【本編完結】ぎゅってしないと好きになる魔法   作:酉柄レイム

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初めての前書きで言うことではないかもしれませんが、下ネタ注意です。


第56話 好きな子が家にいることによる弊害

「あんたね、いくら魔法にかけられてるからって限度ってもんがあんでしょ! 寝てる修也の部屋に入ろうとするって、何考えてんの!?」

「入らなかったからいいでしょ! そ、それに、せっかく一緒の家にいるんだから寝顔見たいなーって……」

「いい? いくら好き同士って言ってもプライバシーってもんがあんの。修也に起こしに来てって頼まれたならまだしも、あんたの欲で勝手に寝顔見ようとしちゃだめでしょ!」

「そ、そんなこと言って結菜も修也のお風呂上がりの姿見て露骨に顔赤くして息荒げてたじゃん!」

「荒げてないわよ! それに私は彩芽と違って守るべき最低限のラインは心得てるから!」

「私も守ってる!」

「じゃあ昨日水着持って、修也の入ってるお風呂に突撃しようとしてたのはどう説明すんのよ!」

「あー!! なんで言うの!!」

「修也の身を案じてるからに決まってんでしょ! 修也も彩芽に気を遣わずはっきり迷惑なことは迷惑って言いなさい!」

「俺今ウンチしてんだよ!! 後にしてくれ!!」

 

 好きな子が一緒の家で暮らすっていうのは、どうやらいいことばかりじゃないらしい。

 

 素直になる魔法にかけられた彩芽は、それはもう素直な行動ばかりとっていた。俺に油断している姿を見せたくないのか、朝起きたら絶対に制服着て朝の用意終わらせた状態でおはようって言ってくれるし、ご飯食べる時はあーんってしてくれるし、風呂あがったらドライヤーかけてくれるし、寝る前は「寝る前のぎゅーしよ?」っておねだりしてくれるし。

 

 ちなみに、これは一日の間に起きた出来事だ。彩芽が可愛すぎて理性が保てなくなりそうだった俺を見かねて結菜が注意してくれたのは嬉しいけど、なんで俺がウンチしてるトイレの前で喧嘩してるんだ? 俺のウンチが委縮して出てきてくれねぇじゃねぇか。このまま遅刻したらどうすんだよ。「俺のウンチが怖がっちゃって、えへへ」って言い訳すんのか? 普段あいつらと一緒にいるからそれくらいなら納得してくれそうなのがめちゃくちゃ嫌だ。

 

「いい? このままじゃ修也がもたないから、過度な接触はしない! 修也の部屋に勝手に入らない! 少なくともこの二つは徹底すること!」

「やだ!!」

「やだじゃない! 修也だって男の子なのよ? 彩芽みたいな可愛い女の子に毎日毎日、学校でも家でもくっつかれたら、いくら修也だって我慢できなくなるわよ!」

「いいもん!」

「幼児退行してんじゃないわよ! 私たちは高校生で、間違いなんてあっちゃいけないの! 社会的な責任能力がないんだから! 魔法にかかってないなら私もとやかく言わないけど、今の彩芽は何するかわかったものじゃないし」

「……ごめんね? 結菜。そうだよね、結菜も修也のこと好きだから、私ばっかイチャイチャしてたらおもしろくないよね」

「そっ、そういうこと言ってるんじゃなくて、別に私はあんたと違って行動とか言動とか強制されるわけじゃないし、あんたたちの関係もわかってるし修也と彩芽がイチャイチャしてても別に……修也! あんたからもなんとか言ってよ!」

「俺今ウンチしてんだよ!! 後にしてくれ!!」

 

 なんで俺にウンチをさせてくんねぇんだ……!! 思春期の男が女の子二人の前でウンチできると思うか? 普段の結菜だけならまだしも、彩芽と俺のことが好きってわかってる結菜の前でウンチ? できたらまともな精神状態じゃねぇよ。それにウンチする音聞かれるだけならまだしも、「修也、ウォシュレット長い……」なんて思われたら立ち直れねょ俺。

 

 ウンチせずにトイレから出ようとしても、朝出しておかないとすっきりしない。それに今出て行ったら絶対捕まるし、その間に便意でどうにかなってしまったら俺の人生はそこで終わる。その場を切り抜けたとしても、今日に限って廻が「ヘーイ!!」って言って俺の腹殴ってきたりして、そのままマグナムみたいに漏らしたりするんだ。絶対にウンチせず出て行くわけにはいかない。

 

「結菜! もうそろそろ行かないと遅刻するだろ? その話はまた帰ってきてからにしねぇか!」

「……私と一緒に行ってくれないの?」

「ほら! 女の顔してる!」

「してない! ちょっと寂しくなっただけでしょ過敏すぎんのよあんた!」

「だって、結菜可愛いしいい子だし、不安だもん」

「人の男取るような分別つかない女に見える?」

「取るつもりなくても取っちゃうくらいいい子で可愛い」

「……あ、ありがと?」

 

 クソ、可愛い会話するなら俺がウンチしてるとき以外にしてくれよ! 俺がウンチしてる時にそんな会話されたら、俺が『女の子が可愛い会話してるのを聞きながらじゃないとウンチできないド変態』みたいになるだろうが!

 

 ならないか。

 

 じゃねぇよ。遅刻しそうだって言っても無理だったし、どうすれば……いや、ストレートに言えばいいんじゃねぇか? ウンチしたいんだって。さっきから何回も言ってるけど、喧嘩に夢中で聞いてなかったかもしんねぇし。

 

「彩芽、結菜。俺ウンチしたいんだよ」

「あ、ごめんね?」

「……ほんとにごめん。自分で気づくべきだったわね」

「いや、いいんだ。こっちこそワリィな、こんな時にウンチしてて」

 

 なんで謝ってんだろう俺。そもそも二人がなぜか俺がウンチしてる時にわざわざトイレの前で喧嘩し始めたのに。でも仕方ねぇだろ? 結構真面目っぽい喧嘩してるときに、俺は下半身丸出しなんだぜ? 謝罪の一つくらい出るだろ。あまりにも異常事態だから姉ちゃんに『女の子が喧嘩すると下半身を丸出しにする魔法』かけられたのかと思ったし。

 

 何はともあれ、これでウンチができる。ウンチしたら、ちゃんと三人で話し合おう。彩芽が不安から素直が暴走してるってのもわかる。だったら俺が安心させてやんねぇとって思っても、結菜が俺の家にいる限りその不安は拭えない。なんとか、俺は彩芽以外を好きにならないってわかってもらえねぇかな……。

 

「……?」

 

 っていうか、あれ? 彩芽と結菜、トイレの前から離れてなくね? なんか気配すんだけど。なんで? 俺ウンチしたいって言ったよな?

 

「彩芽、結菜?」

「どうしたの?」

「さっさとしなさいよ」

「いや、なんでいるんだよ」

「え? 集中できないから静かにしてくれって意味じゃないの?」

「ウンチ聞かれんのが恥ずかしいからトイレの前から離れてくれって言ったんだよ!!」

「あっ、そ、そうだよね、ごめん!」

「それならそう言いなさいよ!」

「そう言うこと自体が恥ずかしいから言わなかったんだろうが!!」

 

 慌てて二人がトイレの前から離れていく足音を聞いて、やっとウンチできる時がきた。

 

 まさか好きな女の子がうちに寝泊りするようになったら、朝ウンチできなくなるとは思いもしなかったぜ。

 

 

 

 

 

「っていうことがあったんだよ」

「それ、女の子にする話?」

 

 今朝の出来事を中条に話したら、ドン引きしながら「大変だね。大丈夫?」と言ってくれた。いい女かよ。

 

 あの後。無事にトイレを出た俺は彩芽と結菜と一緒に家を出て、途中俺の手を握ろうとする彩芽と、「ここ外!」とイチャイチャ警察と化した結菜がバトルするという出来事がありつつ学校に到着。結菜が同じ高校に通ってたら喧嘩が続いてたのかと思うと、ちょっと憂鬱だ。ウンチできなくなるし。

 

「今更修也の家にその二人がおるのは驚かんけど、ウンチができひんのは問題やな」

「ウンチを邪魔されるのは人権侵害だからね」

「ほら、舞坂がクソみたいな話するからバカが釣れたじゃん」

「クソみたいな話やなくてクソの話やろ?」

「そういうことじゃないから」

「中条。間違っていた時はごめんなさいだ。いいね?」

 

 こいつら殴ってもいい? と視線で聞いてくる中条にOKを出すと、丸めた現代文の教科書でバカ二人がケツを叩かれた。

 

「……」

 

 廻のケツを叩いた瞬間、丸めた教科書が折れたのを見て中条が、信じられないものを見る目で教科書と廻のケツを交互に見る。そいつの体、人間やめてんだよ。叩く前に言ってやるべきだったな。

 

「あんたのケツ、なんか入ってんの?」

「うんち!」

「は? 黙れ」

「質問に答えただけやのに……」

「中条の怒りはもっともだよ廻。うんちが入ってるのは腸だ」

「そういうことじゃねぇよ」

 

 これ以上ウンチの話をすると中条まで同じレベルだと思われるから、「もう下ネタは禁止な」と釘をさせば、廻と拓斗は教室から出て行った。

 

「下ネタ禁止は無理だから出て行ったのか、あいつらに自分が下ネタだって自覚があったのか」

「どっちもじゃない?」

 

 中条が俺に折れた教科書を渡し、俺の机を漁って現代文の教科書を引っ張り出し、「私の教科書と交換ね」と横暴を見せつけてきた。いいけどさ。一時間目だぞ現代文。折れた教科書見つかったら先生になんて説明すんだよ。廻のケツ叩いたら折れましたってか?

 

 ……なんか納得してくれそうだな。

 

「にしても、ほんとに大変そうじゃん。彩芽に暴走しないよう言っとこうか?」

「いいよ。結菜が頑張ってくれてるし、俺が彩芽を安心させねぇといけねぇことだし」

「ふーん。……ねぇ、私が教科書交換したのって、なんでだと思う?」

「? 廻のケツ叩いた教科書がいらなくなったからだろ?」

「正解」

 

 なんだってんだ……? わかりきったことを聞くのは中条らしくないな。だったら他に何か意味があるだろと思っても、特に答えは浮かばない。

 

 その答えが出たのは、授業中だった。先生に指定されたページを開けば、教科書の端の方に書かれた『だいすき』という字があった。

 

 思わず中条を見れば、小声で「返事は?」と一言。

 

 そういや中条、彩芽が素直になる魔法かかってから俺とイチャイチャするの我慢してくれてるんだよなぁ……。

 だからって可愛すぎだろ。こいつは男心をくすぐる天才か?

 

「わかってんだろ」

「二番目でもいいよ。……次のページめくってみ」

 

 言われた通り次のページを見れば、『彩芽には頼みにくいこととか、あるっしょ?』と書かれていた。

 

 ……イチャイチャ我慢させちゃだめだな、これ。イチャイチャの質が生々しくなってやがる。

 

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