異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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066 後任

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮六階層

ボス部屋

 

 

 

 

 

 フロア中央に集まる靄へ向けてロクサーヌが飛び出したのを確認し、俺もその後に続く。

 

 

 

 出現した魔物に彼女が攻撃し始めたところで、オーバーホエルミングを使用して背後に回り込み、そのままラッシュを乗せた剣を叩き込む。

 オーバーホエルミングを切らさないように立ち回り、スキル攻撃を即座に潰して攻撃を当て続けているとパームバウムが倒れ、その体は風に流されるように消えていった。

 

 よし。完封できている。

 それに、技工の革グローブのおかげで必要な攻撃回数の増加も緩やかだ。

 今後それを加速させるために、腕力上昇ではなく腕力二倍のスキルを使用したい。

 おそらく、これに関しては欲しがっていることをルークに知られても問題ないはず。

 セリー加入後すぐに作製してもらえるようにルークに買い注文を出しておこう。

 この後、潅木のスキル結晶の代理購入依頼を取り消しに行くつもりだったんだ。その際にこっちの依頼に変えてもらうか。

 

「ご主人様、どうぞ」

「うむ。ありがとう」

 

 ロクサーヌが差し出したパームオイルをアイテムボックスにしまい、キャラクター再設定を行い次の階層に備える。

 

 

 

 とうとうセリー言うところの魔の七階層だ。

 しかも、ベイルの迷宮ではボスとしてパーンが出てくる。

 全体攻撃スキルを使うかなり厄介な相手だ。

 そして、質が悪いことにこのスキルは必中となっており、ロクサーヌですら回避することができない。

 一発でもくらってしまうと、まずいことになる。

 

 対処方法は、とにかくオーバーホエルミングを切らさないようにしつつ、デュランダルを当て続けること。

 まあ、早い話がいつも通りってわけだな。

 

 

 

 さて、準備もできたし、そろそろ行こう。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

七階層

 

 

 

 

 

 扉を抜けて次の階層へ到着する。

 

「ロクサーヌ。人の様子はどうだ?」

「少々お待ちください」

 

 返事をすると匂いを確認しだした。

 そして、一頻り確認すると口を開く。

 

「人の数は少ないので魔法を使っても問題ないと思います。それから、人の集まっている場所や同じ場所を目指している様子がないので、待機部屋がどこにあるのか分かりません。申し訳ありません」

「謝る必要はない。ロクサーヌのおかげで問題なく魔法が使えるのだから、それだけで十分だ」

 

 この能力のおかげで迷宮探索が行えているといっても過言ではない。マジで感謝しかないわ。

 

 

 

「では、待機部屋を探そう」

「はい」

 

 いつものように右の通路から確認していくと、少し歩いたところでロクサーヌが声を上げた。

 

「ご主人様、この先に敵がいます」

 

 七階層の初っ端だ。気合を入れていこう。

 そのまま進むと、奥から魔物が近づいてくる。

 

エスケープゴートLv7

エスケープゴートLv7

ナイーブオリーブLv7

 

 よし! そんじゃ、いくぞ!

 

ファイヤーストーム

 

 念じると同時に魔物の周囲を火の粉が舞い、その体が燃え上がる。

 ただ、これまでとは違い一撃で倒れることはなく、その姿は健在だ。

 

 今のレベルだと、ロッドで1確できるのは六階層までか。

 まあしょうがない。さっさと片付けてスタッフに持ち替えよう。

 

「ご主人様!」

 

 リキャストタイムが終わるのを待っていると、ナイーブオリーブをいなしているロクサーヌから声が上がる。

 そして、その声が耳に入った直後、二匹のエスケープゴートはこちらにケツを向けると一目散に駆け出した。

 

 ちょ! 逃げんな!

 

ファイヤーストーム

 

 リキャストタイムが明けて即座に念じると、全体魔法の効果範囲内だったのか、だいぶ離れた場所でエスケープゴートが倒れるのが見える。

 

「ふぅ」

 

 思わず口からため息が漏れた。

 

 そうだ。エスケープゴートは一定以上のダメージを受けると逃げ出すんだった。

 あー。パーンのことで頭がいっぱいで、エスケープゴートについては考えが足りなかったわ。

 

 うーん……。

 逃げられる可能性がある以上ロッドを使い続けるわけにはいかない。

 いや、たとえ逃げなかったとしてもワンパンできないのだ、ロッドはここまでだろうな。

 

 お役御免か……。

 思えば、転移二日目にロクサーヌと一緒に入った武器屋で購入して、ほんの数日間だったが相棒として活躍してくれた。

 こいつがなければ、初めて入った迷宮であんなにレベルを上げることは出来なかっただろうし、そのレベルアップがなければスムーズに盗賊を狩ることもできなかっただろう。

 そして、大金を得ることも、こんなに早く家を借りることもできなかったはずだ。

 それに、現段階のレベルは原作で同じ頃のミチオをだいぶ上回っている。これも一匹あたりにかかる戦闘時間を短縮してくれたロッドのおかげだ。

 

 たとえいずれスキルを付けて交換したり、売りに出したりするにせよ、今日装備品の手入れをするときには感謝を込めてピカピカに磨き上げよう。

 

 

 

「ご主人様、どうぞ」

 

 ロッドを見つめながら感傷に浸っていると、ドロップアイテムを差し出しながらロクサーヌが声をかけてきた。

 彼女から受け取ってアイテムボックスにしまい、感傷を振り切ってロッドもしまい込む。

 

「杖を換えるのですか?」

 

 それを見ていたロクサーヌが尋ねる。

 

「ああ。ロッドはここまでだ。ハッキリ言ってこの先の戦いにはついてこれそうもない」

 

 問いかけに答えて、アイテムボックスからスタッフを取り出した。

 

 おめぇの出番だ、スタッフ!

 上X下BLYRA、カカロットォ……。

 

 スタッフをロクサーヌに見せながら話を続ける。

 

「これからはこいつの出番だな。どこまで一撃で倒せるのか今後も階層を上げて確認していこう」

「はい!」

 

 うわぁ……。めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしてるよ……。

 まさかこやつ、1確できるかお構いなしに階層を上げるつもりじゃあるまいな?

 

 

 

 やはり、スタッフはロッドより魔法攻撃力が高いのだろう。

 再び魔法一発で魔物を蹴散らし探索を進めていく。

 

 この調子で後任のスタッフ君には頑張ってもらいたい。前任者は本当に役に立たなくてねぇ。君には今後知力二倍を付けて、長期契約も視野に入れているので、一つ頼むよ。

 

 ……自然にクソ上司の言いそうなことを想像してしまう自分が嫌だわ。

 

 

 

 それからしばらく魔物を焼き続け、ロクサーヌの腹時計によって午前中の探索を終える。

 

 小部屋にたどり着いたところでボーナスポイントをいじり、念のため鑑定でレベルを確認すると、俺は上がっていなかったがロクサーヌのレベルが上がっていた。

 

「マジか……」

 

 六階層と七階層を経験値効率二十倍で狩るとこんなことになるのか。

 

「ご主人様、どうなさいましたか?」

 

 その呟きを聞いてロクサーヌが問いかけてきた。

 

「ロクサーヌのジョブである戦士が、もうレベル13になっていたのに驚いていたのだ」

「え!?」

 

 俺の言葉を聞いて彼女は驚愕の表情を浮かべている。

 

「13ですか!? 探索者がレベル13になるためには、どんなに早くても数年かかるのですよ!? 探索者に比べて戦士のレベルアップは早いのでしょうか……」

 

 何やら考え込んでいるが、おそらく探索者に比べて戦士の方が極端に早いということはないだろう。

 まあ、普通の人とは効率が全然違うからなぁ。

 

「獲得経験値二十倍がある上に、一日に狩る魔物の数が比べ物にならない。まちがいなく、ここ数日で常人の数年分の経験値を稼いでいるはずだ」

「さすがご主人様です……。あの、ご主人様のレベルをうかがってもよろしいでしょうか?」

「俺の? ちょっと待ってくれ」

 

 これまで俺のレベルを告げたことはなかったか? どうだったかな?

 

「えっと、探索者が26で英雄が21、それから魔法使いが25で戦士が23だな」

「私と初めて会った日の前日にこの世界に来て、そのときは村人のレベルが1だったのですよね? ご主人様……。すごすぎます……」

 

 俺がすごいというより、ボーナスポイント99とキャラクター再設定。それと原作知識に、なんといってもロクサーヌの鼻のおかげだ。

 それを自分の実力だと勘違いして、調子に乗らないように気を付けないとな。

 

「それじゃあ、戻るか」

「はい」

 

 

 

 

 

クーラタル

商人ギルド

 

 

 

 

 

 オークションの時間に被るのも面倒なので、まずは商人ギルドへ移動して、先に潅木のスキル結晶を取り消すことにする。

 

 受付でルークを呼ぶように伝え、ロビーで待っていると程なくして現れた。

 

「アユム様。昨日はありがとうございました」

「こちらの方こそ世話になった」

 

 一頻り昨日の話をしたところで、ルークが切り出す。

 

「ところで、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「うむ。買い注文の取り消しと追加だ」

「なるほど。では、商談室で伺います」

 

 ルークの後に続き、いつもの商談室へ入った。

 ロクサーヌは俺が座ったソファーの後で、護衛として立ってくれている。

 

 ルークが腰を下ろしたところで用件を告げた。

 

「昨日落札した潅木のスキル結晶だが、幸運なことに融合に成功してな」

「おお! それはおめでとうございます。本当に昨日のアユム様は幸運に恵まれていたようですね」

 

 まあ、スキル結晶の融合については一生幸運に恵まれ続けるんだけどな。

 

「それで、潅木については買い注文の取り消しを行いたい」

「承知いたしました。こちらは取り消しておきます」

 

 おそらく、スロット四つのエストックに付けた後は、サンゴも潅木もしばらく融合を行うことはないだろう。

 

 ……いや、博徒の状態異常耐性ダウンを使えば、暗殺者じゃなくてもそれなりの確率で石化することが出来るのだろうか?

 だが、その場合でもミリア以外は麻痺と石化を見分けることが出来なくて、不意打ちをくらいかねない。

 他のメンバーの武器に付けるとしたらサンゴと毒だろうな。

 まあ、必要になった場合は改めて買い注文を出せばいいさ。

 

「そして、追加で買いを出しておきたいものがあるのだが」

「はい」

 

 あのクソブラック企業で培った、話を合わせるというスキルの出番だ。

 俺は元々知っているが度忘れしただけだと思い込むんだ。全然気負う必要なんかない。

 さあ、自然に話しかけろ。

 

「サイクロプスのスキル結晶と、あー、んー……、腕力上昇と、コボルトを足して腕力二倍がつくスキル結晶は何だったか……」

 

 顎に手を当てて斜め上を見ながら、考えるふりをしつつルークに問いかける。

 

「ああ、トロールですね。そのまま融合すると『鉄腕の』という名称が付き、コボルトと一緒に融合すると『剛腕の』になります」

「ああ、そうだった、そうだった。サイクロプスとトロールのスキル結晶を頼みたいのだ」

 

 なるほど、鉄腕に剛腕か。

 

「サイクロプスのスキル結晶はなかなか出品されることがないのですが、前回出品された時には一万五百ナールでしたし、一万ナール以下で落札されることはまずありません。トロールの方は直近ですと七千百ナール。その前が七千二百ナールでそれ以前も七千ナール以上で推移しています」

 

 どっちも高っけーな。おい。

 しかしまあ、ここは行くしかない。

 一応全員分を確保するつもりで買いを出しておこう。

 

「では、サイクロプスは一万三千、トロールは七千二百を上限に買い注文を出すのでよろしく頼む」

「ありがとうございます。それでは、継続するものが芋虫、ウサギ、コボルト、ヤギ、はさみ式食虫植物の五点。そして、今回追加するのがサイクロプスとトロールの二点。合わせて七点で相違ないでしょうか?」

「うむ」

 

 

 

 商談がまとまったところで立ち上がり、握手を交わして商業ギルドを後にする。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 食事を終えて食休みを取っていると、抱きしめているロクサーヌが話しかけてきた。

 

「ご主人様、腕力上昇と攻撃力上昇のスキルを付けるのですか?」

「そうだね。今は俺の魔法とデュランダルでなんとかなっているけど、今後魔物の数はドンドン多くなるし、ボスにもお伴がつくようになる」

「はい」

 

 こちらを見つめるロクサーヌの表情は怖いくらい真剣だ。

 

「なので、いつまでもそれがうまくいくとは思えない。上に行けば魔法一発で片付くようなことはなくなり、ロクサーヌたちの攻撃に頼る場面も出てくるはずだ」

「なるほど」

 

 彼女は頷きながら相槌を打つ。

 

「最終的には全員の装備品に腕力五倍と攻撃力五倍、それから防御力無視のスキルをつけておきたい。そうすれば、皆がデュランダルを持っているようなものだからね」

「確かにそうです」

 

 他には詠唱中断とHP吸収だな。そこまで付ければデュランダルというかフラガラッハそのものだ。

 ルティナ以外にMP吸収はいらないだろう。

 いや、ヒーラーであるロクサーヌには必要か?

 まあ、それは追々考えよう。

 

 

 

「あの、ご主人様。腕力上昇と攻撃力上昇が付くスキル結晶は買い注文を出していましたが、防御力無視については注文なさらないのですか?」

 

 それなぁ……。

 

「それについては、ボーナス装備だけに付いているスキルの可能性があるため、注文できなかったんだ。もし知られていないスキルだった場合、変に勘繰られてしまうこともあるだろうからさ」

「そうだったのですね……」

 

 俺の返答を聞いてロクサーヌは少し考え込むと、さらに問いかけてきた。

 

「ご主人様は、それをセリーに調べてもらうおつもりなのでしょうか?」

 

 うーん……。また、不安になっているんだろうか。

 俺の一番はずっとロクサーヌなんだから、そんなに不安になることはないのに。

 

 彼女の体を抱きしめていた右腕を離し、手のひらを頭に持って行き髪と犬耳をゆっくり撫でながら口を開く。

 

「スキルや装備品。それから、魔物についてはセリーに調べてもらう」

「はい……」

「でもね、何度も言うけど、俺の一番大切な人はロクサーヌだ。それが変わることは絶対にない」

「ご主人様……。私の一番大切な人もご主人様で、それが変わることは絶対にないでしょう」

 

 ロクサーヌは小さく呟くと、俺にもたれかかり体を預けた。

 まったく。心配性なお嬢さんだ。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv26 英雄Lv21 魔法使いLv25 戦士Lv23

装備 サンダル

 

BP振分 残BP:14

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

結晶化促進四倍:3

詠唱省略:3

鑑定:1

MP回復速度二十倍:63

ワープ:1

 

所持金:220,772ナール

 

春の11日目

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