異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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071 朝風呂

 

 

 

 

 

ベイル

 

 

 

 

 

 さぁ、第二ラウンドのスタートだ。

 

 アランが屋敷に入ったのを確認し、カンテラの明かりに照らされているロクサーヌに尋ねる。

 

「ロクサーヌ、匂いをたどれそうか?」

「匂いをたどるのは問題ありませんが……」

 

 そう言うと彼女は不思議そうな顔で、スンスンと確認しだした。

 一頻り確認を終えると続きを口にする。

 

「ご主人様、どうやら盗賊は二箇所から来て館の近くで合流していたようです。あの、どちらを案内したほうがよろしいでしょうか?」

 

 二箇所? どういうことだ?

 いや、考えている暇はない。

 

「とりあえず来た人数が多い方にしておこう。時間に余裕があればもう一方にも行ってみる」

「かしこまりました。こちらです」

 

 そう言って走り出したロクサーヌの後を追う。

 彼女の持っているカンテラの明かりを頼りに、ベイルの通りを駆け抜ける。

 

 

 

 

 

ベイル

スラム街

 

 

 

 

 

 しばらく走り続けていると、悪臭漂うエリアに入っていく。

 この臭い、スラム街か。

 やはり盗賊の根城はスラム街にあるのが相場なのだろう。

 

 ロクサーヌはそのまま通りを進んでいくと、周りより大きくしっかりとした造りの家の前で足を止めた。

 彼女の耳に顔を寄せ小声で尋ねる。

 

「ここか?」

「はい」

 

 頑丈そうな扉だが俺にはデュランダルという、どんな扉でも開けてしまう鍵があるからな。さいごのカギやアバカムを持っているようなものだ。

 序盤の城にある宝物庫を開けて、強い装備品やちいさなメダルだって回収出来ちゃうぞ。

 ただし、それらと同じく施錠は無理なんだけどな。

 

「中に人は?」

「おそらく六名だと思いますが、全員動きがないので寝ているのでしょう」

 

 よっしゃ! まさにうってつけの状況だ!

 音をたてないようにさっさと片付けよう。

 

「踏み込んで近くにいる奴から始末していく」

「かしこまりました」

 

 アイテムボックスからデュランダルを取り出し、入り口の枠に沿って刃を滑らせる。

 おそらく、これで鍵も切れたはず。

 ゆっくり扉を押すと狙い通り何の抵抗もなく開いた。

 ある程度の隙間ができたところでそこに体を滑り込ませ、鍵は掛からないが一応扉を閉めておく。

 

「では、案内を頼む」

「はい、こちらです」

 

 

 

 彼女の案内で部屋に侵入すると、一組の男女が同じベッドで寝入っていた。

 

 どちらも盗賊で、男の方は年齢が三十五でレベルが38、女は十七でレベルが13か……。

 おそらく、幹部とその情婦なのだろう。もしかすると女の方は元娼婦だったりするのかもしれない。部屋にはハッスル後の生臭さが漂っている。

 まあ、そんなことはどうだっていいか。時間がないんだ、とっとと始末しよう。

 

 念のためにオーバーホエルミングを使っておかねば。

 

オーバーホエルミング

 

 奴らが声を出す間もなく首を落とし、インテリジェンスカードを回収するために左手も切り取っておく。

 

 オーバーホエルミングが切れると、部屋の物色は後回しにしてロクサーヌに声をかけ次の部屋へと移動する。

 

 

 

 残りの四人も男女一組ずつ別々の部屋で寝入っていたため、同じように片づけた。

 男の方は三人ともレベルがかなり高く、それなりの地位にいたと思われる。

 これは懸賞金を期待できるかもしれない。

 

 六人を始末して左手を確保したところでロクサーヌに声をかけた。

 

「他に人は?」

「大丈夫です。もう誰もいません」

 

 その言葉を聞いて緊張がゆるんだのか、思わず息が漏れてしまう。

 さあ、もたもたしている余裕はない。家捜しを終えてとっととずらかるぞ。

 

「それじゃあ、金と装備品を探してくれ」

「おまかせください」

 

 

 

 ロクサーヌの鼻のおかげで、クローゼットやチェストに入れてあった装備品や、隠し収納に収められていた硬貨を見つけ出す。

 のんびり装備品の鑑定をしている時間がないため、確保したものを片っ端からアイテムボックスに突っ込んでいく。

 しかし、すぐにいっぱいになったため、カンテラを持っている彼女と共に自宅のバスルームへ移動する。

 

 装備品を床に置き、硬貨は排水溝に落ちると困るので、空のバスタブに入れていく。

 

 盗賊のアジトに戻り同じことを行うと、今度は金貨と銀貨がすべて収まった。

 ベッドからシーツを剥ぎ取り、アイテムボックスにしまうことが出来ない銅貨と盗賊の左腕をその上に置き、それを持ってもう一度自宅に移動する。

 

 バスルームに出たところで盗賊の腕と銅貨を包んだシーツを床に置く。

 これなら銅貨が転がることはないだろう。

 そして、先ほどと同じようにアイテムボックスの中身をバスタブに空けていった。

 

 すべて済んだところでアジトに戻りロクサーヌに尋ねる。

 

「では、もう一方の方へ行ってみよう。ここからでも見つけ出せそうか?」

「大丈夫です。場所は商館より近いので問題ありません」

 

 まあ、盗賊のアジトなんだから、どっちもスラムにあるんだろうしな。

 

「それじゃあ、行こう」

「はい」

 

 頷き合ってから外へ出ると、辺りは先ほどまでの暗闇ではなく、ぼんやりとだが周囲を確認できるようになっている。

 まずいな。タイムリミットが近づいている。

 

「ロクサーヌ、急ごう」

「かしこまりました」

 

 彼女は返事をすると脇目も振らず走り出す。

 それを追いかけていると、程なくして一軒の家の前で立ち止まり、振り返って口を開いた。

 

「ご主人様、こちらなのですが中に誰もいません」

 

 なるほど。もしかしたら全員襲撃に参加していたのかもしれない。

 まあ実際のところはどうなのかわからないが、人がいないというなら都合がいい。さっさと終わらせて家に帰ろう。

 

 先ほどと同じようにロクサーヌの鼻を頼りに家の中を物色するが、装備品は一切出てこない。

 やはり、全員襲撃に参加していたということだろう。

 だが、例のごとくロクサーヌが隠し収納を見つけ出して硬貨を確保したので、アイテムボックスに入れていく。

 今回は銅貨を除き、一度ですべて収まってしまった。

 

 しけてんなぁ。

 

 あ、いかん、いかん。押し込み強盗と空き巣をしでかしておいて、この思考はまずい。

 現代人としての倫理観がどっかに行っちまっているぞ。

 

 

 

 ……いや、これはあくまでも商館を襲うような悪党を成敗した善行だ。

 また、金をそのまま置いておけば盗賊の活動資金になるのは目に見えている。俺がそれを持ち出す事は、今後不幸になる者を減らすという崇高な行いの一環なのだ。

 それに、この世界では盗賊を殺しその財貨を奪うことは称賛される行為であり、何の後ろめたさも覚える必要はない。

 

 理論武装完了。

 

 

 

 このアジトでも同じようにベッドからシーツを失敬して、その上に銅貨を置いていく。

 それが済むとロクサーヌに声をかけた。

 

「それじゃあ、自宅に戻ろう」

「はい」

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 ワープゲートからバスルームへ移動して銅貨を包んだシーツを下ろすと、靴を脱ぎ終わったロクサーヌが声をかけてくる。

 

「ご主人様の服が血で汚れていますので着替えを用意してきますね」

「あ、ごめん。先に靴箱の上に置いた燭台を持ってきてもらえる?」

「かしこまりました。すぐに取ってまいります」

 

 カンテラを持ったロクサーヌが出て行くと、バスルームは暗闇に覆われる。

 

「ふぅ」

 

 ストレスがかかっていたのか口から息が漏れた。

 商館を盗賊から守り、それが終わると今度は逆に盗賊のアジトをはしごだ。

 夜明け前からずっと緊張しっぱなしだったからなぁ。

 

 

 

 二つのアジトで手に入れた隠し財産はかなりの量があったため、セリーを購入しても金欠状態に逆戻りということはないはず。

 それに、商館で倒した二人組とアジトで始末した男たちは、全員レベルが30を超えており懸賞金にも期待が持てる。

 不完全な状態でのボスマラソンを再び行う必要はなさそうで一安心だ。

 

 

 

「おまたせしました」

 

 バスルームに戻ってきたロクサーヌから燭台を受け取り、カンテラから火を移してニッチに置いておく。

 

「では、着替えを取ってまいりますね」

 

 あ、どうせなら朝風呂に入るか。

 

「風呂を入れるからロクサーヌの分も着替えを持ってきて」

「えっ! 朝からお風呂に入るなんて贅沢をしてもいいのでしょうか」

「全然問題ないよ。戦利品の仕分けをしたら汚れるだろうし、それに盗賊関係で緊張しっぱなしだったから疲れを取ろう」

「ご主人様、ありがとうございます」

 

 朝風呂に入るという贅沢がよっぽど嬉しかったのか、ロクサーヌは満面の笑みで再びバスルームを出て行った。

 

 どこかの庄助さんじゃないが、朝寝も朝酒も朝湯も最高だからな。

 でも、今の俺が楽しむことが出来るのは朝湯だけか。

 

 三千世界の鴉を殺しロクサーヌと朝寝がしてみたいが、迷宮探索を疎かにするわけにはいかない。

 あ、性奴隷になっている彼女にこの言葉はダメだよな。

 

 それに、酔ってキャラクター再設定のチェックを外す可能性がある以上、死ぬまで絶対に酒を飲むわけにはいかないだろう。

 

 まあ、身上を潰すわけにはいかない、たまの朝湯を存分に楽しむさ。

 

 

 

 さて、それじゃあ戦利品の確認といこう。

 

 まず、シーツを開いて切り取った六本の左手を確認すると、それから出ていたインテリジェンスカードが目に入る。

 六枚のカードを拾い、アランから受け取った分と合わせてリュックにしまっておく。

 懸賞金が懸かっているといいんだが……。

 

 そして、不要になった左手は、ひとまず壁際に寄せておいた。お湯を沸かす際にMP回復のタイミングで迷宮へ捨ててこよう。

 

 

 

 次は装備品だな。

 床に転がっている装備品を手に取り、一つ一つ確認していく。

 

 おお、鉄の鎧に一つだがスロットが付いている!

 こいつは確保しておいて、セリー加入後に適当なスキルを付けて売り払おう。

 

 それを続けているとロクサーヌが戻ってきたので、確認が済んだ装備品の汚れを落としてもらうことにした。

 

 程なくしてすべての装備品の確認を終える。

 その内訳は、アランの館で手に入れた物を除くと、鋼鉄の剣と鉄の剣、そしてレイピアが一本ずつ。

 それから、鉄の鎧が二個に革の鎧が一個。革の靴が三個に皮の靴が三個。

 このうちスロットが付いているのは鉄の鎧だけだった。

 しゃーない。まあ、こんなもんだろう。

 

 

 

 よし、次はお待ちかね、硬貨の仕分けだ。

 二つのシーツにそれぞれ包まれている銅貨を合わせてひとまとめにする。

 そして、バスタブに入れてあった硬貨を片っ端からアイテムボックスにしまっていき、入らなくなったらバスタブを出て、銅貨がなくなったほうのシーツに銀貨だけを取り出していく。

 バスタブの中の硬貨がすべてなくなるまでそれを繰り返すと、アイテムボックスには八十六枚の金貨が残っていた……。

 

「やべー……」

 

 とんでもない成果に思わず声が漏れてしまう。

 元々二十枚近い金貨が入っていたが、それを差し引いてもとんでもない数だ。

 某インバースさんが盗賊狩りをする気持ちがわかってしまうな。

 これはあまりにも旨すぎる。

 しかも、まだ銀貨と銅貨が残っているのだ。早いところそっちも数えるか。

 

 

 

 装備品の手入れをしているロクサーヌにお願いして、俺の部屋にある鍵が掛かるチェストから銀貨を取ってきてもらう。

 戻ってきた彼女からそれを受け取り、リュックの中に入っている用心棒の報酬と、銅貨を入れてある巾着袋も取り出して、シーツの上に分けられた銀貨と銅貨の山にそれぞれ混ぜておく。

 

 

 

 数え終わると銀貨が千三百八十五枚。銅貨が三千九百四十四枚だった。

 

 合計、えーっと、いくらだ? うーん……。

 だめだ、暗算じゃ無理だわ。ここはカルクの出番だな。

 

 キャラクター再設定からジョブ設定をチェックして、戦士と商人を入れ替える。

 

 よし。それじゃあ、改めて計算してみよう。

 金貨が八十六万ナールで銀貨が十三万八千五百ナール、そして銅貨が三千九百四十四ナール。

 合計百万二千四百四十四ナール……。

 

 おいおい! 百万ナール超えちまったぞ!

 

「やべー!」

 

 思わず大声を上げると装備品の手入れをしていたロクサーヌの体がビクッと跳ねる。

 

「ロクサーヌ、すごいことになった! 百万ナールを超えちゃったよ!」

 

 その言葉に彼女は驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑顔になり口を開いた。

 

「短い時間にこれほどの大金を手に入れるなんて、さすがご主人様です」

「いや、これは盗賊の匂いをたどってアジトを見つけるというアイデアを思いつき、そして完璧に遂行してくれたロクサーヌのおかげだ。本当にありがとう」

「どういたしまして。ご主人様のお役に立てて嬉しいです」

 

 彼女が思いつかなければ、絶対にこの成果は得られなかった。

 さすがロクサーヌだ。略してさすロクだ。もっと略してサスロだ。

 

 

 

 その後、1スタック分の銀貨をアイテムボックスにしまい、ロクサーヌに残りの銀貨と銅貨を部屋へ戻しに行ってもらう。

 その間に俺はバスタブを洗い流して風呂焚きだな。

 

 彼女は戻ってくると装備品の手入れを再開している。

 程なくしてすべての手入れを終えると、それを物置部屋へと運び始めた。

 そして、運搬が終わると汚れが気になったのか、バスルームの掃除をしだす。

 本当にめちゃくちゃ働き者の良い娘さんだよなぁ。

 

 MPが心許なくなったので回復のために迷宮へ行くことにする。ついでに盗賊の手を捨ててこよう。

 

 

 

 

 

 風呂を沸かし終えると、返り血や戦利品の確認作業で汚れた体を洗い流す。

 

 それが済むとお湯に浸かりながらロクサーヌを膝の上へ乗せて、お腹へ腕を回して後ろから抱きしめながらバスタブの内壁にもたれかかった。

 彼女も力を抜いてこちらへ体をあずける。

 浮力で軽減されているものの、その重みを感じていると、とても心が安らぐ。

 

「朝からこうやってお湯に浸かることが出来るなんて、本当に幸せです」

「たまにはこういうのもいいよね。今後も機会を作って朝風呂に入ろうか」

 

 その言葉を聞いて振り向いたロクサーヌの顔には、嬉しそうな表情が浮かんでいる。

 

「いいのですか?」

「もちろん」

 

 返事をして、彼女の柔らかな唇を塞いだ。

 

 

 

 ゆったりとくつろぎながら、今後の金策について考えを巡らせる。

 現在の所持金は百万ナール以上で、ボスマラソンで用意しておこうと思った目標額を超えてしまった。

 セリーたち三人の購入資金も確保できたため、今後はあくせく稼ぐ必要はない。

 それに、セリーが鍛冶師になりさえすれば装備品を作製し、それにスキルを付けて売却することも可能だ。

 

 それでも、当初の計画通りボスマラソンを行うべきだろうか……。

 

 ……正直やらずに済むのなら、あのめちゃくちゃきつかった地獄のボスマラソンはやりたくない。

 

 でもなぁ……。高価な装備品や有用なスキル結晶を人数分購入するつもりなら、相当な大金が必要になるだろう。

 例えばスロットが五個付いた高性能の杖がオークションに出品されていたとして、金が足りなかったためにそれを目の前で搔っ攫われるようなことがあったら、悔やんでも悔やみきれない。

 

 いや、そもそも俺のアドバンテージはキャラクター再設定によるボーナスポイントの振り分けだ。

 レベルを上げてボーナスポイントに余裕が出来れば、それを結晶化促進に振ることで金策も並行して行うことが出来る。

 

 ここで優先すべきは安易な金儲けではなく、長期的な目標としてのレベル上げだ。

 つまり、あの地獄の作業はするべきではない。

 

 理論武装完了。

 

 

 

 思索を打ち切ってゆったりとくつろいでいるとロクサーヌが話しかけてくる。

 

「ご主人様、もうすぐパン屋が開く時間になります」

 

 もうそんな時間なのか。

 早朝の探索は出来なかったな。

 

「それじゃあ、風呂から上がったら買い出しに行こうか」

「はい」

 

 

 

 

 

ベイル

騎士団詰め所

 

 

 

 

 

 食材を買う前にベイルの騎士団へ立ち寄り、盗賊のインテリジェンスカードを提出することにする。

 なるべく人が少ない朝早い時間に済ませた方がいいだろう。

 

 念のために辺りの様子を確認するが、盗賊が見張っているということはなかった。

 よし、さっさと済ませよう。

 

「ロクサーヌ、騎士団へ盗賊のインテリジェンスカードを持っていくが、一応俺のことを気にしている人物がいないか確認していてもらえるか」

「はい、おまかせください」

 

 彼女の返事に頷いて、騎士団へ向かって歩き出す。

 

 

 

 入り口に立っている男は前回の奴ではないのか……。

 いや、今回は用心棒として倒した分だと言えば済むはずだ。おそらく、アランへ人数の照会が行われることはないだろう。

 それなら、対応するのが別の奴だったとしても問題ない。

 リュックから取り出したインテリジェンスカードを持ち、騎士に声をかける。

 

「すまない、少しいいだろうか」

「ん? なんだ」

 

 男がこちらを向いたので、用件を告げる。

 

「今日の夜明け前に、この町の奴隷商であるアラン殿の館で盗賊の襲撃があったのだ」

「うむ。その話なら聞いている。おかげで早朝から大忙しだった」

 

 よっしゃ。それなら話は早いだろう。

 インテリジェンスカードを差し出しながら続きを話す。

 

「そうだったのか。俺もそこで用心棒として雇われていたのだが、倒した分のインテリジェンスカードを受け取ったのでな、確認をお願いしたい」

 

 騎士はそれを受け取ると確認の言葉を口にした。

 

「なるほど。では、そちらのインテリジェンスカードを検めさせてもらおう」

 

 彼の前に左手を差し出すと、俺のインテリジェンスカードを確認した途端、表情が変わる。

 

「自由民の方でしたか。それでは確認をしてまいります」

 

 そう言って中へ入っていった。

 

 前回もそうだったが騎士と自由民で、どのくらい地位の差があるのかわからないため、この豹変には驚いてしまうな。

 

 程なくして巾着袋を持って騎士が戻ってくる。

 

「確かに十一人とも盗賊で間違いありませんでした。そのうち五人には懸賞金が懸かっています」

 

 五人! おそらく、二階に上がろうとした二人組と、アジトで始末した男たちが賞金首だったのだろう。

 金額への期待でテンションが爆上がりだ。

 差し出された巾着袋を受け取るとずっしりした重さを感じる。

 それにより、さらに期待が増していった。

 

「この度は盗賊退治にご協力いただきありがとうございました」

「では、世話になった」

 

 感謝の言葉を述べる騎士に一声かけて、その場を後にする。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 食材を購入して自宅へ戻ると、ロクサーヌが朝食を作ってくれている間に、自室で懸賞金の確認を行うことにした。

 巾着袋を開き硬貨を取り出して数えてみたところ、金貨が二十枚、銀貨が四十六枚入っている。

 

 ……クッソやべーな。

 

 一瞬賞金稼ぎとして生きていくかと考えそうになるが、すぐにそれを振り払う。

 数回なら問題にならないだろうが、こんなことを続けていれば、そのうち盗賊に悟られ命を狙われるはずだ。

 そうなってしまえば俺だけではなく、パーティーメンバーも標的になる。

 もし彼女たちが盗賊に捕まってしまえば死ぬより辛い目に遭ってしまうだろう。

 絶対にそんな危険を冒すわけにはいかない。

 

 もちろん迷宮にいる盗賊や、襲い掛かってくる盗賊には容赦しないが、アジト襲撃は今回で終わりにしておいた方が無難だろうな。

 

 金貨を全てアイテムボックスに収めて、銀貨と銅貨をチェストにしまい部屋を出る。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv26 英雄Lv22 魔法使いLv25 戦士Lv24

装備 サンダル

 

BP振分 残BP:17

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

鑑定:1

ワープ:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:1,207,023ナール

 

春の12日目

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