皆様のお陰でこの小説を書く気力が湧いております。
読んでいただき、本当にありがとうございます。
それでは本編をどうぞ。
side.真依
私と真希は校舎の近くに立っていた。
真希は校舎の影になっている部分に、私は陽の当たる場所に。
「それで、話って何だよ」
真希が早速話しかけてきた。
その顔はいつもより元気がない様に見える。
「真希はさぁ、いつまで呪術師続ける気なの?」
その言葉に真希の顔が曇った。
直樹に言われた時も考え込んでいた。
それだけ悩んでるのよね。
「何でオマエにそんな事聞かれなきゃ何ないんだよ」
「そう。即答出来ないのね」
前までなら自分の力を示すとか、家の連中を見返す為とか、何かを即答出来たと思う。
それが出来ない。
それほどまでに自分の在り方に悩んでいた。
「真希、アンタ呪術師止めたら?」
「はぁ!?」
そんなに不思議な言葉かしら、今まで散々「出来損ない」とか言われてきてたはずなのに。
「直樹のおかげで家の雰囲気は変わってきているわ。多分、当主になったらもっと変わると思う」
「…」
その言葉には何も言えないわよね。
私が家にいても嫌な絡み方をしてくる人間はいない。
まぁ、それは縛りで禁止されてるからかも知れないけど。
実際に禪院家の雰囲気は変わろうとしていた。
次期当主の直樹はそれに相応しいだけの力を見せた。
それにより、禅院家を変えようという姿勢を見せた直樹が当主になるからと、直樹に気に入られようとする人間は、人を見下す様な言動をしない様にしていた。
「アンタが呪術師を続ける理由はもう無いんじゃない?」
その問いに、少しの間考えてから真希は答えを出した。
「…私は呪術師を続ける」
「何で?」
「仲間が出来たから」
そう言って東京校の人達を見つめる真希。
「それで本当に良いの?呪術師を辞めて、普通の生活を送る事も今なら出来るわよ」
「ああ」
どうやら真希は覚悟が出来たみたいね。
「呪霊が見えないのに?」
「ああ」
「落ちこぼれのくせに?」
「うん」
「弱いのに?」
「強くなるさ」
「強くなる」
そう言う真希の顔はどこか遠いところを見つめていた。
ここにいない誰かを見つめる様に。
「そう。分かったわ」
「ありがとうな心配してくれて」
真希にそう言われる。
「勘違いしないでよ。アンタが腑抜けてたら張り合いがないだけよ」
「はいはい」
そう言って笑顔になった真希は東京校の人達のところへと戻って行った。
そこが自分の居場所だと言う様に。
「そう。お姉ちゃんは自分の居場所作れたのね」
なら、私のやる事も決まった。
「次の交流会、楽しみになってきたわね」
そこで真希のことをしっかり見定める。
真希の後を追う様に、私も皆のところへと戻る。
side.直樹
「どんな女が好みだ」
俺も新田も聞かれた質問がされた。
東堂さんが初対面の呪術師にする質問である。
「はぁ?」
伏黒君は呆れた顔しとる。
そらそうやろな。誰だってそうなる。
「何で初対面のアンタに、女の趣味を話さないといけないんですか?」
「そうよムッツリにはハードル高いわよ」
そう言う伏黒君と釘崎さん。
小声で何やら言い合っている。仲ええなぁこの二人。
「そこのパンダと狗巻にも聞いたが、その二人はつまらん答えだった」
「いや、俺そもそも人間じゃねぇし」
「おかか」
この二人に聞くのは普通に人選ミスやろ。
方やパンダ、方やまともに喋れんやん。
まともな返事来ると思う方がおかしいやろ。
いや、まともなやつはこんな質問を初対面でせえへんか。
「ちなみに俺は
「さぁ答えろ伏黒。どんな女が好みだ」
「何だこれ、さっきまで真面目な話してたはずなのに…」
「この人も真面目な話してるつもりや。そうは見えへんやろうけど」
この人は至極真面目に聞いているだけや。
人の女の趣味聞いて、その人を判断しとる。
はぁ、と溜め息を吐いてから伏黒君が答える。
「別に、好みとかありませんよ。その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません」
「ヒューヒュー」
「しゃけしゃけ」
「巨乳好きとか抜かしたら私が殺してたわ」
「ウルセェ」
伏黒君が散々に茶化される。
て言うか巨乳好きアウトなら俺もヤバイんかな。
「やっぱりな。退屈だよ伏黒」
東堂さんがそう言ってしょんぼりした顔になっている。
東堂さんとは趣味合わんかったみたいやね。
「乙骨の代わりに交流会に出る有望株だと聞いていたが、とんだ期待はずれだな」
「何だと?」
東堂さんと伏黒君の問答が続く。
「これでは秤に期待するしかないか」
「何だ俺の話か?」
そこに聞いたことのある声が届く。
振り向くと金次さん、綺羅羅さん、そしてもう一人の男性が立っていた。
金次さんは髪を金髪に染めてイメチェンしとる。
そして、もう一人の男性。
東堂さんよりも高い身長。
白髪頭に、目隠し。間違いなく五条悟やな。
「よう直樹、久しぶりだな」
「久しぶり〜直樹ちゃん」
「ええ、久しぶりですね」
綺羅羅さんと金次さんと挨拶を交わして、金次さんとはがっしりと握手して再会を祝う。
「なるほど、君が直樹君か」
「初めまして五条悟さん。お会いできて光栄です」
五条さんにもしっかり挨拶する。
こっちは次期当主で学生、向こうは当主で先生。
更には最強の呪術師と名高いこの人にはしっかり挨拶しておきたかった。
「うんうん。なるほどねぇ」
五条さんは俺のことをじっくりと眺めて頷く。
目隠しをしているが、五条さんには呪力を詳細に見抜く六眼がある。
俺のことを丸裸にされてる感覚があるし、実際に呪術師としての力量は全部見抜かれてるとみた方がええやろうな。
「強いねぇ君」
「おおきに。五条さんに褒められると照れますわ」
五条さんのセリフは素直に嬉しい。
「五条さんも凄いですね。一目で格上やと分かりますわ」
「ふふん。まぁね」
一眼見ただけで分かる。明らかに格上の雰囲気。
これが最強の呪術師、五条悟か。
俺に言われて満更でもないのか、上機嫌になる五条さん。
そのタイミングで、真希姉さんと真依姉さんの二人が帰ってきた。
「それで、五条さんは何でこっちに来たんですか?」
「一、二年が交流会に向けて修行してるって聞いたから三年も連れて来てあげたんだよ。皆仲良くが一番だからねっ!」
伏黒君の質問に対して、ニカッと笑いながら答える五条さんを、皆が胡散臭そうに見てた。
「それで京都の三人はどうしてここに?」
その質問に一人づつ答えていく。
「俺は真希姉さんに渡す物があったんです。それと、伏黒君を禪院家に誘いに来たんですけど、振られてしまいました」
「私も真希に話がありました」
「有望株だと聞いた一年が、乙骨の代わりになるか見に来た」
三者三様の答えに、五条さんは頷き
「それで?どうだった?」
東堂さんの言葉は気になったのか、五条さんは東堂さんに評価を聞いた。
「ダメだな、話にならん。こいつの何処が有望なんだ?」
「言わせておけば…」
東堂さんの言葉に伏黒君も苛立つ。
「じゃあ、葵と恵で組み手をしよう!」
「はぁ?急に何ですか」
五条さんの突然の宣言に、伏黒君から不満の声が上がる。
「葵は強いよ。今の恵より格段にね。そういう格上と戦う経験は大きいと思うけどなぁ」
「強い奴なら東京の先輩達で充分でしょ」
五条さんの発言に対して、伏黒君は更に不機嫌になって答えた。
「何だ、恵怖いの?」
五条さんが伏黒君を煽る。
「好き放題言いやがって、やってやるよ」
煽られた伏黒君がやる気になったみたいやな。
「って訳で、ごめんね。ちょっと手合わせてしてあげてくれないかな?その方が恵のことよく分かると思うよ」
「ふむ。ミスター五条がそう言うなら」
東堂さんと伏黒君が手合わせやる事が決まった。
手合わせをやる二人と審判役の五条さんを運動場の中心に残して他の人が下がる。
「東堂先輩。手加減して下さいね」
「東堂さん、やり過ぎんといて下さいよ」
「分かっている。半殺しで済ましてやるさ」
「恵、あいつは強いぞ」
「気をつけろよ」
「しゃけ」
「あんな奴に負けんじゃないわよ!」
「分かってます」
「それじゃあ、始めて良いよー」
五条さんの適当な開始宣言がされた。
開始されたが東堂さんは動かへん。
初手は譲るつもりやな。
「後悔させてやる」
そう言って伏黒君は両手を前に出し、指を犬の顔の様に組み合わせる。
「
伏黒君の影から体の内側が白くて外側が黒い人狼の様な式神が現れた。
これが『
『十種影法術』とは禪院家の相伝術式である。
その効果は十種の式神を自身の手で影絵を作り出す事で呼び出し、操る術式。
色々な制約はあるが、十種全てが強力な式神を操れる非常に強力な術式である。
「行け!」
その玉犬を東堂さんにけしかける。
玉犬は東堂さんの体を、その鋭い爪で引き裂こうとする。
そのスピードはかなりのものだったが、
「何だやれば出来るじゃないか」
それを容易く見切り、玉犬の腕を掴む東堂さん。
「だが、その程度では全然足りんぞ!」
そして、玉犬の勢いを利用して背負い投げをしてしまった。
伏黒君が呆気に取られる。
その隙は致命的過ぎた。
その一瞬の隙で東堂さんは伏黒君に急接近し、右拳で鳩尾を殴りつけた。
「ガハッ!」
「伏黒っ!」
その一撃で膝を折って蹲る伏黒君。
その姿に心配の声を上げた釘崎さん。
他の東京校の面子も心配そうな顔しとる。
「退屈だぞ。伏黒」
その伏黒君を見下ろす東堂さんが、次の行動に入る。
思い切り足を振り上げて踵落としを仕掛ける。
「ぬっ!」
しかし、バランスを崩してしまう東堂さん。
よく見ると、軸足が足首ぐらいまで地面に、いや影に呑み込まれとった。
影を用いた拡張術式まで使えるのは確かに優秀やな。
俺が感心しとる間にも攻防が続く。
「
伏黒君は蹲りながら、指を組み交わしてたみたいで、影から新しい式神が呼び出す。
骸骨の面をした梟の様な鳥、鵺が飛び出した。
鵺は雷を纏う式神。それに触れられた東堂さんの動きが鈍った隙に、背後から玉犬が東堂さんを殴り飛ばした。
「ぬうぅ」
流石の東堂さんも片足で、しかも影に沈んだ状態では受けきれんかったみたいで、ゴロゴロと転がっていった。
「「おおぉ」」
「ナイスッ!伏黒!」
「しゃけ」
これには東京校の皆から称賛の声が出た。
パチパチと拍手までしている。
「なるほどな」
東堂さんが立ち上がる。
「有望というだけはある。確かに良い術式だ」
「何が言いたいんだ」
東堂さんの言葉に伏黒君が反応する。
「それはな、
その叫びと共に東堂さんが伏黒君に接近する。
それを玉犬と共に迎え撃つ伏黒君だが、
「ぐぅっ」
一人と一匹でも押し込まれる。
単純な手数は倍。玉犬のパワーとスピードは東堂さんにも通用する。
伏黒君の動きもそこまで悪くは無い。
やけど、それでも東堂さんの方が強い。
格闘技術、呪力操作、経験と言った面で東堂さんが圧倒しとった。
「フンッ!」
東堂さんの前蹴りが玉犬に叩き込まれ、その反動を使った横薙ぎの蹴りが伏黒君の脇腹をガード越しに捉えた。
「つぅぅ」
吹き飛ばされん様に踏ん張る伏黒君。
さらに、痛みに耐えながら、東堂さんの足を離さん様に掴んだ。
「鵺っ!」
伏黒君が呼んだのは鵺。
先程呼び出してから影に戻らずに空中高く飛んでいた鵺が東堂さん目掛けて一直線に落ちてくる。
伏黒君が足を離さんなら、そのまま直撃するやろうけど、
「ヌゥゥン!」
「なにっ!」
東堂さんは伏黒君ごと足を振り回し、鵺に向けて足を振り切ることで伏黒君を投げ飛ばした。
慌てて身に纏っていた雷を消し、伏黒君を受け止める鵺。
「退屈だよ、この程度では!乙骨の代わりには到底ならん!」
それを追撃する東堂さん。
飛び上がり鵺に着地し、伏黒君を掴んで鵺を足場にまた飛び上がる。
上下反転した伏黒君を抱える東堂さんが、恐ろしく危険な技に入る。
伏黒君の頭を自身の肩に乗せ、伏黒君の両方の腿を掴みガッチリとホールドする。
所謂キン肉バスターの体勢に入った。
「東堂さんストップ!やり過ぎですよ!」
東堂さんへ制止を呼びかけたが、止まる訳もなく。
そのままキン肉バスターが炸裂した。
「ガハッ!!」
ドゴンッ!と凄まじい音を立てて東堂さんが尻餅をつく様に着地した。
衝撃が伏黒君にまで伝わり、モロにくらった伏黒君が吐血する。
キン肉バスターは落下の衝撃により、相手の首や背骨、股部分にダメージを与える技。即死はせんやろうとはいえ受けるダメージは絶大。
東堂さんが技を解除し、伏黒君を地面に離す。
伏黒君は余程のダメージを受けたのか白目を剥いて気絶していた。
「それまで!葵の勝ち!」
そこでようやく五条さんの宣言が入る。
「じゃあ僕は硝子呼んでくるからちょっと待ってて」
「いや、それには及びません。俺がやります」
五条さんが反転術式の使い手、家入硝子さんを呼んで来ようとするのを止めて、伏黒君に急いで駆け寄り反転術式での治療に入る。
晴の炎まで使った急速な治癒は伏黒君の体を完全に癒した。
「直樹ってそんな事まで出来るんだ」
「五条さんは出来ないんですか?」
「僕は出来ないよ。憂太は出来るんだけどね」
意外やな。五条さんなら、呪術に関しては何でも出来ると思ってたけど、出来ひん事もあるんやな。
五条さんと会話してたら東京校の人等が集まって来た。
「伏黒は大丈夫なの?」
代表して釘崎さんが聞いてくる。
「ええ。身体は治ったし、大丈夫ですよ」
その言葉に安堵の息を吐く東京校の皆。
ホンマに仲ええし、良い人ばっかやな。
「じゃあ行くぞ直樹、真依」
「どこ行くつもりなんだぁ」
立ち去ろうとした東堂さんにパンダが声をかける。
若干声に苛立ちが混ざっている様に聞こえるのは後輩がやられたからか。
「決まっているだろう。高田ちゃんの個握だ!!」
「「「えぇ」」」
「あっはっはっ」
今日一番の大声を出す東堂さんと、ドン引きする東京校の皆、爆笑している五条さん。
毒気が抜かれたのか、誰も止める気はない様だった。
「じゃあね真希。交流会でボコボコにしてあげるわ」
「うっせぇ。返り討ちにしてやる」
「ほな、行かせて貰います。伏黒君にお大事に言うといて下さい」
「じゃあな直樹」
真依さんと真希さん、俺と金次さんが別れの挨拶を交わした後、三人で運動場から去っていった。
その後ろで
「うん。今年の交流会も盛り上がりそうだね」
五条さんがそう言っていた気がした。
高田ちゃん、めっちゃ可愛いやん。背も大きいし、胸も大きいし、顔可愛いし、ファンサええし、何あれめっちゃ可愛いねんけど。
その日、高田ちゃんのファンが新たに生まれたとか生まれてないとか。
新田にお土産買うのを忘れていたとかいなかったとか。
結論。今日も高田ちゃんは最高のアイドルだった。
いかがだったでしょうか。今話も楽しく読んで貰えていれば幸いです。
今話はですが、多くのキャラが出過ぎてキャラ崩壊してないか非常に心配しながら書きました。皆様が不快に思っていなければ幸いです。
さて、今話はまず真依と真希の対談から入りました。真希さんは呪術師をやっていたモチベーションが、当主になるためから仲間のために変わりました。
また、そんな真希を見て真依にも思うところがある様ですが、この二人の関係が大きく変わるのは交流会の後の予定です。それまで楽しみにして頂ければなと思います。
次に、東堂と伏黒の戦いですが、原作と同じマッチングで全然違う展開にしてみました。東堂さんは三年が出るので失望するだけで済んでいたけど、東堂さんと五条さんに煽られた伏黒君がやる気になり手合わせすることになりました。
伏黒君は煽られているので初めからやる気で戦っており、東堂さんも良い術式であることは認めるものの、物足りない感じです。
決着の仕方については、原作でジャーマン決めてたので、もっと派手なキン肉バスターで決めてみました。
それでは今話も読んでくれてありがとうございました。
次話も楽しみにして貰えると幸いです。
高田ちゃん可愛いよね?