異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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092 遭遇

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

七階層

 

 

 

 

 

「ご主人様、そろそろ夕方になります」

「ありがとう。では、MP回復をしたらクーラタルへ戻ろう」

「はい」

 

 ボーナスポイントの付け替えをする際、ついでに鑑定でレベルを確認してみる。

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv36 英雄Lv31 魔法使いLv35

装備 スタッフ 鋼鉄の盾 硬革の帽子 硬革の鎧 硬革のグローブ 硬革の靴

 

 午前中に探索者のレベルが上がったときから変化なしか。

 今日レベルアップがあったため、おそらく明日は上がらないだろう。

 明後日にはセリーを迎えに行く。彼女の加入までに探索者のレベルを37にすることは難しそうだな。

 経験値効率四百倍でもなかなか厳しい。

 

 原作ではセリー加入時、ミチオの探索者レベルは33だった。

 それに比べるとかなり効率的に立ち回っているはずなのに、そこまで差がついていない。

 俺のほうは昼食や食休みをとっているし、毎日修行をして風呂にも入っている。それに、五日ごとの買い物や、セリーの面会だってあった。

 迷宮に入っている時間は彼に比べて確実に短いだろうが、それでも倍以上の効率で狩りを行っているはずだ。

 それなのに、それ程差が付いていないということは、経験値テーブルはかなりエグイことになっていそうだな。

 ハルツ公領の災害救助までに冒険者のジョブを得ようなんて、見込み違いもいいところだったわ。

 

 

 

 さて、じゃあロクサーヌの方も確認してみよう。

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

戦士Lv19

装備 強権のレイピア ダマスカス鋼の盾 ダマスカス鋼の額金 竜革のジャケット 硬革のグローブ 竜革の靴

 

 変わりなしか……。

 必要経験値二十分の一の効果は俺にしか適用されないため、彼女については九階層で狩りをしていたときより、確実に取得経験値が落ちている。

 単純に九階層の魔物より七階層の魔物から得られる経験値が少ない上に、メギンギョルズの最大MP上昇もなくなっているため、MP回復にとられる時間も増えてしまったからな。

 早いところ遊び人を得て、狩場を変えたいところだ。

 

 

 

 ボーナスポイントの振り分けを行い、ロクサーヌに声を掛ける。

 

「では、魔物のところへ頼む」

「はい。こちらです」

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 買い物を済ませて自宅に戻り、キッチンで食材をしまい込む。

 それを済ませて庭へ出るため玄関の扉を開くと、何かが落ちた。

 

 地面を確認し、拾い上げて目を通したところ、ルークからのメモだったようだ。

 

 えーっと……。

 

 芋虫が四千五百ナール、コボルトが五千四百ナール、サイクロプスが一万七百ナール、スライムが九千百ナール、牛が四千四百ナール、そして海水魚が——、えっ!?

 

 海水魚!? マジか!?

 海水魚ってマーブリームとか、ブラックダイヤツナが残すスキル結晶ってことだよな?

 原作では出てこなかったが、一体どんな効果があるんだ?

 

 なるべくこちらの情報は渡したくないので、ルークへ確認するのはやめておくべきだろう。

 明後日にはセリーが加入するので、彼女に聞けばいい。

 もし知らなかったとしても、図書館で調べてもらえば済むことだ。

 今後もこういったことが起こり得るだろう。

 装備品やスキルについては、なるべく早めに図書館で確認してもらった方が良いかもしれない。

 

 

 

 おっと、続きだ続き。

 えーっと。海水魚のスキル結晶は五千六百ナールか。

 安い出物を指定したはずなのに、結構するなぁ。

 まあ、ルークのことだ。相場より安いのは間違いないはずだ。

 たとえそれが百ナールだったとしてもな。

 

 

 

 それじゃあ、計算してみよう。

 

 ……暗算じゃ無理だわ。商人を付けなければ。

 

 ジョブ設定を付けてサードジョブを変更し、カルクの助けを借りて計算してみると、合計が三万九千七百ナール。

 さらに手数料が、超過分の五件に次回依頼分を足して、合計三千ナール。三割引で二千百ナールだと、支払総額は四万千八百ナールか。

 今回もかなりの金額になっているぞ。

 

 でもまあ、今の懐事情ならこのくらい問題ない。早速明日の朝に商人ギルドへ行ってこよう。

 

 

 

 それにしても、ルークのメモを問題なく読むことが出来たな。

 自動翻訳でワンクッション挟むため、多少時間が掛かってしまったものの、全然問題なかった。

 学習の成果が実を結んだのだろう。

 

 今まで朝食の準備をロクサーヌにまかせ、その時間を勉強に充てていたが、もう大丈夫そうだ。

 明日から、字の勉強は暇を見て取り組んでいこう。

 

 

 

「ご主人様、それはスキル結晶落札の連絡ですか?」

 

 考え込んでいると、ロクサーヌが尋ねてくる。

 

「うん。芋虫、コボルト、サイクロプス、スライム、牛、そして海水魚のスキル結晶を落札したみたいだ。明日は朝食を取った後に商人ギルドへ行ってみよう」

「かしこまりました。それにしても、今回もたくさん落札していますね」

 

 マジでそれな。

 ルークは一体どういうつもりなんだろう?

 本当に、こちらの懐具合を確認しているのか?

 

 支障があるようなら一個ずつ連絡するように頼むこともできるだろうし、今のところ特に問題はない。

 まあ、何かあるまではこのままでもいいだろう。

 

 

 

「こんな風に文字を読むことが出来るようになったし、明日からは朝にやっていた勉強の時間をなくそうと思う。これもすべてロクサーヌのおかげだね。本当にありがとう」

 

 感謝の想いを伝えると、彼女は嬉しそうに微笑みながら口を開く。

 

「私は最初に文字を書いただけで、これほど早く習得されたのは、ご主人様が努力をなさったからです」

 

 褒めてもらえて嬉しいんだけど、自動翻訳君の手柄も大きいんだよなぁ。

 まあ、まだスムーズに読み書きできるわけじゃないから、今後も時間を見つけて勉強は続けていくさ。

 

「それじゃあ、修行をしようか」

「はい」

 

 

 

 ……ダメだ。

 第二段階へ入ってからは、その前に比べさらに酷いことになっている。

 まったく手も足も出ないし、なんとかなりそうな気が微塵もしない。

 その上、彼女はオーバーホエルミング中でも、虎視眈々と攻撃機会をうかがうようになってきた。

 今のところはなんとか対処できているが、いずれ手に負えなくなっちまうぞ……。

 

 

 

 修行を終えると、風呂を沸かしてキッチンへ移動した。

 

 今日の夕食はミートソーススパゲティだ。

 ロクサーヌにパスタを茹でるよう頼み、俺はミートソースに取り掛かる。

 

 まずは、玉ねぎとニンジン、それからニンニクをフープロでみじん切りにする。オリーブオイルを引いて熱したフライパンにそれらを入れて炒めていく。

 その間にバラをミンチにして、野菜の色が変わったあたりでそれを入れ、塩胡椒とナツメグを加える。

 フライパンを確認して、肉に火が通ったところで、ざく切りにしたトマトを追加し、水分が出てきたら、細かく刻んだ竜皮を入れておいた。

 

 竜皮のおかげで、コンソメがなくてもなんとかなるのが、本当にありがたい。

 

 そのまま煮込み続け、ある程度水分を飛ばしたら出来上がりっと。

 

 

 

 配膳を終え、スープを取り分けて食事の挨拶を行う。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 原作とは違い、この世界には普通にフォークがあるため、パスタを手掴みなどという、ワイルドなことは行われていない。

 ロクサーヌもパスタくるくるっと巻いてる。

 

「んー!」

 

 ミートソースが絡んだパスタを口に運び咀嚼すると、彼女は大きな声を上げ、それを飲み込み、すごい勢いで話し出す。

 

「ご主人様、とても美味しいです! 肉の旨味と竜皮の旨味、それがトマトの酸味と旨味に混ざり合い、とても深みのある味わいとなっています! ミンチがこんなに美味しいものだったなんて、信じられません! これは何という料理なのですか?」

 

 ミンチが忌避されているのなら、ミートソーススパゲティなんてないだろうしなぁ。

 ロクサーヌの表情は、幸せそのものといった感じだ。

 これほどまでに喜んでもらえて、本当に嬉しいわ。

 

「ミートソーススパゲティ、略してミートスパと呼ばれている料理だよ。たくさんあるからいっぱい食べてね」

「ありがとうございます。それにしても、ミートスパですか……。こんなに美味しいものを食べられるなんて、私は本当に恵まれています」

 

 嬉しそうに、もしゃもしゃ食べている姿が実に愛らしい。

 本当に魅力的な娘さんだ。

 

 

 

 

 

 お湯に浸かり、ロクサーヌを抱きしめていると、彼女が話しかけてくる。

 

「ご主人様、セリーの歓迎会には唐揚げだけではなく、ミートスパとハンバーグも出した方がいいのではないでしょうか?」

 

 唐揚げ、ミートスパにハンバーグって、子供の夢みたいなラインナップやな。

 てか、君が食べたいだけじゃないのかい?

 いや、いいんだけどね。

 

「それじゃあ、そうしようか」

「はい。とても楽しみです」

 

 やっぱり、君が食べたいだけじゃん。

 

 

 

 

 

クーラタル

商人ギルド

 

 

 

 

 

 翌日、早朝の探索を終えて朝食を取り、一休みしてから商人ギルドへ赴く。

 受付の職員にルークを呼ぶように伝え、しばらく待っていると、憎いあんちくしょうが現れた。イケメンは敵だからな。

 

「お待ちしておりました。それでは、商談室までご案内いたします」

 

 

 

 商談室へ通されソファーに腰を下ろすと、ルークは詠唱を行い、スキル結晶を次々に取り出してローテーブルの上へ置いていく。

 

スキル結晶 コボルト

スキル結晶 牛

スキル結晶 芋虫

スキル結晶 海水魚

スキル結晶 スライム

スキル結晶 サイクロプス

 

 すべて取り出した彼は、真剣な表情で告げる。

 

「これだけの数になりますと、手違いが起こることもゼロではありません。ギルド神殿で確認を行った方がよろしいでしょう」

 

 そんなことを言うくらいなら、落札する度に連絡をすればいいと思うんだが……。

 

 まあ、こいつにしたら、意図しないミスで決闘を吹っ掛けられる可能性があるなんて、恐ろしくて仕方がないだろう。

 ギルド神殿の使用料は一回百ナール。全部調べても六百ナールだから、確認してもいいっちゃいいんだけど、でも問題ないことがわかってるんだよなぁ。

 

 うーん……。面倒だからいいや。ギルド神殿を使うのは、何かがあったときだけにしよう。

 

「いや、ルークのことは信用しているので問題ない」

「で、ですが……」

 

 

 

 不安そうな彼を押し切り、そのまま精算を済ませてスキル結晶をアイテムボックスにしまい込む。

 

「では、落札できましたら同じように連絡させていただきます」

「うむ。よろしく頼む」

 

 今回は競り掛けられたとか言われなかったな。

 まあ、問題ないならそれに越したことはない。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 いつものようにロクサーヌを抱きしめながら食休みをとり、今後の予定について考える。

 

 午前中の探索では英雄のレベルは上がったものの、探索者のレベルに動きはなかった。

 午後からは、明日セリーにミサンガを作ってもらうため、ベイルの三階層でその素材である糸と、ついでにコボルトナイフを集める予定になっている。

 

 彼女が加入するまでに探索者レベル37にして、フォースジョブを付けることは出来なかったなぁ。

 でもまあ、加入後にレベルを上げればいいだけなので問題ないといえば問題ない。

 

 

 

 皮は物置に大量にあるため、糸とコボルトナイフが準備できれば、ミサンガ、ダガー、皮のミトン、皮の帽子、皮の靴と、鍛冶師が最初のうちに作る装備品である、これらの製造をガンガン進められる。

 きっと、その後に作成可能になる装備品へのステップアップも早くなるだろう。

 

 確か、その次が棍棒で、更に次がウッドステッキだっけ?

 

 でも、原作ではこれ以降に製造した装備品は警策だけだった気がする。

 一応武器とのことだったが、あれの武器種は何になるのだろう?

 

 

 

 それにしても、気になることがある。

 セリー曰く、装備品は段階を経て、製造難易度を上げていかなければならないという。

 

 果たして本当にそうなのだろうか?

 レベルやパラメーターを確認する手段がないせいで、そう思われているだけなのではないのか?

 ミチオはレベル依存ではないのかと推察していたが、試してみようとはせず、セリーにまかせていた。

 しかし、一足飛びに有用な装備品を製造できるなら、安全性向上に大きく寄与する。

 

 鍛冶師のレベルによるのか、本人のパラメーター依存なのか。それとも本当に、前提となる装備品の製造を成功させておかなければならないのか。

 

 いずれ試してみなければならないだろう。

 

 

 

 取り留めもないことを考えていると、ロクサーヌが問いかけてきた。

 

「ご主人様、午後は予定通りベイルの三階層ですか?」

「そうだね。セリーには初日からドンドン装備品の製造をしてもらうことになるので、予定通り素材集めをしよう」

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

三階層

 

 

 

 

 

 昼休憩を終え、ベイルの迷宮三階層へ移動する。

 ワープとMP回復速度二十倍のチェックを外して、ポイントをアクセサリー六へ振り、出現したドラウプニルを装備した。

 そして、残ったポイントで結晶化促進を四倍にしたら準備完了。

 

 あ、そうだ、ロクサーヌに毘盧帽を試させていなかった。

 先にセリーへ装備させるのはまずい。そんなことをしたら彼女の矜持を傷つけてしまう。

 

 アクセサリー六と頭装備六を入れ替え、出現した毘盧帽をロクサーヌに差し出す。

 

「いい機会だから、ロクサーヌもこれの効果を試しておこう」

「いいのですか?」

「うむ。ボーナス装備はすべて、ロクサーヌが最初に試すべきだ」

「ご主人様! ありがとうございます!」

 

 彼女は嬉しそうに毘盧帽とダマスカス鋼の額金を交換し、いそいそとかぶっている。

 

「それじゃあ、ラッシュの詠唱を確認したら、消費MP半減の効果を確かめてみよう」

「かしこまりました」

 

 

 

 二度スキルの発動に失敗したものの、三度目の挑戦で見事ラッシュが魔物へ炸裂した。

 

「やりました! 私も戦闘中にスキルを使うことが出来ました! これもご主人様の薫陶の賜物です!」

 

 ブラヒム語のアドバイスはそうかもしれないけど、出会った頃から戦闘中でも問題なくスキルを使えそうだったんだよなぁ。

 

「おめでとう。じゃあ、次は毘盧帽なしでやってみよう」

「そうですね。比べてみなければ効果はわかりませんからね」

 

 アイテムボックスにしまっていたダマスカス鋼の額金を取り出し、毘盧帽と交換する。

 そして、頭装備六とアクセサリー六を入れ替えて、ドラウプニルを身に着けた。

 

「では、やってみよう」

「はい。こちらです」

 

 通路を進むと、程なくしてコボルトと鉢合わせる。

 彼女はその魔物へ駆け寄るとラッシュを見舞った。

 

 

 

 戦闘終了後、コボルトソルトを差し出しながらロクサーヌが口を開く。

 

「こんなに違うものなのですね。あの帽子の効果はすごいです」

「俺も毎日の風呂焚きで実感しているが、魔法やスキルを使える数が倍になるのは、とても大きい」

「はい。素晴らしい装備品だと思います」

 

 それじゃあ、そろそろ素材集めに取り掛かろう。

 

「では、この後はグリーンキャタピラーとコボルトを中心に狩っていく」

「かしこまりました。それらを探してご案内いたします」

 

 

 

「ファイヤーストーム」

 

 ロクサーヌの案内で通路を進み、芋虫と小さいおっさんをガンガン焼いていく。

 ドラウプニルに付いているレアドロップ率二倍の効果で、コボルトナイフがポロポロ落ちている。

 この効果はガチで有用だ。デュランダルや歩雲履、そして毘盧帽とはまた違う意味で神装備だわ。

 しかも、最大MP二倍まで付いているため、MP回復に費やす時間が半分になっているのも、相当でかい。

 

 

 

 夢中になってひたすら糸とコボルトナイフを集めまくる。

 

 レアドロップ率二倍さんはすごいですなぁ。

 どうでしょう、スキル結晶ドロップ率二倍さんも仕事をしたくなりませんか?

 ダメですか? そうですか……。

 

 

 

 狩りを続けていると、突然ロクサーヌの表情が険しくなり、足を止めてスンスン匂いを嗅ぎだした。

 

 なんだ? なにがあった?

 

 一頻り匂いを確認すると、彼女は口を開く。

 

「ご主人様、以前ベイルの武器屋で出会った狼人族の男が、こちらへ向かってきます」

 

 はあ!? どういうことだ?

 

「俺たちに絡んできた方の奴か?」

「はい。間違いなくこちらの匂いに気が付いている動きです。それに、仲間だと思われる者が数人います」 

 

 ……きな臭い動きをしてくれるじゃないか。

 

 店を出て行ったときの奴の表情には、反省が欠片も見えず、明らかに逆恨みをしている様子で、しかもかなりロクサーヌへ執着していた。

 何をしようとしているのか想像がつくな。

 

「ここに来るまでどのくらいかかりそうだ?」

「十分程だと思います」

 

 今ワープで逃げたとしても、再び同じ階層に居合わせた場合、同様なことが繰り返されるだろう。

 それなら、一度で片を付けておくべきだ。

 

 

 

 スタッフと鋼鉄の盾をアイテムボックスにしまい、キャラクター再設定を開いてアクセサリー六と武器六を入れ替える。

 そして、結晶化促進四倍を外し、詠唱短縮を詠唱省略に上げ、ワープを付けた。

 

 

 

 しばらく待っていると、あの獣戦士が五人の男と共に姿を現す。

 

ナギィ ♂ 27歳

獣戦士Lv48

装備 エストック ダマスカス鋼の盾 竜革の帽子 頑強の竜革鎧 竜革のグローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

 クソ野郎なのに、随分とまあ一丁前な装備品を身に着けている。

 レベルも高いし、それなりの腕を持っているのかもしれない。

 他の奴らは、レベル42の探索者と盗賊が四人。その盗賊も全員レベルは30を超えていた。

 

 しかし、盗賊の仲間になったのか。パーティーを追い出されて、道を踏み外したんだな。

 

 

 

 ナギィという男は俺たちの姿を確認すると、声を荒らげた。

 

「手間を掛けさせやがって、ようやく見つけたぞ」

 

 ……なるほど。偶然気づいたわけじゃなく、俺たちを探していたと。

 出会ったのがベイルの武器屋だったのだ。この迷宮へ入っているとあたりをつけ、網を張ってやがったな。

 

 奴は腰の物を抜いて喚く。

 

「その女は俺がもらってやるよ。死にたくないなら、持ってるものを置いてとっとと失せろ」

 

 ああ? つまり殺してほしいって言ってんだな?

 

 奴の言葉を聞いて、周りの馬鹿どもが尻馬に乗り、口々に騒ぎ出す。

 

「ナギィさん。俺たちにも使わせてくださいよ」

「こんな上玉を独り占めするなんてズルいですぜ」

「前の方はダメだが、口とケツ穴なら好きに使え」

「さすがナギィさん。話が分かるー」

 

 聞くに堪えん。

 

「もういい。死ね」

 

ファイヤーウォール

 

 突然後ろに火柱が立ち上ったため、奴らは一斉に振り返った。

 そして、それに合わせて立て続けに念じる。

 

オーバーホエルミング

 

 引き延ばされた時間の中、後ろを向いている男たちへ駆け寄り、獣戦士の首にデュランダルを突き込んだ。

 

 しかし、何かに阻まれ、いつものように剣身が入っていかない。

 

 一度デュランダルを引き戻し、もう一度首に狙いをつけて薙ぎ払う。

 すると、今回は一切の抵抗がなく剣が通り抜けた。

 体から離れた頭は、ゆっくりと明後日の方向へ飛んでいく。

 

 スローモーションで動き出した他の奴らにも、立て続けにデュランダルを振るっていった。

 

 

 

 

 

 オーバーホエルミングが切れると周りは血の海で、六つの頭と六体の躯が転がっている。

 

「さすがご主人様です! この程度の輩など相手にもなりません!」

 

 声を上げながらロクサーヌが駆け寄ってきた。

 

 まったく、君って娘は……。あれだけ醜い欲望に晒されたのに、本当にブレないねぇ。

 

「迷宮に呑まれる前に、奴らの装備品と持ち物、それからインテリジェンスカードを回収しよう」

「盗賊もいるのですか?」

「ああ、四人は盗賊だ。俺は先にそいつらの左手を確保する。ロクサーヌは装備品と持ち物を頼む」

「かしこまりました」

 

 盗賊四人の左腕を切り取り、狼人族の男が持っていたリュックへ突っ込んでおく。

 それが終わると、ロクサーヌと共に装備を剥ぎ、アイテムボックスへしまい込む。

 

 

 

 戦利品の回収が済んだところで彼女へ告げる。

 

「こんなところか。このままここに留まるのはまずいだろう。一旦自宅へ戻る」

 

 すると、ロクサーヌから待ったが掛かった。

 

「お待ちください。まだあります」

 

 そう言って、遺体の服の下から巾着袋を取り出し、さらに、服に縫い付けられていた硬貨を切り取っている。

 本当にすごいな。さすがロクサーヌの鼻だわ。

 

 

 

 六人分それを続けると、顔を上げて口を開いた。

 

「ご主人様。めぼしいものはすべて回収しました。自宅へ戻りましょう」

「うむ。では、行こう」

「はい」

 

 迷宮の壁へ念じ、展開されたワープゲートへロクサーヌと共に身を潜らせる。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv36 英雄Lv31 魔法使いLv35

装備 硬革の帽子 硬革の鎧 硬革のグローブ 硬革の靴

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

サードジョブ:3

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

ワープ:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:862,958ナール

 

春の31日目

 

 

 

付録

獣戦士Lv48わがまま放題に生きた男の生涯

 

0歳

 帝国の中東部にある獣人の多い地域で、富豪の商人である両親の長男として生まれる。

 跡取り息子であったことからパワーレベリングを受けて育つ。

 

10歳

 同世代に比べ圧倒的な力の差があったため、好き勝手に振る舞い、手の付けられない悪童となる。

 商売ではなく戦闘者としての生き方を希望したため、二つ下に弟が生まれていたこともあり、跡取りから外された。

 しかし、その後も家の力をバックに悪事を働き続ける。

 

15歳

 成人を迎えたため家を出ることとなり、家にある一番高価な頑強の竜革鎧を手切れ金の代わりとして渡され、縁を切られることに。

 その際、家名を剝奪され自由民ではなくなってしまう。

 

 クーラタルでの生活をスタートさせ、同じ宿で意気投合した者たちとパーティーを組むが、居丈高な態度、酒癖と女癖の悪さ、そしてすぐに手を出すことにメンバーが耐えられず、一年も持たずに解散することになる。

 その後も、腕は確かだったためパーティーに加わることは出来るものの、すぐにトラブルを起こしては追放されることを繰り返す。

 

20歳

 頭角を現しつつあった、探索者、神官、魔法使いの人間族、猫人族の探索者、ドワーフの戦士のパーティーへ潜り込むことに成功する。

 魔法使いがいる貴重なパーティーだったため、追放されないよう生活態度を改めることを決意した。

 しかし、それはあくまでも本人基準であり、パーティーメンバーは尻拭いに翻弄され続けることになる。

 

27歳

 レベルがわからないため気が付いていなかったが、百獣王も視野に入り始めたころ、新しくできたベイルの迷宮へホームを移すことにする。

 ベイルの迷宮を探索していたある日、今まで嗅いだことのないほど芳醇な異性の残り香に気が付く。

 

 五日に一度開くベイルの武器屋で催眠のエストックを発見するも、金が足りなかったため宿にいる仲間へ借りに行く。

 前科があったため、本当に装備品を買うのか疑っていた仲間と共に武器屋に戻ると、催眠のエストックは別の者が購入した後だった。

 仲間になだめられ店を出ようとしたところで、迷宮で嗅いだ匂いに気がつく。

 店内を探してみると、今まで見たことがないほど、美しくスタイルの良い、香しい匂いを放つ女を見つけてしまう。

 一目で虜となり手を出そうとしたところ、自由民に決闘を申し込まれ、これが決め手となりパーティーを追放されてしまう。

 七年ぶり十五回目。

 

 宿に戻ると他の五人の部屋は引き払われていた。

 自棄になり歓楽街で飲んだくれていたところ、盗賊とトラブルとなりそれを撃退してしまう。

 勢力拡大を目論んでいた別のグループから声を掛けられ、そこの構成員となる。

 入ったグループで上位の腕を持っていたため、幹部となり手下を引き連れ歓楽街を我が物顔で闊歩する。盗賊稼業が性に合っていた。

 しかし、武器屋で見た女がどうしても諦めきれず、また舐めた真似をした自由民へ復讐をするため、ベイルの迷宮にあたりをつけ探し続ける。

 

 そして、運命の日を迎えてしまった。




後書きでは問題がありそうだったため、付録を本文へ移動しました。
ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。
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