【本編完結】ぎゅってしないと好きになる魔法   作:酉柄レイム

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第50話 新学年!

 春休み中に魔法が解けるわけもなく、始業式。

 春休み中はちょくちょく中条がうちにきてイチャイチャして発散、そのあと彩芽とイチャイチャしてフォローの毎日を過ごしていた。とはいっても中条と気まずくなることはなく、向こうもいつも通り接してくれるし、それを見て彩芽も安心してくれてるみたいで本当にありがたい。魔法の効力は身をもって知ってるから、いつも通りを保てているのはマジですごいと思う。

 

「修也!」

「彩芽」

 

 春休み中「そろそろ一緒に登校してもよくね?」と言ってみれば、「恋人になった時の楽しみにしたいから……」と可愛いことを言われたから、今日もバラバラに登校したものの、校門前で彩芽が後ろから走ってくる。子犬みたいで可愛いなと思ったのが表情に出ていたのか、「なんかにこにこしてる」と言われて頬を突かれる。

 

「おはよう、彩芽」

「うん、おはよ。やー、嬉しいね! 三年生!」

「毎朝階段上がらなくていいからな」

 

 気になるのはクラス分け。「一緒のクラスがいいね」と笑う彩芽に頷いて、校舎に入り靴を履き替える。

 クラス分けは一階広間に張り出されていて、アイドルでもいるのかというくらい人だかりができている。彩芽をあの中に行かせるわけにはいかないからと待っていれば、後ろから肩を叩かれた。

 

「よう親友」

「やぁ親友」

「おう。まだ退学になってなかったのか」

「首の皮一枚だったよ」

「それが理由やったんか。首鍛えといてよかったわ」

「その物理で捉えるクセやめろ」

 

 廻と拓斗。こいつらとはどうせ手綱握るっていう意味で同じクラスだろうからドキドキする意味もない。でも、最近マシになってきたし別クラスも……ねぇな。先生がリスクとる意味がねぇし。むしろ受験生だからって特別クラス用意されて、みんなの邪魔をしないようにってそこにぶち込まれる可能性すらある。

 

「お、空いた空いた。俺が見に行ってきたるわ!」

「廻一人だけじゃ記憶できるか不安だから、僕も見に行くよ」

「修也。どうせ自分で見た方が早いから、行こ?」

「彩芽ってあいつらに対して普通にひでぇよな」

 

 そう扱われる心当たりは死ぬほどあるから咎めるわけじゃねぇけど。

 

 クラス分けが張り出されている掲示板の前に立って、自分の名前を探す。クラスはAからDの4クラス。自分の名前を探す労力が少なくて非常に助かる。

 

「お、Aや!」

「じゃあ僕もAか」

「じゃあ俺もAか」

 

 しかも廻は出席番号早めだから、かなり見つけやすい。廻がいるクラスが自動的に俺と拓斗のクラスになる。案の定A組の中から自分の名前を探せば、簡単に見つけることができた。もちろん拓斗の名前もあって、中条の名前もある。

 

 ……。

 

 彩芽って苗字真咲だよな? ま、だよな。俺の後ろだよな。同じクラスになって、前後の席になって、後ろから彩芽が背中突いてきて小さな紙に「すき」って書いて渡してくれるんだよな?

 

「彩芽」

「……B」

「カップ数?」

 

 最低なセクハラをかました廻を締め落としてB組を見れば、彩芽の名前があった。

 拓斗も流石に言葉を失って、締め落とした直後復活した廻と一緒に「じゃあ、僕らは行くから」と言って逃げていく。

 

「……」

「一緒のクラスがよかったな」

「……うん」

「他の男子に声かけられたら言えよ? 廻と拓斗連れてぶっ飛ばしてやるから」

「できれば修也だけきてほしい」

「それはほんとにそう」

 

 俺が行くだけならまだしも、廻と拓斗が一緒に行けばせっかくできるはずの新しい友だちも、「真咲彩芽は犯罪者と友だちらしい」っていう噂が広まってできなくなる。

 クラスが別になって嫌なのは、自惚れじゃなきゃ俺に女の子が寄ってこないかが心配なんだと思う。あとは中条と離れるのが嫌とか。前者は廻と拓斗がいるから大丈夫で、中条はそんなことわかってるから、彩芽が望めば休み時間でもどんな時間でも彩芽に会いに行く。

 

「ほら、行こうぜ? 新学年初日で遅れるの嫌だろ?」

「……わかった。よく考えたら会えなくなるわけじゃないし、切り替える! 修也、他の女の子に目移りしちゃだめだからね?」

「しねぇよ」

「かおりは?」

「……しばらくは」

「ばか」

 

 機嫌を損ねた彩芽は、俺を置いて自分のクラスに行ってしまった。捨てないでくれェ!!!

 

 

 

 

 

「このタイミングで舞坂と一緒のクラスって、嫌な予感しかしないんだけど」

「俺もそう思う」

 

 まさかの席が一番後ろで隣同士だった。『な』と『ま』だからありえなくはないけど、ありえてほしくなかった。父さんの魔法を疑うくらいには都合がいい。いや、悪い。

 

「わかってると思うけど、学校じゃしないかんね」

「おう。そんなことしたら俺が死ぬ」

 

 俺は彩芽と付き合ってることになってるし、そんな状況で中条とイチャイチャしたら彩芽まで変なことを言われかねない。中条もそれをわかってるから絶対してこないっていう信頼がある。

 ただ不安なのが、俺と彩芽が好きを漏らしていたように、中条もイチャイチャを漏らさないかっていうところだ。春休み中は家でイチャイチャできたから発散も簡単だったけど、学校ってなるとチャンスはほとんどない。朝早くくるか、帰りに人目のつかないところでかのどっちかになる。

 

「そういえば聞きたいことあんだけどさ。私のこと好き?」

「漏れてる漏れてる」

「ごめん、違う。えっと、大学ってどうすんの?」

 

 イチャイチャを漏らした中条に焦って周りを見る。セーフ、誰も聞いてない。廻と拓斗は初めて同じクラスになったやつらに自己紹介しに行ってる。あいつら喋れるタイプのコミュ障なんだよな。

 一安心したところで、大学か。二年の頃の進路希望は進学って書いたけど、どこに行こうとか何になろうとか特に決まってねぇんだよなぁ。

 

「特に決まってねぇけど、なんで?」

「彩芽とそういう話してんのかなーって。彩芽、別々の大学行くの嫌がりそうだし」

「あー。お互いやりたいことあったら別々でも仕方ねぇと思うけどな。特にないから適当に国立目指すわ」

「インテリじゃん」

「男は金だって姉ちゃんに言われて、勉強叩きこまれてたからな……おい、手」

「あ、ごめん」

 

 話の途中で中条に手を握られて、指摘すればすぐに離す。マズいな、隣の席っていうシチュエーションにイチャイチャ願望が高まってる。確かに彩芽なら『隣の席だから、みんなにバレないようにイチャイチャしよ……?』くらいは言ってくれるだろうし、中条がこうなるのも無理はない。どうしよう。信頼が崩れかかってる。

 

「あー、あぶな。私、今めっちゃイチャイチャしたいわ」

「だろうな。どうする?」

「もうすぐ式だし、抜け出すわけにはいかないから……終わったらぎゅーってしていい?」

「……お、おう」

 

 俺は彩芽一筋だ!!!!!! 確かに今の中条可愛かったけど、そりゃね? 俺は男で中条は女ですから、可愛いって思うのは正常なわけで。

 違うんだ、彩芽。俺は浮気なんてしない。中条が可愛いから悪い。だってずるいだろ、普段姉御な中条が直球で可愛いこと言ってきたり甘えてきたりしたら誰だって可愛いって思うって! しかも周りにバレないように囁きボイスだからより可愛いって! ごめん彩芽!!

 

「罪悪感で潰れそうだ……」

「ごめんて。ていうか何? 私とイチャイチャしてドキドキしてくれてんだ」

「あ? 当り前だろうが。いいやつだし美人だし」

「ふーん。ちょっとうれしい」

 

 頭を思いきり机に打ち付けて煩悩を振り払う俺。けらけら笑う中条。

 こいつ、開き直って楽しんでやがる……!!

 

「テメェ、覚えてろよ……!」

「でも本心だよ」

「か……! あ……!」

「どないしたんや修也! 覚醒の予兆か!?」

「心優しき人造人間の頭を目の前で踏み潰されたのかい!?」

「らしいよ」

 

 中条、強敵。俺の純情を弄びやがって、許せねぇ……!!

 

 

 

 

 

 始業式が終わって、放課後。

 

 十分舞坂で遊んだ私は、「じゃ、彩芽と仲良くやんなね」と言って、一人教室を出る。ぎゅーってしていい? って言ったけど、流石にクラスが別になった彩芽に申し訳ない。彩芽の目がないからって好き勝手イチャイチャすんのは裏切りだし、めっちゃイチャイチャしたいのは事実だけど彩芽が大事だから。

 

「かおり!」

 

 なんてクールに去ろうとした私を、彩芽が追いかけてくる。その後ろから舞坂が歩いてくるのを見て、今日好き勝手したの言ってないよね? と視線を送れば「言えるか」と目で語ってきた。あぶねー。それ言われて彩芽がブチギレてんのかと思った。

 

「どしたん?」

「どしたん? って、一緒に帰ろうよ」

 

 制服をきゅっとつまんで上目遣い。は? 可愛い。ほんとに何してんの舞坂。こんな可愛いのから好き好き言われててまだ恋人じゃないって。私なら秒で食ってるけど。

 

「あー、ごめん。ちょっと急ぎの用があって」

 

 罪悪感から、咄嗟に嘘をつく。「そっか……」としゅんとする彩芽に心を痛めると、舞坂が目を細めて私を見た。あ、バレてるなこれ。舞坂、私の彩芽に対する気遣いに関しては誰よりも理解あるし。

 そして、舞坂は私の気遣いが間違いだったときは、簡単にそれを打ち砕いてくる。

 

「中条が一緒に帰らねぇってんなら、廻と拓斗を今後一生お前の奴隷にする」

「ごめん、一緒に帰る」

「! やった! いこ!」

 

 自惚れじゃなければ、私とクラスが別だったことが寂しかったのか、飛び跳ねる勢いで喜んだ彩芽が走って下駄箱へと向かう。はぁ、可愛い。

 

 可愛すぎる彩芽に笑って私も行こうとすれば、一瞬。手をきゅっと握られた。

 

「え」

「今日はこれで勘弁な」

 

 ハゲになんの嫌だし。そう言って先に行く舞坂。

 

 ……。

 

 あいつ、あいつ!!!!!!!

 

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