本当にありがとうございます。
これからも頑張って書いていきたいと思います。
では本編をどうぞ。
【2018年 4月7日 京都府立呪術高等専門学校】
冬が終わり春になった。
今日は京都高専に入学日や。と言っても入学式があるわけでもない。
呪術師は希少な人材やから、一年に入学する者は片手で数えられる。
俺の学年は俺と、もう一人の二人だけや。
他の学年も似た様な人数で、四年制なので全員でも十人程度である。
ただし、高専を卒業した呪術師は高専を拠点として活動しており、呪霊討伐任務の斡旋とサポートなどをしてもらう。
そのため任務に行く呪術師、そのサポートをする補助監督など、高専関係者は多いので、高専にいる人間自体は多い。
そんな学校を真依姉さんに案内されながら歩いてる。
理由は単純で高専が広すぎるからや。
高専は単純に広大な敷地があり、その中に様々な施設が存在する。
まず、公立の学校故に、普通の学校としての施設がある。
校舎、体育館、運動場、プールなどである。
それに加えて呪術師としての施設もある。
呪術師への任務の斡旋・サポートをするための事務室や、呪具や呪物を納めておく呪具庫や、呪霊を捕らえて置いている監獄など様々な施設がある。
そして最後に、伝統ある古い建物がある。
古い塔や、寺院、神社などの伝統ある建物を潰さずに置いてある。
確実に国の重要文化財に指定される様な建物だが、呪術師を表の社会に出せるはずもなく、一般人の目に触れる機会はない。
そんな高専に初めて通って目的の場所に行けるはずもなく、直樹は真依に案内されていた。
学長に挨拶する為に、学長室に向かって横に並んで歩いていた。
「学長ってどんな人なん?」
「うーん、そうねぇ」
俺の質問に真依姉さんが少し考えてから答えた。
「まぁ昔気質の人って感じかしらね。ただ悪い人じゃないとは思うわよ。じゃなかったら今頃私はここに居なかったでしょうし」
真依姉さんは今のところ呪術師として大成することはない。
実際に今の等級は三級術師やし、その実力はこれ以上急激に伸びることはないやろ。
その真依姉さんが
常に死と隣り合わせの呪術師や。
それは一緒に任務を受けて来た仲間のお陰でもあるやろうけど、それだけ危険の少ない任務を斡旋して貰ってたわけや。
「なるほどな。悪い人やないんは良いことやな」
「ええそうね」
真依姉さんはこれまで呪術師として生きて来れた。
それはええことや。
けど、いつまで呪術師を続けるんやろか?
今の禪院家ならそこまで悪い扱いを受けへんとは思うし、悪い扱いさせへんつもりでもある。
「あのさぁ真依姉さん。いつまで――」
「私辞めないわよ。暫くは、だけどね」
俺が真剣なトーンで話しかけるが、真依姉さんが途中で遮って話した。
「やりたいことが出来たのよ」
そう言う真依姉さんの声色は不機嫌そうやない。
「それをやるまでは続けるわ。それでね」
そう言ってこちらを真っ直ぐ見た真依姉さんの顔は何か覚悟の決まった顔をしとった。
「その時になったら貴方に手伝って欲しいことがあるの」
「俺が?それは次期当主としてか?」
「ううん」と首を横に振る真依姉さん。
「何をして欲しいかその時に言うけど、貴方にしか出来ないことよ」
俺にしか出来ひんことが何かは分からんけど、
「俺に出来ることなんやったら、出来る限りのことはするわ」
そう言い切った。
真依姉さんがそこまで真剣に考えてることなら、俺はそれを出来る限り叶えてやりたい。
「ありがとう。私の、いや、」
真依姉さんは途中で言葉を区切って言い直した。
「
私達ってことは、真希姉さんも絡んでくることやろ?
二人に対して俺にしか出来ひんことなんてホンマにあるんやろか。
そんな話をしているうちに二人は学長室にたどり着いた。
「じゃあ私はここで」
「あぁ助かったわ真依姉さん」
手を振って歩いていく真依姉さんを見送る。
約束したこと気になるけど、それは一旦置いといておく。
とりあえず、今は学長との話し合いに集中しなあかん。
深く深呼吸を一つして、扉をノックする。
「一年の禪院直樹です。
「入って良いぞ」
「失礼します」
扉を開けて中に入る。
部屋の中は至ってシンプルだった。
大きな実務机が窓際に置かれている。
部屋の中央に背の低い大きなテーブルがあり、それを挟むように左右に三人掛けのソファが置かれていた。
また、テーブルには急須と茶菓子が置かれていた。
そんな部屋の中に入ると二人の人物がいた。
一人目は入室の許可を出した
禿頭に整えて伸ばされた白い眉毛と顎髭に、鼻と両耳たぶにリング状のピアスを着けている着物を来た老人だ。
ただ、年老いた風貌だが、体は鍛えられており弱々しい雰囲気はない。
扉から見て右手側のソファに座り、湯呑みで茶を啜っている。
二人目は高専の制服と思わしき真新しい黒いスーツを着ている若い男。
首まで伸びた金髪を左右に分けており、スーツを着ていることも理由だろうが線は細く見える。
扉から見て左手側のソファに座っていた。
緊張しているのかお茶にはあまり手をつけていない様に見えた。
「よう来たな。そっち側に並んで座ってくれ」
「分かりました。横失礼しますね」
「あ、了解です」
勧められた様に、楽巌寺学長と向かい合う様にソファに座る。
二人の聞く体勢が出来たところで学長が話し始めた。
「さて、揃った様じゃし、まずは自己紹介しようかの。儂がこの京都高専の学長をしておる楽巌寺嘉伸じゃ。歳は76じゃがまだまだ現役で呪術師をやっておる」
「さて、お主ら二人が今年度の高専入学者じゃ。一人づつ自己紹介してもらおうかの。まずは新田の方から頼もうかの」
そう言って俺の隣に座る男性に視線を送った。
俺も少しだけ向き直り、自己紹介を聞こうとする。
「初めまして、
そう言って頭を下げる新田。
「ふむ、よろしく頼む。じゃあ次は禪院の方」
学長が俺に、次に自己紹介することを促す。
その声の俺の苗字に新田の体がピクリと反応した。
この名前に反応すると言うことは、ある程度呪術界の情報を知っている見たいやな。
「初めまして禪院直樹です。これから長い間よろしくお願いします」
新田を習って簡潔に自己紹介をして、頭を下げた。
色々と話したい気持ちもあるけど、これから長い時間があるんやし、そん時にでも仲良くなれたらええかな。
「お主ら二人が入学するにあたって一つ聞いておくことがある」
そう言って細い目が大きく開く。
そしてその力強い目で射抜く様に俺達を見ながら話を続けた。
「呪術師とは死と隣合わせの職業よ。いつ死ぬとも分からん。じゃからそれなりの覚悟を持って呪術師にならねばならん」
一呼吸の間を空けてから、改めて問いかけられた。
「お主らはなぜ呪術師になろうと思った。新田から話せ」
新田は緊張していた様子だったが、深呼吸をして話し出した。
「俺は、姉が補助監督やっているんですけど、その理由が『お前だけじゃ不安』って言ってました」
そう言う新田は少し悔しそうな顔をしていた。
「多分だけど、俺のこと心配してくれてるんだと思います。けど、俺だって不安です。あの元ヤンの姉が俺のために補助監督やるなら、俺だって姉のために呪術師になる。それが俺の理由です」
姉弟愛が新田の理由やった。
俺と兄貴の間にはそんなもん無かったから羨ましいな。
「お主の理由は分かった。姉を心配させん様に励めよ」
「はいっ!頑張ります!」
楽巌寺学長が激励の言葉を掛けて、新田がそれに応えた。
次は俺の番やな。
「次は禪院じゃが、お主は御三家の人間じゃ。わざわざ呪術師になる理由は聞かん。その代わりに、なぜ高専に入って来たか答えよ」
「俺は禪院家次期当主としての人脈作りの為です。特に、保守派筆頭の学長とは仲良く出来たらと思っています」
「ふむ?禪院家での活躍を聞く限り、お主は改革派じゃと思っておったんじゃがな」
俺が禪院家でした事は既に呪術界では噂になっている。その話を聞いて改革派やと思ったみたいやな。
当然やろな、実際考え方は改革派やし。
「ええ、俺の思想は改革派ですが、だからこそ保守派とも仲良くしておきたいと考えています」
学長は思案顔で続きを促してくる。
「改革派と保守派の争いって不利益しか無いと思っています。同じ呪術師なんですから、お互いを尊重して妥協点を探るのが良いと思ってます」
「ふむ。保守派として言っておくが、儂らは考えを変えるつもりは無いぞ。伝統ある呪術界を守っていく為には規則は絶対じゃなければならん」
頑固爺みたいな発言だが、それを直接言ってくれるだけありがたい。
他の保守派だと適当にいなした後に執拗な嫌がらせをさせれるだろう。
あるいは直接的に殺しにくるか。
「ええ、呪術界を守る為に規則は必要です。ただ、それを変える説得をする為にも保守派との繋がりは欲しいです。特に貴方と三年にいる加茂家次期当主殿とは」
「そうか、お主の考えは分かった」
そう言って学長が話を切り上げた。
さて、俺はこの人のお眼鏡にかなったのかどうか。
「これで話は終わりじゃ、お主らの入学を歓迎しよう」
「ようこそ、呪術高等専門学校へ」
学長への挨拶が終わり、俺と新田は一年の教室に向かっていた。
そこで教師が来るまで待機しておけとのことだった。
「改めて禪院直樹や。気軽に直樹って呼んでくれ。よろしゅうな」
「新田新言います、よろしく頼みます」
歩きながら改めて自己紹介をする。
出来るだけフレンドリーに話しかけたつもりやけど、新田はまだ緊張気味らしい。
「まぁ御三家の名前知ってたら気後れするかもやけど、気軽に接してくれたらええよ。同級生やしな」
「あはは、努力させて貰うわ」
あかん、苦笑いさせてもうた。
こう言う時は異世界が恋しくなるんよな。禪院の名前聞いても誰も知らへんから、特に大きい反応もないし。
「そう言えば、直樹君は次期当主なんだよね?」
「そうやな、まだ特に何もしとらんけどな」
「いやいや、めっちゃ噂になってるよ!一級術師を三十人抜きした次期当主って!」
「いや、めっちゃ尾ひれついとるやん。三十人はマジやけど、一級術師は五人ぐらいしかおらんかったぞ」
あの時戦った相手で、一級相当の実力者だったのは直哉と甚壱と扇ぐらいで、他にも何人かおったやろけど、三十人は盛りすぎやわ。
「いや、それでも一級術師含む三十人倒したのは真実って事でしょ?凄いわ直樹君」
「おおきにな。まぁ相手の油断があったんも大きかったけどな。真面目に戦われてたらもっと辛かったと思うわ」
直哉とか、もっと実力出せる戦い方されたら厄介やったやろな。
逃げに徹されたら捉えんの苦労したやろし。
「他にも噂とかあるん?」
「あるよ。百鬼夜行の時の話とか」
まぁ、あん時は人も
「一人で特級呪霊を祓った、呪霊が触れただけで祓われたとか、反転術式で百人治したとか」
「それも全部盛られとるな。特級は一人じゃ無かったし、呪霊にはちゃんと攻撃してたし、反転術式で治したんも多くても二十人くらいちゃうかな?それも軽傷含めてやし」
「いや、盛られてなくてもすげぇよ」
まぁ実際に一級術師の中でも上澄みである自覚はあるけど、流石に反転で百人治療は無理やろな。他はいけるかも知れんけど。
そんな話をして少し打ち解けれた時に教室の前についた。
「お邪魔します」
そう言って新田が扉を開けて中に入っていくので、それに続く。
「待っていたぞ、一年」
誰もいないと思っていた教室の中に一人の男がいた。
身長は190センチ程度で筋肉質な、身長も体格も
左頬から頭部への大きな傷跡が特徴的で、髪の毛はドレッドヘアを後頭部で一纏めにしている。
丈の短いブレザーに、腹巻とズボンを着ている。
顔を見て百鬼夜行の時に会った事を思い出した。
「俺の名前は
「新田新です」
「禪院直樹です」
東堂先輩と自己紹介した。
百鬼夜行の時は一瞬しか会えへんかったし、終わった後も見かけへんかったから顔を見てても自己紹介はしてへんかった。
それに百鬼夜行の時は確か…
「入学したばかりのお前らに、聞いておかなければいけないことがある」
「どんな女が
いかがだったでしょうか。楽しんでもらえていれば幸いです。
さて、今話では学長と新田君が登場しました。
この二人と言うか、京都校の人のセリフが原作では少ないので会話を書くのに苦労しました。キャラ崩壊してなければ良いのですが。
また、新田君の入学動機は独自設定です。姉の理由の方は本当に「弟を監視するため」らしいので、姉に心配したてもらってる弟が、男として見栄を張って呪術師として活動するという感じになりました。
今話も読んでいただきありがとうございました。
次話の女のタイプ語りに期待しておいて下さい。