【本編完結】ぎゅってしないと好きになる魔法   作:酉柄レイム

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第63話 "めんどくさい"は"かわいい"

「で、どういうことだ?」

 

 中条からのVEINに既読をつけると、ずっとVEINを見ていたのか『通話できそう?』と送られてきた。ここでできないって言ったら変にこじれそうだし、中条のことだから彩芽にどうやって伝えようかの相談かと思ってOKを出すと、一瞬で通話がかかってきて、今。

 

『ほんとにごめん……』

「いや、まぁ、魔法のせいだってわかってるから」

 

 『マジで好きになっちゃったかもしんない』ってのを見た時はめちゃくちゃ焦ったけど、よく考えれば俺とイチャイチャする魔法にかけられていて、結構な期間イチャイチャできなかったから俺のこと考える機会もかなり増えて……みたいなことだろう。

 ……よく考えたら、それはどうなんだ? あくまで『イチャイチャする』魔法ってだけで、そこから生まれる気持ちは魔法が解ければ自動的に消えていきそうな気もする。「あれ、なんでこいつのこと好きになったんだろう」みたいな感じで。

 

『友だちとしては最高だと思ってたけど、本当にタイプじゃなかったのにごめん』

「俺はフラれたのか好きになってもらったのかどっちなんだ?」

『好き』

 

 なんか甘えた声になってね? なんだこの中条、俺知らねぇぞ。中条ってさっぱりしてて姉御肌で頼りになる、可愛いか美人かで言ったら美人でカッコいい感じのやつじゃなかったっけ?

 

『かも、しんない。わかんない。でも、ずっと舞坂のこと考えてる。いっぱい名前呼んで、いっぱい触ってほしいって、私以外の女の子と一緒にいてほしくないって、思ってる』

 

 湿度高くね? 北海道から帰ってきたから高いって思うだけか? なんかレベルアップしてる気がする。中条は彩芽のことを気にして、自分が魔法にかけられていても遠慮してたのに、今は独占欲をめっちゃ感じる。

 

 どうする? どうするって言ったって、俺には彩芽がいて、それは中条もわかってるはず。それでもこうして俺に『好きになっちゃったかも』って言ってくれたってことは、もう我慢できないところまできてるってことだ。

 前までなら、彩芽に言ってイチャイチャしていた。でも今の中条が俺とイチャイチャすることを、彩芽が許してくれるか? 好きにならないって言ってたのに好きになった中条を、彩芽が警戒しないなんてことあるか?

 

『ないと思う』

「心読むなよ」

『心読めるくらい、舞坂のこと考えてた』

 

 かっわいい。中条のこと好きなやつがこれ聞いたら死ぬだろ多分。彩芽が好きで大好きで愛してる俺ですらめっちゃくらったぞ今。そういえば俺、女の子からのアプローチって彩芽を除けばいとこの結菜からしか受けたことなかったし、耐性がないのも無理はないっていう言い訳はどうですか?

 

 彩芽は許してくれねぇだろうなぁ……。

 

「ちなみに、今俺と会ったらどうなる?」

『……聞きたい?』

「色々わかった」

 

 とりあえずとんでもなさそうなことはわかった。そりゃまぁ、イチャイチャする期間空いてないときでさえぎゅってしてたし、ゴールデンウィークのほとんどの期間会わずにイチャイチャしてなかったんだから、そりゃもうものすごいイチャイチャをしたくなっているに違いない。

 

『イチャイチャって、その、なんか、ね。かわいいだけの意味じゃなかったんだなって』

「わかったっつっただろ!! やめろお前俺の脳をぐしゃぐしゃにする気か!!」

『私のことで舞坂の脳がぐしゃぐしゃになるなら、嬉しいかも』

 

 助けて!! 俺彩芽の誘惑を耐え続けて耐え続けて耐え続けたんだよ!! そんな状態の俺にそんな湿度高めのえっちなセリフ吐いてくんじゃねぇよ頭おかしくなんだろうが!!

 

 正直、今の中条には悪いけどこれを彩芽に言わないっていう選択肢は、ない。浮気とかそういうやつは、一度やってしまえばたとえやむを得ない事情があろうと信頼関係に罅が入る。彩芽には安心してほしいし、俺と彩芽が一緒の部屋で寝てもいいって信頼してくれたお義父さんとお義母さんにも応えたい。

 

「中条。ごめん、このこと彩芽に」

『彩芽には言ってある』

 

 待って、泣きそう。中条、自分が魔法にかけられておかしくなって、こんな独占欲丸出しになるくらいにまでなってるのに、まだちゃんと彩芽のこと考えてくれてんの? さっき『私以外の女の子と一緒にいてほしくない』って言ってたじゃん。どんだけいいやつなんだよ。マジで中条はイケメンで高収入で一途に愛してくれる完璧な男と結婚してほしい。この世界中で彩芽の次に幸せになってほしい。

 

「彩芽は、なんて?」

『かおりのこと信じてるから、いいよ。って』

「うっ……ひぐっ……」

『なに泣いてんの』

 

 彩芽と中条の関係が美しすぎる……!! あと申し訳なさすぎる……!! 本当にごめん、俺の家族が魔法使いで。そうじゃなきゃ、お互いに我慢することもなかったはずなのに。俺みたいなやつを好きになってくれることなんてなかったはずなのに。

 彩芽と中条の間で話がついているなら、俺にできることは中条のイチャイチャ欲を満たすことだけだ。それプラス、中条が暴走しかかったらちゃんと止めること。男の性欲に負けて変なことをしないこと。彩芽の誘惑を乗り切った俺にならできるはず。

 

「悪い、あまりにも彩芽と中条の関係が綺麗すぎて……」

『キモ』

「単純な罵倒はやめろよ。傷つくだろうが」

『事実だし。……それに、私が嘘ついてるとか思わないんだ?』

「疑わねぇよ。彩芽に関することで中条が嘘つくとも思えねぇし、むしろ通話かけてきたのだって、彩芽にどうやって言おうかの相談かと思ってたしな」

『……彩芽の親友としての私に対してなら100点だけど、女の私に対してなら0点』

「ごめんなさい」

『いいよ。それが舞坂だし』

 

 反射的に出た謝罪に、笑って返してくれる。いい女かよ。なんか本当に申し訳なくなってきた。魔法を根絶するのを将来の目標にしようかって本気で考えるくらいには。

 でも、魔法がなかったら彩芽とも今の関係になってなかったし、悪いことばっかりじゃなかった、と思う。ただ、俺と彩芽の意識一つで魔法なしでも今の関係にはなれてたと思うし、微妙なところだ。

 

 ……魔法を無効化する魔法だけでも習得するか? 方法はわかんねぇけど。

 

「それで、どうする? 明日は休みだから、明後日まで我慢することになるけど」

『明日じゃないとやだ』

「わかった。どこにする?」

『会ってくれんの?』

「ん? おう。明日じゃないと嫌なんだろ?」

『でも、旅行帰りで疲れてるだろうし』

「いいから会うぞ。そうしねぇとイチャイチャできねぇだろ」

『……うん、ありがと』

 

 あとで彩芽に謝るか……。ヤベェな中条。彩芽のことが大好きな俺に、ここまで可愛いって思わせるなんて。ちょっとめんどくせぇところも可愛いぜ。

 そうやって思う度に、心が痛む。彩芽に対しても申し訳ないし、そうやって思うことが中条に対しても申し訳ない。とんでもねぇクソ野郎だ俺は。女の子からの好意を受け取るだけ受け取ってるだけ。中条が彩芽のことを気にしてくれてるからうまくいっているだけで、俺は流されているだけだ。

 

『そんなことない。舞坂がちゃんと彩芽のことが大好きで、それがちゃんと伝わってるから、私も応えたいって思ってるんだよ』

「だから心読むなって」

『だって、しゅんってしてたっしょ今。わかるよ、そんくらい』

 

 俺何も喋ってなかったのに? 魔法の影響で心の動きとかを感じられるようになってるのか? だとしたら、後遺症とかが残りそうで心配だ。そういう治療に使える魔法の習得もした方がよさそうだな。

 

『明日、ご家族は家にいるの?』

「いると思う。予定は聞いてねぇけど」

《今、全員家を空けることになった》

《協力的で助かるぜ、カスども》

 

 魔力無駄遣いすんなつってるだろ。同じ家にいるんだから直接こいや。

 

「全員でかけるらしい」

『ほんと? 無理させちゃってないかな……』

「気にすんなよ。中条は被害者なんだから、俺ら家族のすることは何も考えず受け取ってくれ」

『じゃあ、多少のわがままも聞いてくれる感じ?』

「多少ならな」

『何言うかわかんないよ?』

「彩芽が中条のこと信じたんだろ? なら俺も信じるよ」

『100-0』

「略すな」

 

 『……彩芽の親友としての私に対してなら100点だけど、女の私に対してなら0点』の略だろう。本当にそう思わせちゃうのは申し訳ないけど、中条も彩芽のことが好きな俺を信頼してくれてるから、多少彩芽のことは気にしないでイチャイチャできるってとこもあると思うし……。今思ったけど、もしかして俺が彩芽に対して誠実な行動すると、中条にとっての評価につながるみたいなことあったりする? そのせいで俺のこと好きになってくれたとかある?

 

 考えないようにしよう。そんなこと考えても仕方ねぇし。

 

「それじゃあ明日な」

『え……もっと話したい』

「ダメって言えねぇじゃん。ズリィぞお前」

『ダメならいい』

「ダメじゃねぇよ。話そうぜ」

『無理してない?』

「話すだけで無理もクソもねぇだろ。中条と話すの楽で楽しいしな」

『そうなんだ……ふーん、そうなんだ』

 

 あと、絶対機嫌損ねるから言わねぇけど、ここでイチャイチャしておいたら明日会った時のイチャイチャが軽減されるかもっていうのもある。

 

『じゃあさ、舞坂』

「ん?」

『私の好きなとこ言って?』

 

 ……。

 

 めんどくさくて可愛いっていうの、こういうことか。

 

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