「旅人。ちょっといいか?」
ふと声を掛けられ振り返る蛍。
「……忍。どうしたの?」
「悪いけどオイラたち今立て込んでてな」
「大丈夫だよ。パイモン」
次々と知り合いが斬られたことであまりいい気分ではなかったがそれを赤の他人にぶつけるほど理不尽ではなかったので怒りを鎮めながら忍に向き直る。
「そんな時にすまない…実はうちの親分がいないんだ」
「親分…?一斗のことか?」
「あぁ、半月前から行方がわからないんだ。何か話知らないか?」
どうやら荒瀧派の親分こと、荒瀧一斗が行方不明らしい。残念ながら私たちは鬼刀斎探しで忙しく何もしらないのだ。
「………そうか。わかった何か分かったら私に知らせてくれ。」
そう言って忍はとぼとぼと去っていってしまった。
「一斗の奴どうしたんだろうな?…旅人?」
「ううん、何でもない」
何処か違和感を感じながらもその疑問を振り払う。いくら考えようとも憶測の域を出ないのだから。
――――――
「よう。お前ら!奇遇だな。」
鬼刀斎の情報がないか稲妻城下町を転々としていたところ、背後から声を掛けられるた。この場所は町から少し離れていて、人気が少ない。そんな場所で知り合いとは誰なのかと振り返ると、荒瀧一斗がいた。
「一斗じゃないか。さっき忍が探してたぞ?」
「そうなのか!?実はしばらくあちこちぶらぶらしてたんだよ」
「半月も連絡なしはすこし酷くないか?」
パイモンと一斗がわちゃわちゃと会話しているのを横目に私は先ほどから感じていた違和感の正体を考えていた。
(…忍が珍しく親分と言ったこと…鬼刀斎は赤鬼…一斗が急にいなくなる…)
思考を続けていたその時、蛍の脳内に一つの天啓が降りた。蛍はその仮説がほど正しいと確信し、一斗に質問をする。
「一斗ちょっと聞いていい?」
「なんだ俺様に何でも聞いてみろ!」
「荒瀧派のみんなの前からいなくなったのはいつだっけ?」
「だいたい半年前だな。」
「鬼刀斎が現れたのは?」
「半年前だな。」
そこで私の考えは仮説から真実へと変わる。
「最後に一つだけ。あなたは何者?」
「!!」
パイモンも察したのか信じられないような顔をする。
「………貴様のような勘のいい餓鬼は嫌いだ」
荒瀧一斗の砕けた口調や人情味あふれた顔はそこにはなく、硬派な口調で氷元素の元素爆発よりも冷たいく感じる顔がそこにはあった。
「嘘だろ…!?一斗が鬼刀斎だって」
「なんでこんなことをしたの?」
鬼刀斎は冷たい雰囲気を崩すことなく答える。
「単純だよ。己の欲を満たすは生命の性であろう」
私の耳が聴いたのは鯉口を切る音だけだった。
「来るッ!」
反射的に草元素で攻撃し、その後に雷元素で追撃する。が、鬼刀斎は難なく急成長する植物を細切れにして、私ではなく…パイモンに肉薄する。
「まずっ!」
私一人だけならばまだ鬼刀斎と戦えるがパイモンをかばいながらだと守り切れるか怪しい。鬼刀斎だって馬鹿じゃないすぐにその事実に気づいて真っ直ぐにパイモンを狙ってきた。
「貴様の大切な者を人質にさせてもらう!」
また私は守れないのかとあきらめかけた時、雷鳴の音と共に菖蒲色の狐が鬼刀斎に向かってゆく。
「八重神子ッ!」
「ようやっと妾に気づきおったか、わっぱ」
斬りかかる鬼刀斎だったが、八重神子は雷元素を纏わせて鬼刀斎の周りを一周する。その時に残した三株の殺生櫻が鬼刀斎の周りに現れ落雷を喰らわせる。
「ぐっ!小細工が!」
一瞬ひるんだ鬼刀斎だったが、一振りで周りの殺生櫻を壊す。
「少しだけ良い顔になったの、妾の盟友を傷つけたツケしかと受けてもらうぞ?」
八重神子は九つの尾を顕現させながら獲物を追い詰める獣のような笑みを浮かべる。