと価値観のすり合わせをしていくしかないな。

 原作ではセリー、ミリア、ベスタ、ルティナも少なからずそういう傾向はあったのでロクサーヌに同調することだろう。

 一対五の孤独な戦いになりそうだ……。

 

 

 

「前にも話したが俺は絶対に仲間を失いたくない。特にロクサーヌを失うことが何より怖い。なので、臆病だと笑われようとも安全を確保して迷宮に挑むつもりだ。この方針は誰になんと言われても覆すことはない」

 

 俺の言葉を聞き少し考えると小さくうなずいてから返事をする。

 

「わかりました。ご主人様に従います」

「ありがとう。すまないな、ロクサーヌ」

 

 ひりつくような戦闘が生きがいのロクサーヌには酷なことを言っているだろう。本当にもどかしい思いをさせているのかもしれない。

 だが、いずれは自慢できるような男になってみせるから、しばらくは俺の成長を待っていてほしい。

 

「ご主人様、大丈夫です。それに、ご主人様に想っていただけていることが本当に嬉しいです」

 

 ロクサーヌは見惚れてしまうような美しい笑みを浮かべながらそう言ったのだった。

 

 

 

 デュランダルで魔物をサクサク斬りつけ、MPを回復してから再び魔物部屋に続いている小部屋まで戻ってくる。

 そして、キャラクター再設定を開き確認を行う。

 

 うん。バッチリだ。ジョブ設定の方にも問題はない。

 

 

 

 さて、行くか。

 

 一つ息を吐き出し、右手でこぶしを握り左の手のひらへ打ち付けるとボフッという間抜けな音が響いた。

 

 あれぇ? ここは大量の魔物に挑むために気合を入れて、パチンっていう音が鳴り響くすげーかっこいい感じの場面なんじゃ……。

 

 あー、そりゃそうだよな。硬革のグローブを着けてるんだもんな。

 

 かっこ悪っ!

 

 いい大人が中二病全開で浸ってたわ。めちゃくちゃ恥ずかしい……。

 ロクサーヌの方をうかがうと、微笑みを浮かべとても優しいまなざしで俺を見つめていた。

 

 やめてー! そんな目で見ないでー!

 

 

 

 ……仕切り直しだ。

 

「それじゃあ、行くか」

「はい」

 

 小部屋の奥へ進むとガラガラと音を立て壁が下がっていく。

 そして、その向こうには大量の木の下にドデカい芋虫と、子供サイズで青い顔をしたナイフを持った奴がひしめいている悪夢のような光景が見えた。

 

 

 

 こっわ!

 ニードルウッドだけのときは見た目が樹木だからそこまで気にならなかったが、これは怖い。まるでホラー映画の世界だ。

 

 こんな恐ろしい光景にもかかわらずロクサーヌは怯むことなく飛び出し、入り口を潜ると十重二十重に取り囲まれながら攻撃を回避しつつ、合間合間に反撃を入れ始めた。

 

 ちょ! なんてことしてんの!?

 

 やばい! さっさと殲滅しないとロクサーヌが攻撃をくらうかもしれない!

 くそっ! ボール系だと時間がかかりすぎる!

 

ファイヤーストーム

 

 ぐっ。

 念じた瞬間体からMPがごっそり抜けていく感覚に襲われ気分が一気に降下していく。

 

 頭の中はこの不安感を解消することしか考えられなくなり、周りを無視してそのままアイテムボックスを開いて取り出した強壮丸を一気に飲み込んだ。

 

 

 

「ふぅ」

 

 思わず口からため息が漏れる。

 メギンギョルズの最大MP上昇の効果だろうか。三日前に陥ったMP枯渇よりだいぶマシだったな。

 

 戦闘中だったことを思い出し辺りを確認すると、すでに魔物の姿はなくそこら中にドロップアイテムが散乱していた。

 ああ、何事もなくてよかった。

 

 

 

「あの、ご主人様……。大丈夫ですか?」

 

 尋常じゃない様子だった俺を心配してロクサーヌが声をかけてくる。

 ついさっき安全確保について話をしたばかりだというのに、その舌の根も乾かないうちに魔物がひしめいていた部屋へ躊躇なく飛び込んでいったぞ。

 

 わかりましたとは何だったんだろうか。

 ご主人様に従いますとも言っていた気がするんだが……。

 

 おそらく、本人の中ではたいしたリスクもない行動だったんだろうとは思うが、めちゃくちゃ心臓に悪かった。使うつもりのなかったファイヤーストームを撃ってしまうくらいにな。

 

「ロクサーヌこそ大丈夫だったか? 魔物に取り囲まれた時には肝が冷えたぞ」

「え?」

 

 ロクサーヌは俺の言葉にきょとんとした表情を浮かべる。

 

「あの程度の遅い攻撃を喰らうことなどありません。オーバーホエルミングを使ったご主人様の攻撃と比べればナメクジのようなものです」

「いやでも、グリーンキャタピラーの糸攻撃を受けて動きが鈍くなるかもしれない」

「ちゃんと観察していればスキル攻撃を狙っていることは丸わかりで、避けてくれと言っているようなものです。それに、ご主人様にご用意いただいたこの防具があれば万が一攻撃を受けてもたいしたダメージにはなりません」

 

 とんでもないことを言うなぁ。

 あの状況なら普通は攻撃を喰らうだろうし、スキル攻撃の予備動作がわかっても避けられるとは思えんのだが……。

 でもまあ、確かにロクサーヌの言う通り腕装備を除きダマスカス鋼と竜革の装備で固めているしレベル補正も働いている。攻撃を受けてもたいしたダメージはないか。

 

 ……にしても、あの顔を見るに本人の中では危険な行いをしたとか、無謀な挑戦をしたという気持ちは一切ないんだろうなぁ。

 そして、本当に危険なことはなかったのだろう。

 おそらく、俺がファイヤーストームを使わずファイヤーボールでちまちま削っている間も、ずっとあれを続けられたのかもしれない。

 

 なんか、原作のロクサーヌより回避能力が増している気がするんだが気のせいか?

 もしかしたら、オーバーホエルミングを用いた修行のせいで妙な能力に目覚めたりしてないだろうな?

 

 しかし、こうなると価値観をすり合わせて、安全に対する意識を変えるのはとんでもない大仕事になりそうだよなぁ……。

 

 

 

 その後ロクサーヌと手分けをしてドロップアイテムをかき集め、片っ端からアイテムボックスへ入れていく。

 それが終わったところで自分たちに鑑定を掛けレベルの確認だ。

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv24 英雄Lv20 魔法使いLv24 戦士Lv22

装備 ロッド 鋼鉄の盾 硬革の帽子 硬革の鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 メギンギョルズ

 

 おお! 探索者以外三つとも上がっている!

 気分が落ち込んでまでファイヤーストームを撃った甲斐があるというものだ。

 

 ロクサーヌを確認してみたがこちらは変化なしだな。

 まあ、経験値効率がまったく違うんだ。これはしょうがない。

 

 よし、それじゃあ気を取り直して探索を続けよう。

 

 

 

 魔物部屋を潰した後はMP回復を図りながら探索を再開し、満タンになったところで魔法戦闘に切り替える。

 見敵必殺で魔物を片付けているため流れ作業感がハンパないが、調子に乗って油断することがないように心がけておこう。

 

 しかし、ビビりなくらい慎重なくせにすぐ調子に乗ってしまう俺と、油断や気の緩みには厳しいのに魔物にガンガン突っ込んでいくロクサーヌ。

 俺たち二人の戦闘に対する意識はちぐはぐだな。

 まあでも、人の考えなんてそんなもんか。

 

 

 

 一度MP回復を挟んだ後も魔法撃ちマシーンとしての職務を果たしていると、再び小部屋へ突き当たる。

 ロクサーヌから魔物部屋の警告がなかったため、そのまま奥まで進むと音を立てて壁が下がりさらに部屋が現れた。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮三階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

「待機部屋に着いたようですね」

 

 ボス部屋へと続く扉が確認できる。ロクサーヌの言う通り待機部屋で間違いない。

 並んでいるパーティーもいないため、すぐに挑むことができそうだ。

 

 よし、ぼちぼちいい頃合いだろう。

 

「ロクサーヌ。ボスを倒したら今日の探索はここまでにしよう」

「そうですね。そろそろいい時間だと思います」

 

 誰もいないため、その場でロッドと鋼鉄の盾をアイテムボックスへ納めてキャラクター再設定を開き、獲得経験値二十倍を外してデュランダルを取り出す。

 

「では、行くか」

「はい」

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮三階層

ボス部屋

 

 

 

 

 

 部屋に入るとロクサーヌと共にそのまま駆け出す。

 そして、ポップしたコボルトケンプファーへ向けてデュランダルを振るうと、その一撃で体を霧のように散らしていった。

 

 よっわ!

 さすが最弱ボス。三階層なのにラッシュなしでワンパンだったぞ。

 

 ……ここはいけそうだな。

 ボスを一撃で倒すことができ、過疎っているため待ち時間なしで挑むことが可能で、人に見られる心配もない。

 ドロップがまずいことが気になるとはいえボスマラソンを行う場所としての条件は満たしている。

 とりあえず、候補地の一つとして覚えておこう。

 

 

 

 前回は自分で拾っていなかったため、一応自分でコボルトフラワーを拾いアイテムボックスへ入れておく。

 

「今日の探索はここまでだな。四階層へ進んだらベイルの探索者ギルドへ移動して、アラン殿の商館を確認してから帰ろう」

「ご主人様、本当にありがとうございます」

 

 俺の言葉にロクサーヌはとても嬉しそうに礼を述べた。

 なあに、いいってことよ。

 

 

 

 キャラクター再設定を開いてデュランダルとメギンギョルズを外し、買取価格三十パーセント上昇とワープを付ける。

 そして、ロクサーヌから滋養丸を返してもらいアイテムボックスへしまい込んでから、四階層へと続く黒いゲートへ向かい歩き出した。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv24 英雄Lv20 魔法使いLv24 戦士Lv22

装備 硬革の帽子 硬革の鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 メギンギョルズ

 

BP振分 残BP:14

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

鑑定:1

ジョブ設定:1

詠唱省略:3

MP回復速度二十倍:63

ワープ:1

 

所持金:160,803ナール

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