稲妻の剣鬼   作:you are not

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今回は長め、そろそろ完結だと思います。


八幕「判決を下す」

 

「悪いなお前ら、俺様を止めてくれたってのにこうなっちまった」

 

座敷牢越しに謝罪する一斗。あの戦いの後一斗は傷も癒えない内に奉行所に自らの意思で自首したのだ。あの戦いに参加していた者たちはその行動に納得するか是非はあれど、驚くことは無かった。一斗は人斬りの悪鬼に落ちたことを何よりも後悔していた。罪を背負う為に裁かれようとするのは当然の行動であった。

 

「いいんだよ。一斗が無事に戻ってくれたからな。実は旅人や忍が一斗の罪を軽くするように色々行動してるんだぞ?」

 

「かたじけない。」

 

一時期的に鬼刀斎と一斗二つの側面を持って別れ、元に戻った影響か一斗の喋り方は元の我の強い喋り方と鬼刀斎の時の丁寧な喋り方が混ざってしまったようである。正直に言うと、丁寧語の一斗はとてもなれないものだ。なぜか忍や綾人は「懐かしい感じ」と言っていたが?なんだったのだろうか?

 

「やい、鬼刀斎これからお前の吟味者*1が始まる。牢から出すが…変な気は起こすでないぞ?」

 

天領奉行の役人が奥から現れる。どうやら、第一審が始まるようである。

 

「元より斬るつもりなら、斬っておるに決まってんだろ」

 

そう呟いた一斗は静かに手錠をつけた状態で役人についていく。もちろん一斗が鬼の怪力をもってすれば簡単に砕くことが出来たがそれは彼自身のプライドが許さなかった。

 

 

――――――

 

 

「鬼刀斎お主には暴行罪、決闘罪、国家転覆罪の容疑がかかっておる。異論はあるか?」

 

「………」

 

白洲の屋敷の上でお奉行様が高らかにハキハキと罪状を述べる。屋敷の中には几帳が貼られていながらも雷電将軍が御照覧なされていた。

 

「いいえ、ありませぬ。俺様…失礼、愚生鬼刀斎改め荒瀧一斗その罪を認めまする」

 

静かに頷く一斗の姿に本当に巷を騒がせた鬼刀斎なのかと一部の侍や役人たちはにわかに囁きだす。

 

「静粛に…お主の潔さはよし。されども罪は消えはせぬ。幾人もの民を斬り、将軍すらも手に賭けたお主には死罪を…」

 

 

                   待った!

   

 

その時、一人の女が異議を申し立てた。

 

「なにやつ!?」

 

「私は離月の法律家煙緋。そこの荒瀧一斗君の依頼で遅れながらも弁護することになった。」

 

「なっ!?いきなり現れて弁護だと、そんなこと」

 

「構いません。許可します」

 

その鶴の一声は雷電将軍本人が発したものだった。

 

「しょ、将軍様」

 

「稲妻の意に背くのですか?」

 

反論もできず、冷や汗をかきながら渋々煙緋を受け入れるお奉行様。

 

「いいかな?それじゃあ、弁護を開始してもいいかな?」

 

「よかろう。申してみろ」

 

煙緋は持ってきた資料をペラペラめくり目を通した後。前を向き、弁護を開始する。

 

「まず、被告鬼刀斎こと荒瀧氏の有罪は当然です。それには私も異議はありません」

 

「そうか、では…」

 

ですが!

 

何処からか持ってきた机をどんどんと叩きながら煙緋は反論を口にする

 

「彼は、一人も殺しておりませんこれは明らかに良心の呵責があったからです!」

 

「な、なんの根拠があって!」

 

「これまで、彼は鬼刀斎として辻斬り事件を繰り返してきました。将軍様含めその数約1500名、それほどの数いるというのに、死者をおろか後遺症を患った人すらいません。その証拠となる統計書は社奉行から送られていますよ」

 

一枚の手紙を突き付けながらそう宣言する。煙緋

 

「ぬぅぅ、だ、だがそれはただの偶然にすぎぬのではないのか!」

 

「本当にそうだといえますか?1500人これ程の人を斬りつけておきながら一人も死なないというのはおかしな話ではありませんか?」

 

バッサリと反論を切り捨てる煙緋、その勢いと気迫は周りの者たちに彼女の勝利を確信させた。

 

「だ、だが、将軍様や稲妻の民を斬ったのには変わりあるまいしかるべき罪を問うべきだ」

 

「えぇ、いづれにも同意します。ですが、彼には精神に異常をきたしていたとされる供述があります」

 

「誰がそのような、ばかげたことを…」

 

「まず、天領奉行の九条沙羅殿、」

 

「なぬっ!?」

 

いきなり大物の名前をだされまたもや慌てるお奉行

 

「そのほかにも鬼刀斎討伐に関わった社奉行の神里綾人氏、鳴神大社の八重宮司殿も皆口をそろえて鬼刀斎は我を忘れていたと供述しております。ですよね?蛍氏?」

 

「はい。間違いありません、荒瀧一斗さんは私たちに倒されるまで正気とは言えない状態でした」

 

前もって呼ばれていた蛍は堂々と宣言する。旅人である彼女だがこのテイワット中で英雄である彼の証言を疑う者はいなかった。それどころか社奉行、天領奉行、鳴神大社などの国の権力を持った者たちがそう言うのであればだれも反論できなかった。

 

「私の弁護は以上と致します。」

 

「うむ、それらの供述に異論はないと認め、被告には情状酌量の余地があるとして…」

 

お奉行が判決を下そうとした時、待ったをかけたものがいた

 

「…鬼刀斎あなたに一つ問います」

 

それはほかでもない雷電将軍本人だった。

 

「なぜ、()()()あなたは抜かなかったのですか?」

 

何の話なのか、誰ももわからなかったそう、この二人をおいて

 

「…恐縮ながら言わせてもらいます。己は錆び付いた(誇り)で将軍様に挑みたくはありませんでした。ですが、それがあの始末です」

 

「わかりました。将軍の名のもとに命じますこのものの減刑を」

 

その結果は言わずもがなであった。

 

*1
江戸時代の刑事裁判

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