異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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077 シェーマ焼き

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

九階層

 

 

 

 

 

 さて、これからしばらくはレベル上げだ。

 

「今回からは一番近くの敵へ案内してもらえるか」

「おまかせください! ひたすら敵を倒していくのですね!」

 

 それにしてもこのお嬢さん、ノリノリである。

 満面笑顔で、ワクワクしているのが全身から伝わってくるようだ。

 

「それから、ソマーラの村へ行くので、いつもの時間より早めに声をかけてくれ」

「かしこまりました」

 

 それじゃあ、ミッションスタート!

 

 

 

 ロクサーヌの案内で魔物へ駆け寄り、姿が見えたら魔法を放つ。

 そして、ドロップアイテムを回収すると、次の魔物へ向かっていく。

 

 それを繰り返していると、あっという間にMPが尽きて、回復が必要になった。

 まるでゲームのレベル上げをしているような魔物の倒し方に、我ながら驚いてしまう。

 

「ロクサーヌ。MPの回復をするので、ちょっと待ってくれ」

「はい」

 

 キャラクター再設定を行う前に確認をしてみると、英雄と戦士のレベルが上がっている。

 これは幸先が良い。

 

 常にこうありたいものだな。

 

 レベルが上がっていたことをロクサーヌにも伝え、ボーナスポイントを振り分けてMP回復を行うことにする。

 

 先は長い、行くぞ。

 

 

 

 

 

「ご主人様、そろそろいい頃合いだと思います」

 

 ひたすら魔法での殲滅とMP回復を繰り返していると、彼女から声がかかった。

 

 うーん……。

 結局レベルが上がったのは最初だけだったか。

 ラピッドラビット狩りが押したせいで、午後迷宮へ入った時間が遅かった上に、この後にも予定があるため切り上げる時間も早いんだ。まあ、しょうがないわな。

 

「では、売却を済ませてからソマーラの村へ行こう」

「はい」

 

 

 

 

 

ソマーラの村

ビッカーの家

 

 

 

 

 

 ゲートを潜ると、のどかな農村の光景が目に飛び込んでくる。

 

 遠くに見える雄大な山々。辺り一面の畑に、そこで作業をしている者。

 点在する家の間にある井戸端で会話を楽しむ女性たち。

 そして、その近くを走り回っている子供の集団。

 

 滞在したのは一日ちょっと。その次に来たときは用件だけを済ませてすぐに帰っている。

 それから十数日しか経っていないというのに、何故だか郷愁に誘われてしまう。

 

 ……この世界における俺の出発点だもんなぁ。

 

 

 

 だが、穏やかな風景を眺めながらも、それが呼び水となったのか、頭の中では別のことがよぎる。

 

 ……そうか、俺はもう本物の故郷を目にすることはないのか。

 

 アスファルトで舗装された道路や、排ガスをまき散らしながらそこを走る、数えきれないほどの鉄の塊。

 コンクリートでできた密集する住宅に、張り巡らされた送電線。夜道も明るく照らしてくれていた街灯。

 少し前まで当然のごとく自分と共に存在していたそれらには、もう二度と会うことが叶わない。

 

 この世界に来たことに対して一切後悔はないはずなのだが、何故だか鼻の奥がツンとして、視界がぼやけ、叫び出したいような思いが心の奥から湧き上がってくる。

 

 ホームシックに陥るような性格じゃないはずなのになぁ。

 なんでこんなに動揺しているんだろうなぁ……。

 

 

 

「ご主人様?」

 

 目の前の景色をぼーっと眺めていると、ロクサーヌの声が耳に入った。

 振り返って彼女を見遣ると、心配そうに俺のことを見つめている。

 

「ご主人様! どうなさったのですか!?」

 

 俺の顔を見て驚いたのだろう。泡を食ったように声を上げた。

 慌てふためき、こちらの頬に手を伸ばす彼女を見ていると、今度は狂おしいほどの恋慕の情が胸を焦がす。

 

 ああ、そうか。そうだよな。

 

 感傷なんぞどこかへ吹き飛んでしまい、口からは笑い声が漏れ出した。

 

 もう二度と日本の景色を目にすることは叶わないのだろう。

 今後、望郷の念に囚われてしまうこともあるかもしれない。

 親不孝をしてしまったし、妹たちにも迷惑を掛けているはずだ。

 

 だが、あの世界にはロクサーヌがいない。

 こうやって彼女と触れ合えるのは、この世界に来たからこそなのだ。

 

 なら、感傷に浸る必要がどこにある。

 この世界に来て本当に良かった。間違いなくそう断言できるぞ。

 

 

 

 俺の頬をゆっくりと撫でている彼女と目を合わせながら告げた。

 

「ロクサーヌ。いつもありがとう。君がいてくれて本当に良かった」

 

 その言葉を聞いて安心したのか、穏やかな表情に変わっていく。

 

「私の方こそ、いつもありがとうございます。ご主人様と出会うことが出来て本当に良かったです」

 

 先ほどまであった郷愁のようなものが、きれいさっぱりどこかへ行ってしまった。

 うん。ホームシックの特効薬は彼女の笑顔だな。

 今後もきっと大丈夫だろう。

 

 

 

 

「いらっしゃ——、アユム様!」

 

 開け放たれている入口から中を覗くと、こちらに気が付いたビッカーが声を上げる。

 

「ビッカー殿、先日は世話になったな。貰ったキュピコはとても美味かった」

 

 彼は椅子から立ち上がると、急いでこちらに近づいてきた。

 

「お喜びいただき幸甚に存じます」

「うむ。いずれ間違いなくこの村の特産品になるだろう」

「ありがとうございます。それを聞けば村の者も喜ぶことでしょう」

 

 感謝を述べたところで、今日の目的を切り出すことにする。

 

「あれだけのものを貰ったのだ、礼をしなければ自由民としての体裁を失ってしまう。返礼品を持ってきたので、受け取ってもらえるか」

 

 その言葉を聞くと、驚いた表情を浮かべ口を開く。

 

「アユム様、お気遣いいただきありがとうございます。ですが、そのようなつもりでお渡ししたわけではありませんので……」

「大丈夫だ。俺もそのようなつもりで礼などと言っているのではない。この村の人たちから受けた心遣いが本当に嬉しかったのだ」

 

 この村で盗賊退治を行ったのは彼らの為ではなく、徹頭徹尾自分の都合だ。

 おためごかしを言っているのが恥ずかしくなるほど、利己的な理由でそれを成している。

 だが、彼らの示してくれた感謝は、いたたまれないような思いもあるものの、この世界に立脚点を持たない俺からしてみれば、世界に受け入れてもらったような気がして、嬉しくもあったのだ。

 

「ありがとうございます。ですが、私だけでいただくわけにはまいりません。村長を呼んでまいりますので、少々お待ちいただけますか」

「いや、俺たちも一緒に村長のところへ行こう」

 

 恐縮するビッカーと共に店を出る。

 

 

 

 

 

ソマーラの村

ソマーラの家

 

 

 

 

 

 ビッカーが扉を叩きながら、ブラヒム語ではない言葉で声を上げると、中から村長の奥さんが出てきた。

 ビッカーの話を聞いた彼女は慌ててこちらを向き会釈を行う。

 そして、大声を上げながら中へ入り、すぐに村長を連れて戻ってくる。

 

「アユム様。先日は本当にお世話になりました」

 

 そう言うと、女性と共に深々と頭を下げた。

 

「いや、気にしないでくれ。村に何事もなくてよかった。それより、こちらのほうこそ世話になったな。貰ったキュピコは本当に美味かった」

「さすがアユム様です。あれだけのことを成し遂げたというのに、それを誇ることがないとは」

 

 いいから、そういうの本当にいいから。

 そしてロクサーヌ。君もそのかわいいドヤ顔をやめなさい。

 

 

 

 挨拶を終え、村長宅に通される。

 村の寄り合いにでも使うのだろうか。割と広めな板張りの部屋に腰を下ろし、用件を述べた。

 

「俺たちは今、ベイルに新しくできた迷宮に入っているのだが、そこでウサギの肉を手に入れてな。キュピコの礼にと集めてきたのだ。四十個ほど用意してあるので、村の住人全員に行き渡るよう手配してもらえるか」

「ウサギの肉でございますか!?」

 

 村長の大きな声が上がり、ビッカーの声もそれに続く。

 

「この短期間にお二人だけで、ラピッドラビットを四十匹も倒されたのですか……」

 

 倒した数は四十じゃないし、別にラピッドラビットだけを狩っていたわけではないが、まあ、これは言う必要はないよな。

 

「俺たちにとっては造作もないことだ。遠慮なく受け取ってもらえるとありがたい」

 

 そう言って、同意を求めるようにロクサーヌのほうを向くと、彼女は当然ですとばかりに頷き、ナイスアシストを決めてくれる。

 

「このような村では、迷宮産の食材を手に入れる機会はなかなかありません。村人一同喜ぶことでしょう。アユム様、本当にありがとうございます」

 

 村長はそう言って深々と頭を下げ、ビッカーと奥さんもそれに続いた。

 

 

 

 感謝の言葉を受けとり、一頻りあいさつを交わし合うと、村長が雑談を始める。

 

「聞いたところによると、クーラタルに家を借りたのだとか」

「うむ。迷宮に入って暮らそうと思うなら、クーラタルに住むのがいいと聞いたのでな」

「確かに、そのような話をよく聞きます。では、アユム様はクーラタルからベイルへ、フィールドウォークで移動されているのですか?」

 

 くっ。聞かれたくないことを聞いてきやがる。

 この村では冒険者ということになっているんだ、当然そう思っているのだろう。

 これ、そのうち、面倒なことにならないだろうな?

 早いところ探索者のレベルを50にしなければ、不味いかもしれない……。

 

「その通りだ。クーラタルの迷宮にも入っているのだが、人が多いと面倒なことも多いのでな」

「なるほど。そういうこともおありでしょう」

 

 俺の言葉を聞いた村長は、ロクサーヌのほうをチラリと見て、納得したように頷いた。

 

 たぶん、美人を連れていると絡まれるとか思ったんだろうけど、別にそういうつもりの言葉ではなかったんだが……。

 

「まあ、今後はベイルとクーラタル両方に入り、自分たちを鍛えていくことになるだろう」

「あれだけの強さをお持ちなのに、さらに修練を行った上で討伐する迷宮を定めるということですか……。さすがアユム様です」

 

 おいおい、そんなことは言ってないじゃん。

 勝手な解釈はやめちくりー。

 

 ほら見ろ、うちのロクサーヌが笑顔で頷いているじゃないか。

 顔には『当然です』と書いてあるぞ。どうしてくれるんだ。

 

 

 

 その後、歓待を行いたいだの、せめて夕食だけでも、といった誘いを予定があると言って断った。

 酒を薦められても飲むことが出来ないし、場の雰囲気を盛り下げることに定評のある俺だ。そういうのはちょっと遠慮したい。

 それに、自分の家が大好きな人間だからな。

 我が家最高!

 

 

 

 

 

ソマーラの村付近の森

 

 

 

 

 

 ワープで森の中に移動すると、アイテムボックスから盾を取り出し左手に装着した。

 さて、ジョブの取得条件を満たすとしよう。

 

「ロクサーヌ、スローラビットのいるところまで案内してもらえるか」

「はい、おまかせください」

 

 匂いを確認しながら歩き出す彼女について行くと、すぐに白くてフワフワした塊を発見する。

 

スローラビットLv1

 

 ……転移初日の俺の苦労は何だったんだ。

 一匹見つけ出すだけでも、あんなに大変だったのに……。

 

 まあいい、落ち込んでいないでさっさと済ませよう。

 

 

 

 毒で倒せばいいだけなので、HPを削ってから挑む方がいいのだろうが、攻撃してしまうと魔物が動き出す。

 そうなれば毒針をあてることが難しくなるだろう。

 レベル1のスローラビットなら、削ることなくHPが満タンの状態から毒を入れたとしても、倒れるまでにそう時間はかからないはずだ。

 

 なあに、ロクサーヌがヘイトを取り、奴が倒れるまでひたすらかわし続けてくれる。

 何の問題もない。

 

「毒を受けたら動き出すので、ロクサーヌは奴の注意を引いてくれるか」

「おまかせください。毒を受けた魔物の攻撃をかわすことには慣れています」

 

 ……そうだった。

 このお嬢さんは幼い頃、ノンレムゴーレム相手にこれをやっているんだった。

 セリーもドン引きだったもんなぁ……。

 

 この世界で迷宮探索に挑むイケイケドンドンな人たちの中でも、やはり彼女は群を抜いてネジが外れている。

 俺がしっかりしなくては……。

 

 

 

「では、始めよう」

「はい」

 

 アイテムボックスから毒針を取り出して、スローラビットの背後から近寄る。

 さすがノンアクティブ。こちらに一切反応を示す様子はない。

 

 絶対に外さない距離まで近づいてそれを投げつけると、魔物の体に当たった毒針はそのまま消えていった。

 

 なるほど。一回ごとに毒針は消えてしまい、再利用は不可なのか。

 そりゃそうだわな。何度も使えるなら原作でもあんなに集める必要はなかったはずだ。

 

 しかし、奴のほうには何の変化も現れない。

 確率はそこまで高くないようだし、次々に投げつけてみよう。

 

 四本目の毒針が当たると、スローラビットはいきなり動き出し、方向転換を始める。

 

 きた!

 

 そのまま後ろに下がり、ロクサーヌと場所を変わると、彼女は魔物の攻撃をあしらい出した。

 

 こちらに向かってきた場合に備え、盾を構えながらそれを見守る。

 

 スローラビットの体が薄っすらと青みがかっているな。

 森の中とはいえ、ここは迷宮よりは明るいし、スローラビットの体色は真っ白だ。そのため毒の状態がわかりやすいのだろう。

 

 石化で白くなったとしても、迷宮で見分けられるとは思えんぞ。

 やはり、状態異常攻撃はミリアにまかせたほうがよさそうだ。

 

 

 

 しばらく様子をうかがっていると、突然スローラビットが倒れ、霧のように空気へ溶けていった。

 

 さすがロクサーヌ。何の問題もなかった。

 

「ロクサーヌ、ありがとう。これで暗殺者の条件を満たすことが出来た」

「どういたしまして。お役に立てて嬉しいです」

 

 ニコニコ笑顔が本当にかわいいわぁ。

 

「それじゃあ、今度は槍のほうを試すので、次の魔物を頼めるか」

「かしこまりました。ご主人様、こちらです」

 

 

 

 今回もすぐにスローラビットと遭遇する。

 やっぱこの鼻、とんでもない能力だよなぁ。

 エンカウントにかかる時間が、転移初日とは比べ物にならないぞ。

 

 さて、今回はボーナスポイントをいじらなければ。

 鋼鉄の盾をアイテムボックスにしまい、キャラクター再設定の画面を開いて考える。

 

 一旦、キャラクター再設定と必要経験値十分の一、それから鑑定を残し、フォースジョブをサードジョブに落として、他をすべて解除してみよう。

 

 残ポイントは89……。

 

 とりあえず、腕装備五とアクセサリー五にポイントを振って装備を変えるか。

 

 硬革のグローブをアイテムボックスにしまい、ポイントを振り分けて、出現した装備品を身に着ける。

 

 よし。オッケーだな。

 これで腕力五倍と攻撃力五倍の併用が出来た。

 残りのポイントは腕力上昇にぶっこんでおけばいいだろう。

 

 ジョブについては、探索者と英雄はマストだ。この二つを外すわけにはいかない。

 サードジョブはどうするか……。

 

 戦士にしてラッシュで片づけるか?

 

 ……いや、スキルを使った攻撃で倒した場合、取得条件を満たさない可能性がある。

 おそらく問題ないとは思うが、もしアウトだった場合、やり直しが面倒だ。

 ここは腕力小上昇が付く剣士に変えておこう。

 

 アイテムボックスから銅の槍を取り出し、準備完了だ。

 念のために鑑定っと。

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv27 英雄Lv23 剣士Lv2

装備 銅の槍 硬革の帽子 硬革の鎧 スクリューミルの手袋 硬革の靴 ブリーシンガメン

 

 うん。問題ナッシング。

 

 それにしても、腕装備五はスクリューミルの手袋なんだよなぁ。

 スクリューミルはロキが変装した姿で、その手袋は雷の神トールが入り込めるほど巨大だったはず。

 やはり、それそのものということではなく、名前だけ拝借しているのだろう。

 

 

 

 さて、いっちょやってみますかね。

 

「では、これから攻撃を始める。単独で戦うので、危なくなるまでは手出し無用で頼む」

「かしこまりました」

 

 今回も念のため、スローラビットの後ろに回り込む。

 まあね、何かあったらあれだからね。念のためね。

 

 

 

「その心臓、貰い受ける!」

 

 銅の槍をスタイリッシュに構えながら声を上げる。

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)!!」

 

 思いっきり突き出した銅の槍が、スローラビットに深々とぶっ刺さり、その一撃でこと切れたのか、動き出すこともなく体を霧散させていった。

 

 

 

 よし! ワンパンだったぜ!

 さすが腕力五倍に攻撃力五倍。全然問題なかったな。

 

 内心悦に入っていると、ロクサーヌが興奮したように近寄ってきた。

 

「ご主人様! 今のスキルは何ですか!」

 

 え? あ、どうしよう……。

 何て説明すればいいんだ?

 

「えーっと、今のはスキルではなく、気合を入れるために発した、ただの掛け声だ」

「なるほど。ご主人様の故郷ではこういった掛け声を出すのですね」

 

 ロクサーヌは何やら納得したように頷いている。

 

 なんか、変な方向に行っている気がするが、別に間違っているわけではないしな。

 長物を持てば、ゲイ・ボルグと言うし、傘を持てばアバンストラッシュを放つものなのだ。

 うん。何の問題もない。

 

 というかこの世界だと、ボーナス装備でゲイ・ボルグがあってもおかしくない気がする。

 もし、あるのなら、どんなスキルが付いた装備なんだろうか。期待が膨らむぞ。

 

 

 

 さて、次はロクサーヌの番だ。

 

 彼女の武器と盾、それから腕装備を預かりアイテムボックスにしまい込む。

 そして、ブリーシンガメンとスクリューミルの手袋、そして銅の槍を手渡し装備してもらう。

 

 んじゃ、鑑定っと。

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

戦士Lv14

装備 銅の槍 ダマスカス鋼の額金 竜革のジャケット スクリューミルの手袋 竜革の靴 ブリーシンガメン

 

 うん。オッケーだ。

 

 俺のほうも装備を整えたところで、声をかける。

 

「では、次の魔物のところへ頼む」

「はい。こちらです」

 

 

 

 ロクサーヌはあっという間にスローラビットを探し出すと、そのまま駆け寄り、何の躊躇もなく正面から銅の槍を突き入れ、一撃で始末してしまった。

 制止する暇もないほどの時間でなされた行動に、呆然と立ち尽くしてしまう。

 

 うそーん。

 マジで? ジョブの変更も腕力のパラメーターに振ったのも、意味なかった系?

 

 ……いや、これでいいんだ。取り越し苦労なんて望むところさ。

 だろう運転ではなく、かもしれない運転を徹底することで、事故を未然に防ぐことへとつながる。

 俺の行動は何一つ間違っちゃいない。間違っちゃいないんだ。

 

 ……しかし、このお嬢さん、躊躇なく真正面からいったな。

 レベル1の敵とはいえ、豪胆すぎるだろ。

 

 

 

「さすがご主人様の装備品はすごいです! 私でも一撃で倒すことが出来ました!」

 

 ロクサーヌさん大興奮である。

 

 でもまあ、無理もない。

 レベル1のスローラビットとはいえ、よっぽど良い装備でもないかぎり、複数人で取り囲んで延々叩き続けるらしいからな。

 いずれは、もっとダメージが通る武器を用意して彼女にも装備してもらうことにしよう。

 

 装備品を戻し、ボーナスポイントの振り分けを終えたところで、声をかける。

 

「では、今日はここまでにしてクーラタルへ戻ろう」

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 修行と武器の手入れ、それから風呂を沸かした後は食事の時間だ。

 今日の夕食は待ちに待ったロクサーヌ特製シェーマ焼き。

 

 めちゃくちゃ楽しみだ。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 早速シェーマが巻かれたウサギ肉をナイフで切り、フォークで刺して口へ運ぶ。

 

 美味い!

 

 ウサギの肉を初めて食べたが、思っていたほど癖もなくかなり食べやすい。

 ジューシーで噛むたびに肉汁があふれ出し、口の中が旨味でいっぱいになる。

 塩胡椒のシンプルな味付けと、ピリ辛なシェーマがマッチしており、いくらでも食べられそうなほどだ。

 

 嬉しそうに俺の食べるところを見ているロクサーヌに話しかける。

 

「めちゃくちゃ美味しいよ。本当にロクサーヌは料理が上手だよね」

「ふふ。ありがとうございます。喜んでいただけたようで安心しました」

 

 

 

 会話を楽しみながら、結構な数があったシェーマ焼きを二人で完食した。

 

 あー、本当に美味かったー。

 

 しかし、ウサギ肉がこんなに美味しいものだったなんてなぁ。

 日本にいたときにも食べておけばよかった。

 

 普通のウサギもこんなに美味しいのだろうか? それとも、ドロップ食材だからこそなのかね?

 

 なんにせよ、ウサギ肉は今後我が家の定番になりそうだ。

 から揚げとかにも合いそうだよな。そのうち作ってみよう。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv27 英雄Lv23 魔法使いLv26 戦士Lv25 僧侶Lv15

装備 サンダル

 

BP振分 残BP:10/125

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

必要経験値十分の一:31

鑑定:1

詠唱省略:3

ワープ:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:1,050,217ナール

 

春の15日目

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