異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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078 期間限定

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 朝起きて身だしなみを整えると、今日の予定を確認だ。

 

「今日もまず、早朝はひたすら九階層の魔物を倒していこう」

「はい。昨日はすごかったですね。ご主人様は三つのジョブのレベルが上がりましたし、私も戦士のレベルが15になりました。自分のレベルがわかるというのは、とても励みになります。探索者でもないのにその恩恵が得られるのは本当にすごいことです」

 

 昨日は一日中、ただひたすらサーチアンドデストロイだったからな。

 セリー加入まではこのまま突っ走ろう。

 

「早朝の探索が終わって食事を済ませたら、武器屋と防具屋巡りだね。ベイルではセリーの顔も見てこよう」

「はい。セリーもブラヒム語の勉強を頑張っているのでしょうね」

「そうだね。あの娘もロクサーヌと同じで真面目な娘だろうから、一生懸命やっていると思うよ」

 

 ロクサーヌと顔を見合わせて笑い合う。

 正式加入まであと十五日。それまでにブラヒム語をものにしていてほしい。

 

「その後はロクサーヌの買い物だね。もちろん今日も給金を渡しておくから楽しんでね」

「ありがとうございます、ご主人様」

 

 満面の笑みを浮かべ、彼女は嬉しそうに感謝の言葉を述べた。

 喜んでいる様子がめちゃくちゃかわいいなぁ。

 

「その後は迷宮に入り、昼食を挟んで午後もひたすら魔物を倒していく」

「望むところです!」

 

 買い物と同じテンションで喜んでるぞ。 

 まったく、戦いが好きな娘さんだこと。

 

「それが終わると、修行、夕食、お風呂、就寝で、いつもの流れかな」

「はい。今日も幸せな一日ですね」

「確かにそうかも、ロクサーヌの言う通り幸せな一日だね」

 

 さて、幸せな毎日を維持するために、今日も一日頑張ろう。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

九階層

 

 

 

 

 

「ファイヤーストーム!」

 

 迷宮の中に、俺の声が響き渡る。

 結晶化促進八倍を付けるため、ワープを外し、詠唱省略を詠唱短縮に落としたせいで、魔法名を口にする必要があるのだ。

 

 でもこれ、すげーテンション上がるわ。

 まるで必殺技の名前を叫びながら戦う、アニメの主人公になったような気分だぞ。

 

 まあ、こんなことが出来るのも、彼女の鼻で周りに人がいないことがわかっているおかげだ。

 

 魔法名を叫び、次々と魔物を屠っていく。

 

 

 

 MP回復のタイミングで鑑定を行うと、昨日上がらなかった英雄のレベルが上がっていた。

 ロクサーヌの索敵、スタッフとメギンギョルズで底上げされた魔法攻撃力での1確。そして経験値効率二百倍。

 すべてが絶妙に作用し、とんでもないシナジーを生み出している。

 頭の中では脳汁がドクドク湧き出ているはずだ。

 

 

 

 MP回復を終え、水分補給のためにコップを取り出そうとリュックを漁っていると、チラリと見えた魔結晶の色が変わっている。

 

 マジか! コップどころじゃない!

 魔結晶を取り出して確認だ!

 

 

 

「緑になってる……」

 

 これで一万ナールか。やはり結晶化促進の効果はものすごい。

 

「もう緑になったのですか! ご主人様、すごすぎです!」

 

 俺の手にある魔結晶を見て、ロクサーヌが大きな声を上げた。

 魔物一万匹分の魔力が貯まったってことだもんなぁ。

 

「うむ。この調子で魔力を貯めてこう」

「はい。ご主人様なら、またすぐに黄魔結晶にしてしまうことでしょう」

 

 まあ、彼女の言う通り、結晶化促進の倍率が上がれば、すぐにでも黄魔結晶になるはずだ。

 そのためには、ポイントを取得するため、レベル上げに励まないとな。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

 パン屋の開く時間になったところで早朝の探索を終え、クーラタルへ戻る。

 食事と食休みを済ませて、ロクサーヌへ給金を渡すと、五日ぶりの武器屋、防具屋巡りに出発だ。

 

 

 

 まずは武器屋へ行ってみるが、やはり今回も空振りに終わり、遺留品だけを売り払い店を出る。

 

「良い装備品を見つけるのは、なかなか難しいものだな」

「そうですね。そう簡単に見つかるものでもないでしょう。時間をかけて気長に探す他ないのかもしれません」

 

 ロクサーヌの言う通り、そう簡単に出物が見つかることはないのだろう。

 鑑定でスロットの有無が見えてしまうため、普通の人に比べて選ぶ基準が厳しく、そのせいで、さらに見つけ難くなっているしなぁ。

 まあ、のんびり探すとするさ。

 

 

 続いて防具屋も確認してみるが、やはりこちらでも目ぼしいものが見つかることはなかった。

 防具の売却だけを済ませて、とっとと退散だ。

 

 

 

 

 

帝都

 

 

 

 

 

 帝都の冒険者ギルドから外へ出て、表通りを歩く。

 

 それにしても、遺留品の売却だけで二万ナール以上か……。

 ロクサーヌが装備している強権のレイピアをオークションにでも出せば、合わせて十万ナールを超える可能性もあるだろう。

 

 彼女が、全滅した痕跡を発見して運が良いと声を上げたのも道理だわ。

 俺たちもそうならないように気をつけないとな。

 

 しかしそれにしても、空振りばっかりだ……。

 

 うーん……。

 出物は気長に探すとしても、セリーが加入するまでにそれが見つからなかった場合、間に合わせの装備品を購入するべきか……。

 

 とりあえず武器はスロットが一つの鋼鉄の槍で妥協する。

 そして、防具については、硬革の靴は既に渡してあるし、結局使用しなかった硬革のジャケットも、物置で絶賛放置プレー中だ。

 両手武器を使用する彼女に盾は必要ないので、硬革の帽子と硬革のグローブを買っておけばいいだろう。

 

 最終的にはスキルを付けて売り払うことになるため、プラスになることは確定している。

 それに、今の俺とほぼ同じ装備なんだ、防御力的にも問題ないはず。

 

 どうしても見つからないときには、それも考慮しておこう。

 

 

 

 

 

帝都

武器屋

 

 

 

 

 

「おおっ!」

 

 武器屋に入り、カウンターの奥に展示されているそれを目にした瞬間、思わず声を上げていた。

 

ダマスカス鋼の槍

スキル 空き 空き

 

 うっしゃー! 見つけた! しかもスロットが二つ付いている!

 鋼の槍の購入を検討した途端にこれだよ。

 本当に物欲センサーさんは働き者やで。

 

「店主、すまんがその奥の槍を見せてもらえないか」

 

 カウンターに立っている武器商人の男に声をかけた。

 たぶん店主でいいんだよな?

 

「お客様、お目が高い。こちらは昨日買い取ったばかりのダマスカス鋼の槍でして、上層でも戦えるほどの品となります。是非お手に取ってご確認ください」

 

 ぶっちゃけ、持っただけでは武器の良し悪しなんぞさっぱりわからないが、俺には何より確かな鑑定がある。

 しばらく振り回し、感触を確かめたふりを終えて、再び話しかけた。

 

「なるほど、確かに良いものだ。では、これを購入させてもらおう。だが、他にも購入したいものがあるのでな、それとまとめて精算させてくれ」

「ありがとうございます。もちろん問題ございません」

 

 店主に槍を返して、ロクサーヌと共に店内を確認していると、彼女は俺の耳元に顔を寄せ囁いた。

 

「ご主人様、あれが付いていたのですか?」

「うむ。それも二つも付いていた」

「ふふ。さすがはご主人様です」

 

 ロクサーヌさんや、これはただの運であって、ご主人様は関係ないぞ?

 

 

 

棍棒 槌

スキル 空き

 

 まあ、こいつでいいかな。

 壁に立てかけられている丸太の中から、スロット付きを適当に選ぶ。

 三割対策と鍛冶師取得のためだけに買う品だ。特にこだわる必要もないだろう。

 

 カウンターへ運ぶために持とうとしたところ、とんでもない重量が腕にかかった。

 

 重っも!

 

 いや、これマジか!

 セリーはあの細っこい腕で、こんなもんをブンブン振り回すの?

 ドワーフ恐るべしだわ。

 

 しかし、装備品は装備した者に合わせて伸縮するって話だったよな?

 俺が持った場合、使いやすいようにサイズが変わりそうなものなのに、そんなことはないのか。

 

 ……うーん。

 正直、この辺の設定はよくわからない。

 原作でも防具が伸縮する描写はあったものの、武器の大きさが変わった描写はなかったはずだ。

 もしかしたら、サイズが変わるのは防具だけの可能性があるな。

 

 それに防具にしても、伸縮したところで、金属製のものを身に着けると、重くて動きに支障をきたす。

 大きさが変わっても重量に変化はないのかもしれない。

 

 確かウェブ版の最初のほうで、冒険者は片手剣の適性があるみたいな設定が出てきたはず。

 その設定がこの世界でも当てはまるのかはわからないが、もしそうなら、ジョブだけではなく、種族ごとに装備品の適性に差があってもおかしくない気がする。

 ドワーフは全員槌の適性が高く、どんなジョブに就いていても十全に扱えるのかもしれない。

 もし本当にそうなら、マジでドワーフ恐るべしだな。

 

 ……いや、まてよ? 原作では出てこないが、装備品ごとにパラメーターによる制限や、レベルキャップが設定されている可能性もあるか?

 それらが低かった場合、強力な武器や防具を装備できなかったり、装備できても使いこなせないなんて、ゲームではよくある話だ。

 

 ……ん? あ、俺は村人のレベルが1の頃から、鬼性能のデュランダルを扱えていたわ。

 それに原作でも、低レベルのルティナが聖槍を問題なく使っていたもんな。

 

 いやー、パラメーターやレベルによる制限はなさそうで一安心だ。

 今後、強力な装備品を入手しても制限が掛かって使えません、ってなことになると、加入したばかりのメンバーを高性能防具でガチガチに固めて、高階層でパワーレベリングを行うのに支障をきたす。

 

 

 

 さて、しゃーない。いっちょ気合を入れるか。

 ちょっと前の俺なら、腰痛のことを考えて躊躇したであろうが、今はピチピチの十八歳。全力で行くぞ!

 

「ふんっ!」

 

 グリップ部分を握りしめ、気合を入れて持ち上げると、腕にかなりの重量がかかる。

 しかし、カウンターに運ぶくらいなら問題なさそうだ。

 レベルアップによりパラメーターが上がっている影響なのだろう。

 

 そのまま、移動してカウンターに立てかけ、店主に声をかけた。

 

「この二点を頼む」

「ありがとうございます。それでは確認いたします」

 

 そう言うと店主は後ろに下げていたダマスカス鋼の槍をカウンターの上へ置き、立てかけられている棍棒の確認を終えると口を開く。

 

「ダマスカス鋼の槍が五万五千ナール、棍棒が三百四十ナールで合計五万五千三百四十ナールとなりますが、ありがたいことに当店をご利用していただけたのです、今回は三万八千七百三十八ナールで販売させていただきたく存じます」

 

 くっ、四万ナール近くが吹っ飛んだか……。

 いや、大丈夫だ。スキルを付けて売却すれば絶対に元は取れる。

 これは投資なんだ。しかも百パーセント確実に高配当が約束されている投資だ。全然問題ない。

 

 支払いを終え、購入した武器をアイテムボックスにしまって店を出る。

 

 

 

 防具屋へ向かって歩いていると、ロクサーヌが弾むような声で話しかけてきた。

 

「良い買い物でしたね」

「そうだな。本当に良いものを手に入れることが出来た」

 

 こいつに詠唱中断のスキルを付ければ、セリーのメインウェポンとして、活躍してくれることだろう。

 三人パーティーの間は前衛として棍棒をぶん回すこともあるかもしれないが、ミリア加入後は中衛の位置からスキルのキャンセルを狙ってもらうことになるからな。

 ガチで良い買い物だったわ。

 

 

 

 その後、防具屋を回ってみるが、こちらのほうは空振りに終わった。

 まあ、しょうがない。

 

 

 

 

 

ベイル

アランの館

 

 

 

 

 

 ベイルの探索者ギルドへ移動して、すぐ目の前のアランの館を訪ねると、話が通っているのか、商人の男に部屋へ案内される。

 

 最初に奴隷を売りに来たときや、盗賊のことを知らせたときに通された部屋だ。

 奴隷の購入に来たわけではないので、高級な方の部屋ではないのだろう。

 

 

 

 ソファーへ腰を下ろし、ロクサーヌと話しながら待っていると、セリーを連れたアランが部屋に入ってきた。

 わざわざアランが対応するのか……。

 

 ん? セリーの表情が暗い? 何かあったのか?

 

「ようこそいらっしゃいました、アユム様」

「館の主が自ら対応してくれたのか。忙しいだろうに、申し訳ないな」

「いえいえ、大切なお客様への対応となると、他の者にまかせるわけにはまいりません」

 

 立ち上がり挨拶を交わしたあと、勧められ再びソファーに腰を下ろす。

 

 セリーの方をうかがうと、顔を伏せ落ち込んでいる様子が見て取れる。

 なんか、めちゃくちゃ気になるんだけど……。

 本当に何があったんだ?

 

「彼女の学習状況はどうなのだ?」

「はい、本人の意欲が高いため、順調に進んでおります」

 

 いや、セリーを見ていると、とてもそうは思えないんだが……。

 

「そうか、それはありがたい。アラン殿、感謝する」

「私共は請け負った仕事を行っているだけでございます。お気になさらず。では、他人には聞かれたくないこともおありでしょう。私は一旦退席いたしますので、存分にお話しください」

 

 そう言って立ち上がると、一礼して部屋を出て行った。

 

 

 

 ……さて、このお嬢さんがどうして落ち込んでいるのか聞いてみよう。

 まさか、今更購入されるのが嫌になったとか言わないだろうな。

 

「セリー、元気にしていたか?」

 

 まずは近況を確認してみると、うつむいていた顔を上げ返事をする。

 

「はい。げんき、です。とても、よくして、もらって、ます」

 

 おお! 少し言葉が流暢になっているか?

 

「ご主人様、あいにきてくれて、うれしい、です」

 

 うん。間違いなく流暢になっている。

 たった五日ですげーな。

 

「うむ。俺たちもセリーの元気な顔を見ることが出来て嬉しい」

 

 な、という風にロクサーヌのほうを見ると、彼女も頷いて口を開く。

 

「はい。セリー、あなたの言葉がとても流暢になっています。頑張っているのですね」

 

 俺たちの言葉に、一瞬はにかんだような笑みを浮かべるも、すぐに暗い表情へ戻り、顔を伏せてしまう。

 

「セリー、落ち込んでいるようだが、何かあったのか?」

 

 人様から預かっている娘に無体を働くとも思えないんだが、いじめにでもあっているのだろうか?

 それとも、俺に購入されるのが嫌になった?

 そんなことを言われたら、恥も外聞もなく泣いてしまうぞ?

 いいのか? 四十五のおっさんのマジ泣きだぞ?

 絶対引くぞ?

 

 彼女は俺に向かって頭を下げると、そのまま話し出す。

 

「わたしは、ご主人様が、あいにきてくれることを、たのしみに、でした。むかえにきて、くれるのも、たのしみに、でした。でも、いちどだけ、ご主人様を、うたがった、です。このまま、ここにおかれて、きてもらえない、おもいました。うたがって、ごめんなさい。おゆるしください、ご主人様」

「お前が言うんかい!」

 

 セリーの言葉を聞き、思わず声を張り上げてツッコミを入れていた。

 

「えっ……」

「あの……」

 

 俺の上げた大声に、セリーは弾かれたように顔を上げ、呆然とこちらを見つめている。

 そして、ロクサーヌのほうも、戸惑ったように俺を見ていた。

 

「あ、いや、何でもない。セリー、君は今、奴隷商館に預けられている状況なんだ、不安に思って当然だろう。全然気にすることはないぞ」

 

 ロクサーヌのときは即日で購入していたため、メロスサーヌになるということはなかったが、まさかセリーがこうなってしまうとはなぁ。

 

 今日から君はセリーヌンティウスだ。

 

 その言葉を聞いて、縋るように上目遣いで俺を見ている彼女へ、ロクサーヌが話しかける。

 

「そうですよ、セリー。私たちのご主人様は、そのようなことで怒るほど器の小さいお方ではありません。安心してください」

 

 セリーは、俺とロクサーヌの顔をきょろきょろと確認すると、ようやく不安が和らいだのか、はにかんだような笑みを浮かべて口を開いた。

 

「ありがとう、ございます」

 

 

 

 その後、どのようなことを学んでいるのか、商館での扱いは悪くないかなど、セリーがどんな風に過ごしているのかを教えてもらう。

 

 ブラヒム語はセリーの通訳として同席していたおばさんに教わっているそうだ。

 ロクサーヌによると、あの女性は彼女にも言葉と文字を教育しており、バーナ語も問題なく話すことが出来るらしい。

 実はめちゃくちゃ才女だったのか。

 

 商館でのあつかいも、大切な客から預かっているということで、とても良い待遇を受けているようだった。

 

 まあ、あのアランがその辺を疎かにすることはないだろう。

 

 

 

 セリーのことを一頻り聞いたところで、彼女はおずおずと質問を投げかけてきた。

 

「ご主人様、めいきゅうは、どこに、います、ですか」

 

 遠慮がちに尋ねているものの、ワクワクが隠しきれておらず、輝くような瞳でこちらを見つめている。

 

 本当に好奇心旺盛でかわいらしい娘だなぁ。

 

 まだ低階層だし、本当のことを答えても問題ないだろう。

 ロクサーヌのほうを見遣ると、俺の意図を理解したのか、笑顔で頷いている。

 うん。大丈夫そうだな。

 

「俺たちは今、ベイルに新しくできた迷宮へ入っており、九階層で鍛えている」

 

 すると、セリーは興奮したように身振り手振りを交えながら話し出した。

 

「わたし、まえ、ろくにんで、はちかいそう。ご主人様、ふたりで、きゅうかいそう、すごい、です」

 

 レベル10で八階層はだいぶ怖いな。安全マージンが全然取れていない。

 レベル差が2しかない状態では、レベル補正によるダメージの減少量も大したことはないだろう。

 そんなところへ行くなんて、俺には絶対無理だわ。

 探索者は自分のレベルを確認できるんだから、もっと慎重に行動すればいいのに。

 この世界で迷宮に入ろうと考える人は、向こう見ずばっかりだな。

 

 

 

 セリーの言葉を笑顔で聞いていたロクサーヌが、口を開く。

 

「はい。ご主人様はすごいのです。セリーが仲間になったら、すぐにでも更に上へ進むことになるでしょう」

 

 その言葉を聞いたセリーは、『え?』という表情を浮かべ、俺のほうへ顔を向ける。

 

 あー……。

 『私のことを、即戦力としてあてにしてるんですか? そんなこといわれても無理です……』って思っているんだろうなぁ。

 

 すまん。俺が、ニートアントに挑むのはセリー加入後といったばっかりに、ロクサーヌの中では君が加入後すぐに、十階層へ挑むことになっているようだ。

 大丈夫、無茶なことをさせるつもりはないぞ。

 

 ……でもまあ、さすがにセリーは、ロクサーヌほどネジが外れているわけではないようで安心したわ。

 

「セリーも俺たちと一緒に鍛えて、ゆっくり探索を進めていこうな」

「はい、です」

 

 それを聞いてセリーはほっとしたような顔で返事をしたのだった。

 

 

 

 その後も三人で会話を楽しんでいると、アランが戻ってくる。

 

 ああ、面会時間は終わりかぁ。

 アランに感謝を告げ、セリーに声をかけた。

 

「では、五日後にまた会いに来るので、セリーも頑張ってくれ」

 

 すると、彼女は笑顔を浮かべ、キュッと両手で拳を握りながら答える。

 

「はい、です。ご主人様の、おやくに、たちます。がんばります」

 

 あまりの可愛さに、驚いてしまった。

 このぴゅあぴゅあであどけない雰囲気のセリーは期間限定なのかな?

 ブラヒム語が完璧になったら、生意気な態度を取ったり、呆れたり、ジト目を向けてきたりするのだろうか?

 

 まあ、それはそれでかわいいから問題ない。

 

 俺が考え込んでいる間に、ロクサーヌとセリーは楽しそうに何やら話をしている。

 『いせはれ!』してんなぁ。

 仲良さそうで、本当に安心するわ。

 きっと彼女たちなら、俺の知らないところでギスギスのドロドロみたいなこともないだろう。

 

 

 

 

 

ベイル

市場通り

 

 

 

 

 

 今日俺たちが顔を出したことで安心したのか、別れ際のセリーは前回とは違い、五日後を楽しみにしているようだった。

 

 市場通りを歩きながら、ロクサーヌに話しかける。

 

「武器屋と防具屋を確認したら、ロクサーヌの買い物に行こう。帝都でいいのか?」

「はい。お願いいたします」

 

 嬉しそうにしちゃってまぁ。かわいいじゃないのさ。

 

 

 

 出物がないか確認するものの、やはりどちらも空振りに終わる。

 だが、今日はスロット二つのダマスカス鋼の槍をゲットしているのだ、完全勝利と言っても過言ではない。

 

「では、次は帝都だな」

「ありがとうございます、ご主人様」

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv28 英雄Lv24 魔法使いLv27 戦士Lv26

 

BP振分 残BP:12

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

鑑定:1

詠唱省略:3

結晶化促進八倍:7

ワープ:1

三十パーセント値引:63

 

所持金:1,036,395ナール

 

春の17日目

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