異世界帰りの呪術師   作:北山 真

12 / 30
 お気に入り登録が500件、UAも2万件を突破しました。
 本当にありがとうございます。

 それでは本編をどうぞ。


模擬戦・食事会

 

 東堂さんとの模擬戦。

 

 俺はいつも通りにオーソドックスなボクシングの構え。

 東堂さんは足を大きく横に開き、手の位置は俺と似た形だが、手を開いて構えている。打撃以外に掴みもあり得る構えだな。

 

 足を開くという構えは基本的に待ちの構えだ。

 つまり東堂さんは胸を貸してやると言いたいのだろう。

 

 東堂さんと会うのは今日で二度目。

 実力は百鬼夜行の時に少しだけ見た、やから最初から真剣(マジ)で行く。

 

 東堂さんとの距離は10メートル程度。()()()()()()()()()()

 

「シッ」

 

 鋭い呼気と共にその距離を一瞬で詰めて左ジャブを放つ。

 

「ぬぅ」

 

 流石にジャブは見切れなかったのか東堂さんの頬に入るが、大したダメージにはなっていない。

 

「流石に速いな」

「おおきに、ほな続きいきますよ」

 

 今のは挨拶。

 自分は()()()()()()()()()()っていうアピールや。

 ここからが本番。単発やなくて連打で行く。

 

「シッ」

 

 左手一本で連打を放つ。シュッと拳が風を切る音が連続する。

 さっきとは違い顔面だけでなく脇腹や鳩尾にも打撃を散らす。

 

 しかし、流石は東堂さん。その連打を捌く。

 両腕を畳んでガードの面積を広げる。

 急所に入る打撃は確実にガードし、それ以外に当たる時も呪力を集中させてほとんどノーダメージで受けきる。

 

「あの東堂が押されている…」

 

 見ている加茂さんが呟くのが聞こえてきた。

 どちらかと言えば打たせて貰っている感じではあるが。

 

「そろそろ俺も行くぞ」

 

 その台詞から、東堂さんも攻撃のスイッチが入った。

 鳩尾を狙ったジャブを左腕でガードすると同時に左足でローキックをしてきた。

 ローキックを躱すため、東堂さんの右側に回り込みながら右のこめかみに向けてジャブを放つ。

 

 それに対して東堂さんはこちらに振り向き、ガツンッと硬いもの同士がぶつかる音が響く。ジャブを()()()額で受け止められた。

 振り向いた動作と同時に放っていた右手の裏拳が顔面に迫る。

 ブウゥンと鈍い音を立てて迫るそれを俺は右腕でガードしたが、

 

「フンッ!」

 

 東堂さんは勢いよく振り切り、俺は5メートル以上弾き飛ばされた。

 体格を見た時から思ってたけど、かなりのパワーを持っとるな。

 

 東堂さんがこちらに一歩踏み出し、右拳を振り降ろしてくる。

 それに合わせて、左足を前に出し右拳を突き出す。

 

 お互いの右拳がぶつかり合う。

 そして、()()()()()()()()()

 

「「「おお!」」」

 

 歓声が上がる。

 同時に、二人は仕切り直す為に距離をとった。

 

 時間にして一分も経っていない短くも濃厚な攻防の結果、お互いに見えてきたものがあった。

 

 直樹の全集中の呼吸と呪力の強化により発揮される身体能力は非常に高い、特にスピードが驚異的である。

 しかし、体格はそこまででも無い。身長170センチそこそこで、鍛えてはいるが細身である。

 

 対して東堂は身長190センチオーバーで、尚且つかなりの筋肉量を誇り、呪力による強化も非常に高いレベルにある。

 多少の攻撃は耐え凌ぐタフネスさがあった。

 

 総じて直樹はスピードに優れて、東堂はタフネスで勝る。体術はほぼ互角。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()

 それは右拳のぶつかり合いで把握した事。

 体重の軽いはずの直樹が、東堂を押し返した。それは明らかに攻撃力で直樹が優っている証明となっていた。

 

 しかし、その程度で動じる東堂では無い。

 

「確かに強いが、まだまだ全力じゃないな」

 

 そうキッパリと言い切られた。

 

「そら()()()ですからね。真剣ですけど全力じゃあないです」

 

 こちらもキッパリ言い返す。

 確かに後から反転術式で治せるが、それはそれ。

 あくまで模擬戦であって本気の勝負では無い。

 

「小手調べはこの辺で良いだろう。そろそろ全力で行くぞ」

 

 そう言う東堂さんの体から呪力が漲る。

 それに対応して、こちらも呪力を溢れ出させる。

 

 そう、お互いに呪力の強化は最大ではなかった。

 直樹はあくまで模擬戦であるということから。

 東堂も一応は模擬戦である事を考慮して、直樹の実力を正確に測る為に。

 

 それもこれまで。お互いが本気になった。

 

(呪力量はこっちのが上か)

 

 冷静に戦力を分析する。

 

 代々呪術師の家系の直樹と一般家庭出身の東堂。

 流石に呪力量では直樹の方が上であった。

 

「今度はこちらから行くぞ!」

 

 先程とは逆に東堂さんがこちらに突撃してくる。

 その巨体からは考えられない様なスピードで右腕を掲げて迫る。

 そのままラリアットを仕掛けてくるが、ギリギリまで引き付けてからしゃがんで躱す。

 

 すれ違い、背中を晒す東堂さん。

 しゃがんだ体勢のまま回転し、膝裏を左足で蹴りにいく。

 

 それをジャンプして躱し、その勢いのまま踏みつけにくる東堂さん。

 俺が横っ飛びで躱すと、東堂さんがドゴッと音がなり、地面を踏み砕いた。

 

 地面が砕かれて砂煙が立つ。

 その砂煙の中から飛び出してくるのを見計らい右ストレートで迎撃するが

 

「服だけっ!」

 

 飛び出してきたのは東堂さんのブレザーだけだった。

 それに釣られて攻撃し、隙を見せた俺に対して、ブレザーの影から飛び出した東堂さんがタックルを仕掛ける。

 

「ぐぅ」

 

 それを受ける。

 押し込まれるが倒されない様に踏ん張る。

 東堂さんが俺の腹に抱きついた状況で膠着した。

 

 東堂さんの背中に向けて数回拳を振り下ろしたが、それを意に介さず持ち上げられる。

 

「ぬぅおぉぉっ!」

「ガハッ」

 

 雄叫びと共にドガンッと大きな音が立つほど勢いよく背中から叩きつけられ、息を吐き出した。

 

 叩きつけた衝撃で出来た、小規模なクレーターの中で攻防が続く。

 

 東堂さんが俺の上でマウントポジションを取り、拳を振り上げる。

 

(このポジションはマズイッ!)

 

 強烈な危機感を抱き、ブリッジをして全力で腰を跳ね上げ、東堂さんを5メートルほど吹き飛ばした。

 

「ぬおおぅ」

 

 強引に剥がされるのは想定外だったのか、吹き飛んだ東堂さんから情け無い声が漏れる。

 

 吹き飛ぶ東堂さんを追撃する為に、腹筋に力を入れて素早く体勢を直した。

 そして、落ちてくる東堂さんを右足の空中回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

 当たる直前に丸まる様にガードを固めた東堂さんにズバンッと鋭い蹴りが直撃した。

 20メートルぐらい蹴り飛ばされた東堂さんがさらにゴロゴロと地面を転がって行く。

 

 東堂さんは10メートルほど転がった後、ブレイクダンスをする様に背中で回転して勢いよく立ち上がった。 

 

「フフン、そうでなくてはな」

「そっちこそ流石ですね」

 

 お互いに褒め合い、闘争を続けようとしていたが…

 

ストーップ!これ以上は模擬戦じゃなくなるから終わりっ!」

 

 観戦していた庵先生から止められる。

 

 チッ、と舌打ちを一つして東堂が話し出す。

 

「まぁ良いだろう、これから同じ学校に通うんだ。任務、授業、これからお前の実力を見る機会は山ほどある」

 

 そう言って東堂さんはスタスタと学校の校門の方へと歩いて行ってしまった。

 

「ありがとうございました」

 

 歩き去る東堂さんの後ろ姿に模擬戦の礼を告げて、皆の元へと歩いて行く。

 

「話には聞いていたけど、ここまで凄いとはね」

「東堂相手に優勢にやりあえるとは流石だな」

「あいつをボコボコにしてくれても良かったのに」

「流石ね直樹」

「凄いですね直樹君!」

「あの東堂相手にあそこまでやりあえるとはナ…」

「凄ぇなマジで」

 

「ありがとうございます」

 

 口々に褒めてくれる。正直かなり嬉しい。

 

「じゃ、模擬戦も終わった事だし。ご飯食べに行きましょうか」

 

 

 


 

 

 食事会は盛り上がっていた。

 

 各々が用意された物を食べながら話に華を咲かせる。

 

 お互いの呪術師としての等級を教えあったり。

 新田が真依に騙されてメカ丸に食事として電池を持って行ったり。

 メカ丸の内蔵武器が気になった一年二人が頼み込んで見せて貰ったり。

 直樹の術式『異世界転移』の話を聞いて、メカ丸が異世界のロボットに興味を持ったり。

 西宮が異世界に魔女がいたか聞いていたり。

 三輪とメカ丸が、真依が貰っていた日輪刀に興味を示したり。

 直樹と加茂が御三家次期当主と言うことで話をしていたり。

 

 本当に様々な話で盛り上がっていた。

 

 そして、今は一年の担当教員の話になっていた。

 

「そう言えば、俺たちの担当の教師って今日はいないんですか?」

 

 新田が庵先生に質問した。

 それは俺も気になっていた事だった。

 それに対する答えは予想外のものだった。

 

「一年担当はいないわ」

「「えっ!?」」

 

 俺と新田の驚きの声が重なった。

 

「一年担当になるはずだった人は去年の百鬼夜行時に担当した卒業生を庇って死亡。後任が見つからずにそのままよ」

「教師なしで授業はどうするんですか?」

 

 俺から気になって当然の質問をする。

 

「呪術に関する教師なら私になったから、二年と合同での授業になると思うわ。通常の学業は補助監督の中で手の空いている人の持ち回りになるわ」

 

 二年と合同授業という事は、真依姉さん達と授業する事になるのか。

 

「直樹に授業はいらないと思うけどね」

 

 そんな言葉が真依姉さんからかけられた。

 

「確かに東堂と互角に渡り合える術師ニ、授業は要らないかもナ」

「逆に私が教えて欲しいです」

 

 メカ丸さんと三輪さんが続く。

 

「実際、人脈作りに来ましたから。あんまり授業に興味ないんですよね」

 

 俺の台詞は、庵先生にとっては気が悪いかもしれないが事実である。

 すると、俺の発言を聞いた庵先生から提案がされた。

 

「なら直樹君にも授業を手伝って貰いましょうか。それなら直樹君は恩を売れるし、皆は強くなれる」

 

 私も楽になるしね、と小声で言ってるのが聞こえてくる。

 それで良いのか教師。

 

「「「賛成です」」だナ」

 

 三輪さん、メカ丸さん、新田の声が重なった。

 

「これからよろしくね、直樹せ・ん・せ・い」

 

 真依姉さんが揶揄ってくる。

 完全に外堀を埋められた。

 

「は、はい…」

 

 俺は苦笑いと共に受け入れるしか無かった。

 

 

 

 こうして、楽しい食事会は終わりを迎えた。

 

 なお、直樹が呪術を教える事は庵先生から楽巌寺学長に確認を取り、正式に許可が降りた。

 

 

 

 




 いかがだったでしょうか。今話も楽しんでもらえてると幸いです。
 今回も後書きは長くなりましたので、サラッと読み流して貰って大丈夫です。

 さて、今話は直樹VS東堂ということで、出来るだけ戦闘描写を意識して書いてみました。
 基本的にはスピードタイプだが攻撃力も高い直樹と、パワータイプだがテクニックにも長ける東堂という戦いを書いたつもりです。
 また、東堂の株をこんな模擬戦で下げたく無かったので、ある程度互角の戦いを演じつつ、直樹はちゃんと強いという所を表現出来ていたら良かったです。

 直哉含む禪院家の精鋭相手に無双しておいて東堂相手に互角なの意味わかんないと思う方もいるかも知れません。
 これは直哉が舐めプして黒閃くらって負けたせいで、黒閃バフが掛かったのと、直樹に遠距離攻撃がないと油断して急所に攻撃を当てられ過ぎたせいです。

 対して東堂は、原作でも虎杖や特級呪霊の攻撃にも余裕で耐えるタフネスがありますし、直樹の攻撃も急所に当てられない様に油断なくガードをしています。
 また、お互いに術式なしの体術のみだったので互角ぐらいの戦いになりました。

 それでは今話も読んで頂きありがとうございました。次話も楽しみに待っていただけると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。