異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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079 デザート

 

 

 

 

 

帝都

 

 

 

 

 

 帝都の冒険者ギルドへ移動して通りへ出ると、ロクサーヌが匂いを嗅ぎながら歩き始めたので、その後ろをついていく。

 この美しい街並みを好きな女性と共に、のんびり歩けるなんてとても贅沢な気がするぞ。

 

 匂いをたどって歩いている彼女を後ろから眺めていると、時折立ち止まってスンスンと確認をしている。

 店を探しているだけでワクワクしているのか、尻尾がパタパタと揺れているのが、めちゃくちゃ愛らしい。

 

 

 

 しばらく歩き続け、目的の店へ着いたのだろう。

 彼女はこちらへ振り返って尋ねる。

 

「このお店へ入ってもよろしいでしょうか?」

「うむ。大丈夫だ」

「ありがとうございます、ご主人様」

 

 俺の返事にとても嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

帝都

木地屋

 

 

 

 

 

 ロクサーヌが商品を物色している間に、俺も店内を見回してみる。

 商品はすべて木製のようで、様々な商品が陳列されていた。

 お盆やお椀、カトラリーにコースターのような食器類。

 小物入れや、扇、髪留め、スツールのようなものも置いてある。

 

 暇つぶしにそのまま眺めていると、一つの商品が目に留まった。

 

 せいろだ!

 

 思わず駆け寄って、商品を手に取る。

 丸い木枠の底にすのこ状の板が取り付けてあり、二つ重ねるとせいろとして使用できそうだ。

 

 やはり、ミチオが買っていたのと同じ商品だろう。ここはあの店だったのか。

 

 こいつがあれば、原作通り蒸しパンはもちろん、プリンやシューマイ、肉まんやあんまんだって出来ちゃうぞ。

 我が家の食卓が豊かになること間違いなしだ。

 

 さっそく、夕食の後のデザートとして蒸しパンを作ってみよう。

 そうなると、粉ふるいも必要になるよな。この店で取り扱っているのだろうか?

 

「何かお探しですか?」

 

 辺りをキョロキョロ見回していると、店員が声をかけてきた。

 

「うむ。粉ふるいを探しているのだが、取り扱いはあるだろうか」

「ありがとうございます。それでしたらこちらです」

 

 案内する店員について行くと、円形の木枠に目の細かい網が張られたふるいが置いてある。

 

「当店で使用しているふるい網は絹の糸を使用しているため、目が細かくしっかりとした作りで、どなた様にも自信を持ってお勧めできる一品となっております」

 

 へー、絹なのか。ホワイトキャタピラーのドロップ品を材料にしてんのかな?

 まあ、なんでもいいや。両方とも購入だ。

 

 

 

 支払を終えると店員に断り、壁際に備え付けられている椅子へ、腰を下ろさせてもらう。

 

 いやー。それにしても、良い買い物をしたわ。

 魔道士になって氷が作れるようになれば、プリンも作ってみるか。

 そのためには、今のうちから金物屋に、氷冷蔵庫を依頼しておいた方がいいよな。

 魔道士になってから依頼すると、だいぶ待つことになるだろう。

 あらかじめ用意しておけば、魔道士になったその日から使えるようになるかもしれないぞ。

 この後、蒸しパンを作るためのカップを買いに行って、その際に依頼しておこう。

 

 

 

 思索に耽っていると、買い物を終えたのかロクサーヌが目の前に立っていた。

 

「もういいのか?」

「はい、お待たせいたしました」

 

 結局何を買ったんだ?

 まあ、内緒にしたいこともあるだろうから、根掘り葉掘り聞くわけにはいかないわな。

 

「それでは、金物屋に寄ってから、荷物を置きに自宅へ戻ろう」

「金物屋ですか?」

「うむ。購入したいものがあるのでな」

「かしこまりました」

 

 店を出て路地裏に入り、ワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

 クーラタルの冒険者ギルドへ移動し、中心街へ向かっていると、ロクサーヌが話しかけてきた。

 

「ご主人様、金物屋で何を購入するのですか?」

 

 ふふん。ロクサーヌさんってば、気になるんですの?

 まったく、好奇心旺盛で困ったものですわ。

 

「先ほどの店で良いものを見つけてな。こいつでデザートを作ろうと思うんだが、そのため――」

「デザートですか!」

「え? あ、うん」

「ご主人様の作るデザートは本当に美味しい物ばかりなので、とても楽しみです!」

 

 おおう。すごい食いつきだ。

 でも、こんなに喜んでくれているんだ。その期待には応えないとな。

 

「それでは、夕食後のデザートを楽しみにしていてくれ」

「はい! ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

クーラタル

金物屋

 

 

 

 

 

 店内に入ると世話役のオネスタが声をかけてくる。

 

「いらっしゃいませ。先日は結構な物をいただきましてありがとうございました」

 

 ああ、そういえばお裾分けをしたんだったか。

 

「とても美味いキュピコをもらったものでな、こちらにはだいぶ世話になったので、良ければと思ったのだ」

「ソマーラの村という名前は初めて耳にしましたが、本当に美味しかったです。亭主や店の子たちも喜んでおりました」

 

 喜んでもらえたのならよかった。お裾分けをした甲斐があったわ。

 

「なんでも、お客様が盗賊から守った村だとか」

 

 ロクサーヌ!

 君、なんでそんなことを喋ってんの!

 確かに『内密にな』とは言ってないけど、そこはほら、空気を読んでくれたりしてさ……。

 

 彼女のほうを確認してみると、自慢げな笑みを浮かべ俺を見つめている。

 

 うーん……。

 この世界では普通のことなのかなぁ。

 謙虚が美徳とされるような世界ではないのかもしれない。

 

 まあ、隠すべきことを漏らすような真似はしないだろうし、気にしないでおくか。

 

 

 

「それで、本日はどのようなご用向きでしょうか」

 

 とりあえず話を合わせ、一頻り会話をしたところで、世話役が切り出した。

 

「うむ。購入したいものと、作製依頼があるのだ」

「作製依頼ですか……」

 

 用件を告げると、彼女は困ったような表情を浮かべる。

 

 え? なに? ダメな感じ?

 

「難しいだろうか?」

「なんと言いますか、亭主はそちらから依頼された品に掛かり切りで、他の依頼をまったく受けられない状況となっているのです……」

 

 マジ?

 細かい注文を付け過ぎただろうか? それとも納期がきつい?

 

「ああ、なるほど。なら今は依頼しない方がいいのだな」

「申し訳ございません。商品の引き渡しを行う際に、改めてご注文いただければ助かります」

 

 いや、それはどうなん?

 マラソンでゴールテープを切った瞬間に、同じ距離をもう一回ねって言われるようなもんだと思うぞ。

 

「納期を延ばした方がいいだろうか?」

「いいえ、問題ありません。鍛冶職人の誇りに懸けて、亭主は納期までに確かなものをご用意いたします」

 

 おお、夫のことを信頼しているんだな。

 なんか、いい夫婦だわぁ。

 ちょっと前までなら、羨ま死をするところだったが、今の俺にはロクサーヌがいてくれるのだ、精神的ダメージを受けることはない。

 

 彼女のほうをうかがうと、ニコニコしながら俺のことを見つめていた。

 うん。他人を羨む必要なんて全然ない。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅に戻ると、せいろとふるい、それから購入した六つのカップをキッチン収納にしまい込む。

 そして、物置部屋へ移動し、棍棒とダマスカス鋼の槍を物置のクローゼットにしまっておく。

 

 玄関へ戻ると、既にロクサーヌが待っていた。

 

「それじゃあ、迷宮に行こうか」

「はい! たくさん魔物を倒しましょう!」

 

 この娘さん、かわいい笑顔で物騒なことを言うなぁ。

 でも、そのギャップがたまらないわ。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

九階層

 

 

 

 

 

「ご主人様、どうぞ」

 

 ロクサーヌからドロップアイテムを受け取り、探索の終了を告げた。

 

「うむ。では、今日はここまでにしておこう」

「はい」

 

 今日はこの後、蒸しパンを作らなくてはいけないからな。

 少し早めに上がって食材の買い出しや調理をしよう。

 

 しかし、昼食を挟みながらひたすら魔物を倒し続けたのに、今日は英雄のレベルしか上がらなかったか。

 まあ、別に魔王を倒すだの、世界の危機を救うだのといった義務があるでなし。焦らずのんびりいくさ。

 

 ボーナスポイントの振り分けを済ませ、ワープゲートを展開する。

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

 冒険者ギルドでドロップアイテムの売却を済ませ、コボルトスクロースを買い足し、一度自宅へ戻って牛乳を入れる容器を取ってきた。

 そして、いつものように中心街へ向けて歩き出す。

 

 小麦粉はコボルトケンプファーでボスマラソンをしたときに、確保しておいた分が大量にある。

 オリーブオイルのストックも十分だ。

 重曹であるシェルパウダーも残っている。

 あとは、卵と牛乳、それからバターだな。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅へ戻り、キッチンに食材を置いていると、ドアを叩く音と共に声が聞こえてきた。

 

「ごめんください。仲買人ルークの使いで参りました」

 

 ええ! マジで!? なんか今日は密度の濃い一日だわ。

 

 それに、またしても大金を使ったタイミングか……。

 偶々だろうが、これだけ続くと監視を疑いたくなるぞ。

 

 

 

 急いで玄関へ行き、扉を開くと男が立っていた。

 

「待たせたな。落札の連絡か?」

「はい、今回も複数のスキル結晶を落札しております。内訳についてはこちらをご覧ください」

 

 そう言って、彼はパピルスを差し出す。

 受け取ったパピルスに目を遣ると、何行にもわたって記入されている。

 今回もたくさん落札してんなぁ。

 

「うむ。世話になった」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 彼は一礼すると、近くに生えている木からフィールドウォークで移動していった。

 

 

 

 所持金に余裕が出来た今なら、後回しにしていたスキル結晶にも買いを出した方がいいかもしれない。

 何が出品されるのかは運次第なんだ。そうそう、思うように入手できるはずがない。

 それなら、欲しいスキル結晶は早めに頼み、落札できる機会を増やしておいた方がいいだろう。

 後で、ロクサーヌと一緒に検討するか。

 

 そして、十五日後にはセリーが加入する。

 原作でミチオがやっていたように、相場より安く落札できそうなスキル結晶にも買いを出しておこう。

 有用なものが手に入れば自分たちで使えばいいし、必要ない物なら金に換えればいい。

 受け取りに行くとき、忘れず依頼をしなければ。

 

 

 

 しかしこれ、何と書いてあるのかね?

 いい加減、俺も文字の勉強を始めないとなぁ。

 ミリアもアランのところでブラヒム語を覚えてもらう予定なんだ、その際に文字も習得するはず。

 

 そうなると、将来の我がパーティーで文字が読めないのは俺とベスタだけ……。

 

 いや、ベスタは奴隷商人の下で生まれ育ち、成人したときに売られることとなるのだ。

 ブラヒム語もペラペラだし、もしかしたら文字のほうも習得しているかもしれない。

 そうじゃなかったとしても、表音文字なら音節に対応する文字を覚えるだけで済む。

 きっとベスタもすぐに読み書きができるようになるだろう……。

 

 ……いかん、いかんぞ!

 主人としての威厳が!

 

 

 

 キッチンに戻ったところで、戦士と商人のジョブを入れ替え、ロクサーヌにパピルスを差し出した。

 

「ロクサーヌ、これを読んでもらえる?」

「かしこまりました。確認いたしますね」

 

 彼女はそれに目を通すと、かわいらしくも美しい声で読み上げ始める。

 

「芋虫のスキル結晶四千二百ナール、コボルトのスキル結晶五千二百ナール、ウサギのスキル結晶四千八百ナール、ヤギのスキル結晶五千三百ナール、はさみ式食虫植物のスキル結晶五千八百ナール、そしてトロールのスキル結晶七千二百ナール。以上です」

 

 六点で合計三万二千五百ナール……。

 超過分と次回依頼分の手数料が三千ナールで三割引が効くと二千百ナール。合計で三万四千六百ナール……。

 

 ルーク、お前マジか……。

 払えるよ? 払えるけどさぁ……。

 

 もしかしたら、懐具合を確認されてんのか?

 最初に取引を始めたとき、予算の心配をしたルークへ問題ないと言ってしまっている。

 ある程度貯め込み、額が大きい状態で連絡をしても気にしないようなら、価格を吊り上げることができると、探りを入れられているのかもしれない。

 

 考えすぎか?

 

 まあいい、たとえルークが何を考えていたとしても、ハルツ公爵家とも付き合いのある男なのだ。

 他の仲買人よりはマシだろう。適度に釘を刺しながら付き合っていくしかない。

 

 

 

「資金に余裕が出来たし、もうすぐセリーも仲間になる。それで、仲買人へ依頼するスキル結晶を追加しようと思うんだけど、相談に乗ってくれる?」

「もちろんです! 私でお力になれることがあれば是非!」

 

 相談されたのが嬉しかったのか、彼女は太陽のような笑みを浮かべ大声で答えた。

 

「それじゃあ、本を取ってくるからリビングで待っていて」

「かしこまりました」

 

 

 

 自室に入ると、チェストの鍵を開け小説とコミック、そしてパイプファイルを確認する。

 今回はパイプファイルだけでいいかな。

 それを手に取り、部屋を後にした。

 

 

 

 リビングに入りソファーに座ると、ロクサーヌも隣に腰を下ろす。

 先に座っていていいのに、そう言っても絶対に座らないんだよなぁ。

 彼女のこだわりなんだろうか?

 

 まあいいか。それじゃあ、検討を始めよう。

 

「ロクサーヌは、有用なスキルと聞いて思い浮かぶものはある?」

「そうですね……」

 

 問い開けると、少し考えてから答えた。

 

「私が思いつくものは、武器だと火炎剣や水流剣のような属性攻撃が出来るようになるもの、攻撃力が上がるもの。それから、魔物のスキル攻撃を潰す詠唱中断。他には、敵を眠らせる効果のある睡眠付与や催眠ですね」

 

 ふむ。魔法使いがいないパーティーで有用な属性攻撃が行えるスキルに、シンプルに威力が上がる攻撃力上昇。迷宮探索においては必須級の詠唱中断。

 そして、種族固有ジョブに獣戦士を持つ、狼人族の憧れである睡眠系のスキルか。

 

 火炎剣や水流剣等については発動するためには詠唱が必要なので、ルティナの魔法やロクサーヌの回復スキルと詠唱共鳴が起こってしまう。当然、我がパーティーでは採用することはない。

 これらのスキル結晶を手に入れても、耐性スキルにするため防具のほうに付けることになるだろう。

 

 攻撃力上昇のサイクロプスについては買いを出している。

 

 そして、詠唱中断はマストだ。これは全員の武器に付けておかなければならないので、このまま買い注文を継続だな。

 

 あとは睡眠系の装備品か……。

 ロクサーヌは既に獣戦士ではない上に、魔物を眠らせても俺の魔法ですぐに起こしてしまう。

 それを付けたところであまり意味はないんだよなぁ。

 だったら、防具に付けて睡眠耐性を上げる方がマシなんだが、うーん……。

 

 まあ、武器のスロットとスキル結晶に余裕が出来たら、ロクサーヌの武器に付けてもいいか。

 彼女のモチベーションアップにつながるかもしれないしな。

 

「その中だと、重要なのは詠唱中断だね。ウサギのスキル結晶はそのまま継続しよう。あと、サイクロプスのほうもそのままで」

「はい。それが良いと思います」

「防具のほうは何かある?」

 

 再度尋ねると、彼女は再び考えてから答える。

 

「防具では、何といっても身代わりのスキルです。ご主人様はこれを絶対に装備するべきだと思います」

 

 俺が死ぬと自分も殉死する。

 

 だが、そんな打算や損得勘定など関係なく、心底俺のことを想ってくれていることが伝わってくるため、彼女の言葉がダイレクトに心へ響く。

 

 ……大切な人が自分のことを心配してくれるってのは、本当に幸せなことだよなぁ。

 

「ありがとう、ロクサーヌ。でも、俺だけじゃなく、君たちの分も用意しないとね」

「ふふ。さすが、私の優しいご主人様です。本当にありがとうございます」

 

 顔を見合わせて、一頻り笑い合うと、彼女は続きを口にする。

 

「あとは、そうですね……、防御力を上げるもの、魔法攻撃に強くなるもの、動きが速くなるもの等でしょうか」

「なるほど」

 

 確かにどれも重要か。

 資金の関係もありスルーしていたが、余裕が出来た今なら買いを出していたほうがいいかもしれない。

 物理ダメージ軽減のほうはスライムで、移動速度上昇は牛だったはずだが、魔法ダメージの軽減は何のスキル結晶なんだ?

 

 まとめwikiを確認してみるも、やはりそちらについての記載はない。

 

「ロクサーヌ、魔法ダメージ軽減が付くのは、何のスキル結晶かわかる?」

「申し訳ありません。そこまではわかりません」

 

 まあ、しょうがないか。

 スキル付きの装備品は購入することが一般的で、自分でスキル結晶を用意して、鍛冶師へ依頼することはほとんどないということだった。

 それなら、どのスキル結晶で何のスキルが付くかなんて気にしないだろうし、その情報が一般に広まることもないのかもしれない。

 

 だが、収穫もあった。

 どのスキル結晶で付くのかわからなかったとはいえ、貴族や富豪ではないロクサーヌでも知っているスキルだったんだ。

 なら、ボーナス装備にしか付かないような、レアものということはないはず。

 となると、ルークに尋ねても問題ないだろう。

 

 

 

「ありがとう、参考になったよ」

「お役に立てて嬉しいです」

 

 あらかわいい。

 喜んでいる笑顔でハートが撃ち抜かれたわ。

 

 他にも各種状態異常耐性や、属性攻撃耐性を上げておきたいが、いくら何でも手を広げすぎか……。

 それに、そっちは原作でもそうだったように、安い出物の依頼で入手できる可能性が高い。

 とりあえず今回は、スライムと牛のスキル結晶。それから、魔法ダメージ軽減が何で付くのかを確認して、それらを追加しておこう。

 

 ボーナス装備に付いている、レアっぽいスキルについては、仲買人でも知らない可能性があるんだ、変な詮索をされないように、そっちはセリーへ確認をしてからだな。

 

 

 

 

 

 相談を終えると、ごく普通の二人は、ごく普通の修行を行い、ごく普通の風呂を沸かし、ごく普通の夕食を作りました。

 でも、ただひとつ違っていたのは、ご主人様はデザートも作っていたのです。

 

チロリロリン

 

 

 

 今回もメレンゲとシェルパウダーを使った、ふわふわ蒸しパンだ。

 泡だて器でメレンゲを作るのがきつかったが、あと数日で撹拌機にもなるフードプロセッサーがやってくる。

 そしたら一気に作れる料理のバリエーションが広がるだろう。

 ロクサーヌに喜んでもらえるといいな。

 

 

 

 

 

 料理をダイニングに運び込んで、ポトフを取り分けると、彼女に声をかける。

 

「では、食べようか。いただきます」

「いただきます」

 

 

 

 彼女の作ってくれたポトフ、野菜と牛肉の炒め物、それから葉野菜のおひたしは、どれも抜群に美味い。

 ポトフはすっかり我が家の定番メニューだ。

 こんな美味いものが頻繁に食べられるなんて、本当に幸せなことだわ。

 

 夕食をとりながらも、ロクサーヌはこの後のデザートが気になるのだろう、落ち着きなく蓋を取ったせいろを、チラチラと見ている。

 

 

 

 蒸しパンは結構重たいため、程々のところで食事を終えて、粗熱の取れたそれへ手を伸ばす。

 四つあるから、二つずつだな。

 特に選ぶこともなく手前から二つを取ると、せいろごとロクサーヌのほうに寄せる。

 彼女の顔は期待で、キラキラ輝いているようだ。

 

「それじゃあ、デザートにしよう。ロクサーヌもどうぞ」

「ありがとうございます。甘くて良い匂いですね、とても美味しそうです」

 

 手に取ったカップはまだほんのり温かい。

 カップから蒸しパンを外し、千切って口へ運ぶ。

 

 うん、美味い。

 

 迷宮産の材料のおかげだろうか? 日本で食った物より美味い気がするぞ。

 今回はプレーンだったが、今度はナッツやドライフルーツを入れたものも作ってみよう。

 できればバニラエッセンスやチョコチップも欲しいところだが、そっちは無理なんだろうなぁ。

 あとは、冷蔵庫が出来たら生クリームをトッピングするのもありか。

 

 

 

 俺が食ったのを確認すると、ロクサーヌも同じように蒸しパンを千切り、口へと運ぶ。

 すると、咀嚼している彼女の表情が、段々興奮したような笑みへと変わり、大声を上げた。

 

「ご主人様! これはすごいです! 甘くて、フワフワでとても美味しいです! こんなにすごいものを食べることが出来るなんて信じられません!」

 

 俺の大切なお嬢様がめちゃくちゃ興奮していらっしゃる。

 喜んでもらえてよかった。本当に作った甲斐があったわ。

 

「じゃあ、次はナッツやドライフルーツが入ったものを作ってみようか」

「また、このデザートを作っていただけるのですか!?」

 

 おおー。ロクサーヌさん満面の笑顔だよ。

 めちゃくちゃ喜んでいるぞ。

 

「うん。じゃあ、近いうちにまた作ってみよう」

「ありがとうございます! ご主人様!」

 

 こんなに期待されているのなら、それに応えないとな。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv28 英雄Lv24 魔法使いLv27 戦士Lv26 僧侶Lv15

 

装備 サンダル

BP振分 残BP:12

キャラクター再設定:1

フィフスジョブ:15

必要経験値十分の一:31

鑑定:1

詠唱省略:3

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:1,038,017ナール

 

春の17日目

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