異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

57 / 300
056 ブリーフィング

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 ……んっ。

 

 目が覚めると、腕の中に心地良い重みを感じる。

 そして、手にはさらさらとした感触が伝わってきた。

 俺が目を覚ましたことに気付いたのだろう。挨拶の言葉が聞こえてくる。

 

「おはようございます。ご主人様」

 

 ああ。目が覚めて一番に耳にするのがこんなにも美しい声だなんて、俺は何と幸せな男なのだろう。

 

「おはよう、ロクサーヌ」

「ご主人様、昨夜はたくさんかわいがっていただきありがとうございます」

「俺の方こそ、何度も受け入れてくれてありがとう」

 

 お互いに礼を言っているのがおかしくなり、笑い合ってしまった。

 

 さて、柔らかく温かい体を離すのは辛いが、いつまでもダラダラと惰眠を貪り、迷宮探索を疎かにするような奴はロクサーヌに相応しくないからな。

 抱きしめていた腕を解き、えいやっとばかりに身を起こす。

 

「それじゃあ、朝の支度を始めよう」

「かしこまりました。ご主人様、窓を開けますね」

「うん。お願い」

 

 返事をするとロクサーヌは立ち上がって窓を開いた。

 その途端に夜明け前の淡い光が部屋へ飛び込み、白いキャミソールと黒いストッキングに彩られた女神の姿を照らし出す。

 

「ロクサーヌ……。本当にきれいだ……。こんなに美しい君と夜を共に過ごすことが出来たなんて、俺は世界一幸運な男だ」

 

 あまりの美しさに、口から勝手に言葉が飛び出してしまう。

 

 すると、ロクサーヌは虚を突かれたような表情を浮かべたが、言葉の意味を理解したのだろう。頬を朱に染めて口を開いた。

 

「いきなりそんなことをおっしゃるなんて……。いつもいつも、ご主人様は大げさすぎます」

 

 何をおっしゃるオオカミさん。

 俺はガチのマジで見たままを口にしているだけだ。

 こんなことを言わせてしまう、世界一美人でかわいい君が悪いのだよ。

 

「いや、全然大げさじゃない。俺にとってロクサーヌは美人でかわいくスタイル抜群でその上性格も最高な、世界一の女性だから」

「もう。本当にしょうがないご主人様です。そんなことより、朝の支度を始めましょう」

 

 この照れ屋さんめ。

 そんなことを言っても、赤く染まった頬と、キャミソールをパタパタ揺らしている尻尾で喜んでいるのは丸わかりだぞ。

 

 

 

 寝汗を拭いて、歯を磨き、髭を剃ってもらったところで、今日の予定を確認する。

 

「それじゃあ、今日の予定だけど、まずはいつものように早朝の迷宮探索を行う。今日からは五階層となるから。ロクサーヌに更に負担をかけてしまうことになるけどよろしくね」

「おまかせください! 何の問題もありません!」

 

 そう言って右手でグッと力こぶを作るポーズをとった。

 めちゃくちゃかわいいんじゃー!

 ロクサーヌくん。早朝から俺のハートを撃ち抜くのはやめたまえ。

 

 ……気を取り直して説明を続ける。

 

「パン屋が開く時間になったら探索を一時中断する。そして、買い物をして朝食をとろう。昨日のミネストローネも残っているからスープはそれにして、食後にはキュピコも食べようか」

「はい、ミネストローネもキュピコも楽しみです」

 

 ニコニコしながら朝食を楽しみにしているロクサーヌを見ると、多幸感で満たされる。

 今の俺たちって同棲カップルそのものだよなぁ。本当に幸せだわ。

 脳内ではセロトニンがドクドク溢れていることだろう。

 

「朝食を取ったら、迷宮へ戻る前に一旦桶屋へ寄ってみる」

「桶屋ですか?」

「うん。五日前に特注で頼んでおいた桶が今日届くはずなんだ。何時ごろに届くのかを確認しておきたい」

「はい。ところで、ご主人様。特注の桶は何に使うものなのですか?」

 

 あれ? 説明してなかったっけ?

 んー? 風呂についての話はしたけど、バスタブを発注していることについては話していなかったかもしれないな。

 

「それはバスタブとして使うんだ。ロクサーヌ、今日からは一緒に風呂に入ろう」

「お風呂ですか!? 大金持ちか貴族しか入れないような贅沢ですよ!?」

 

 おー。驚いている、驚いている。

 

「故郷では基本的に毎日入っていたんだ。だから、この世界に来てから今日まで、お湯に浸かることが出来ないのが本当にきつくてさ。これからは毎日お湯を沸かすから、一緒に風呂に入って清潔に過ごそう」

「毎日……。よろしいのですか?」

「もちろん」

 

 恐る恐る尋ねるロクサーヌへ、頷きを返す。

 なにせ、ロクサーヌと一緒に風呂に入ることが出来るチャンスなのだ。これに関しちゃ、我を通させてもらう。

 素晴らしい毎日の習慣を棒に振ってたまるか。

 

「ええっと、あの、はい。よろしくお願いします」

 

 俺のがっつきように多少引いてしまっているが、絶対に妥協するわけにはいかない。

 

「でも、ご主人様。魔法でお湯を沸かすのですよね? 大変ではないのですか?」

 

 まあ、確かに原作でミチオがやっていたのを読んでいると、かなり大変そうだった。

 特に低レベルのうちはMP回復のために自宅と迷宮を何度も往復しており、毎日の入浴を諦めていたほどだ。

 

 だが、俺には消費MP半減の効果を持つ毘盧帽と、最大MP上昇及び魔法攻撃力二倍が付いたメギンギョルズがある。

 しかも、あとレベルが6上がればボーナスポイントは129ポイントとなり、キャラクター再設定で1ポイント、必要経験値十分の一で31ポイント、フォースジョブをサードジョブに落とした3ポイントを引いて、残りが94ポイント。

 それで、毘盧帽とブリーシンガメンの併用が可能となる。

 

 消費MP二分の一と最大MP二倍の夢のコンビネーションだ!

 二掛ける二は四じゃないぞ。俺のボーナス装備は二掛ける二で四百だ! 十倍だぞ十倍!

 

 まあ、冗談は置いといて、効率的には概ね四倍だ。

 MP回復のために迷宮へ行く回数が四分の一になるのはめちゃくちゃデカい。

 それに、このコンボはペルマスクへ行くのにも大いに役立つはずだ。

 ハルツ公に嫌というほど鏡を売りつけて、ミリア購入の資金を稼いでやる!

 

 そして、魔法攻撃力五倍の効果も地味に大きい。

 魔法攻撃力によって発生する水や火の大きさが変わるため、ウォーターウォールを使った際の水量が劇的に増えることだろう。

 

 まあ、当面は毘盧帽とメギンギョルズの組み合わせだが、きっと初期のミチオよりは楽なはずだ。

 

 

 

「ご主人様?」

 

 考え込んでいた俺にロクサーヌが声をかける。

 

「ああ、ごめんごめん。少し考えていたんだけど、そこまで負担にならないから毎日入ることにしよう」

「はい、よろしくお願いします! ご主人様と一緒に入るお風呂が今から楽しみです!」

 

 俺の言葉を聞いたロクサーヌは、嬉しそうに大きな声で返事をした。

 おお。めちゃくちゃ喜んでくれている。

 でも、俺の方がそれ以上に嬉しいんだわ。

 

「ロクサーヌ。大好きな女性と一緒に風呂に入るという長年の夢を叶えてくれて本当にありがとう」

 

 そう言うと、ロクサーヌの表情が一段と輝きを増し、満面の笑みを浮かべた。

 

「ふふ。私のことが大好きなご主人様。これからも大切にしてくれますか?」

「もちろんだとも。俺が一番好きで一番大切な女性は、これまでも、そしてこれからもロクサーヌだ。それが変わることは絶対にない」

 

 ロクサーヌの体をぎゅっと抱きしめ、唇を合わせる。

 

 

 

 

 

 しばらく抱き合ってキスを交わした後に体を離す。

 彼女の顔を見つめると、はにかんだような笑みを浮かべていた。

 きっと、俺の顔にも照れたような表情が浮かんでいることだろう。

 

「えーっと、何の話をしていたんだっけ?」

 

 すっかり話題を見失っていたためロクサーヌに問いかけてみる。

 

「たしか、朝食後に桶屋へ寄るという話でした」

 

 ああ。そうだそうだ。

 

「桶屋の配達時間を確認した後は帝都へ行き、ロクサーヌがストッキングとガーターベルトを買った店へ行かなければならない」

「え?」

 

 俺の唐突な宣言に面食らっている。

 

「今着ているそれはとても素晴らしい品だ。あの店は本当にたいしたものだよ。是非他にもロクサーヌに似合いそうな品を注文しておこう」

「よろしいのですか?」

 

 よろしいも、よろしくないもないです! 当然ではないですか!

 

「うん。かわいいロクサーヌの姿をもっともっと見せてね」

「ご主人様、ありがとうございます」

 

 お、尻尾が揺れてキャミソールが動いている。

 うんうん。喜んでもらえて嬉しいぞ。

 

 口頭で説明するのは難しいからな。行く前にパンティとブラジャーの絵を描いて、それを見てもらおう。

 そうすることで職人にインスピレーションが湧き、他にも色々な商品を開発するかもしれない。

 

 しかし、羽根ペンでパピルスに一発描きというのはいくら何でも難易度が高すぎるぞ。

 

 

 

 ……そうだな。遂にそのときが訪れたのだろう。鉛筆と消しゴム、そしてコピー用紙の出番が。

 

 今使わずに、いつ使うのだ! というやつだ。

 

 こいつらはきっと、今日という日のために製造業者によって生み出され、そして近所のホームセンターで俺と運命的な出会いを果たしたのだ。

 

 この出会いに関わった全ての人に感謝を!

 

 

 

 まあ、それはともかく、コピー用紙は他人に見せるわけにはいかない。

 鉛筆と消しゴムで何度も書き直して、綺麗に描けたらパピルスを上に被せ、窓に押し付けてトレースをしよう。

 

「その後は迷宮へ戻り探索の続きだね」

「はい」

 

 ロクサーヌはキリッと表情を引き締め頷いた。

 迷宮探索や戦闘の話になると、途端に雰囲気がガチになる。この切替えを見習わないとな。

 俺もこうあるように努めよう。

 

 キリッ!

 

「ふふ。ご主人様。凛々しいお顔ですね。いかがなさいましたか?」

 

 試しに表情を引き締めてみたところ、バッチリ目が合ってしまった。

 しかも、空気を読んでスルーしてくれない。めちゃくちゃ恥ずかしいんだが……。

 

「いや、なんというか、ロクサーヌは普段の柔和な雰囲気と、迷宮や戦闘に対しての鋭さの切り替えすごいじゃないか。俺もそれを見習おうと思って真似をしてみたんだ……」

「普段ののんびりとしたお顔のご主人様もかわいらしくて良いですが、表情を引き締めたご主人様も素敵ですよ」

 

 俺の言い訳を聞くと、微笑みながら答えた。

 

 いやいや、この不細工フェイスのどこをどう見たらそんな言葉が出てくるんだ。

 そんなことを言っていると、君にブス専疑惑が出てしまうぞ。

 

 

 

 ……まあいい。続きだ続き。

 

「午前中の探索を終えたら、ドロップアイテムの換金を行って昼食にする。そして、午後の探索はバスタブの届く時間に合わせて切り上げよう。準備もあるだろうから、少し早めの方がいいかな。そのときに夕食の買い出しまでしておこうか」

「かしこまりました」

 

 ロクサーヌは頷きながら返事をする。

 

「バスタブの設置が終わったら、修行と夕食の支度。そして、お湯を沸かす。何度か迷宮でのMP回復が必要になるだろうから、そのときに魔物を探すのはまかせるね」

「はい! おまかせください!」

 

 おお、さすがロクサーヌ。自信ありげだ。

 

「夕方になったらベイルへ行ってアラン殿の商館を確認しよう」

「ご主人様、本当にありがとうございます」

「かわいいロクサーヌが心穏やかに過ごす為だからね」

「ふふ。はい」

 

 その言葉に本当に嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

「そして、食事を終えたら、待ちに待った入浴だ。ロクサーヌと一緒に風呂へ入れることが今から待ち遠しいよ」

「私も初めてのお風呂がとても楽しみです。ご主人様のおかげで、想像したこともないような事を次々と体験できて、本当に幸せです」

 

 それを言うなら俺の方こそだ、ロクサーヌのおかげで色々な夢を叶えることが出来て、信じられないくらい幸せだ。

 

「これからも二人で色々なことをしようね」

「はい!」

 

 あら、良い子のお返事だこと。

 

「それじゃあ、今日も一日よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 

 

 

 打ち合わせを終え、それぞれの部屋へ戻る。

 

 服を着替えて装備を整えると、そのまま部屋を出て玄関に移動しロクサーヌを待つ。

 それじゃあ、来るまでにキャラクター再設定をいじるとしますかね。

 

 

 

 フィフスジョブをフォースジョブに下げて、敏捷に振っていた分を解除しポイントを捻出した。

 そして、それをアクセサリー四に振って、出現したメギンギョルズを身に着ける。

 それからMP回復速度二十倍を解除し、ワープを付けた。

 

 うん。こんなところだな。

 

 今日からは五階層だ。

 クーラタルの五階層ではデュランダルを使っても一撃という訳にはいかなかった。

 あれから、極端にレベルが上がったわけではないので、おそらく今日も二回の攻撃が必要になるだろう。

 しかし、今回は秘密兵器がある。

 MP回復でデュランダルを出すときに、詠唱省略も外して腕装備二にポイントを振り、技工の革グローブを使うのだ。

 

 こいつには腕力上昇が付いているし、攻撃力五倍と効果が重複する事はウドウッドで確認している。

 五階層の魔物も一撃で仕留めていくことが出来るはず。

 今後はボス戦も含めて、デュランダルを使うときには腕装備もセットで運用していこう。

 

 そして、魔法での戦闘についてだが、クーラタルの五階層ではメギンギョルズを使用していないにもかかわらず、魔法二発で倒すことが出来ていた。

 となると、メギンギョルズの魔法攻撃力二倍の効果が乗った場合、間違いなく一発で済むだろう。

 少なくとも、これが続く限りは階層を上げることにする。

 

 

 

 ……もし、七階層でも1確できるようなら、八階層に上がるかはその時に判断しよう。

 仮に、八階層以降もこれが続き、一度の戦闘において魔法一発で同時に四体の魔物を倒せるなら、資金稼ぎについて考え直さなければならない。

 

 ボスを倒した際、魔結晶に貯まる魔力は三以上。ならば、四匹同時に一撃で倒せるようになった場合、ボスマラソンにこだわる必要がなくなる。

 

 MP回復の時間は取られるが、併せてドロップアイテムの売却による金策も行える上に、効率は落ちるものの経験値稼ぎが出来るのも大きい。

 そして、待機部屋へ直接ワープするのを見られる可能性を潰せるのはとてつもないメリットだ。

 

 ……そうだな。八階層で1確できるかわからないので、捕らぬ狸の皮算用だが、今日の探索で魔結晶に貯まるボスの魔力と、マラソンのワンセットにかかる時間を確認してみよう。

 そうとなれば、部屋においてある黒魔結晶を取ってこないとな。

 

 

 

 しかし、それにしても、デュランダルと魔法攻撃の威力にほとんど差がないのが気になるところだ。

 武器攻撃力が高く、その上攻撃力五倍と防御力無視が付いたデュランダルで五階層の魔物を倒すのに二撃。

 そして、ロッドを使ったストーム系の魔法でも同じく二撃。

 

 もちろん、詠唱中断や、HP吸収にMP吸収といったスキルがあるため、デュランダルの優位性は揺るがない。

 だが、MP消費があるとはいえ、それでも物理攻撃に比べ魔法攻撃のダメージ量が優っているのは明らかだ。

 

 今後、デュランダルが腕力五倍の付いた装備品でダメージ量を引き上げられるのに対し、魔法攻撃は高性能な杖と知力五倍、それから魔法攻撃力五倍のスキルを用いた強化という余地が残されている。

 そう考えると魔法使いがもてはやされ、オークションでその奴隷に高値が付くのも納得できるというものだ。

 

 しかしそうなると、デュランダルほどのチート武器だったとしても、物理攻撃は厳しいものがあるぞ……。

 将来的にはパーティーメンバーの武器の候補として、攻撃力五倍と腕力五倍、そしてもし存在するなら防御力無視のスキルを付けることを考えなくてはならないだろう。

 そうでもしないとまともにダメージが通らない。

 そして、やはり暗殺者であるミリアの重要性が増すことになる。

 そうなると、ロクサーヌの心情が……。

 

 ……まあ、これは今考えることではないか。

 

 

 

 

 

 つらつらと思索に耽っていると、装備品を身に着けたロクサーヌがこちらに向かって歩いてくる。

 

「お待たせいたしました」

「大丈夫、全然待ってないよ」

 

 ん? 今のやり取りデートの待ち合わせっぽくない?

 

「ロクサーヌ。部屋から黒魔結晶を取ってくるから、少し待っていてもらえる?」

「黒魔結晶ですか?」

 

 部屋に戻る旨を告げたところ、ロクサーヌは黒魔結晶の方に引っかかったようだ。

 そうだな、実験をする前に伝えておくか。

 

「うん。黒魔結晶を使って少し実験をしようと思うんだ」

「黒魔結晶を使った実験……」

 

 不思議そうな表情を浮かべながら、そう呟いた。

 頭の上にハテナマークが浮かんでいるような、その表情がめちゃくちゃかわいいじゃねーか。

 

「雑魚とボスで魔結晶に貯まる魔力に違いがあることは知っている?」

「はい。ボスの方が貯まる魔力が多いのですよね」

 

 当然知っているわな。

 あ、ボスの貯まる魔力については確認しようと思えば、簡単に確認できるんだ。

 この世界での一般常識になっているのかもしれない。

 ロクサーヌに尋ねてみよう。

 

「どのくらいの差があるのかわかる?」

「申し訳ありません。具体的な数字についてはわかりません」

 

 問いかけてみると、申し訳なさそうに答えた。

 

 うーん……。

 簡単に確認できることなのに、一般常識というわけではないのか。

 まあ、ボスと雑魚の魔力の差なんて、せいぜい二から四くらいのもんだろう。

 結晶化促進のスキルを持っていないなら、気にするほどの差ではないのかもしれない。

 

「気にすることはないよ。普通に迷宮探索をする分には気にならないだろうからね」

「あ!」

 

 お、気づいたのかな?

 

「以前おっしゃっていた、魔結晶に貯まる魔力を増やすスキルですか!」

 

 でっか! 声でっか!

 

「鋭い。さすがロクサーヌだ。結晶化促進のスキルは最大で六十四倍になる。それを使い、ボスだけを繰り返し倒すという金策も可能になると思うんだ。そのために、あらかじめボスの魔力を確認しておきたい」

「そういうことだったのですね。さすがご主人様です」

 

 さすごしゅありがとさん。

 

「というわけで、黒魔結晶を取ってくるね」

「はい」

 

 

 

 部屋へ戻り、チェストから黒魔結晶を取り出し、アイテムボックスにしまい込む。

 

 しかしなぁ。経理をみていたくせに数字に弱い俺では、効率的に確認する方法が思い浮かばない。

 

 ……うーん。

 よし。力技で確認しよう。一旦戦士と商人を入れ替えて考えてみるか。

 

 結晶化促進六十四倍で三匹倒して青魔結晶になればボスの魔力は六以上だが、おそらくこれはないだろう。

 そして、四匹目を三十二倍に変えてから倒し、それで青くなれば五だ。

 紫のまま変わらなかった場合、そのまま五匹目を倒して青になったら四。ならなかったら三以下ということになる。

 そのときは再び六十四倍にして、六匹目と七匹目を倒して青くなれば三で、ならなかったら二だな。

 まあ、おそらく二ということもないと思うんだが……。

 

 

 

 それにしても、不思議だよなぁ。

 階層によって魔物の強さは全然違うのに、なんで雑魚は一、ボスはおそらく三以上で変動がないんだろう?

 例えばクーラタルの迷宮なら、一階層のコボルトを倒して得られる魔力は一で、ボスであるコボルトケンプファーはおそらく三以上だ。

 それなのに、三十四階層に雑魚として出現するコボルトケンプファーだと一になってしまう。

 

 同じコボルトケンプファーで、三十四階層に雑魚として出てくる方が強いだろうに、得られる魔力が逆転する。

 

 ……まあ、いくら考えても答えなんて出ないか。

 

 んじゃ、今のうちに結晶化促進にポイントを振っておくべ。

 おっと、戦士も戻しておかないとな。

 

 

 

 玄関前に戻りロクサーヌに声をかける。

 

「おまたせ。それじゃあ、行こうか」

「はい」

 

 靴を履き替えて扉へワープゲートを開き、黒い靄へと身を埋めていった。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv25 英雄Lv20 魔法使いLv24 戦士Lv22

装備 ロッド 鋼鉄の盾 硬革の帽子 硬革の鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 メギンギョルズ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

鑑定:1

ジョブ設定:1

詠唱省略:3

結晶化促進六十四倍:63

アクセサリー四:15

ワープ:1

 

所持金:168,265ナール

 

春の8日目

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。