「おや?如何した八重神子殿?先ほどよりキレがないようにお見受けしますぞ?」
「ぬかせ、まだまだ戦るに決まっておろう」
私と八重神子二人で猛攻を続けるが鬼刀斎はそれを難なくいなすどころか息一つ乱れることなく、八重神子の足を傷つけてしまう始末。影を凌ぐほどに強いと言ってもこれほど差があるなんて!
「神子と旅人二人がかりでこれなのかよ!?」
一方、戦場からは少し離れた木の裏でその激戦を見届けていた。自分は戦えない、みんなみたいに戦うことはできない、できることといえば、あちこちで見聞きした情報で旅人のガイドをするくらい。それでもパイモンはこんな状況でも自分にできないことはないのかと考える。
「う~ん……そうだ!」
なにか思いついたのか、すぐに戦いの場を後にしたパイモン。この時の行動が戦いの命運を大きく変えた。
――――――
「おやおや、つわものと名高い宮司殿と異国の旅人がこの程度ですかな?」
言葉で煽っておきながら、鬼刀斎は決して自分からは仕掛けてはこない。鬼刀斎は太刀を持っている手を大きく後ろに引き、こちらに突き出す手はじゃんけんのチョキのような形をしていてまるで弓を引き絞ったような構えをしている。一見隙だらけの構えだが、これがなかなか厄介なのである。その構えから全く動かない「静」の戦い方で、相手が攻撃して来た瞬間、素早い動きで反撃してくる「後の先」を極めた剣技。本人は力任せに斬りかかってきそうなものだが、なかなかどうして技巧派である。剣の鬼と呼ばれるわけである。しかも、
「はぁ、はぁ、小細工が得意なのはどちらなのかの…?どうゆうカラクリじゃ?」
そうだ、神の目の攻撃はすべて弾き返すどころか、神子の殺生櫻も一振りで壊れてしまう謎の技。完全に元素相性を無視している。
「これか?別に不思議な術を使っているわけではない。ただ、『乱れ』を斬っているにすぎんよ」
「『乱れ』じゃと?」
「なにそれ?」
言葉の意味それ自体はわかるのだがそれが何を指しているのか、皆目見当がつかなかった。
「そう『乱れ』だ。どの神の目を持つものであろうと所詮は人の技。その技にはどこかしらの綻びが起きるものだ。己はその綻びを突いているに過ぎんよ」
その言葉を聞いて私と八重神子は絶句した。そうであろうなぜならその言葉が意味するのは神の目使いであればだれであろうと攻撃を無力化できると言っているのである。
「さあ、どうした?威勢がないぞ?勝負を放棄したか?」
私は神子と顔を合わせたがお互い策がないといった様子だった。まさに五里霧中である。
「では、こちらから…」
「ならば、数で行かせてもらおうか?」
「ぬっ!?」
雷元素を纏った矢が飛んでくる。だが、鬼刀斎は一瞬の間を無くその重撃を撃ち返した。鬼刀斎の予想通りその矢が当たった場所には『烏羽』が置いてあった。
「この矢は…!?」
「よい時に援軍が来たの」
矢を撃った方向にいたのは九条沙羅だった。
「荒瀧、貴様は厄介者でも外道ではないと思っていたのだがな…将軍様に逆らった報いを受けてもらう!」
怒りを持った声色で新たな矢を番える沙羅。
「一人、増えたところでいくらでも、」
「ウチもおるで!!」
こんどは火元素を纏った矢を飛ばす、それを打ち返そうとするが、太刀の刃に当たった瞬間、花火が上がる。
「宵宮!」
「次々と援軍が来るとは何事じゃ?」
「オイラがみんなに声を掛けてきてもらったんだぞ!」
声の主の方を見やるとパイモンがいた。なんと仲間たちを連れてきてくれたのだ。
「あぁ、パイモンがいてくれたおかげで親分を見つけることが出来た。」
「えぇ、綾華とトーマの仇を見つけてきてくれましたからね」
「あいつはうるさいし背が高いから嫌いじゃが、悪人ならさらに嫌じゃからの」
忍、綾人、早柚、みんなが来てくれた。そうだ私は一人で戦ってるわけじゃない。みんないる。
「うん、そうだね。反撃開始だよ!」
☆解説
・『乱れ』
鬼刀斎が神の目使いとの闘いの中で見つけた技術。人や仙人、妖怪であれどその元素構築には必ず隙がある。鬼刀斎はその異常な観察眼をもってして刹那の瞬間に『乱れ』を見抜き攻撃できる。例え魔神であろうと場合によっては『乱れ』を見抜くことが出来る。しかも、荒瀧一斗の岩元素の神の目を持っているので「元素視覚」を使えてさらに高度に『乱れ』を見抜けるようになったおまけつき
・綾人、早柚
大切な人を傷つけられて怒り心頭。トーマは綾華をかばってさらに重症。