異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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086 滝行

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 

 キッチンに入ると、ロクサーヌが美しい礼を披露してくれた。

 

「ただいま、ロクサーヌ」

「ご主人様、海と魚の匂いがします」

 

 彼女は鼻をスンスンさせながらそう告げる。

 不快な匂いだろうか?

 

「ハーフェンの魚市場に行ったからね。大丈夫? 鼻は辛くない?」

「はい、問題ありません。ただ匂いが気になっただけですので」

 

 良かった。磯臭いから抱き着くの禁止とか言われたら、今から風呂を沸かさなければいけないところだった。

 

 

 

 彼女の用意してくれた朝食を食べ、いつものようにソファーで食休みを取る。

 

「それじゃあ、家具が届いたら予定を変更して、ハーフェンで滝行を行う。俺の神官もだけど、ちょうどいい機会だから、ロクサーヌも巫女のジョブを得ておこう」

 

 それを聞いて不安になったのか、緊張したような顔で問いかけてきた。

 

「あの、ご主人様は問題ないと思いますが、私は大丈夫でしょうか?」

 

 何をおっしゃるオオカミさん。

 俺が取得できて、君が取得できないようなことがあるわけない。

 絶対に俺の方が手間取ってしまうはずだ。

 

「ロクサーヌなら絶対に大丈夫。全く問題ないから、安心していいよ」

「ふふ。そうですか。ご主人様がそうおっしゃるのでしたら、本当に問題ないのでしょうね」

 

 俺の返事を聞いて、不安が解消されたのか顔には笑みが戻る。

 

「おそらく、獣人系の住民に尋ねると滝のある場所を教えてくれると思う。なので、まずはその人たちを探してみよう」

「かしこまりました」

 

 あとは修行用の白装束か……。

 

 あれはオーダー品だ。今日の今日欲しいと言っても絶対に無理だろう。

 それに、あの衣装がないとジョブを得ることが出来ないというわけではない。

 残念だが今回は諦めるしかない。

 まあ、いずれ寝間着の一つとして、帝都の高級服屋に注文しよう。

 

 

 

 食休みを終えて家の掃除をしていると、外から声が聞こえてきた。

 

「ご購入された家具をお持ちしました!」

 

 おっ、来たな。

 

 ロクサーヌと共に外へ出ると、大きな荷物に布がかけられている荷馬車の横に、男が二人立っている。

 前回と同じ奴らだな。あのときは考えなしに玄関の中まで運び込んでもらった。

 それなら、今更ワープを警戒しても無意味だろう。

 

「以前は世話になったな。悪いが今回も玄関の中まで運んでもらえるか?」

「ええ、もちろんです。おまかせください」

 

 彼らは以前の様にテキパキと掛けられていたロープと布を外し、デスクとチェア二脚、それからラックをあっという間に運び込んだ。

 

 アイテムボックスから銀貨二枚を取り出し、片づけを行っている彼らに声を掛ける。

 

「ほんの気持ちだけだが、これで何か美味いものでも食ってくれ」

 

 彼らは顔を見合わせると、俺のほうへ向き直り尋ねた。

 

「今回もよろしいのですか?」

「うむ。感謝の気持ちだ」

「ありがとうございます!」

 

 大きく頭を下げて馬車に乗り込むと、男たちはウキウキした様子で去っていく。

 

 

 

 家の中に戻り、デスクセットを前にロクサーヌに声を掛ける。

 

「運ぶためにボーナスポイントの振り分けをするから、少し待っていてもらえる?」

「はい」

 

 とりあえずキャラクター再設定とフォースジョブ、必要経験値十分の一を残し、すべて解除する。

 おっと、ワープと詠唱短縮は戻しておこう。

 

 ついでだ、この機会にロクサーヌにヤールングレイプルを装備してもらうか。

 先にセリーへ渡すと彼女の誇りを傷つけてしまう。

 どんなに細かいことでもロクサーヌを優先しないとな。

 

 腕装備六にチェックを入れ、出現した装備品を彼女へ差し出しながら告げた。

 

「ロクサーヌ、これは腕のボーナス装備であるヤールングレイプルだ。腕力五倍や器用五倍といったスキルが付いているから、家具を運ぶために装備して」

「はい! ありがとうございます、ご主人様!」

 

 輝くような笑顔で嬉しそうに受け取ると、いそいそと身に着けている。

 その笑顔を目にするだけで幸せだから、何も言うことはないけどさ。

 

 さて、残りは腕力上昇につぎ込んでっと。

 

「それじゃあ、以前のようにワープゲートを開くから一気に移動しよう」

「かしこまりました」

 

 ラックの両端にそれぞれ手をかけたところで、廊下の壁に向かって呟く。

 

「ワープ」

 

 ゲートが開くと同時にラックを持ち上げ、一気に通り抜けた。

 

 

 

 物置に出たら、一旦ラックを床に置き、設置場所を確認する。

 

 石鹸を乾燥させるために使用するんだから、直射日光には当たらない方が良いだろう。

 彼女へ声をかけて、再び持ち上げ、なるべく日陰になる位置に設置した。

 

 

 

 一階へ戻り、同じようにデスクを自室に運び込む。

 ロクサーヌと共にデスクの設置場所を、あーでもない、こーでもないと悩みながら動かし続け、結局ドアに向かって正面に置くことにする。

 

 これなら、誰かが入室したとき、すぐ目を合わせることが出来るだろう。

 

 

 

 デスクを設置し終えると、部屋を出て再び一階へ下り、それぞれ自分の使用するチェアを抱えて、えっちらおっちら階段を上る。

 部屋へ戻り、俺のチェアはデスクへ備え付けた。

 ロクサーヌの方は文字の勉強を見るためなのか、正面から見て右斜め後ろに置いている。

 セリーと買い物に行ったときのフォーメーションでも、彼女の位置は俺の右側だったが、何か意味があるのだろうか?

 まあ、おそらく彼女のこだわりなのだろう。深くは聞くまい。

 

 

 

 デスクセットの設置が終わったところで、部屋の入口の方へ移動し離れた位置から眺めてみる。

 

 おおっ、なかなかの重厚感で、憧れていた書斎そのものだぞ。

 

「これは良いなぁ」

「はい、とても素敵なお部屋ですね」

 

 思わず漏れた声に、ロクサーヌが相槌を打つ。

 

 DIYを行い、自分好みの部屋にしていくのもありだな。

 棚を設置して本や模型を置いたり、観葉植物で癒しの空間を演出したり、絵画や美術品なんかを飾ってもいいかもしれない。

 いわゆる大人の秘密基地とか、男の隠れ家ってやつだ。

 この世界には漫画もアニメもネットもないし、これからは、そういうのを趣味にするか。

 

 

 

 

 

 一頻り妄想に浸ったあと、ロクサーヌへ頼む。

 

「それじゃあ、今日から文字の勉強をよろしくね」

「はい、おまかせください」

 

 勉強は苦手だったが、彼女に教えてもらえるのなら頑張れるかもしれない。

 

 

 

 ボーナスポイントの振り分けを終え出発だ。

 

「じゃあ、ハーフェンに行こうか」

「はい」

 

 玄関へ移動し、靴を履き替えようとしたところで、ふと気づく。

 

 滝行をするのだから、水に濡れた状態で戻ってくるはずだよな。

 なら、帰りはバスルームへ直接移動した方がいいだろう。

 あらかじめ、着替えとタオルを用意しておいたほうがいいか。

 

 その旨を彼女に伝え、それぞれ着替えとタオルを用意して、バスルームの扉の前に設置してあるかごへ入れておいた。

 

 

 

 再び玄関へ移動して、靴を履き替えたら準備完了だ。

 

 さて、今度こそハーフェンへ移動しよう。

 

 

 

 

 

ハーフェン

魚市場

 

 

 

 

 

 再び魚市場を訪れると、独特な匂いが鼻を刺激する。

 ロクサーヌの方を確認するが、特に嫌なにおいだと思っているような様子はない。

 

 良かった。好きな娘が自分の故郷に似た匂いで、不快そうな表情を浮かべていたら、少しだけ傷ついただろう。

 

「それじゃあ、獣人系の住民を探して話を聞いてみるか」

「大丈夫です。市場のいたるところに猫人族の匂いがありますので、わざわざ探す必要はありません」

 

 それを聞いて辺りを見回してみると、結構な数のネコミミを備えた人々が目についた。

 

 なるほど。原作に海であれば猫人族のテリトリーというセリフがあったな。

 こういった場所には、彼らが多く生活しているのだろう。

 

 それにしても、匂いで猫人族なのかがわかるのか。

 匂いで個人を特定できるのだし、種族によってある程度匂いに特徴があるのかもしれない。

 

 

 

 ロクサーヌは一番近くの店に居た年配の女性へ近づくと、理解できない言葉で話しかける。

 身振り手振りを交えながらやり取りを続け、しばらくすると彼女は大きく頭を下げた。

 

 女性から離れたところでロクサーヌに問いかける。

 

「滝の場所はわかったか?」

「はい。ご案内いたします」

 

 

 

 

 

ハーフェン

 

 

 

 

 

 彼女の案内に従い進んでいると、道はどんどん頼りなくなり、その先は林の中へと続いていた。

 

 彼女に声を掛けて立ち止まり、キャラクター再設定を行う。

 この先は草木が生い茂っているだろうからな。

 刈り払い用にデュランダルを出しておこう。

 

 武器六にポイントを振り、デュランダルを手に取った。

 

 ただ、滝の周辺ではグラスビーが出るんだよなぁ。

 戦闘可能な空間が限られている迷宮とは違い、空を飛べる魔物なら、俺たちが手出しできない場所へ逃げてしまうことも考えられる。

 近接武器であるデュランダルでは厳しいかもしれないな。

 

 奴らは風属性が弱点だから、現れたらブリーズストームで速攻片付けることにしよう。

 

 

 

 

 

 そのまま進んでいるうちに、道はどんどん細く険しくなっていく。

 踏み固められていた道はけもの道へと変わり、やがてそれもなくなった。

 

 行く手を阻む草木を切り払いながら道なき道を進み続けていたところ、突然鋭い声があたりに響く。

 

「ご主人様! 魔物です!」

 

 ロクサーヌが睨んでいる方向に目を遣ると、だいぶ離れてはいるものの、体が黒で足が黄色い中型犬サイズの蜂が目に入る。

 

グラスビーLv1

 

 こっわ! いやいやいや、ヤバいだろこれ!

 魔法! 魔法を使わないと!

 

ブリーズストーム

 

 念じた瞬間、巨大蜂の体がシェイクされ、上下左右に激しく動き出す。

 しかし、それが終わってもグラスビーは健在で、何事もなかったかのように、こちらへ向かってきた。

 

 くっそ! スタッフを装備していないせいで、一撃では仕留められなかったか!

 

 リキャストタイムが明け、グラスビーがまだこちらへたどり着かないうちに、再び魔法を見舞う。

 

ブリーズストーム

 

 再度奴の体が激しく震えている様子を、デュランダルを構えながら見つめていると、やがてその動きが止み、魔物の体が流れるように空気へ溶けていった。

 

「ふぅ」

 

 思わず安堵の息が漏れてしまう。

 

 スズメバチどころか、アシナガバチやミツバチと出くわしただけでもパニックになるのに、あのサイズで致死性の毒を持つ蜂なんて反則だろうよ。

 

 それにしても、さすが第二ランクの魔物であるグラスビー。たとえレベル1でも一撃とはいかなかったか。

 いや、メギンギョルズを装備していなかったら、二発で済んだかも怪しいな。

 

 デュランダルはロクサーヌにまかせて、俺はスタッフを持つべきだろうか?

 

 

 

「ご主人様、どうぞ」

 

 考え込んでいると、微笑みながらドロップアイテムを差し出してきた。

 

蜜蝋

 

 蜜蝋か。いずれ廃油と合わせて蝋燭を作ろうと思ってたんだ。

 今後揚げ物をすることも増えるだろうし、こいつは売らずに残しておこう。

 

 受け取ったそれをアイテムボックスに放り込み、彼女へ話しかける。

 

「ロクサーヌ、魔物に備えて俺は杖を持つことにする。デュランダルで道を切り開くのを頼めるか?」

「はい。おまかせください」

 

 ロクサーヌの強権のレイピアとダマスカス鋼の盾を受け取って、アイテムボックスにしまい込み、デュランダルを渡すと、ボーナス装備を託されたのが嬉しいのか、彼女は手にしたそれを笑顔で眺めていた。

 

 その間にアイテムボックスから鋼鉄の盾とスタッフを取り出し身に着ける。

 

 さて、準備完了だ。

 

「それじゃあ、移動を再開しよう」

「かしこまりました、では私が前に出ますね」

 

 そう言うと彼女は手にした得物で草木を薙ぎ払いながら進み出す。

 

 

 

 グラスビーを魔法で倒しながら進み続ける。

 そうしているうち、だんだんと水の流れる音がはっきり聞こえるようになり、はやる気持ちを抑えながら歩き続け、ようやく川へたどり着いた。

 

 左右の川岸に生い茂った木々に垂れ下がった蔦。

 川原には丸い石が転がっており、角が取れた大きな岩の姿も確認できる。

 深さによって青や緑など、異なる色を見せている水は、一所に留まることなく、音を立てて流れ続けている。

 

「割と水量があるな」

「そうですね。流れも結構速いようです」

 

 本当に綺麗な景色だ。

 泳いだりバーベキューをしたりして川遊びを楽しみたいところだが、魔物が出るんだよなぁ。

 それに、危険な生物がいないとも限らないし、そういうのは難しいだろう。

 

 

 

「それでは先へ進みましょうか、先ほどの女性の話によると、滝はこの川の上流にあるということでした」

 

 川に見惚れているとロクサーヌから先を促される。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 せっかく見晴らしがよくて、遠くの大きな木が確認できる位置に来たのだ、少し試してみよう。

 原作にあった、エルフ一族の長であるカッサンドラ婆さんに依頼され、ミチオたちがグリニアを探したときのエピソード。

 あのとき彼らは、ただぼんやりと目に映っているだけの遥か先へ、ワープで移動していた。

 今後、この移動方法を使うことがあるだろうからな。ちょうどいい機会だ。

 

「ここからはワープで進むので、一旦デュランダルを戻してもらえるか?」

「かしこまりました」

 

 装備品を交換し、デュランダルをポイントに戻す。

 そして、頭装備六にチェックを入れ、毘盧帽を身に着けた。

 ワープが何回必要になるかわからない。おそらく問題ないだろうが、念のためだ。

 

「では行こう」

「はい」

 

 めちゃくちゃ遠くに見える木を確認したところで、近くにある木へ向かいワープを念じると、システムのアシストが入ったのだろう。先ほどの木を鮮明に思い浮かべることが可能で、問題なくゲートが開いた。

 

 それへ向けて踏み出そうとすると、ロクサーヌから待ったが掛かる。

 

「お待ちください。もしかしたら危険があるかもしれませんので、私が顔を出して確認してみます」

 

 ……おそらくここで問答をしても、彼女は絶対に譲らないだろうな。

 

「うむ、頼む」

「おまかせください」

 

 返事をすると、ロクサーヌはゲートの範囲外にある幹を掴んで体を安定させ、そのまま上半身を突っ込んだ。

 おそらく、その先で頭を動かしているのだろう。残された下半身がかわいらしく動いている。

 

 これ、壁尻ってやつじゃないのか?

 まるでエロ漫画の世界だぞ。

 

 ……いかん、いかん。ロクサーヌがこんなことをしているのも、俺の身の安全の為なんだ。そんなことを想像するのは良くない。

 

 

 

 彼女は確認を終え、上半身をこちらへ戻して口を開いた。

 

「特に問題ありませんでした。このまま移動しましょう」

「ロクサーヌ、ありがとう。それでは先へ進むか」

「はい。念のため私が先に移動します」

 

 彼女はそう言うと、ゲートを通り抜けていった。

 

 さて、俺も続こう。

 

 

 

 何度かワープでの移動を繰り返し、滝が確認できる位置へたどり着く。

 

 よし、次で最後だな。それじゃあ、あの辺りにするか。

 

 

 

 ゲートを通り抜けると、水が落ちる音が耳に飛び込んできた。

 

 発生源に目を向けてみると、俺の身長よりだいぶ高い位置から水が落ち続けている。

 割と水量もあるし、結構な勢いだなぁ。

 痛みがあると嫌なんだが……。

 

 ええい。このまま怖気づいているわけにはいかない。

 

 毘盧帽のチェックを外し、その他の装備品もアイテムボックスにしまい込む。

 そして、武器六にポイントを振りデュランダルを手に取った。

 

「ロクサーヌ。先に俺が滝行を行うので、魔物が現れたらこいつで撃退してくれ」

「かしこまりました。ご主人様、ご武運を」

 

 あいよ。覚悟を決めて、いっちょやってみよう。

 

 

 

 ジョブ獲得にはなんかあったよな?

 確か精神集中がいるんだったか?

 

 水全体を一つの流れとしてとらえるとかなんとか……。

 あ、いや、違う。これは規格外な人用のコツだ。

 

 えーっと、気配を消して川と一体になり、魚に気配を悟らせない……。

 いやいや、こっちも特殊な人用のコツだ。

 

 うーん……。

 ベスタがやっていた、ゆったりリラックスってやつを目指してみるか。

 

 

 

 水に入ると、あっという間にズボンがビシャビシャになってしまう。

 裸足のため鋭い石で足裏を傷つけないよう、慎重に歩く。

 

 滝の近くまで来ると、上から叩きつけられている水の勢いは相当なもので、耳にも轟音が響いていた。

 

 

 

 クッソ怖いぞこれ。

 でも、行くしかねー!

 

 覚悟を決めて滝へ飛び込むと、ものすごい勢いで水が叩きつけられ続けるが、なんとか位置を調整し、手を合わせてリラックスを心掛ける。

 

 

 

 ……いやいやいや。無理無理無理。

 めちゃめちゃ辛いんですけど!

 これを受けておきながら、リラックスできるなんて竜人族の体はどうなってんだ!

 

 ああ、こんなことを考えていること自体、雑念が混じっている証拠だろう。

 

 無心だ無心。無心を心掛ける。

 

 

 

 ……無理だって。めちゃくちゃ気が散るもん。

 

 いや、もういっそロクサーヌのことだけを考えておこう。

 

 彼女は美人でかわいくスタイル抜群で性格も優しく、本当に最高の女性だ。

 毎日彼女の存在を感じながら目を覚まし、迷宮探索を行い、炊事洗濯家事掃除を共にこなして、一緒に風呂に入り、寝所を共にする。

 本当に信じられないほど幸せな日々を過ごしているよなぁ。

 

 この世界に来ることが出来て本当に良かった。

 

 

 

 

 

 幸せな妄想に浸っているうちに、ふと我に返る。

 ああ、修行の途中だったわ。

 

 今自分の状況を忘れて、完全にトリップしていたな。

 とりあえず確認してみるか。

 

 滝から離れたところで、ジョブ設定を開いて確認する。

 

神官Lv1

効果 MP小上昇 知力微上昇

スキル 全体手当て

 

 っしゃ! きたー!

 やはり、ロクサーヌは俺の女神だ。

 この成果は彼女のことを考えたからこそだろう。

 本当にロクサーヌには助けられてばかりいる。

 

 

 

 川から上がると、彼女が問いかけてきた。

 

「ご主人様、どうでしたか?」

「うむ。問題なく神官のジョブを得ることが出来た」

「おめでとうございます! さすがご主人様です」

 

 質問に、サムズアップをしながら答えると、ロクサーヌは興奮したように声を上げる。

 さすごしゅありがとさん。

 

「それじゃあ、次はロクサーヌの番だな。装備品は俺が預かっておこう」

「はい。ではお願いします」

 

 彼女からデュランダルを受け取ってポイントに戻し、その他の装備品はアイテムボックスにしまい込む。

 そして、MP回復速度二十倍とアクセサリー四にポイントを振って、メギンギョルズを腰に巻き、アイテムボックスからスタッフを取り出したら、準備オッケーだ。

 

 

 

 そうだ、彼女が滝行をするにあたって、原作知識によるアドバイスをしておくか。

 

「ロクサーヌ、修行についてなのだが、あちこちにある水それぞれを意識するのではなく、水全体の流れを一つのものとして捉えるといいだろう」

 

 彼女はそれを聞くと、少し考え口を開く。

 

「普段行っているオーバーホエルミングを用いた修行で、ご主人様の動き一つ一つを把握するのではなく、全体の流れを意識しているのと同じようなことをすればいいのですね」

 

 え? 君そんなことしてたの?

 原作のロクサーヌはこの修行の後、妙な能力に目覚めていたけど、君は既に覚醒済み?

 

「なるほど。そういうことでしたか。それでは、行ってまいります!」

「あ、ああ。頑張ってくれ」

 

 

 

 彼女は滝に入ると、俺と同じように手を合わせて精神統一を行っていたが、すぐにそれを止めてこちらへ戻ってくる。

 

 どうしたんだ?

 

「何かあったのか?」

 

 問いかけてみると、自信満々のドヤ顔で答えた。

 

「問題なく水の流れを捉えました。おそらく巫女のジョブを得ていることでしょう」

 

 はぁ! 嘘だろ!?

 

 慌ててパーティー項目解除とパーティージョブ設定へポイントを振り、彼女のジョブを確認してみる。

 

巫女Lv1

効果 MP小上昇 知力微上昇

スキル 全体手当て

 

 マジかよ……。

 本当に取得してるよ……。

 

 いやもう、この娘さんはとんでもないわ。

 

「おめでとう、ロクサーヌ。無事に巫女のジョブを獲得していた」

「ふふ。ありがとうございます。ご主人様の薫陶の賜物です」

 

 いやぁ、それはないんじゃないですかねぇ。

 

 まあでも、俺が村長のジョブを取得するためには、誰かに騎士のジョブに就いて任命スキルを使ってもらう必要がある。

 ミリアの暗殺者を得るときに同時に獲得する手もあるが、それだとだいぶ時間が掛かるからな。

 レベルが30になるまで、ロクサーヌには戦士のままでいてもらおう。

 

 

 

 

さて、二人とも無事ジョブを獲得することが出来たんだ。それじゃあ、体が冷える前にとっとと家へ帰ろう。

 

 時間が掛かると思っていたからMP回復速度二十倍にしていたが、毘盧帽に付け替えだな。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv31 英雄Lv26 魔法使いLv30 戦士Lv29

装備 スタッフ 鋼鉄の盾 毘盧帽 硬革の鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 メギンギョルズ

 

BP振分 残BP:4

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値十分の一:31

詠唱省略:3

ワープ:1

パーティー項目解除:1

パーティージョブ設定:3

アクセサリー四:15

頭装備六:63

 

所持金:965,534ナール

 

春の23日目

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