異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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083 掘り出し物

 

 

 

 

 

クーラタル

 

 

 

 

 

「ロクサーヌ、明日から文字の勉強を始めようと思うので、よろしく頼む」

「はい。おまかせください」

 

 この娘さんはマジで頼りになるわぁ。

 

 しかし、勉強の時間はいつにするべきだろう?

 蝋燭がもったいないから日のあるうちにやるべきなのは間違いない。

 

 うーん……。

 朝か、昼、どちらかの食休みを勉強の時間に充てるか。

 それなら、家事に修行、それから風呂や睡眠時間を削らなくて済むからな。

 

「勉強には、朝か昼の食休みの時間をあてようかと思うが、どうだろうか?」

「良いお考えだと思います」

 

 問いかけてみると、ロクサーヌも賛成してくれたので、さらに確認する。

 

「朝と昼はどちらの方がいいと思う?」

「そうですね……。朝の方が良いのではないでしょうか。探索の時間は午後の方が長いので、お昼はゆっくり休むべきだと良いと思います」

 

 なるほど。言われてみれば確かにその通りだ。

 

「では、文字の勉強は朝食の後に行うことにしよう」

「はい」

 

 

 

 路地裏に入ると、人目に付かないようにワープゲートを開く。

 

 

 

 

 

ベイル

アランの館

 

 

 

 

 

 前回と同じ部屋に通され、しばらく待っていたところアランとセリーが入ってくる。

 一頻り挨拶を交わして、アランは部屋を出ていった。

 

 セリーへ目を遣ると、笑みを浮かべ嬉しそうに俺たちを見ている。

 

「五日ぶりだな。セリーが元気そうで安心した」

「ご主人様、ようすをみにきていただき、ありがとうございます。きにかけていただいていることが、ほんとうにうれしいです」

 

 ちょっと待て!

 いきなりめちゃくちゃ流暢になっているんだが!

 

「あ、ああ。大切な仲間だからな。それにしても驚いたぞ。たった五日でブラヒム語がとても滑らかになっている」

 

 ロクサーヌのほうをうかがうと、ニコニコ笑顔でセリーを見ている。

 あれ? そんなに驚いてない?

 彼女がブラヒム語の教育を受けたときにも、このくらいの進捗状況だったんだろうか?

 自動翻訳がされているせいなのか、俺には一足飛びで上達したように感じられたが、実際にはある程度段階的に習得している?

 

 褒められたのが嬉しかったのか、さらに笑みを濃くするとセリーが話し出した。

 

「ありがとうございます。いちにちでもはやく、ブラヒム語をおぼえて、ご主人様やロクサーヌさんといっしょにくらしたいです」

 

 なにこの娘。めちゃくちゃかわいいんだけど。

 なんか、今までの様子もそうだけど、原作に比べて性格がマイルドな気がするぞ。

 

「そうか、頑張っているんだな。俺たちもセリーと一緒に暮らせる日が待ち遠しい」

 

 俺の言葉に続いて、ロクサーヌも口を開いた。

 

「そうですね。セリーはとても頑張っているのですね。その調子でブラヒム語を覚えていけば、きっとご主人様のお役に立てることでしょう」

「はい。ロクサーヌさん、いろいろおしえてください」

「もちろんです。一緒にご主人様をお支えしましょう」

「ありがとうございます。がんばります!」

 

 二人は楽しそうにキャッキャウフフと話をしている。

 

 この娘たち、本当に相性がいいよなぁ。

 ご主人様は一安心でございます。

 

 

 

 一頻りロクサーヌと会話をした後、セリーは俺のほうを見ておずおずと切り出した。

 

「あの、ご主人様。おたずねしてもよろしいでしょうか?」

 

 ん? 何だ?

 

「ああ、大丈夫だ。何でも聞いてくれ」

 

 その言葉を聞き、ホッとした様に質問を始めた。

 

「とうぞくしゅうげきのとき、ご主人様はぜんしん硬革のぼうぐだったのに、ロクサーヌさんは硬革と、竜革のぼうぐをみにつけていました。どうして主人よりどれいのほうが、よいぼうぐをそうびしていたのですか?」

 

 ああ、主人と奴隷の関係だと気が付かなければスルーしただろうが、セリーはそうだと知っているのだ。当然疑問に思うわな。

 

「俺とロクサーヌではレベルに相当の開きがある。なので、彼女の受けるダメージを減らすため、良い装備品はロクサーヌを優先することにしているのだ」

「ご主人様だけではなく、ロクサーヌさんもたんさくしゃなのですか?」

 

 しまった! この世界ではレベルがあるのは探索者だけだと思われているじゃん! やらかした!

 

 彼女はあと十日ここにいるんだ。余計な情報を与えないように、何とかごまかさなくては。

 

「うむ。俺はゆくゆく冒険者になるのでな。彼女には探索者で頑張ってもらう」

「なるほど。そういうことでしたか」

 

 ジョブについては納得したようだが、まだ合点がいかないようで、彼女は重ねて質問を投げかける。

 

「ですが、それでもご主人様にまんがいちのことがあってはいけません。やはり、よいそうびひんはご主人様をゆうせんするべきではないでしょうか?」

 

 一般常識を語っているのか、それとも俺の身を案じてくれているのかはわからないが、パーティーのために物怖じせず、自分の意見を口にしてくれるのが本当にありがたい。

 

「セリーの言うことはもっともだと思うが、俺は絶対にロクサーヌを失いたくない。もし彼女を失ってしまえば生きていくことが出来ないだろう。なので、今後も良い装備はロクサーヌが優先となる」

 

 俺の言葉を聞いて、セリーは目と口を大きく開き、信じられないといった表情でこちらを見つめていた。

 

 ぶっちゃけ、ロクサーヌのほうが良い装備品を身に着けている理由なんて、それ以外ないんよなぁ。

 彼女は俺がこの世界に来た理由で、今では生きる意味そのものだ。

 防具については、どんなことがあろうと彼女を優先する。そこは絶対に譲れない。

 

「そして、その次に良い防具を回すのはセリーだ。君もまだ探索者のレベルは10だし、失うわけにはいかない大切なパーティーメンバーだからな」

 

 遠慮されるのも面倒だ。今のうちに納得してもらおう。

 

「えっ! いけません! ご主人様よりわたしをゆうせんするなんて、あってはならないことです!」

 

 セリーはそれを大声で否定し、助けを求めるようにロクサーヌの方をうかがう。

 その視線を受けて、彼女は口を開いた。

 

「ご自分を優先するようにお願いしても、ご主人様は絶対に聞き入れてくださいません。私たちの優しくて大切なご主人様は、奴隷が傷つくことを何より厭う上に、とても頑固なお方です。セリーも諦めてご主人様の想いを受け止めてください。それに、何があっても私たちでお守りすればよいのです」

 

 さすがロクサーヌさん、よくわかっていらっしゃる。

 

 セリーは何度も俺たちの顔を交互に確認すると、ようやく頷き返事をした。

 

「……はい。ありがとうございます」

 

 まあ、あまり納得いっていないようだが徐々に慣れていくことだろう。ロクサーヌもそうだったしな。

 

 

 

 その後も雑談を続けていたが、アランが来て面会時間が終了となる。

 

「では、五日後にまた来るのでセリーも頑張ってくれ」

「ありがとうございます。ご主人様とロクサーヌさんにあえるのをたのしみにしています」

 

 セリーに別れを告げると商館を後にした。

 

 

 

 

 

ベイル

市場通り

 

 

 

 

 

 館を出て通りを歩きながらロクサーヌへ声をかける。

 

「たった五日間でものすごい上達だったな」

「はい。私の時に比べて進みが早いようです。セリーの頭が良いこともあるのでしょうが、それ以上にご主人様のお役に立つため、努力をしたのでしょう」

 

 ロクサーヌに比べて早いくらいで、異常な早さという程ではないようだ。

 やはり、ブラヒム語と他の言語は似ていて、習得しやすいのかもしれないな。

 

 しかし、セリーが頑張ってくれているのは本当にありがたい。

 装備品やスキル、それから魔物等、彼女にはいろいろなことを調べてもらうつもりだったが、その予定に狂いはなさそうで安心したぞ。

 

「本当に努力家で良い娘だ」

「はい。セリーとならきっと上手くやっていけると思います」

 

 そうだな。彼女とならきっと上手くやっていけるだろう。

 

 

 

 まずは、武器屋に入ってみるが今回も空振りに終わる。

 やっぱそう簡単に見つかんないんだよなぁ。

 

 んじゃ、隣の防具屋を確認したら帝都へ移動しよう。

 

 

 

 

 

ベイル

防具屋

 

 

 

 

 

 防具屋へ入り、店員のいるカウンターの奥に展示されていた装備品が目に留まる。

 

ダマスカス鋼のプレートメイル 胴装備

スキル 空き 空き 空き 空き

 

 とんでもないものを見つけたー!

 

 空きスロットが四個! 店で見つけた中ではスロットの数が一番多いぞ!

 

 掘り出し物を発見して、テンションゲージは一気にレッドゾーンまで振り切ってしまった。

 

 

 

 しかし、プレートメイルか……。

 これを装備できるのはベスタだけだろう。

 だが、ベスタがパーティーに加入するのは、まだ七十日以上先のことだ。

 

 

 

 ……いや、これは絶対に買っておくべきだろう。

 今後これほどの品がそう簡単に見つかるとは思えない。

 将来の戦力増強に向け、今のうちから準備をしておかなければ。

 

 

 

 購入する意思を固めたところで、張り紙に目を向けるも、何が書いてあるのかさっぱり理解できない。

 

 うーん……。いくらと書いてあるんだろうな?

 

 いや、いくらだろうと買わないという選択肢はないのだ。

 とりあえず、店の者へ声をかけよう。

 

「店主、奥に展示してあるのはダマスカス鋼のプレートメイルだろうか?」

「はい。確かにダマスカス鋼のプレートメイルでございます。滅多に仕入れることが出来ない逸品となりますので、よろしければご確認ください」

 

 尋ねてみると、彼は少し自慢気な様子で答えた。

 たしかに、オリハルコンや聖銀の装備品が一般に出回ることはないだろうし、この辺が店売りでは最高ランクなのかもしれないな。

 

「たいしたものを扱っているのだな」

「実は懇意にしているドワーフが、さる商家に卸す予定だった品でございます。しかし、その商家は支払いの滞納を繰り返していたようで、それでも催促を続けていると、身内の暴れ者をけしかけてきたそうです。彼は相当参っている様子でした」

 

 何かどこかで聞いたような話なんだが……。

 

「その滞納していた商家というのは、狼人族の商家か?」

「申し訳ありません、そこまでは聞いておりません。そういった事情があったため、つい先日私どもが仕入れることとなりました」

 

 竜人族なら女性でもプレートメイルを装備可能ということだった。

 だとすると、男なら竜人族でなくても装備できるということだ。身内である狼人族の男に装備させる気だったのかもしれないな。

 

 いや、バラダム家だったのかなんて、考えたところでわかりっこないのだ。

 今は余計なことを考えていないで、あれを確認させてもらおう。

 

「すまんが、見せてもらえるか?」

「ありがとうございます。持ってまいりますので、是非ご覧ください」

 

 そう言うと男は展示してあったそれを取り、重そうにしながら持ってくると、カウンターの上に置く。

 

 

 

 一頻り確認したところで、商品を見極めたふりをしながら彼に声をかけた。

 

「うむ。良い品だ。では、これを購入させてもらおう。しかし、他にも買うものがあるのでな、支払いはまとめて頼む」

「ありがとうございます。それでは購入する物が決まりましたらお声がけください」

 

 カウンターから離れ、こちらを見つめているロクサーヌへ頷く。

 意味を理解したのだろう。彼女の方も頷きを返してきた。

 

 

 

 さて、三割引対策で購入する物は何にするべきだろう……。

 

 使いもしない物に金をかけてもしょうがない。

 スキル結晶をつけて売り払うにしても、それなりの物じゃないと高く売れないしな。

 

 うーん……。

 セリーの装備品として、硬革の帽子か硬革のグローブのどちらかを買っておくか。

 出物を見つけて装備品を更新したとしても、硬革防具ならスキルを付けて売却すれば結構な金額になるはずだ。

 よし、そうと決まれば探してみよう。

 

 

 

 お、スロットが二つ付いてる。

 

硬革のグローブ 腕装備

スキル 空き 空き

 

 よし、これにしておこう。

 今俺たちが装備しているものは、どちらもスロットが一つだ。俺の装備しているものを、こいつに変更しておくか。

 

 硬革のグローブを手に取り、カウンターへ戻ると店主に話しかける。

 

「では、この二点を頼む」

「ありがとうございます。それでは確認を行います」

 

 彼はそれぞれに防具鑑定を行い、確認を済ませると金額を告げた。

 

「ダマスカス鋼のプレートメイルが一点、硬革のグローブが一点で合計八万九千二百ナールとなりますが、仕入れてすぐに購入していただけたのです、今回は六万二千四百四十ナールといたします」

 

 六万!

 ……いやいや、大丈夫だ。

 これさえあれば、加入直後からベスタをガッチガチに固めることが出来る。高額だとしても全然問題ない。

 これは間違いなく買っておくべき装備品だろう。俺は躊躇なんかせんぞ!

 

 

 

 

 

ベイル

市場通り

 

 

 

 

 

 防具屋を出て歩いていると、ロクサーヌが話しかけてくる。

 

「今の装備は重そうでしたが、セリーが使うものなのですか?」

「いや、おそらくプレートメイルはセリーでも厳しいだろう。これはベスタ用だな」

「ベスタというと、竜人族の……」

 

 そう呟いたロクサーヌの眉間にはしわが寄っている。

 セリーとは実際に会い、言葉を交わしたことで受け入れることが出来たのだろう。

 しかし、他の娘については話を聞いただけだ。

 やはり、同じように顔を合わせ、会話を交わしてからでないと、すんなり受け入れるのは難しいか。

 

「ロクサーヌ。俺の一番大切な人は君だ。どんなことがあろうとそれが変わることはない。もし不安になることがあれば、何度でも同じことを口にするぞ」

「ご主人様……。はい、ありがとうございます」

 

 まだわだかまりはあるのだろうが、一先ず笑顔が戻ったな。

 ロクサーヌと二人きりで過ごしたくても、もしものことを考えると力を付けないわけにはいかないし、そのためには他のパーティーメンバーの協力がいる。

 それに、彼女たちが不幸になる可能性があるのに、見過ごすことなど出来るはずがない。

 

 俺に出来ることといえば、ことあるごとにロクサーヌのことが一番大切だと言葉で伝え、そして行動で示し続けることだけだ。

 

 ロクサーヌに会いたくてこの世界に来たというのに、一途でいられなくて本当に申し訳ない……。

 

 

 

「それじゃあ、帝都へ移動するか」

「はい」

 

 人の目がない路地裏へ入り、ワープゲートを開いた。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv30 英雄Lv26 魔法使いLv29 戦士Lv28

 

BP振分 残BP:13

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

結晶化促進八倍:7

鑑定:1

ワープ:1

ジョブ設定:1

三十パーセント値引:63

 

所持金:960,849ナール

 

春の22日目

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