【本編完結】ぎゅってしないと好きになる魔法   作:酉柄レイム

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第49話 イチャイチャ警察

「……信じらんねー」

 

 翌日、俺の家。流石に学校で魔法の話をするわけにもいかず、修了式を終えた俺たちはそのまま俺の家に直行。

 

 昨日、彩芽から中条が魔法をかけられたらしいということを聞いて、すぐに父さんへ連絡。『殺さないでくれ』と開口一番命乞いをしてきたから、俺がブチギレてるってことを存分に理解している父さんは、魔法の説明のために今日は仕事を休んで家にいる。

 

 で、今魔法についての説明が終わったところだ。魔法っていってもその存在と、なぜ俺と彩芽がその魔法を知っているのか……まぁ、ぎゅってしないと好きになる魔法にかけられてから今までのことを話した感じ。

 

「で? 今私にかけられてんのが舞坂とイチャイチャする魔法だっけ?」

「とぼけた風に言ってるけど、かおりちゃんさっき修也の膝の上に座ろうとしたじゃないか」

「父さん?」

 

 おちょくるように言った父さんを睨めば、腹を見せて服従のポーズ。見てられねぇからやめてくれ。

 

 そう、中条にかけられた魔法は俺とイチャイチャする魔法っていう、とんでもなくとんでもない魔法。ただそこまで強制力はないらしく、中条の感覚で言えば何とか頑張れば抗えそうではあるらしい。

 ちなみに、彩芽は中条を警戒してずっと俺にぴったりくっついてるから、怪我の功名だ。怪我したのは中条だけど。

 

「さて、かおりちゃんにかけた魔法の説明をしようと思うが……まずは本当にすまない。魔法で遊ぶなら修也と彩芽ちゃんだけだと決めていたのに」

「今はっきり遊ぶって言ったよな?」

「その魔法は、元々彩芽ちゃんにかけてくれと頼まれたものだから、そりゃもうおじさんはりきっちゃって。『イチャイチャする願望』が彩芽ちゃんベースになってる」

「あぁ……」

 

 中条が頭を抱えた。そして俺も頭を抱えた。何? 彩芽のイチャイチャ願望がベースになってるだって? っていうことは、中条が俺に対してすることは、彩芽がやりたいって思ってるイチャイチャだってことか? 

 俺、耐えられるかな……。心では耐えるつもりではいても、中条ははっきり言って美人だし、そんな子にイチャイチャされて悪い気がする男なんていない。耐えますけどね? もちろん。彩芽を裏切るなんて、俺がこの世に生まれた意味がなくなる。

 

「あの、かおり。ごめんね? 私がでくのぼうに魔法かけてって頼んじゃったから……」

「ん? 今未来のお義父さんのことでくのぼうって言ったか?」

「いいよ、別に。なっちゃったものは仕方ないし。えっと、お義父さん。この魔法いつになったら解けるんですか?」

「うーん、日本を一夫多妻制にする魔法を使ってからだから、しばらくかかるな」

「中条からお義父さんって呼ばれて気持ちよくなってんじゃねぇよ。すぐ戻してやれ」

 

 マジで反省してくれ。俺と彩芽が魔法にかけられたのは元々仲が悪かったからで、その関係を憂いてっていうのはまだわかる。でも中条はマジで何の関係もないし、完全な被害者だ。今も父さんのことお義父さんって呼んでたし、無意識のイチャイチャ願望が漏れ出ている。

 ……なんか、もう懐かしい気分だ。この無意識に魔法の影響が漏れ出る感じ。もうすぐ一年だからって初心に帰れってか? ふざけんなよ。

 

「つか、あれは? 魔力供給」

「超ド級ハイパーマックストリケライナーを完成させないと魔力が回復しないらしくてな。しかも一度完成させるとパーツが日本全国に散らばるそうだ」

「いつも思うけど、魔力回復方法が不便すぎるだろ」

 

 日本全国に散らばってるなら、パーツ集めをやってる間に父さんの魔力が回復しそうだ。ってことはまた父さんの魔力が回復するのを待たなきゃいけないってことかよ……。

 いや、でも。俺と彩芽は魔法解けてるし、好きって言っていいんだよな? ちら、と彩芽を見れば目が合って、首を横に振る。かおりが魔法にかけられちゃったのは私の責任だし、かおりが修也とイチャイチャしたいっていうときに恋人になるなんて、耐えられないと思うから? まぁ、そりゃそうだけど……。

 

「まぁ、もう春休みだからまだよかったぜ。イチャイチャしたいって言っても、会わなきゃ関係ねぇだろ?」

「……私とイチャイチャしたくないんだ」

「あ、いや、そういうわけじゃ」

「修也?」

「いや、彩芽。そういうわけじゃ」

 

 クソ、なんでこんなことになってんだ!? 俺浮気してねぇのに浮気してるみたいになってんじゃねぇか!! 笑ってんなよクソ親父、テメェの魔法が原因でこうなってんだからな!? 「あー、ツボ」じゃねぇよマジでぶっ飛ばすぞ。

 

「あぁ、ちなみに言い忘れてたが、イチャイチャを我慢しすぎるとペナルティがある」

「なんでそんな設定にしたんですか」

「彩芽ちゃんに思う存分イチャイチャしてほしくてな」

「で、ペナルティって?」

「イチャイチャを我慢しすぎると、ハゲる」

「ハゲる!?」

「修也が」

「俺が!?」

 

 とんでもねぇペナルティだなぁと思っていたら、標的は俺だった。あれか? イチャイチャに躊躇しないよう俺にペナルティを課したってことか? ワンチャン中条なら「まぁ私じゃないしいいか」って割り切られる可能性あるぞ! やだよ俺ハゲるの! ハゲてもカッコいいよって彩芽は言ってくれるだろうけど、もしも俺が娘さんを僕にくださいって頭下げた時に光を反射して、彩芽の両親に太陽拳くらわせたらどうするつもりだよ!

 

「彩芽! 頼む、中条とイチャイチャさせてくれ!」

「……やだ」

「俺がハゲるのと俺と中条がイチャイチャするの、どっちがマシか考えた上で言ったんだろうな!?」

「だ、大丈夫だよ! ハゲてもおじさんが魔法で治してくれるし!」

 

 そうか! それならハゲになるのはちょっとの間だけで、その期間さえ我慢すりゃ丸く収まる! あ!? 誰の頭が丸いって!?

 

「そんなことができないよう強力なペナルティにした」

「テメェ魔法の使い方下手すぎんだろ!」

「う……かおり、その、えっちなことはだめだからね?」

「……努力する」

 

 反射的に耳を塞いだ。えっちなことはだめだからね? っていう彩芽の言葉に『努力する』って言ったってことはつまりえっちなこともしたいってことで、更につまりそれは彩芽がそれを願っているってことと同じことだ。思ったよりもとんでもねぇぞこの魔法。中条からのイチャイチャを我慢しながら彩芽のイチャイチャ願望を知るって、波状攻撃じゃん。イチャ殺しされるって俺。

 

「その代わり! 修也と会う時は私に連絡すること!」

「わかってる。流石に奪うような真似しないよ」

「修也も! かおりが『私がいるんだから、他の子のこと考えないで』って言っても私に連絡して!」

「それ、彩芽も思ってるってことか?」

「ウワー!!!!」

 

 彩芽、自爆。別に可愛い考えだから恥ずかしがらなくてもいいのに。主観と客観は違うから仕方ねぇけど。中条にも『彩芽ばっか構わないで』って言われたし、彩芽もそう思ってるんだろうなって思ってたし。

 ……ていうか、待てよ? 中条がイチャイチャを我慢しないとして、俺と中条が会う時は彩芽もついてきて、彩芽が嫉妬して「私も!」って言って俺とイチャイチャしてくれるなら、むしろいいことなんじゃないか? 遠回しに『イチャイチャする魔法』が成功してねぇか?

 

「まぁ、そういうわけだから。じゃあ父さんはテンションあげるためにおいしいものいっぱい食べてくる」

「次魔法解くときまで帰ってくんなよ」

 

 返事もせず、魔法陣を展開。瞬きする間に父さんの姿は消えていた。だから何魔力使ってんだよ無駄遣いすんなよ。

 

「……えーと、じゃ、じゃあ、イチャイチャ、しますか? 私、一旦出て行った方がいい?」

「やんないよ。しゅ……舞坂もそんなすぐにハゲないだろうし、ハゲそうになったらいっぱいちゅ……んん、イチャイチャさせてもらうから」

 

 俺のことを名前で呼びそうになったり、いっぱいちゅーって言いそうになったりイチャイチャが漏れ出そうになった中条は、あと一歩のところでなんとか耐えた。何を言おうとしたかわかってるから耐えられてないようにも思えるけど、本人が恥ずかしそうに震えてるから触れないようにしよう。つか恥ずかしがってる中条レアだな。しかもキスのことちゅーって言うんだな。イチャイチャに毒されすぎだろ。

 

「かおり。修也がハゲ始めてからじゃ遅いかもしれないし、我慢もよくないよ?」

「そんなこと言って、私がイチャイチャしたから自分もってやりたいだけでしょ」

「そっ、そんなことないもん! それに、かおりがイチャイチャしなくても私は修也とイチャイチャできるし!」

「あ……」

 

 彩芽が俺に抱き着こうとした瞬間、中条が悲しそうな声を漏らす。自分がイチャイチャしたいのに他人にイチャイチャされるのが嫌だとか、そういうのか? 普通にヤバいな。彩芽のイチャイチャ願望に影響されてるのか、中条がいつもよりちょっと幼く見える。あんな頼りがいのある姉御が、可愛らしい女の子になってる。元々だけど。

 

「かおり、やっぱりイチャイチャしたいんじゃん」

「……しない。彩芽、付き合ってないって言っても好きなんっしょ? だったら私と舞坂がそういうことしてんの嫌でしょ」

「私の軽率な願いとおじさんの魔法のせいで、かおりが苦しんでるところ見たくないから、いいよ。やりすぎちゃうと嫌だけど」

 

 彩芽が中条の手を取って立ち上がらせ、優しく俺の方へ押す。俺、どうすればいいんだ? 待っておけばいいのか? 彩芽の前で俺から積極的にイチャイチャしにいくのは変な話だもんな。いや、彩芽の前じゃなくてもね? 

 マズいな、動揺してる。こんな中条見たことないし、好きな子の前で別の女の子とイチャイチャするって大犯罪者じゃねぇか。俺にそんな性癖ねぇぞ。俺は彩芽だけを愛してるんだ!

 

「……立って」

「は、はい」

 

 言われた通り立ち上がると、抱きしめられる。ちょ、中条。位置代わってくんね? 彩芽とモロ目が合うんだよ。彩芽すごい悲しそうな顔してんだよ。罪悪感すごいから。罪悪感すごいから!!

 

「頭撫でて」

「え」

「撫でて」

「うっ……あ、彩芽」

「うっ……い、いいよ」

「ぷっ、あんたらほんと仲いいね」

 

 彩芽の許可を得て頭を撫でると、くすぐったそうに身をよじる。あ、待って。その、柔らかいんだよ。柔らかいからやめてくれ。あと彩芽が「言わなきゃよかった……」って顔してるから。イエーイ彩芽ちゃん見てるー? ってやつやっちゃってるから俺。

 

「あの、中条」

「……」

「中条?」

「……」

「ただの屍かテメェは。何か喋ってくんない? どうしたらいいかわかんなくなるから」

「……かおり。もしかして、名前で呼んでほしいの?」

 

 ぴく、と中条が反応する。

 

 あぁ、そうか。名前で呼んでほしいから返事しなかった……っていうより、中条なら彩芽に気を遣って「名前で呼んで」って言っちゃいそうなのを理性で抑え込んでいたって方がしっくりくる。ぎゅってするのは魔法にかけられた時だけのもんって感じがするけど、名前で呼んだら魔法が解けた後も続きそうな気がするし。

 

「……悪いから、いいよ。体使わせてもらうだけでいい」

「いやらしい言い方やめてくんねぇかな」

「あ、うん。私も許すつもりなかったし」

「舞坂。あんたのせいで彩芽が重くなってんだけど」

「俺もてっきり我慢はよくないからいいよ、みたいなこと言うと思ってたわ」

「……修也、呼びたいの?」

「いいや?」

「よく言った。えらい」

 

 めちゃくちゃ悲しそうな彩芽を見て即座に否定すれば、中条がよしよしと俺を褒めてくれる。ちょっと余裕がでてきたっぽいな。彩芽からはどんどん余裕がなくなってくけど。

 中条は撫でるのをやめて、最後にぎゅーっと強く抱きしめてから体を離す。めちゃくちゃ柔らかかった。違う、生きた心地がしなかった。きっと俺は前世で徳を積んだか、大罪人だったに違いない。

 

「満足。ありがとね、修也」

「あー!!! 名前!!! ダメ!!!」

「バレた」

 

 憤慨する彩芽を中条が笑っていなす。

 

 おいおい、あぶねぇな。マジでそういう可愛いことすんのやめてくれ。彩芽がブチギレて「今日泊まる!!」とか言い出したらどうすんだ。

 

「今日泊まる!!」

「姉ちゃん、助けてくれ」

《ごゆっくり》

 

 マジで言い出した瞬間に姉ちゃんへ助けを求めれば、一瞬で突き放されて『ちなみに、どっちもいくの?』とVEINがきた。どっちもいかねぇし、なんで状況把握してんだよ。

 

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