「えっ! 迷宮!? どうして!?」
ワープゲートを抜けると、セリーの声が響き渡る。
「驚いているだろうが、説明は朝食後に行う。今は迷宮探索に集中してくれ」
「は、はい。申し訳ありません」
そう告げると、新たに発生したであろう疑問も再び飲み込んでくれた。
この後も驚きっぱなしだろうからな。その都度説明している暇なんてない。
ボーナスポイントの振り分けを終え、セリーへ声を掛ける。
「ここはベイルの迷宮三階層だ。この階層はコボルトが出るところなので、まずはドワーフが得意だという、一撃で複数の魔物にダメージを与える攻撃方法を見せてもらえるか」
「槌での振り回しによる同時攻撃のことですか? えっと、やったことはありませんが、ご主人様がお望みでしたら試してみます」
彼女へ頼んだところ、不思議そうにしながらも了承してくれた。
「いきなりは難しいだろうから、まずは素振りをしてみてくれ」
「かしこまりました」
風切り音を響かせながらあの重量物を振り回している様子は、とんでもない迫力だ。
しかし、原作通り左打ちなのに、グリップを握っている手は右が上にきている。
「セリー、そのフォームだと、左手を上にした方が振りやすいと思うぞ」
「左手を上ですか? やってみます」
彼女は棍棒を握り直し、スイングを再開する。
やっべー。さっきよりさらにすごい音を響かせて、プロでも通用しそうなスイングをしているぞ。
ボールを打ったらグワァラゴワガキーンという音を立てるに違いない。
「確かにこの握りの方がスムーズに振れるようです」
「そ、そうか。では試してみよう」
アイテムボックスからスタッフと鋼鉄の盾を取り出し装備すると、セリーがもの問いたげに見つめてくるが、疑問を口にすることはなかった。
「ロクサーヌ、コボルト二体のところへ頼む」
「はい、おまかせください」
彼女の案内で通路を進むと、程なくしてコボルト二体と遭遇する。
「ロクサーヌは、なるべく二体同時に攻撃しやすい位置へ誘導してくれ、セリーは自分のタイミングで攻撃を頼む」
「おまかせください」
「かしこまりました」
えっと、俺は何をしよう?
魔法を使えば一発で倒してしまうし、かといって前に出ればロクサーヌが行う誘導の邪魔になるだろう。
……もしかして、要らん子か?
自分の存在に悩んでいると、ロクサーヌが二体のコボルトに攻撃を入れてヘイトを取り、いつものように華麗に回避を始める。
セリーは、その様子に驚いているようだったが、覚悟を決めたのか表情を引き締めると、タイミングをうかがい出した。
そして、二匹のコボルトがセリーの前に来たタイミングで、一気に距離を詰めると思いっきり棍棒を振り抜く。
とんでもない音が迷宮に響き渡り、弾かれたように魔物が飛んでいき、通路の壁にぶつかって、べしゃりと地面に落ちた。
だが、魔物はまだ健在で消える様子がない。
マジかよ。あれをくらって生きているのか。
ファイヤーストーム
念じた瞬間、コボルト共が炎に包まれた。
「え! 魔法!?」
いきなり魔物が燃え上がったことで、セリーから大きな声が上がる。
延焼を続けている魔物を見つめていると、やがて炎が消え、同時に奴らの体も空気に溶けるように消えていった。
よし、これで条件を満たしたはずだ。
ロクサーヌからドロップアイテムを受け取って、アイテムボックスにしまう。
そして、キャラクター再設定を開いて鑑定と詠唱省略を解除して、捻出したポイントでパーティー項目解除とパーティージョブ設定をつけた。
「え? あの、ご主人様、何でしょうか?」
パーティージョブ設定を開こうとセリーを見つめていたところ、恥ずかしそうにもじもじしている。
なにそれ。すげーかわいいんだけど。
いや、めちゃくちゃかわいいが、今は確認を行なわないと。
パーティージョブ設定でセリーを開くと、その文字が燦然と輝くように表示されていた。
鍛冶師Lv1
効果 腕力中上昇 体力小上昇 器用小上昇
スキル 武器製造 防具製造 スキル結晶融合 アイテムボックス操作
しゃんなろー! やってやったぞ! 鍛冶師最速ゲットだ!
もう完全にRTA状態だな。たぶんこれが一番早いと思います。
本当に原作知識の賜物だわ。
よし、早速セリーのジョブを探索者から鍛冶師へ変更しよう。
うん。問題ないな。彼女はアイテムボックスに物を入れていなかったようだ。
「セリー、おめでとう。君のジョブは鍛冶師になった」
「え? 私は鍛冶師へのジョブ変更に失敗しています。ご主人様もご存じのはずですが……」
鍛冶師になった旨を伝えると、彼女は悲しそうな表情でうつむいた。
「ご主人様……」
ロクサーヌが困ったように俺のほうを見ている。
しまった。今のはあまりにもデリカシーがなさすぎた。フォローをしなければ。
サードジョブの魔法使いを騎士に変更し、セリーに声を掛ける。
「セリー、左手を出してくれ」
「……これでいいでしょうか」
彼女は暗い表情のまま、恐る恐る左手を差し出した。
「滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、インテリジェンスカード、オープン」
詠唱を行うとセリーの左手からインテリジェンスカードが飛び出す。
「えっ! どうして!?」
驚いている彼女へ声を掛ける。
「インテリジェンスカードの確認をするといい」
俺の言葉に左手の上にあるカードを確認すると、再び声を上げた。
「鍛冶師! 私のジョブが鍛冶師になっています! 一体どういうことですか!」
混乱している彼女へ近づき、ロクサーヌと共にインテリジェンスカードを覗き込む。
セリー ♀ 16歳 鍛冶師 初年度奴隷
所有者 田川歩
うん。問題なし。というか俺が変えたんだし、当然なんだけどさ。
「セリー。おめでとうございます。今日からあなたは鍛冶師です。本当に良かったですね」
ロクサーヌからの祝福の言葉を聞いて、まだ絶賛混乱中のセリーが口を開く。
「もう何が何だかよくわかりません……。夢でも見ているのでしょうか……」
「ふふ。大丈夫ですよ。朝食の後にご主人様が説明してくださいます」
こちらに視線を向けたセリーへ頷く。
「あとでちゃんと説明するから、心配しなくても大丈夫だ」
「はい。わかりました」
納得は出来ていないようだが、精神状態は落ち着いたようだな。
よし、それじゃあ更なるビッグイベントの開催だ!
キャラクター再設定を開き、獲得経験値二十倍を頭装備六に付け替える。
そして、出現した毘盧帽をセリーへ差し出した。
「この帽子を装備してもらえるか。ロクサーヌ、セリーの竜皮の帽子を一旦預かっていてくれ」
「かしこまりました」
「え? あ、はい。かしこまりました」
さっきからずっと、戸惑ってばかりだな。
彼女からすれば、俺は突拍子もないことばかりする、とんでもない主人だろう。
朝食後に説明をするから、今は勘弁してくれ。
セリーが装備品の変更を行っている間に、アイテムボックスからヤギとコボルトのスキル結晶を取り出す。
「セリー、スキル結晶融合と言ってみてくれ」
その言葉を聞くと再び彼女の顔が曇る。
そして、それを回避するためなのだろう。慌てたように早口で喋り出す。
「ご主人様、スキル結晶の融合は失敗の方が多く、滅多に成功しません。それに、鍛冶師になったばかりの者が、スキル結晶の融合を行うのは良くないとされています。失敗を悔やんで死を選ぶ人もいるのだとか……」
その表情と声色には悲しみの色が混ざっており、傷ついたであろうことがうかがえる。
大切にしてもらえると思っていたのに、無茶なことを要求されてしまったのだ。そうなってしまうのも仕方がない。
セリーの中で今の俺は、無理な仕事をさせようとしているパワハラ上司そのものだろう。
ロクサーヌも不安気に俺たちのことを見守っていた。
彼女にも心配をかけてしまっているな。
「装備しているその帽子には消費MP半減というスキルが付いている。絶対に大丈夫だから、俺を信じて試してくれないか?」
「消費MP半減ですか? 消費MP軽減や消費MP削減ではなく、半減?」
ん? 消費MP軽減や消費MP削減というスキルはあるのか?
あ、いや。今は置いておこう。
「うむ。なので、鍛冶師になったばかりでも問題ない」
「わかりました。やってみます」
セリーは覚悟を決めたようで、一度深呼吸をしてからそれを口にした。
「スキル結晶融合」
すると、彼女は目を大きく見開いた。
よし。問題なく呪文が浮かんできたようだな。
「今ぞ来ませる御心の、こと××蔭の天地の」
セリーは確認するように詠唱を呟いているが、しかし、その詠唱には一部翻訳されていない箇所がある。
原作でも同じところを間違っていたな。確か『言祝ぐ』だったか。
「セリー、詠唱が少し違っている。言祝ぐ蔭の天地の、で試してみてくれ」
彼女はその言葉に頷き、再び詠唱を口にする。
「言祝ぐ蔭の天地の、あ、ご主人様のおっしゃる通りです。今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の」
正しい詠唱を口にして頷いているセリーへ、ヤギとコボルトのスキル結晶、それからスタッフを差し出す。
「では、頼む」
「はい」
彼女は右手でスタッフ、左手で二つのスキル結晶を受け取ると、そのスキル結晶をスタッフに押し当てた。
「いきます」
一声発し、詠唱を開始する。
「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、スキル結晶融合」
セリーの詠唱が終わると、装備品とスキル結晶が一瞬白くまばゆい光を放つ。
そして、その光が消えると、彼女の手元にはスタッフだけが残っていた。
鑑定を付けていないせいで、あれがひもろぎのスタッフなのかわからねー!
急いでキャラクター再設定を開き、パーティー項目解除とパーティージョブ設定を外そうとしたところで気づく。
先に騎士と魔法使いを入れ替えないと!
なんかもうグダグダだがジョブを入れ替え、ポイントの振り分けを行う。
よし、それじゃあ鑑定っと
ひもろぎのスタッフ 杖
スキル 知力二倍 空き 空き
きたー! ひもろぎのスタッフきたー!
レベル60の魔道士であるゴスラーも使用している逸品だ!
こいつぁーとんでもないことになるぜー?
「セリー、ありがとう。見事に成功させたな」
「セリーは本当にすごいです。これからたくさんご主人様のお役に立てますね」
俺とロクサーヌで褒め称えると、彼女ははにかんだような笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。あの、ご主人様のことを疑ってしまい、申し訳ありませんでした」
「普通に考えると、俺は無茶なことを言っていたのだ。セリーが不安になっても仕方がない。気にする必要はないぞ」
「はい。ありがとうございます」
うんうん。かわいらしい笑顔だ。
ひもろぎのスタッフを受け取って腰のベルトへ差し、毘盧帽をポイントへ戻して獲得経験値二十倍を付けなおす。
他の融合と装備品の製造については、予定通り午後に行おう。
「よし、では魔物を倒していこう。セリーはしばらく俺たちの後ろで見学をしていてくれ」
「私なら大丈夫です」
だいじょばないからダメです。
「ジョブが変わったばかりだからな。それにこれから向かう先は八階層だ。何かあるといけない」
「ご主人様、八階層に行くのですか!」
俺の言葉に、ワクワク顔でロクサーヌが尋ねてくる。
こやつ、お気に入りのアトラクションに乗れるくらいのテンションで喜んでいるぞ。
「うむ。ひもろぎのスタッフを手に入れたので、魔物を一発で倒せる階層が上がっているかもしれない。なので、八階層を試してみよう。問題ないようなら九階層もだな」
「かしこまりました!」
嬉しそうな顔をしよってからに。かわいいじゃないのさ。
「本当に九階層で戦っているのですね……。すごいです……」
「というわけなので、慣れるまでは見学だ。しかし、ただ見学するだけじゃなくて、どう動くのが効果的なのかを考えながら見ていてくれ」
「わかりました。今後の戦いに備え、思考を止めることなく見学を行います」
まあ、こう言っておけば無力感を覚えることもないだろう。
おっと、彼女はしばらく接近戦をしないのだ。
槌ではなく、槍の方に変えておくか。
アイテムボックスからダマスカス鋼の槍を取り出し、セリーへ差し出しながら告げる。
「後ろで見学してもらうので、棍棒ではなくダマスカス鋼の槍に換えておこう」
「そんな高価な武器を私が使用してもいいのですか?」
「その方が効率的だからな」
「なるほど……。確かにそうかもしれません」
彼女は納得したように頷くと、左手でダマスカス鋼の槍を受け取り、背中に背負っていた棍棒を右手で取ると、こちらへ差し出した。
それを受け取ると、両手にずっしりとした重さが掛かる。
……これを片手で扱うの?
ドワーフの腕力、ヤバすぎるでしょうよ。
さて、それじゃあ行くか。
通路の壁に向かい、ダンジョンウォークを念じた。
ゲートを通り抜けたところで、ロクサーヌに声を掛ける。
「では、魔物のところへ頼む」
「はい、おまかせください」
いつものように、彼女の後ろを歩いていると、鋭い声が響く。
「ご主人様、魔物です!」
慎重に進んでいくと、通路の反対側から魔物が姿を現した。
コラーゲンコーラルLv8
コラーゲンコーラルLv8
エスケープゴートLv8
エスケープゴートLv8
ファイヤーストーム
奴らの姿を目にした瞬間に魔法を念じると、火の粉が舞った後、魔物の体へ炎が纏わりつく。
炎の勢いはメギンギョルズを装備していたときと、そこまで差があるようには感じない。
よし、これならいけそうだ。
そのまま見守っていると、炎と共に魔物達も風に流されるように消えていった。
っしゃー! ワンパンじゃーい!
「八階層の魔物が一撃で……」
声が聞こえたため振り返ってみると、驚愕の表情を顔に貼り付けたセリーの姿が目に映る。
「ご主人様ならこのくらい当然のことです」
すると、すかさずロクサーヌがフォローを入れた。
……いや、これフォローか?
「これが当然のこと……」
「はい。この世で二人といないとても素晴らしいご主人様でしょう。そんなお方に仕えることが出来る私たちは本当に幸せです。誠心誠意、全身全霊で尽くしていきましょう」
彼女の言葉に、セリーは不安を口にする。
「私なんかで大丈夫でしょうか?」
「セリーは先ほど、スキル結晶の融合でご主人様のお役に立てたじゃないですか。考えすぎず、自分が出来ることを精一杯行えばいいのです」
それを聞いて少しだけ明るさを取り戻し、感謝を述べた。
「はい。ロクサーヌさん、ありがとうございます」
なんか、悪質な宗教による洗脳を見たような気分だな……。
いや、俺のためにロクサーヌがしてくれたことに対して、そんな言い方はないか。
「では、次は九階層で試してみよう」
「かしこまりました」
「あ、はい。すぐに九階層へ移動するのですね」
忙しなくてごめんな。うちはこんなんばっかだから、慣れてくれると助かる。
ちょっと前までメインの狩場にしていた場所にきたが、迷宮はどこも似たような景色のため、何の感慨も湧くことはない。
「先ほどと同じように頼む」
「かしこまりました」
スローラビットLv9
スローラビットLv9
コラーゲンコーラルLv9
エスケープゴートLv9
ファイヤーストーム
通路で鉢合わせた魔物の群れへ魔法を念じ、炎に巻かれている奴らを見続ける。
程なくして炎が消えると、魔物の姿も空気に溶けるように消えていった。
マジか! ひもろぎのスタッフすげー! とんでもない威力だぞ!
これ、メギンギョルズと組み合わせたら、どうなっちゃうんだ!?
「九階層の魔物まで一撃……」
呆然とした様子でそう呟いたセリーに声を掛ける。
「この結果は、ひもろぎのスタッフを作ってくれたセリーの功績が大きい。ありがとうな」
「いえ、私なんて、ただご主人様に言われるがままにスキル結晶の融合をしただけです。功績なんてそんな……」
謙遜なのか、それとも本心からそう言っているのかはわからないが、その言葉を聞き逃すわけにはいかない。
彼女の肩に手を置き、目を合わせながら告げる。
「そんなことはない。パーティーに加入したばかりで不安もあっただろう。それに、普通では考えられないような無理難題を言われたと思ったはずだ。それなのに、俺を信じて融合に挑戦してくれた。本当にセリーはすごいし、誰とも代わることが出来ない大切な俺たちの仲間だ」
「ご主人様……」
彼女の顔には、恥ずかしそうな控えめな笑みが浮かんでいた。
ロクサーヌもセリーに近づくと、励ますように声を掛ける。
「そうですよ。『私なんて』などと言ってはいけません。自分の力じゃないとか、努力して得たものではないとか、偶然何者かに与えられた能力だとか、意味のないことを考えず、自らが成したことを誇ればいいのです」
……あの、ロクサーヌさん。その言葉に他意はないんですよね?
私のことではないんですよね?
気を取り直して、狩りを続ける。
威力が下振れして撃ち漏らすなどということもなく、1確でサクサク片付いていく。
この世界のダメージ計算式は明らかにランダム要素が存在せず、パラメーターや装備品、そしてスキルが同じなら、まったく同じダメージが出るようになっているようだ。
それ以外だと、クリティカルによって威力が上がることがあるくらいか。
しばらく狩りを続け、MPが心許なくなってきたので、回復を行うことにする。
「MP回復を行うので少し待ってくれ」
「かしこまりました」
「MP回復? 強壮丸を使うのですか?」
キャラクター再設定を開き、獲得経験値二十倍を武器六と入れ替え、不思議そうな顔をしているセリーへデュランダルを示しながら告げた。
「この剣にはMP吸収のスキルが付いているため、これで回復を行うのだ」
「MP吸収の付いた剣ですか……。すごい武器をいくつもお持ちなのですね」
説明する時間がないため、今は他にも付いているスキルに関しては、言わない方がいいよな。
原作でそうだったように、無茶な融合を試みるイカレたギャンブラーだと思われ、呆れられてしまう。
「うむ。魔法での戦闘でなくても、セリーはしばらく見学をしていてくれ」
「はい。わかりました」
あ、そう言えばレベルはどうなっているんだ?
確認してみよう。鑑定っと。
セリー ♀ 16歳
鍛冶師Lv5
装備 ダマスカス鋼の槍 竜革の帽子 硬革のジャケット 硬革のグローブ 竜革の靴
レベル5か……。
なんか、上りが遅い気がする。
初日に迷宮に入ったロクサーヌの戦士は、一階層なのにバカスカ上がっていたよな?
ジョブごとの経験値テーブルは、こんなにも差があるのだろうか?
俺とロクサーヌのレベルも確認してみるが、こちらは全然変わっていなかった。
まあ、そんなもんだ。
その後も回復を挟みながら狩りを続ける。
メギンギョルズの最大MP上昇の効果がないため、MP回復の回数は増えてしまっているが、それでも大した差は感じられない。
魔物を作業の様にサクサク倒していると、ロクサーヌからいつもの言葉が発せられた。
「ご主人様、そろそろパン屋が開く時間です」
「よし、では早朝の探索はここまでにしておこう。今日は牛乳が必要になるので、一度自宅へ戻り、容器を取ってこよう」
「はい」
牛乳屋でバターと卵も買っておかないとな。
スタッフとダマスカス鋼の盾をアイテムボックスへしまい、ボーナスポイントの振り分けを行ったところで、所在なさげにこちらを見つめているセリーへ声を掛ける。
「これから朝食をとりにクーラタルへ戻る。我がパーティーへ加入して、はじめてとなる迷宮探索はどうだった?」
問いかけてみると、彼女は眉間にしわを寄せ、必死に言葉を探している様子で答えた。
「あの、なんと言うか、すごいとしか言いようがありません。ご主人様は詠唱もなく魔法一発でバンバン魔物を倒していきますし、剣を持っても信じられないような殲滅速度です。そしてロクサーヌさんは、魔物三匹の攻撃を苦も無くかわし続けていましたし、四匹でもほとんど問題ないようでした。私がちゃんとやっていけるのかとても不安です……」
俺のそれはイカサマだが、ロクサーヌの方はガチだからなぁ。
不安を覚えても仕方がない。
「大丈夫だ。まだ加入したばかりだし、少しずつ強くなっていけばいい。それに、セリーには武器や防具の製造やスキル結晶の融合をまかせることになるし、頭が良いから調べ物をお願いすることもあるだろう。あまり気にし過ぎないことだ」
俺の言葉に続けて、ロクサーヌもセリーへ声を掛ける。
「ご主人様のおっしゃるとおりです。セリーにしかできないことを精一杯やればいいのです」
「はい。ありがとうございます」
俺たちの励ましを聞いて、ぎこちない笑顔で感謝を述べる。
うーん……。
まあ、気にするなと言ったところで気になるか。
彼女が自分自身の強みに気が付いてもらえるよう、手助けが出来ると良いんだが。
さて、それじゃあクーラタルへ戻ろう。
鑑定とワープを入れ替えて通路の壁へワープゲートを開き、それに身を埋めていった。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv36 英雄Lv31 魔法使いLv35
装備 硬革の帽子 頑強の竜革鎧 硬革のグローブ 硬革の靴
BP振分 残BP:0
キャラクター再設定:1
サードジョブ:3
必要経験値二十分の一:63
詠唱省略:3
ワープ:1
三十パーセント値引:63
所持金:1,219,105ナール
春の32日目