さて、話しておくべきことはすべて話し終えた。
それじゃあ、ここからは彼女が来たら確認しようと、メモしていたことを質問していこう。
リュックからパピルスを取り出し、セリーに声を掛ける。
「セリー、質問したいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい。なんでしょうか?」
まずは、えーっと。ああ、これか。
「それじゃあ、ボーナス装備に付いているスキルなんだけど、今から言うものに聞き覚えのあるものや、似たようなものを知っていたら教えてほしい」
「知らないスキルもたくさんあるのですが……」
「大丈夫。知っているものを教えてくれればいいよ。それに、セリーにはいずれ図書館で調べ物をしてもらうから」
「よろしいのですか!?」
うおっ! 声でっか!
彼女は、輝かんばかりの笑顔でこちらを見つめている。
「うん、よろしくね」
「はい! ご主人様、ありがとうございます!」
自ら望んで情報収集をしてくれるのが、本当にありがたいよなぁ。
んじゃ、確認していくか。
手元のパピルスに視線を移し、読み上げる。
「防御力無視、レベル補正無視というスキルに心当たりは?」
「申し訳ありません。どちらも聞いたことがありません。似たようなスキルにも心当たりはないですね」
それを聞いたロクサーヌが、がっかりしたように呟く。
「私たちの武器にも防御力無視を付けて、全員がデュランダルを持っているような状態にする計画でしたのに……。残念です」
「そうだね。これと攻撃力五倍や詠唱中断、HP吸収あたりを付ければ、簡易版のデュランダルとして運用できたんだけどなぁ」
残念そうにしている俺たちを見て、セリーが問いかけてきた。
「デュランダルですか?」
そういえば、迷宮では説明を後回しにしていたか。
「MP吸収が付いているといった剣があったでしょ?」
「はい」
「あれはデュランダルというボーナス装備で、MP吸収の他に防御力無視、レベル補正無視、攻撃力五倍、HP吸収、詠唱中断の六つのスキルが付いている」
「えー!」
それを聞いたセリーから悲鳴のような声が上がる。
「六つもスキルが……。MP吸収やHP吸収、詠唱中断はともかく、他のスキルは聞いたことがありません……。でも、どれも有用そうでオークションに出せばどのくらいの値が付くのか……。他のボーナス装備もこんなにすごいものなのでしょうか……」
ブツブツ呟きながら考え込んでいるセリーに声を掛ける。
「もしかしたら、セリーがこのスキル結晶を知らない可能性もあるから、近いうちに図書館で調べてもらうね」
「え? あ、はい。かしこまりました。全力で取り組みます」
彼女は表情を引き締め、両手で拳を作り、気合を入れ答えた。
レベル補正無視に関しては、魔物のレベルを上回っていれば、なくても問題ないはずなのでまだ妥協は出来る。
しかし、防御力無視に関しては何としても手に入れたい。
図書館で調べたときに見つかるといいんだが……。
本当にボーナス装備にしか付いていないスキルとなると、固定ガチャをする必要が出てくるんだよなぁ。
そうだ。これについてセリーの意見も聞いておこう。
おっと、その前にロクサーヌに話を通しておかないと。
「ロクサーヌ。以前話をした、ボーナス装備品を入手する手段について、セリーにも確認してみようと思うんだけど、どうかな?」
「はい。そのほうがいいと思います」
問いかけてみると、微笑みながら同意してくれた。
……きれいな笑顔だなぁ
いやいや。見惚れている場合じゃない。ちゃんと確認しよう。
「セリー、さっきジョブの固定を行うと、それまで貯まっていたボーナスポイントが勝手に振り分けられるって話をしたでしょ?」
「はい」
「レベルが高ければ高いほど、振り分けられるポイントは多くなるため、強くなる幅が大きくなったり、良い装備が手に入りやすくなるはず」
「そうですね」
彼女の相槌に頷きを返し、続きを口にする。
「高階層で戦うようになれば、ボーナススキルである獲得経験値二十倍の効果もあり、うちのパーティーは一日で常人の数年分の経験を稼ぐことになると思われる」
「……改めて聞くと、本当にとんでもない話です」
眉間にしわが寄っているが、そこは慣れてもろて。
「そこで、お金に困っていて、ジョブの固定を行ってもいいという人に契約を持ち掛ける」
「契約ですか?」
「うん。固定を行えば報酬を出す代わりに、出現した装備品は俺たちの物になるという契約だ」
彼女はその言葉を聞くと、納得した顔で口を開く。
「なるほど。契約した相手をパーティーに加え、高階層で一気にレベルを上げてしまうのですね」
「そういうこと。俺たちのパーティーと経験を共有すれば、数日間で相当レベルを上げることが出来るはずだ。どうかな? これは実現性がありそうかな?」
問いかけてみると、セリー少し考え難しい表情で答えた。
「……おそらく、可能だと思います」
おお! やはりいけるか!
しかし、眉にしわが寄ったまま言葉を続ける。
「ただ、問題も出てくる気がします」
「問題?」
「はい。いくら契約を行ったとしても、目の前で装備品が出てしまえば、本来は自分の物だったという気持ちが湧き、どうしても手放すことが惜しくなってしまうでしょう。お金に困っているならなおさらです」
……そうかもしれない。お金を返すから契約をなしにしてくれとか言われそうだな。
「それに、その契約に応じるのはほとんどが老人となるはずです。若者は就きたいジョブがあるでしょうし、また上位のジョブへ変更できる可能性もあります」
「確かに。その可能性の方が高そうだ」
「セリーの言う通りだと思います。奴隷となっても自分の可能性を狭めたくないという人も多いでしょう」
自分の言葉に俺とロクサーヌが頷いたのを見て、彼女は続きを口にする。
「その場合、本人はよくても家族が納得するとは思えません。契約がある上にご主人様は自由民なので、直接こちらをどうこうしようとすることはないでしょうが、悪評を広められてしまう可能性があります」
「そうですね。根も葉もない噂を流されてしまうこともあるでしょう」
ロクサーヌの言葉には実感がこもっており、辟易した様子がうかがえた。
バラダム家の女に、男を手玉に取るビッチだなんだと噂を流されたのかもしれないな。
しかし、うーん……。なかなか難しいぞ。
家族のいない一人暮らしの独居老人を狙うか?
身近に相談できる人がいなければ、問題が起こる可能性は低いはずだ。
それに、老人なら何か不自然な現象が起こっていたとしても、それに気がつかないかもしれない。
……ん? あれ? この考えはヤバくね?
今の俺の思考って、特殊詐欺を企てている奴みたいだったぞ。
さすがに、このプランはダメだろう。我ながらドン引きだわ。
「セリー。ありがとう。このまま行うのはまずいということがわかった。少し考えてみるよ」
「はい。その方がいいと思います」
「ロクサーヌもありがとう」
「どういたしまして」
二人に感謝を述べ、笑みを交わし合ったところで、セリーへの質問を再開する。
「じゃあ、次。魔法攻撃力五倍はどう?」
「五倍はわかりませんが、魔法攻撃力上昇や魔法攻撃力二倍なら聞いたことがあります」
マジで!?
「何のスキル結晶なの!?」
「えっと、鳥のスキル結晶だったはずです」
鳥かぁ……。第三ランクの魔物で、そのボスであるファイヤーバードは、魔法使いがいなければ倒すのが難しいといわれている難敵だ。
めちゃくちゃ貴重で高そうだよなぁ。
いや、でも買わないという選択肢はない。
この後、ルークを訪ねて買い注文を出しておこう。
しかし、原作では魔道士レベル60で貴族でもあるゴスラーですら、持っていなかったよな?
それほど高価なのだろうか?
それとも、原作の世界とはスキル結晶の効果が異なっているのだろうか?
「ご主人様! このスキルを得たら十二階層以降へ上がることも可能ではないでしょうか!?」
考え込んでいると、興奮した様子でロクサーヌが問いかけてきた。
十二階層か……。
この世界において、迷宮で出現する魔物は、階層ごとに一種類ずつ追加されていくという法則がある。
さらに、一階層から十一階層までに追加される魔物の種類はすべての迷宮で共通しており、出現順が迷宮ごとに異なるといった具合だ。
そして、十二階層からは魔物のランクが上がってしまう。
十一階層までの魔物に比べ、確実に強くなっているということだった。
どうしたもんか……。
……そうだな。ひもろぎのスタッフと魔法攻撃力二倍のスキル。そして、遊び人の効果設定に英雄が持つ知力中上昇を組み合わせれば、十二階層の魔物をワンパン出来てもおかしくない。
それに、メギンギョルズを出す必要がなくなることで、ボーナスポイントに15の余裕が出来るのも大きいだろう。
よし。これらが揃い、セリーのレベルが上がったら挑んでみるか。
「そうだね。ロクサーヌの言う通り、鳥のスキル結晶を入手して他の準備も整ったら、十二階層へ進んでみよう」
「はい! 楽しみですね!」
すげー嬉しそうにしてるぞ。この戦闘狂さんめ。
準備が整ったらっていうことを、ちゃんと理解しているのだろうか?
でもまあ、その笑顔がめちゃくちゃかわいいじゃないのさ。
それじゃあ、次だ。
「レアドロップ率二倍とスキル結晶ドロップ率二倍というスキルはどうかな?」
「そんなスキルがあるのですか!?」
またもやセリーから大声が上がる。
「ふふ。セリー、ご主人様はそのスキルを使って、たくさんのコボルトナイフを集めたのですよ」
「本当ですか! そんなことが出来るなんてすごいです!」
ロクサーヌさんや。そのかわいらしいドヤ顔をやめなさい。
セリーもいたたまれないから、そんなキラキラおめめで見つめるのはやめておくれ。
しかし、心当たりはないのか……。
明らかにぶっ壊れスキルだもんなぁ。まあ、しゃーない。
その後、最大HP二倍、最大MP二倍、クリティカル無効、空中跳躍と確認していくが、どれも聞き覚えがないらしい。
また、彼女の知る限り、似たようなスキルにも心当たりがないということだった。
「そうですか……。空中跳躍はないのですか……。残念です……」
君は本当にそれが好きだよねぇ。修行が終わった後、よく歩雲履で遊んでるもんねぇ。
「まだないと決まったわけじゃないから、これらについても図書館で調べてもらえる?」
「はい。探してみます」
セリーに頼んでみると、頷きながら請け負ってくれた。
見つかるといいんだがなぁ。
さあ、次にいこう。
えーっと、ああ、そうだそうだ。
「迷宮で消費MP軽減や消費MP削減って言っていたよね? それは?」
「油脂植物のスキル結晶を防具に融合すると付くスキルです。そのまま融合すると消費MP軽減で、コボルトのスキル結晶と一緒に融合すると、消費MP削減になります」
油脂植物? 原作では出てこなかったよな?
油脂植物ってことは、ナイーブオリーブやパームバウムからドロップするのか?
それに、軽減や削減だと、どのくらい消費MPが減るんだ?
……いや、二割や三割だったとしても、めちゃくちゃ有用だろう。
こいつもルークに依頼しておいたほうがいいな。
「ありがとう。それじゃあ、跳躍力五倍はどうかな?」
「確か、カエルのスキル結晶で跳躍力上昇と跳躍力二倍のスキルが付いたはずです」
おお! カエル! なんかそれっぽい!
「こっちはいずれロクサーヌの装備品に付けるからね」
「ありがとうございます! お役に立てるように頑張ります!」
この娘さんが跳躍力二倍のスキルを手に入れた日には、迷宮の壁や天井を使った立体機動を披露しそうだわ。
スキル結晶の確認はこんなもんか。
じゃあ次は、これだな。
「腕装備に腕力上昇とか、頭装備に知力上昇を付けることは可能?」
「腕力上昇は、武器と盾、それからアクセサリーと腕装備に融合することが出来ると言われています。知力上昇は武器と盾とアクセサリーですね」
おお! 腕力上昇を腕装備に融合することが出来るのか!
武器やアクセサリーのスロットを潰す必要がないのはありがたいぞ!
これはいい情報を聞いた。
しかし、頭装備に知力上昇を付けることは出来ないのか。
腕装備に腕力上昇を付けられるなら、いけそうだと思ったんだが……。
「あとは、海水魚のスキル結晶はどんなスキルが付くかわかる?」
「海水魚は体力上昇ですね。コボルトと一緒に融合した場合は体力二倍になります」
なるほど。海水魚は体力上昇と。
物理ダメージを減らすためには効果的なスキルだろう。いずれは全員分集めたいところだな。
それじゃあ、次が最後の質問だ。
「セリーはお米って知ってる?」
「お米ですか? 帝国の遥か南東にある国で、パンの代わりに食されているという、あのお米ですか?」
きたー! 手がかりきた! お米が食えるかもしれねー!
「その国の名前や正確な場所はわかる!?」
「カッシームの遥か先だった気がしますが、申し訳ありません。正確な位置も国の名前もわかりません。」
くぁー。おあずけかー。
「確か、ご主人様の故郷で主食として食べられているものでしたよね?」
以前ロクサーヌにも確認していたから、覚えていたのだろう。
でも、そのときとは彼女のテンションが、まったく変わってしまう情報があるのだよ。
「ロクサーヌさんに、重要なお知らせがあります」
「重要なお知らせですか?」
彼女はキョトンとした顔でこちらを見つめている。
「実はカレーに一番合うのはお米なのです」
「そうなのですか!?」
その言葉に目を見開いて大きな声を上げた。
ふふん。君はカレーが大好きだもんねぇ。そりゃ食いつくよねぇ。
もちろん、カレーはナンやパンにも合うが、日本人ならカレーといえばカレーライスだ。
異議は認めない。
「お米を見つけることが出来たら、カレーライスを作るから一緒に食べようね」
「カレーライスというのですね。とても楽しみです」
輝くような笑顔が本当にかわいいなぁ。
「カレー?」
隣に座っているセリーは、俺たちのテンションに戸惑っている様子だ。
「セリー、カレーというのはご主人様が作ってくださる、とても美味しい料理なのです。きっとあなたも気に入ることでしょう」
ロクサーヌの言葉に続けて、口を開く。
「それじゃあ、セリーにも食べてもらおう。明日の夕食はカレーってことで」
「本当ですか!」
君が喜んでどうする。
「えっと、はい。ありがとうございます」
彼女はロクサーヌの勢いに気圧されながらも感謝の言葉を口にした。
セリーも気に入ってくれるといいなぁ。
さて、そろそろいい時間だろう。
「それじゃあ、そろそろ買い物に、あっ、先に商人ギルドへ行って、ルークへスキル結晶の買い注文を出しておこう」
「そうですね」
「仲買人に依頼なさるのですか?」
その言葉でセリーの眉間に皺が寄る。
やはり仲買人に良い印象はないようだ。
「そう。俺たちが懇意にしているルークという仲買人だよ。完全に信用が置けるわけではないけど、仲買人の中ではマシな男だと思う」
とはいっても入札妨害、価格操作、談合と日本なら一発アウトなことをやりまくっている奴だけどな。
「そうですか……。彼らは連携して利権をガッチリ押さえていますからね。出し抜けない以上、仲買人を利用するしかありません」
業腹な様子だが、飲み込んでくれたらしい。
まあ、心から信頼する必要なんてないんだ。セリーはこのままでもいいさ。
というか、ぶっちゃけ仲買人のことは俺も全然信用していないしな。
商人ギルドへ移動し、受付でルークを呼ぶように伝える。
二人と喋りながら待っていると、程なくしてイケメン野郎のお出ましだ。
俺たちに近づいてきたルークは、セリーに気が付いたのだろう。少しだけ表情が変化する。
「お待たせいたしました。それでは、商談室へまいりましょう」
彼の案内でいつもの部屋へ通された。
進められてソファーへ腰を下ろすと、その後ろにロクサーヌとセリーが立ち、警護をしてくれている。
「そちらの方がスキル結晶の融合を行っているのですね。なるほど、経験豊富で良い腕をお持ちのご様子」
おい、ちょっとまて。
お前いま、うちのかわいいセリーをババアだと思ったな?
それは捨て置けんぞ。
「彼女は十六歳という若さでありながら、見事な腕前を持った鍛冶師で、その上こんなにもかわいらしい女性だ。これからも素晴らしい働きをしてくれるだろう」
俺の言葉を聞いてルークは驚いたのか、表情を変えて口を開く。
「左様でございましたか。大変失礼いたしました」
「うむ」
わかればよろしい。
「それでアユム様、本日はどういったご用件でしょうか」
ルークは気を取り直すと、さっそく話を切り出した。
落札の通知をしていないのに訪れているのだ。気になっているのだろう。
「追加で買いを出しておきたいスキル結晶があってな。鳥と油脂植物、それからカエルなのだが、頼めるか」
「鳥に油脂植物にカエルですか……。鳥のスキル結晶はクーラタルなら三十二階層以降となりますので、なかなか出品されることがなく、出品されたとしてもかなり高額となってしまいます。前回の落札価格が一万二千五百ナールで、その前が一万千九百ナールでした」
高いだろうと思ってはいたが、こんなにするのか。
融合に失敗すれば、これが丸々なくなっちゃうんだろ?
成功する確証もないのにチャレンジする奴らはやべーな。
まあ、私は確証があるので、いくんですけどね。
「それでは、一万三千五百ナールまで出すので、よろしく頼む」
「かしこまりました。油脂植物のスキル結晶については、前回の落札価格が三千七百ナール。前々回は三千九百ナールでした」
あれ? 割と安いぞ?
消費MPが減るなんて神性能だと思うんだが、なんでこんなに安いんだろう?
いや、今気にすることじゃない。
とりあえず買い注文を出しておこう。
「では、こちらは四千ナール以内で頼む」
「ありがとうございます。それから、カエルについては、前々回が五千五百ナール、前回が五千二百ナールとなっております」
「うむ。では、五千七百ナールまで出すことにしよう」
それを聞くと一つ頷き、ルークは口を開く。
「かしこまりました。では、今回追加分が鳥と油脂植物、それからカエルのスキル結晶の三点。そして、前回から継続している分がコボルト、ウサギ、ヤギ、芋虫、はさみ式食虫植物、トロール、サイクロプス、スライム、牛、貝、以上十点。合計十三点でよろしいでしょうか?」
十三点って、我ながらすごい買い方だわ。
最上位種を除いたスキル結晶の種類は、おそらく三十三種類。
その三分の一以上に買い注文を出していることになる。
しかも、セリーの調査結果次第では、さらに増やすつもりでいるのだ。
傍から見たら狂人そのものだろうなぁ。
「それで頼む」
「ありがとうございます。これまで同様、全力で取り組んで参ります」
はいはい。全力で根回しをして、限界まで吊り上げますって意味ね。わかってますとも。
商人ギルドを出て通りを歩いていると、セリーが話し掛けてきた。
「あの、ご主人様。ありがとうございます」
ん? ああ。ルークにセリーについて語ったときのことか。
「俺は本当のことしか言ってないぞ。セリーはこれから失敗知らずの優秀な鍛冶師となるし、頭も良いから色々な働きもしてもらえる。そして、とてもかわいらしいからな」
それを聞いた彼女は、はにかんだような笑みを浮かべて、上目遣いでこちらを見つめる。
「そんな風に言っていただけるなんて……。本当に嬉しいです」
セリーも本当にかわいいよなぁ。
それにしても、めちゃくちゃ使えそうな消費MP軽減がつく、油脂植物のスキル結晶がなぜあんなに安かったのだろう?
うーん……。わからん。
彼女に聞いてみるか。
「油脂植物のスキル結晶はなぜあんなに安いのだ? 有用そうなスキルだと思うんだが、融合しようという者は少ないのか?」
すると、彼女は俺に近づき、小声で話し掛けてきた。
「一般的に、一つの装備品に対しては一つのスキルしか付けません。そのため、油脂植物の優先順位はそれほど高くないのです」
あ、言われてみればそうだわ。
せっかく融合に成功した装備品に、二個目をつけようなどと考える奴はそうはいないだろう。
だとすると、武器と身代わりのミサンガを付けるであろうアクセサリーを除き、スキル結晶の融合を行えるのは残り五か所しかない。
そうなると、消費MP軽減や、消費MP削減は候補から外れてしまうということになるのか。
「ありがとう。参考になった」
「お役に立てたようで、嬉しいです」
礼を伝えるとセリーは嬉しそうに笑みを浮かべている。
「セリーは本当に物知りですごいです」
「そんなことありません。華麗な動きで何匹もの魔物の攻撃をかわし続ける、ロクサーヌさんの方がすごいです」
本当に二人とも頼りになるよなぁ。
この娘たちと一緒なら、迷宮討伐にも挑んでいけそうな気がするわ。
楽しそうにお互いを褒め合っている二人をみていると、自然にそう思えた。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv36 英雄Lv31 魔法使いLv35
BP振分 残BP:0
キャラクター再設定:1
サードジョブ:3
必要経験値二十分の一:63
詠唱省略:3
ワープ:1
三十パーセント値引:63
所持金:1,217,982ナール
春の32日目