早朝の探索を終え、一晩寝かせたことで味に深みの出たポトフを食べたあとは、リビングで食休みをとる。
ロクサーヌを後ろから抱きかかえ、ソファーに体をあずけながら話しかけた。
「休憩が終わったら商人ギルドへ行って、スキル結晶の受け取りと追加の依頼をしよう」
「セリーが加わるまでに、有用なスキル結晶を確保できるといいですね」
「そうだね。加入したら、その日のうちに鍛冶師へジョブ変更して、九階層で一気にレベル上げだね」
「はい。セリーもなかなか根性があるようですから、すぐにでも前衛としてご主人様をお守りすることが出来るでしょう」
こら。誰もが君のように動くことが出来るなんて、思っちゃいけません。
そういう考え方はおよしなさい。
他の娘たちが無茶振りされないよう、守らなくては……。
「ある程度レベルが上がったら、毘盧帽の消費MP半減のスキルと、デュランダルのMP吸収を使って、目ぼしいスキル結晶の融合をしてもら――。だが、先に毘盧帽の効果をロクサーヌも試しておいた方がいいかもしれない」
あっぶねー。
この娘さん、セリーに毘盧帽を使わせる流れを聞いて、顔色が変わったぞ。
笑顔に戻っているってことは、付け加えた言葉は正解だったのだろう。
「私が使ってもあまり意味がないでしょうが、ご主人様がそうおっしゃるのです。試した方が良いのでしょうね」
こ、こやつ、自分は望んでいなかった風に言いおってからに。
君あのままだと、絶対プンプンしてたじゃないか。
でもまあ、俺の一番大切な人はロクサーヌだし、彼女の一番奴隷としての矜持を傷つけるのは本意ではない。
このくらいの嫉妬は、かわいさの内さ。
スタッフにヤギとコボルトを付けて、知力二倍のひもろぎのスタッフを作るのはマストだ。
それに、ダマスカス鋼の槍に、ウサギとコボルトで詠唱中断を付ける。
はさみ式食虫植物とサンゴ、そして潅木については、良い武器が手に入るまで一旦保留だな。今回手に入れる予定のトロールも保留にしておこう。
あとは、うーん……。
あ、糸を準備しておいて、ミサンガ大量生産からのスロット付き厳選で、身代わりのミサンガも作っておくべきか。
その際には、ヤールングレイプルかスクリューミルの手袋を装備してもらい、器用のパラメーターがスロットの発生率に影響するのかも確認だな。
ヤールングレイプルを使う場合に備えて、先にロクサーヌへ装備させておかなくては……。
……まてよ。ロクサーヌとセリーの分は身代わりのミサンガで問題ないが、俺のほうはそういうわけにはいかないぞ。
魔法攻撃の威力は、スタッフとメギンギョルズの影響がでかいのだ。
メギンギョルズと装備枠がかぶる、身代わりのミサンガだと不味いことになる。
……アクセサリー以外の防具に身代わりをつけるしかないか。
常時身に着けているわけではない盾は論外だ。
身代わりが発動して、防御力が高そうな胴装備が壊れるのはヤバいだろう。
デュランダルや杖を握っている腕装備が壊れた場合、それらが手から離れてしまいかねない。
足装備だと、深刻なダメージを負ってその場所から逃げるのに支障をきたす。
……頭装備しかないか。
頭部を守っている装備品がなくなってしまうのは怖いが、他の部位に付けるわけにいかない以上、ここ一択だ。
まあ、下半身は装備品で覆っているわけではないのに、そこを攻撃されてもダメージが減っている。
おそらく、RPGのように装備している全防具の合計された数値が、全身を守っているということなのだろう。
それなら、他の部位を良い装備でガチガチに固めた上で、物理ダメージや魔法ダメージを減らすスキル結晶をつけておけば問題ないはず。
それに、もし魔法攻撃力上昇のスキル結晶があるなら、知力二倍と合わせて杖に付ければいいんだ。
そうすれば身代わりのミサンガを装備しても問題ないだろう。
なんなら、ミチオが見つけたスロットが三つあるイアリングのようなアクセサリーへ、身代わりと知力二倍、それから魔法攻撃力二倍を付けるのもありだな。
「ご主人様、初日のうちに鍛冶師へジョブ変更が可能なのですか?」
考え込んでいると、ロクサーヌが質問をしてきた。
そういえば、鍛冶師取得の方法については説明していなかったか。
「うん、問題ないよ。鍛冶師のジョブを得る方法は、探索者のレベルが10以上。そして、槌を使って一振りで二匹以上の魔物へ攻撃することだ。セリーは探索者のレベルが10になっているから、もう一つの条件を満たすだけで済む」
「あっ!」
俺の説明を聞いたロクサーヌは、何かに気づき声を上げる。
「昨日買った棍棒はそういうことだったのですね!」
「その通り。三割引で購入するためには、複数の商品を買う必要があるからね。いい機会だから、ついでに棍棒も買っておいたんだ」
「なるほど。さすがご主人様です」
ロクサーヌはしきりに頷いており、感心している様子だ。
ついでだから、セリー加入当日の予定を話しておくか。
「セリーを迎える日はちょうどベイルの市が立つ日だから、クーラタルと帝都も回って、まず必要なものを購入しよう」
「はい」
「彼女用の燭台や歯ブラシ、服や下着も買い足して、それからキャミソールと外套も買っておかないと。他にもエプロンやランジェリーも注文しておこう」
「そうですね。どれも必要になるでしょう。セリーと共にしっかり選ばなければいけません」
おおう。気合が入っている。これは相当長くなりそうだぞ……。
「あと、そのときに、いつも頑張ってもらっているお礼として、ロクサーヌの新しい服と外套、それにキャミソールも買うからね」
「よろしいのですか!」
「もちろん。ロクサーヌ、いつも支えてくれて本当にありがとう」
「……こちらこそ、いつもありがとうございます。ご主人様」
彼女は瞳をウルウルさせながら、感謝の言葉を口にした。
こんなにも健気に支えてもらっているんだ。その恩に報いないわけにはいかない。
それ以外にも、サプライズとして帝都の高級服屋でドレスを仕立てるか。
ある程度資金に余裕が出来たのだ、彼女への感謝のしるしとして、このくらいのことはしておくべきだろう。
「その後はさっき言ったように、ベイルの三階層でコボルト二匹を同時にぶん殴ってもらう。無事、鍛冶師を取得できたらジョブを変更して、九階層でセリーのレベル上げだね。ロクサーヌは二匹連れのコボルトを見つけるのと、そいつらを彼女が同時に攻撃できる位置への誘導をお願い」
「おまかせください」
うん。ロクサーヌにまかせておけば問題ない。
彼女なら、きっと上手いことやってくれるだろう。
「ある程度レベルが上がったら、スキル結晶の融合をしてもらおう」
「確実にスキルの融合が成功するのですよね。本当にすごいです」
あたり馬券が見えているようなもので、イカサマそのものだよな。
まあ、三割アップや三割引とは違い、損をする人がいないんだから、これについてはどれだけ使おうとも、良心が痛むことはない。
なんなら、安定的にスキル付きの装備品を市場に流すことで、迷宮に侵食されているこの世界の安全確保に貢献しているまであるな。
「それが終わったら、豪華な夕食を作って歓迎会をしようか」
「良いお考えだと思います。きっとセリーも喜ぶことでしょう」
そうだな、喜んでくれるといいんだが。
ミリアだと魚尽くし一択だが、セリーはどんな料理が好きなのかね?
「それじゃあ、それまでに二人で色々な料理を作って、何がいいか確認してみよう」
「ふふ。ご主人様の料理はどれも美味しいので、本当に楽しみです」
ロクサーヌにそう言ってもらえるのなら、気合が入るというものだ。
オーブンがあれば、色々な料理が出来るんだが……。
改築の許可は貰っているが、持ち家でもないのに大金をかけて石窯を増設するのはなぁ。
それについて考えるのは、注文住宅を購入できるくらいになってからだろう。
さて、セリー加入当日の予定はこんなものかな?
じゃあ、本題に戻るか。
……あれ? 何の話から、こうなったんだ?
全然思い出せないわ。
「ロクサーヌ。何の話をしてたんだっけ?」
「確か、この後はスキル結晶を受け取りに商人ギルドを尋ねるというお話でした」
ああ、そうだそうだ。
盛大に脇道へ逸れたなぁ。
「商人ギルドの後は、帝都の服屋で注文していたものを受け取ろう」
それを聞くと、彼女は恥ずかしそうにしながらも笑みを浮かべ、俺の耳元に顔を寄せて囁いた。
「今夜は買っていただいた肌着を身に着けますので、たくさんかわいがってくださいますか?」
思わず抱きしめていた手に力が入る。
「もちろんだよ。それを身に纏ったロクサーヌの姿を楽しみにしているから」
「はい……」
そのまま唇を重ね、有意義な食休みを過ごす。
商人ギルドの受付でルークを呼ぶように伝えると、程なくしてベレー帽のイケメンがやってきた。
「お待たせいたしました。お越しいただきありがとうございます。では、商談室へご案内いたします」
商談室へ入り、勧められるままソファーに腰を下ろす。
ロクサーヌはいつものように、俺の背後へ立ち警護をしてくれている。
彼女の気持ちが本当に嬉しく、そのいじらしさに愛おしさが湧き上がるようだ。
一頻り挨拶を済ませると、ルークはアイテムボックスを開き、次々とスキル結晶を取り出していく。
スキル結晶 コボルト
スキル結晶 ヤギ
スキル結晶 ウサギ
スキル結晶 芋虫
スキル結晶 はさみ式食虫植物
スキル結晶 トロール
うん。どれも問題なし。
まあ、俺のような自力救済の権利を持つ危険人物に対し、欺くような真似をするはずないか。
「では、ギルド神殿へご案内いたします」
「いや、問題ない。ルークのことは信用しているのでな」
「しかし……」
「大丈夫だ」
「そうですか……」
そのやり取りで、彼が戸惑っていることが丸わかりだ。
騙す気はないのだろうが、もし何かの手違いがあったら決闘を仕掛けられるかもしれないと考えているのだろう。
彼としても、ギルド神殿を使用してもらった方が安心できるはず。
しかし、確認できているのに、わざわざ手数料を払うのはもったいない。
ルークには悪いが、このまま我を通させてもらうさ。
「では、精算を頼む」
「かしこまりました。今回の落札は、ウサギのスキル結晶が四千八百ナール、芋虫のスキル結晶が四千二百ナール、はさみ式食虫植物のスキル結晶が五千八百ナール、ヤギのスキル結晶が五千三百ナール、コボルトのスキル結晶が五千二百ナール、トロールのスキル結晶が七千二百ナール。以上六点で合計三万二千五百ナールとなります」
「うむ。問題ない」
カンペも見ずにスラスラとまあ、よく覚えていられるものだ。
これも結構な能力だよなぁ。
日本に生まれていたら良い大学を出て、エリート街道を突っ走っているに違いない。
「手数料についてですが、このまま依頼を継続でよろしいのでしょうか?」
とーぜん。おそらく、今後も途切れることはないと思うぞ。
「そのように頼む」
「ありがとうございます。それでは、今回超過した五件分と次回依頼分の一件分を合わせまして、六件分の手数料で三千ナールですが、これだけのお取引となったのです。今回は二千百ナールといたします。スキル結晶の三万二千五百ナールと合わせまして、合計で三万四千六百ナールをお願いいたします」
支払いを終え、追加の依頼を行おうとすると、ルークのほうから話しかけてきた。
「アユム様、少々お伝えしなければならないことがございます」
伝えたいこと? なんだ?
「ふむ?」
「実は芋虫とウサギ、それからコボルトの結晶についてなのですが、本来なら競り掛けられるところでした。ですが、あらかじめ事情を説明し、今回は程ほどのところで引いてもらっています。次回以降、確実に落札を狙う場合、値を上げる必要があるかもしれません」
んー?
おいおい、ルーク。
お前、不正したって自白してんぞ?
そういえば原作でもこんな会話があったかような気がするな。
いや、それどころか聖槍のオークションなんて、超悪質な入札談合そのものじゃん。
それを堂々とミチオに告げているんだ。仲買人たちは、入札妨害や価格操作といったカルテル行為を当然の権利だと思っているのだろう。
しかもこいつ、程ほどのところって言いやがったぞ。
ということは、オークションの参加者に根回しをして安く落札できる状況だったのに、売りに出した仲買人の利益を確保するため、他の者と共謀して吊り上げを行ったということだ。
くそー、依頼人の俺より仲間を優先しやがったな。
セリーが仲買人を嫌うのも無理ないわ。
……とはいってもずっとオークションに張り付いていられるわけもないし、仲買人に頼むほかないんだよなぁ。
まあ今回は入札額の上限を少しだけ上げておくか。
百パーセント融合に成功するのだ、二、三百ナール上げたところで問題はない。
それらの上限額について調整を済ませ、追加の依頼について切り出す。
「すまんが、またスキル結晶の追加を行いたいのだが大丈夫か?」
その言葉に驚いたのか、彼は目を見開いた。
「こちらは問題ございません。ですが、よろしいのですか?」
「大丈夫だ。すべて落札したとしても問題ない」
「……そうなのですか」
ルークの様子を見るに、こんな数の依頼を出すやつはいないのだろう。
相当動揺しているようだ。
考えてみれば当然か。
スキル結晶の融合は成功率が低く、いつ成功するのかわからない。資金にだって限りがあるだろう。
それなら、並列して試すような真似はせず、絶対に欲しいものを確実に成功させていくのが正攻法となるはずだ。
彼からすれば、俺は常軌を逸したギャンブラーに見えているのかもな。
「では、追加を頼む。三つあるのだが、まずはスライムだ」
「スライムですか……。前回が八千六百、その前が八千九百となっておりました」
さすが三十三階層以降の魔物なだけあって、やっぱ高いな。
だが、物理ダメージ軽減の効果は大きいのだろうし、まあしょうがない。
ウェブ版だとスライムのモンスターカードを入手していたが、あれはいくらだったのか…。
「では、九千まで出すのでそれで頼む」
「かしこまりました」
九千ナール以上の効果があるのは間違いない。
それに、良い装備品につければ大金に化けるはずだ。
「次は牛のスキル結晶だ」
「そちらは、前回が四千二百ナール、その前が四千ナールとなっております」
これも同じように少し上乗せした額で買いを出しておくことにする。
よし、最後はいつものように適当に話を合わせて聞き出そう。
「次は、えーっと。なんだったか……。魔法ダメージ軽減の物だが……」
「貝のスキル結晶かと」
「ああ、そうだそうだ。貝だった。それを頼む」
なるほど。魔法ダメージ軽減は貝なのか。
確かにシェルといえば魔法防御っぽい感じがするな。
「そちらについては、前回が八千で、その前が七千八百となっております」
やはり、これも結構するぞ……。
しかし、安全には代えられない。少しだけ上乗せして注文をしておく。
「それでは、ご依頼について確認させていただきます。コボルト、ウサギ、ヤギ、芋虫、はさみ式食虫植物、トロール、サイクロプス、以上七点のスキル結晶を継続で間違いございませんか?」
「うむ。問題ない」
ルークの問いかけに応えると、一つ頷き続きを口にする。
「今回追加がスライム、牛、貝の以上三点。全て合わせまして十件のご依頼でよろしいでしょうか?」
「ああ、よろしく頼む」
それにしても、こいつの記憶力よ。
マジでとんでもねーなぁ。
「これだけの依頼をまかせていただけたのです。気を引き締めてオークションに臨んでまいります」
ルークが商談の締めに入ったので、慌てて声をかけた。
「まってくれ。もう一つ頼みたいことがあってな」
「はい」
訝しげな顔をしている彼に、例の件を確認してみる。
「相場より安く落札できそうな出物があった場合、落札してもらえないか?」
「安い出物でございますか?」
俺の言葉を聞いたルークは眉にしわを寄せた。
「失礼ですが、もし安く入手したスキル結晶を融合し、それを売却して稼ごうとお考えでしたら、あまりお勧めいたしません」
まあ、そう言うだろうな。
スロットが付いている装備品の割合を考えれば、こんなことをすると、まず間違いなく赤字になる。
おそらく、それを狙って失敗していった者を大勢見てきたのだろう。
彼が止めようとするのも無理はない。
しかし、俺には当てはまらないんだよ? ルーク君?
これは勝確の投資なんだ。乗らないという選択肢は存在しないのさ。
適当な話をして丸め込もう。
「いや、そういう運任せであぶく銭を狙うような真似は、俺の最も嫌うところだ。これは金を稼ぐためではなく、迷宮攻略を目指すため、様々なスキル結晶を融合して各スキルに有用な使い道がないかを探る、研究の一環なのだ」
それを聞くと、彼は感心したような表情で口を開く。
「大変失礼いたしました。それにしても、迷宮攻略を行うために、このようなことをお考えだったとは……」
あ、やばっ!
迷宮攻略ガチ勢だと思われた!
不味いぞ、こいつはハルツ公爵家に伝手がある。情報を流されて変な注目を集めないか?
ルティナを手に入れるプロセスにおいて、不確定要素になりかねない。
……いや、ダメだな。今更訂正する方が不自然だろう。
それに、帝国解放会に勧誘される必要があるんだ。ハルツ公へ情報が伝わるのは、かえって良かったかもしれない。
きっと大丈夫だ。このまま押し切ろう。
「うむ。本気で目指すのなら、このくらいはな」
「なるほど。有用なスキル結晶を継続して、注文し続けているのは、そのためでしたか……。さすがでございます」
ルークの感心した顔を見ていると不安になってくるわ……。
これ本当に大丈夫だろうな?
「では、よろしく頼む」
「おまかせください。それでは、これまで同様落札に成功しましたら、使いの者を送ります」
きっとあのダニエルって冒険者なんだろう。
あの男が名乗っていないため、名前を口にするわけにはいかないけどさ。
「うむ」
「今後ともよろしくお願いいたします」
立ち上がり、握手を交わして部屋を後にする。
商人ギルドを出て歩いていると、ロクサーヌが話しかけてきた。
「安いスキル結晶を購入されるのですか?」
「うむ。あれが見えているからな、有用な物は自分たちで使い、そうではない物は売却するつもりだ」
「そのようなことがおできになるなんて、さすがご主人様です」
鑑定スキルと、融合してくれるセリーのおかげだけどな。
まあ、卑屈なことを言うのはなしだ。
「では、帝都へ行こう」
「かしこまりました」
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
高級服屋に入った途端、紳士風の店員とランジェリーの注文のときに対応してくれた女性店員が、丁寧なあいさつで迎えてくれる。
「うむ。注文した品は出来ているか?」
「はい。ご注文いただいた商品はすべてご用意できております。恐れ入りますが、お連れ様はこちらの店員と共に、別室でご確認いただきたく存じます」
男性店員の言葉を聞き、ロクサーヌと目を合わせて頷くと、彼女は嬉しそうに答えた。
「では、行ってまいりますね」
彼女たちは、そのまま歩き出し、注文を行ったときと同じ部屋へ入っていく。
試着とかするのだろうか?
……いやいや、余計なことを考えてないで、今のうちに売却を済ませておこう。
「以前依頼されたウサギの肉は用意してある。それから、ウサギの毛皮も一緒に買取を頼みたい」
「ありがとうございます。それでは、買取カウンターへご案内いたします」
カウンターに移動し、その上へウサギの毛皮を次々と取り出していく。
貯めに貯めた毛皮は、なんと六百個! それを一気に大放出だ。
かなりの時間がかかったが、アイテムボックス内の毛皮をすべて出し終える。
まあ、買取は百個単位からのため、家にはまだ五十以上残っているんだけどな。
こちらがひたすら出し続けている間に、彼だけではなく三人体制で数の確認を行っており、程なくしてそれを終えた。
「お待たせいたしました、お客様がお持ちになったウサギの毛皮は合計六百個でした。当店では一つ二十ナールで買取を行っておりますので、合計一万二千ナールとなりますが、これだけの数をお持ちいただけたのです、今回は特別サービスとして一万五千六百ナールといたしますが、よろしいでしょうか」
「うむ。それはありがたい」
受け取ったお金をアイテムボックスにしまい、今度はウサギの肉の取引を行う。
「では、次はウサギの肉か。二個でいいのか?」
「はい。ありがとうございます。では、こちらへお願いいたします」
紳士店員の取り出したトレーへ、ウサギの肉を二つ置く。
「ありがとうございます。ウサギの肉は一個百六十ナールで、合計三百二十ナールとなりますが、今回はお客様のおかげで顔を潰さずに済みました。感謝の意味を込めまして、今回は四百十六ナールで買取させていただきたく存じます」
感謝の意味ねぇ。
まあ、いいけどさ。
お金を受け取った後は、勧められるままに椅子へ腰を下ろし、なんとなく店内に目を遣る。
そのまま、ボーっとしていると、奥の部屋の扉が開き、ロクサーヌがこちらへ戻ってきた。
「ご主人様、お待たせしました」
「大丈夫だ。そちらのほうは問題なかったか?」
「はい! 素敵な肌着を作っていただけました!」
素敵な肌着とな? それはどれくらい素敵な代物なのでおじゃるか?
麻呂は夜が待ち遠しくなっておるぞ。
「それは楽しみだ」
彼女は俺の耳へ顔を寄せると、いたずらっぽく囁いた。
「夜までお待ちくださいね」
せんせー、ロクサーヌさんが焦らしテクを使ってきまーす。
そんなことをするのは、いけないと思いまーす。
「じゃあ行くか」
「はい!」
店を出ると、ランジェリーを注文している別の服屋へ向かい歩き出した。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv29 英雄Lv24 魔法使いLv27 戦士Lv26
BP振分 残BP:14
キャラクター再設定:1
フォースジョブ:7
必要経験値十分の一:31
詠唱省略:3
結晶化促進八倍:7
ワープ:1
買取価格三十パーセント上昇:63
所持金:1,019,412ナール
春の18日目