異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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050 デート

 

 

 

 

 

クーラタル

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 クーラタルの冒険者ギルドに着くと、すぐにカウンターへ行きそのまま売却を行う。

 トレーにうずたかく積まれた糸を持って受付嬢が奥に下がったので、その間にリュックの巾着袋から銀貨を取り出し、スペースのできたアイテムボックスへ移しておく。

 

 戻ってきた受付嬢がカウンターに置いたトレーには銀貨が十九枚と銅貨が十三枚載せられている。

 それをアイテムボックスとリュックにしまい込んで冒険者ギルドをあとにした。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

「じゃあ、最初は武器屋の方から回ってみよう」

「はい」

 

 ロクサーヌと一緒にクーラタルの街を歩く。普段の買い物とは違い非日常感があっていいもんだな。

 これはもうデートといっても過言ではないだろう。

 そうかぁ。人生初のデートかぁ。自然と頬が緩んでしまうぞ。

 

 

 

 俺がにやけながら歩いているのが気になったのだろう。ロクサーヌが問いかけてきた。

 

「ご主人様。なんだかとても嬉しそうですね。何かあるのですか?」

「いや、特に何があるという訳でもないんだが、こういう風にロクサーヌとのんびり歩きながら、街を見て回ったり買い物をしたりということが、なんというかとても嬉しくてな」

 

 それに答えるとロクサーヌの顔もみるみるうちに綻んでいき、尻尾も弾むように揺れだした。

 

「ふふ。そうですね。私もご主人様とのんびり過ごせるのがとても嬉しいです」

 

 できれば手をつないだり腕を組んだりしたいところだが、この世界ではなかなか難しいんだろうな。

 

 

 

 武器屋に向かい歩いている途中に様々な商店を見かけ、ロクサーヌの買いたいものについて気になったので確認してみることにする。

 

「ロクサーヌは買いたいものはないのか? 寄りたいところがあるなら遠慮せずに言ってくれよ?」

「ありがとうございます。でしたら、帝都のお店を色々回ってもいいでしょうか?」

 

 おお! すごくデートっぽい! 実にいいぞ!

 ただ、めちゃくちゃ長くなりそうだな。それは最後にさせてもらおう。

 

「もちろん大丈夫だ。では、クーラタル、帝都、ベイルの武器屋と防具屋を回った後に帝都を経由して家に戻る。そのときに色々見て回ろう。それに、今日は余裕があるので急いで選ぶ必要はないからな。ロクサーヌの気が済むまでじっくり選んでも大丈夫だ」

「よろしいのですか? ご主人様、本当にありがとうございます」

 

 なあに、いいってことよ。

 そのかわいらしい笑顔のためなのだ。全然問題ない。

 

 

 

 

 

クーラタル

武器屋

 

 

 

 

 

 武器屋に入りカウンターの奥を見てみると、前回訪れたときに置いてあった強権のレイピアが鑑定に引っかかることはなかった。

 売れちまったかぁ。

 いや、値段が値段だったから買う気は全然なかったが、俺たちの今の状況にベストマッチな装備ではあったんだよなぁ。

 まあ、いいさ。ウサギとコボルトのスキル結晶は確保している。セリーが加入したら作ってもらおう。

 

 改めて周囲を確認しても、めぼしいものは見当たらない。

 たったの二日しか経っていないんだ、掘り出し物が入荷しているわけはないか。

 じゃあ、次だな。

 

「ロクサーヌ。防具屋の方へ行ってみよう」

「はい」

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

 店を出て通りを歩きながらロクサーヌに話しかける。

 

「二日前に置いてあった強権のレイピアがなくなっていたな」

「はい。やはりスキル付きの武器は貴重ですからね。値引もされていましたし、すぐに売れたのかもしれません」

 

 だな。あの価格を高いと感じるのは俺たちだけなんだろなぁ。

 

「スキル結晶は確保しているし、今後セリーに頑張ってもらおう」

「そうですね。こればっかりは彼女に頑張ってもらわなければ、どうにもならないでしょう」

 

 ……表面上はセリーの加入に納得している様子だ。

 しかし、内心がどうなのかはわからない。

 どんなことがあろうとも俺の中で一番大切なのはロクサーヌだ。

 折に触れて何度もそれを繰り返し伝え、少しでも心の負担を軽減するように努めよう。

 

 早速今から実行だ。

 

「そうだな。セリーには鍛冶師として頑張ってもらわなくてはならない。だが、俺が一番頼りにしているのはロクサーヌだし、一番大切なのはロクサーヌだ。それが揺らぐことは絶対にない」

 

 その言葉を聞いたロクサーヌは感極まったのか、俺の体をぎゅっと抱きしめると言葉を返す。

 

「私もご主人様が何より大切です。この想いが変わることは決してないでしょう」

 

 何て嬉しいことを言ってくれるんだ!

 思わず抱きしめ返してしまう。

 

「ありがとう、ロクサーヌ」

「こちらこそありがとうございます、ご主人様」

 

 

 

 ゆっくり体を離すと周囲の人々がこちらに目を向けていた。

 

 またやっちまった!

 バカップルにはなりたくないのに、ついやってしまう!

 

 俺が羞恥に身もだえしているとロクサーヌが声をかけてくる。

 

「申し訳ありません、ご主人様……」

 

 今回は俺からじゃないしな。ロクサーヌも羞恥を覚えたのかもしれない。

 

「大丈夫だ。少し恥ずかしいが抱きしめてもらえてうれしかった。気にするな」

「いえ、そうではありません……」

 

 ん?

 

「あの、ご主人様は石鹸のご確認中でしたよね……」

 

 あー! やっちまったぁ……。

 

 

 

 ……まあ、やっちまった物はしょうがない。

 それに、もう十二時間以上は経っている。かぶれていたり、痛みや痒みといった症状もないんだ、おそらく問題はないだろう。

 

「今のところ俺には何の症状も出ていないから大丈夫だ。気にすることはない」

「お気遣いありがとうございます。本当に申し訳ありませんでした」

「ただし、痛みや痒みなどの異常を感じたら隠すことなく言ってくれよ? かわいいロクサーヌに何かあったら困るからな」

「はい」

 

 原作でも大丈夫だったし問題ないとは思うが念のため伝えておく。

 

 

 

 

 

クーラタル

防具屋

 

 

 

 

 

 防具屋に入り、ここでもカウンターの奥を確認してみる。

 

 俺たちが買わなかった竜革の帽子とグローブがないな。それに、頑丈の鋼鉄盾も見当たらない。どちらもすぐに売れてしまったんだろう。

 

 確認していると、こちらに気づいた店員が声をかけてきた。

 

「いらっしゃいませ。先日はたくさんご購入いただきありがとうございました」

「こちらこそ世話になった。俺たちが買わなかったものも売れたようだな」

「はい、お客様が店を出たあとに防具を展示した途端、来店した方がすべて購入していかれました」

 

 あぶねー! ギリギリじゃねーか! そいつ俺たちが買った品があったら、絶対根こそぎいってただろ!

 帝都でグダグダしていたら購入できなかった可能性が高いな。

 

 

 

 店内を見回すが、やはり防具屋にもこれといった品はない。

 とりあえず売却だけ済ませるか。

 

「すまない。売却を行いたいのだがいいだろうか?」

「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

 

 アイテムボックスから防具を取り出し、カウンターの上に載せていく。

 

 

 

 店員が防具鑑定を行っている間に念のため、もう一度店内にある防具を確認するが、やはり良い品を見つけることはできなかった。

 

「おまたせいたしました。お持ちいただいた防具は木の盾が一個、皮の帽子が二個、皮の鎧が一個、皮のジャケットが三個、皮のグローブが一個、皮の靴が六個で合計千百八十五ナールとなりますが、先日はたくさんご購入いただきましたので、千五百四十ナールでお引き受けしたく存じます」

「うむ。助かる」

 

 売買が成立するとカウンターに置かれた防具を奥に持っていく。

 そして、トレーに硬貨を載せて戻ってきた。

 

 トレーに載せられた銀貨を全てアイテムボックスに入れ、リュックから巾着袋を取り出して銅貨を納め再びリュックへしまって店を出る。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

「一昨日はタイミングが良かったな。少し時間がずれていたら竜革の装備品が買えないところだった」

「そうですね。回る順番が違っていたら、おそらく購入できなかったでしょう。本当に運が良かったと思います」

 

 今までの人生で幸運が訪れたことなんてなかったが、あの夜から何もかもが変わっちまったな。

 命を懸けた魔物との戦闘や、盗賊との切った張ったはあるものの、上司に無理な仕事を振られることもないし、サービス残業とも無縁だ。

 それに、貨幣価値が違うから正確なところはわからないが、迷宮探索で得ている利益は日本基準だと相当な高収入ということになるのではないだろうか?

 

 そしてなにより、すぐ隣にロクサーヌが存在しており、触れ合うことも出来る。

 本当に信じられないほどの幸運だ。とっても! ラッキーマンだ。ラッキークッキー歯茎だ。

 

「それじゃあ、帝都に向かおう。人のいない場所へ頼む」

「かしこまりました」

 

 ロクサーヌの案内で路地に入り、ワープゲートを開く。

 

 

 

 

 

帝都

 

 

 

 

 

 賑わっている冒険者ギルドを出て表通りを歩いていると、ロクサーヌが話しかけてきた。

 

「ところで、ご主人様。どういった装備品を探していらっしゃるのですか」

 

 探している装備品なぁ。

 聞かれても困るようなことはないが小声で話すか。

 

 ススっとロクサーヌに近寄り小声で囁く。

 

「そうだな。まず、絶対に必要なのはアレがついていることだ」

「はい、当然だと思います」

 

 俺の言葉に頷きを返す。

 

「武器については見つけることが出来たのなら、何があっても確保したいものがスタッフだ。これがあるのとないのでは今後殲滅速度に著しく差が出ることだろう」

「そうですね。絶対に必要だと思います」

 

 スタッフとメギンギョルズを組み合わせることで間違いなく1確できる階層が上がるはず。

 しかも、ヤギとコボルトのスキル結晶を確保しているのだ。セリーが加入し次第ひもろぎのスタッフにすることが可能で、そうなるとどこまで階層を上げられるのか想像もつかない。

 

 マジで原作知識の賜物だわ。ありがたやー。

 

「他には、ダマスカス鋼の槍か、攻撃力が弱くてもアレが三つ以上ついている片手剣だ」

「ダマスカス鋼の槍と片手剣ですか?」

 

 頭の上にハテナが浮かんでいそうな顔で聞き返すロクサーヌへ説明する。

 

「槍の方はウサギとコボルトを付けて魔物の詠唱中断を狙う。スキルを使わせなければ安全性が高まるからな」

「なるほど。確かにそうです」

「そして、片手剣だが以前説明したように、石化添加と麻痺添加を付けてミリアに運用してもらう。あと、これにも詠唱中断は必要だな」

「暗殺者ですか……」

 

 そう呟いたロクサーヌの顔をうかがうと眉が寄っていた。

 

 うーん……。

 以前説明していたが改めて聞き、なぜ自分ではないのだと思ったのかもしれない。

 本人の性格的に攻撃役の方をやりたがるだろうということも理解できるが……。

 

 いや、まあ暗殺者をロクサーヌとミリアの二人体制にして速攻で石化させるのもありっちゃありなのだろう。

 

 でもなぁ。いざというときにヒーラーが一人というのは危険すぎる気がするんだよなぁ。

 ここは死んだら終いの現実世界。安定を投げ捨て攻撃特化で挑む気にはどうしてもなれない。

 

 もし、魔物が多い状況で俺が毒や麻痺、石化等の状態異常に陥った場合、誰かが致命的なダメージを負ってしまえば立て直すことが出来なくなる可能性がある。

 たとえ薬を渡していたとしても、それを使うためにはダメージを負った者に近寄って飲ませなければならない。そのためには魔物を放置して駆け寄る必要がある。

 その状況ではかなり厳しいはずだ。

 

 だが、巫女のジョブは詠唱こそ要るものの、その場で全体の回復が行える。

 ロクサーヌなら間違いなく戦闘中でもそれが可能だろう。

 

 それに、ロクサーヌが被弾して詠唱を行えないといった場面を想像できないこともヒーラーにしたい理由の一つだ。

 ほとんどダメージを受けず、常に安定して回復を行えるヒーラーなんて、頼もしいどころの話ではない。

 本人の希望するジョブはあるのだろうが、適性を考えるとやはりそっちでいてほしいんだよなぁ。

 

 

 

 ロクサーヌに納得してもらえるよう、その辺のこともちゃんと意を尽くして説明する必要があるだろう。

 歩きながらでは込み入った話もできない。修行の後にでも、装備品の手入れを行いながら話をしてみるか。

 

 ……なんか今の俺、進路指導の先生っぽいな。

 

 

 

 まあ、これについては後に回すとして、装備品についての話を続けよう。

 

「武器についてはこんな感じだ。そして、防具についてだが、やはりこれもアレが付いていることが基本になる」

「はい」

「そして、狙っているのは竜革の装備品と俺用のダマスカス鋼の額金と盾だな」

「そうです! ご主人様の防具を整えなくてはいけません!」

 

 ロクサーヌからいきなり大きな声が上がり、体をビクッと震わせてしまった。

 

「もちろん良い品を見つけたら考えるつもりだ」

「はい。よろしくお願いしますね」

 

 俺のことを心配してくれる人がいる。そしてその人とはあれだけ恋焦がれたロクサーヌなんだ。

 あまりの嬉しさにスキップの一つもしたくなるな。

 

 

 

 

 

帝都

防具屋

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。先日はたくさんご購入いただき誠にありがとうございました」

 

 俺たちが店内に入ると防具商人の男が礼を述べる。

 ここでも覚えられているんだが……。

 さっきもそうだったがナイーブなやつなら二度と来られなくなるやつじゃん。

 

 しかし、俺は長い社畜生活で表面上の会話をそれなりにこなしてきた男。昔の内向的だった僕ちゃんとは違うのだよ。

 

「こちらの方こそ先日は世話になった。購入させてもらった防具も役に立っており満足している」

「それはようございました。お気に召していただけて私どもも嬉しい限りです」

 

 

 

 一頻り話した後に店内を確認するが特に掘り出し物もないようだ。

 たった二日しか経ってないのだからしょうがないとはいえ、空振りばっかりだなぁ。

 

 

 

 

 

帝都

 

 

 

 

 

 その後、武器屋も確認してみるが、そちらにも目ぼしいものはなく早々に退散することになった。

 

「やはり、掘り出し物などそう簡単には見つからないな」

「そうですね。貴重な装備品を購入できる機会など、頻繁にあるものではないのでしょう」

 

 だな。地道に探していくしかないか。

 

「では、ベイルに行こう」

「はい」

 

 

 

 

 

ベイル

 

 

 

 

 

 探索者ギルドの外へ出て、念のためアランの館に盗賊がいないかの確認を行う。

 

 白昼堂々盗賊が闊歩しているわけもなく鑑定に引っかかることはない。

 うん。何事もなくて良かったと思っておこう。

 

 武器屋を目指して市場通りを歩いているとロクサーヌが話しかけてくる。

 

「五日前にも同じようにこの道を歩きましたね」

「そうだな。あのときはロクサーヌに出会うことができて、俺は自分でもわかるくらい浮かれていたなぁ。挙動不審ではなかったか?」

「いえ、ご主人様は堂々としていて、本当に頼もしかったです。私の方こそとても緊張していたので、おかしな行動をしていませんでしたか?」

 

 あのときのロクサーヌか。

 

「確かに緊張している様子はうかがえたが、おかしいというほどではなかったな。買い物の相談に乗ってもらったり、店を案内してもらったりで本当に心強かった」

「ご主人様のお役に立てて嬉しいです」

 

 知り合ったばかりのお互いの様子を思い出して笑い合う。

 

 

 

 人で賑わう市場通りを歩いていると誰かに呼ばれたような気がして周囲を確認する。

 

「アユム様!」

 

 ん? おお! ビッカーじゃないか!

 農作物が積まれた荷馬車に座り、笑顔でこちらに手を振っている。

 

「ビッカー殿。四日ぶりだな」

「御者席からお声がけしてしまい申し訳ありません」

「農作物の売却と村の買い出しの途中だろう? 気にすることはない」

「ありがとうございます。本当にお会いできてよかったです。お渡ししたいものがございますので、差し支えなければお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

 

 渡したいもの? なんだ?

 

「うむ、問題ない」

 

 返事を返し、ビッカーが農作物を売却する店へ一緒に移動する。

 

 

 

 荷馬車が店の前に止まると御者席から降り、俺たちのところへ近づいてくる。

 

「アユム様が村を訪れて、過分なお礼をいただいたことを村の住人に伝えたところ、皆大変感動しておりました」

 

 なにしてくれてんの! なんで言いふらしてんの!

 そしてそこのお嬢さん。君もそのかわいらしいドヤ顔をやめなさい。

 

「いや、俺はただ感謝の気持ちを伝えただけだ。大袈裟にすることはない」

「そんなことはございません。我が村はアユム様に救われ、その上このようなご厚意をいただいたのです。感謝をするのは当然のこと。そこで、住民一同で話し合いを行いました」

 

 話し合いねぇ……。

 

「アユム様はキュピコがお好きとのこと。であれば売却前にお会いできた際は感謝の気持ちとして、お渡ししようということになっております」

 

 いやいやいや、村の財産である売却前の農作物を巻き上げるなんてどんな極悪人だよ。絶対に受け取るわけにはいかない。

 

「それはいかん。売却して村の収入となる物なのだろう? 只で受け取るわけにはいかないので、購入させてもらいたい」

「いえ、村長や村の住民一同の総意なのです。心ばかりの品で大変恐縮ですが、お納めいただければ幸いです」

 

 罪悪感を解消するために取った行動で、さらに罪悪感を植え付けられた……。

 なんかもう完全にドツボに嵌っているぞ。

 キュピコが好きとか言うんじゃなかった。

 

 

 

 ……もういいや。ここは受け取っておいて、後日村に行き農作物を卸価格ではなく小売価格で買い取ろう。

 

「俺の方こそ世話になったというのに、このような礼など本当に申し訳ないのだが、あまり遠慮をするのもソマーラ村に恥をかかせてしまうか。それではありがたく頂戴しておこう」

「ありがとうございます! ではお運びしますのでアユム様の寝泊まりしている場所をご案内いただきたく存じます」

「気を使ってもらって悪いな。だが、自分で運ぶから大丈夫だ」

 

 リュックに入れておけば問題ないだろう。

 

「ですが、荷馬車いっぱいにございますのでお二人で運ぶのは難しいかと」

 

 まてまてまて! 一体いくつ渡すつもりなんだよ!

 

「ちょっとまってくれ。俺たちはクーラタルに家を借りてそこで生活をしている。なので馬車で行くのは無理だろう。それに、二人暮らしなのでそんなにもらっても食べきれず、折角の厚意を腐らせてしまうことになる。申し訳ないがこのリュックに入るくらいの量でお願いしたい」

 

 俺の言葉にビッカーは少し残念そうな表情を浮かべ返事をする。

 

「気持ちが先走ってしまい大変申し訳ありませんでした。では、良いものを選びますのでお受け取りいただけますか?」

「こちらこそすまないな。では、ありがたく頂戴しよう」

 

 ビッカーは厳選しながら、俺とロクサーヌへ次々とキュピコを渡していく。

 

 

 

 多い多い。いくら何でも多すぎるって。

 俺たち二人のリュックがもうパンパンだぞ。

 

 まだ渡そうとするのを声をかけ制止する。

 

「ビッカー殿。もうリュックがいっぱいだ。気持ちは十分伝わっているので、このくらいにしてもらえるか」

 

 ビッカーは再び残念そうな表情を浮かべ、手にしていたキュピコを荷台に戻しながら言葉を返す。

 

「アユム様。我が村をお救いいただき本当にありがとうございました。是非またお立ち寄りください。住民一同、心より歓迎いたします」

「俺の方こそ世話になったな。是非また、村へ寄らせてもらおう。もらうばかりでは心苦しいので今度は購入させてほしいがな」

 

 ビッカーはその言葉に破顔一笑し、右手を差し出した。

 

「ありがとうございます。今後とも末永いお付き合いをいただければ幸いです」

「ああ、よろしく頼む」

 

 握手を交わすと、ビッカーは農作物の売却のため商店へ入っていった。

 

 

 

 それにしても、一体なぜこんな原作とズレたことが起きたのだろう?

 盗賊を一人で片づけたからか?

 それとも、犠牲者を出さなかったからだろうか?

 もしかしたら村に盗賊を引き入れた者を見つけ出したからということもあり得るか。

 

 俺は他にも色々原作とは違う行動をとっている。今後もこういったことは起こるはずだ。

 もし、そういうことが起こった場合は、動揺することなく冷静に対処しなければならない。

 というか、ある程度先のことを推察できる今の状態が特別なだけで、本来人生とは先のことなど全く分からないものだ。

 この状態も最長で夏の途中まで。

 なら、知っている世界に転移したという浮かれ気分を改め、ちゃんとこの世界に生きる一人の人間としての自覚を持ち、地に足のついた行動を心掛けるようにしよう。

 

 

 

 俺が考え込んでいると、嬉しそうにロクサーヌが話しかけてきた。

 

「ふふ。あのように感謝をされるとは、さすがご主人様です。やはり、偉業を成し遂げるような方は自然と尊敬を集めるものなのでしょう」

 

 はいはい。さすごしゅサンクス。

 でも、いい加減そのかわいいドヤ顔はやめようね。

 

 

 

 さて、思索に耽るのはこれくらいにして、やるべきことを考えよう。

 今考えるべきことはリュックいっぱいにつまっているこのキュピコだ。これはどうしたものか……。

 

「ロクサーヌ。このキュピコだがどうするべきだろうか? 一度自宅に戻る方がいいか?」

「そうですね……」

 

 問いかけると、ロクサーヌは少し考えてから答える。

 

「帝都では歩き回ることになるので家に置いてきた方がいいと思います。ご主人様、お願いできますか?」

「ああ、問題ない。では、人のいないところへ頼む」

「はい」

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv25 英雄Lv20 魔法使いLv24 戦士Lv22

 

BP振分 残BP:14

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

鑑定:1

ジョブ設定:1

詠唱省略:3

結晶化促進二倍:1

ワープ:1

買取価格三十パーセントアップ:63

 

所持金:167,257ナール

 

春の7日目

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